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番外編
再会
しおりを挟むこの日のために寝る間を惜しんで仕事をこなした
流石に昨日はせっかく戻したコンディションがダメになれば元も子もないので、しっかりと寝たがな
ようやく千影に会える。
はやる気持ちを抑えて綺麗な海が広がる街に降り立った
早朝普段千影が見ているだろう景色を眺めながら、千影が現在住んでいる場所へと歩いて向かう
あっという間に家の前つき、震える手をインターホンに伸ばす
きっと大丈夫だ。
もしこの扉を開けて出てきてくれたら俺と真剣勝負をしよう、ちーちゃん
もちろん。あんたを手に入れる為のな
「はーい、どちら、さ、ッ、、ぁ」
呆然とした表情で固まった目の前の愛しい人
あぁ、現実に存在していた。間違いなくここに住んでいるんだね。
『久しぶりだね、ちーちゃん』
「ぅ、あ。な、んで」
良かった。ひとまず門前払いで追い帰されはしなさそうだった
「ぱーぁぱ?」
『ちーちゃん、』
「はぁい!…ん?だぁれぇ?」
遠くから聞こえてくる幼い声。思わず咄嗟に千影の名を呼べば思っていた返事とは別のところから元気な声が聞こえた
俺がつけた渾名で君を呼ぶ声にその愛しい小さな天使が反応を示したことを考えたら溢れる幸福感が止まらない
「きゃー!!かぁこいねぇ!」
不思議そうに俺を目に捉えて、キャッキャと楽しそうにはしゃいでいる
『ふふ、お名前は?』
そばまで来て千影のズボンを掴んだ子の目線までしゃがみ込みたずねる
「ちーちゃんねぇ、ちとしぇってなあえなの」
「!!ッ、ちとせちゃんって言うんだ」
もう言い訳させないよ、千影。
「うん!ぱぁぱもちーちゃんとおしょろいなんだよ、おにぃしゃはー?」
「俺はね、はるとってお名前だよ。言えるかな?」
「はぅとー?」
「そうだね、よく言えました!えらいね」
「えらい?きゃー」
俺は今を持ってちゃんと確信を得たから、千影覚悟してね?もう逃さないから。
覚悟を決めて家に招き入れてくれた千影の後に続き、促されるままに椅子に座る。
さてまずは質問からしようか。その前に俺からお願いをしなければならない
おそらく嘘には気づいてしまうから、だからどうか俺にそれだけは教えないでほしい。千影の言うことは信じてあげたいと思ってしまうから。
千影の腕に収まった小さな存在。俺と千影の愛の結晶で宝物であってほしいと願いながら強気に問いかける
返ってきた答えはやはり目の前の子は千影と俺の子で間違いないとのこと。
嬉しさでにやけそうな顔を引き締める
それならここからが本番だ
俺はその子と一緒に暮らしたい。今まで育ててきた千影がそれを否定するのであれば、俺が通えばいい。
それでもダメなら、電話で手紙でアプローチをかけ続けて最終的には折れてもらおう。
もちろん今までよりも注意深く千影が他の誰かに恋なんて出来ないくらいに俺の存在で埋め尽くそう
約束する、と思いながら慎重に言葉を選んで伝えていく
その間、千影は何も言ってはくれなかった。やはり俺はダメなのか?絶対に折れないと思っていた心が折れそうになる
不安で名前を呼ぶと
『どうしてもこの子を連れて行くつもり?』
「ああ、ゆくゆくはそうしたいと思っている」
『貴方は』
その言葉を聞いてここに踏み入れてから今まで一度も名前で呼ばれていない事実に胸が軋んだ音がした
そうか名前を呼ぶことすら嫌だったのか、もしかしたら家に俺がいるのも嫌なのかもしれない
自分勝手でごめんな。それでも俺は千影を手放すことが出来そうにない
最低な俺は子どもを盾にして千影を取り込もうと必死だった
『なぁ、千影。』
「何?」
まだ返してくれる言葉に嬉しくなって口からたくさんの言葉がこぼれ落ちた。
知られたくなかった本音やあの時感じた想い、そして嫉妬したこと。
そして千影が俺と会いたくないんだとしてもその子がいる限り俺との繋がりは消えないんじゃないかって。
ずるくて卑怯な考えでごめんな
でもその子がいる限り嫌でも俺を思い出してくれるだろう?だから俺の精一杯のおもいをぶつけることにした
それからそんな卑怯な言葉で許しを乞おうとするとその言葉は遮られることになった
『ちょちょ、ちょっと待って?』
「うん」
混乱している様子の千影の言葉をそのまま待つ
考えたくないけれどもし未来で俺が千影の側に居なくても、ちゃんと遠くから千影たちの幸せを護りたいと思うから。
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