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番外編
ちーちゃん
しおりを挟む俺がちーちゃんと呼び始めたのは、単なる気まぐれだった
高校に入って隣の席になった美人な子
それが第一印象だった
黙っていると纏っている雰囲気は冷たい印象を与えるが、話してみるとそうでもない
ただ話しかけるまでが勇気がいるらしく、ハードルが高すぎると友人らに教えてもらった
そんな中俺はラッキーだった。授業でのペアワークで必然的に俺と一緒に取り組むことが多くて、話す機会も増えた
授業は捗るし何より新しい表情が見れた時は密かに今日はいい日だな、と思えるくらいには友達として好きになっていた
仲良くなってきてたくさん新しい表情も見れるようになって、不意に呼んでみたくなった
『ちーちゃん』
「は?それ俺のこと?」
『うん、可愛いっしょ?』
「全然なんだけど」
なんて言いながらそれからは事あるごとに、その呼び名で読んでみる
徐々に千影の中に定着していっていつしか文句を言われることはなくなった
俺だけが呼ぶ特別な呼び名
何かが俺の中に根づいた気がした
この頃から少しずつ自分のその根が身体中に広がっていくのを感じる日々
全身へと広がり言いようのない感情が溢れ出そうになった頃、これが恋なんだと自覚した
多分生まれて初めての恋
自覚した時には既に親友というポジションを得たと感じるくらい近くになった距離にいた
もちろん今まで付き合ってきた人のことも話していたし、俺が性にだらしないってとこも知ってる
噂で聞いてるかもしれないし、過去に俺自身も千影に話したりしていたから。
失敗した、と思った
気がつかなかったけれど、初恋の相手に自分のプレゼンの仕方を間違えていると。
そんなだらしない俺を千影が恋愛としてみてくれない
でも逆に言えばもしかしたら、何かの間違いで靡いてくれるかもしれない
一か八か本気だとバレないように、軽くかる~く誘ってみることにした
柄にもなくバクバクとしている心臓の音を悟られないように揶揄い口調で
『ちーちゃん、俺またフラれたー。慰めて?』
「またかよ。たく、そんなこと言ってどこかの誰かさんはモテるから次があるだろうよ』
『そんなことないけどさ。千影が付き合ってくれたら続くんだけどね?』
「...馬鹿言ってんなよ」
びっっくりした。今の間は生きた心地がしなかった
嫌われたら生きていけない
「大体な俺と付き合うとかどんな状況だよ。
今回のお相手には相当お熱だったのか?大丈夫?トチ狂った?」
相変わらず辛辣なこった
勇気を出した俺の砕け散っていく心の音が聞こえた気がした
それからというもの偶然を装って同じ大学に行けるように密かに準備してそれらしい言い訳をしたし、行った大学でも懲りずに千影にちょっかいをかけ続け淡い期待を抱いて毎回お誘いをする
そこでは恋人は作らず、授業以外は千影べったりしていた為大学内で俺の隣に千影が居ないとつっこまれるくらいまでには定着した
千影の隣は俺じゃないと嫌だ
高校の時よりもライバルは断然多い
そんなひょこりと現れたやつに千影を渡してたまるもんか
各方面に目を光らせ千影に惚れそうなやつは俺に惚れさせるように手をまわしたし、どうしても厄介なやつとは本当は嫌だったけどそういうこともした
就職をするとなった時も色々な理由をつけてどうにか千影を丸め込むことに成功して、同棲(※ルームシェアだよ)することができた
千影は基本在宅な為、家に帰ると大好きな人が出迎えてくれるというとんでもない幸せな生活
この頃になると牽制も何もしなくてもすむことから、恋人も作らず俺の右手が恋人になる日が続いた
居もしない架空の恋人と別れたから、慰めてというのは相変わらず言い続けていたそんなある日
まさか千影から抱いてほしい、と言われるとは思わなかった
言われた時はキャパオーバーで夢でもみてるのかと思ったけれど、真っ直ぐ目をみて伝えてくるもんだからじわじわといいようのない気持ちがこみ上げてきてその場で大喜びしたことは記憶にこびりついてはなれない
少し先のその日が待ち遠しくて絶対にその日には仕事が入らないように仕事をフルスピードで終わらせていった日々
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