お飾り王妃は愛されたい

神崎葵

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二十一話

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 それからも二回ほど城下に降りて、昼食会を行う日となった。
 招待したのは四名ほど。私と年の近い令嬢ばかり。

「このたびはご招待いただき光栄です」

 丁寧な挨拶をしてきた一人は、いずれオーギュストが愛することになる伯爵家のご令嬢レイチェル。
 人選を任せた結果、彼女も招くことになった。

 招待客のリストこそもらっていたが、こうして間近で見るまでは実感がわいていなかった。
 なにしろ、オーギュストが彼女を愛するようになるのは一年後。レイチェルがこんなに早く城を訪れることはなかったから。

 夢の中の私は昼食会を開こうとはしていなかったので、その差なのかもしれない。

「本日は招待に応じていただきありがとうございます」

 どうしても気になってしまうけど、レイチェルにばかり気を取られていては、知っているのかと勘繰られるかもしれない。
 夢の中で見たので知っていますとはさすがに言えないので、他の三人にも視線を送りながら挨拶する。

 それから席に座り、ちょっとした自己紹介や近況といった雑談に花を咲かせる。それに私は、相槌を打ちながら一口サイズのサンドイッチを食べた。
 ライナストンにおいて、嚙み跡が残るのははしたないとされている。だから、こういったかぶりつくものは一口サイズで提供される。
 リンエルではパンに具材をはさむ簡単なものだった。大きなお肉の挟まったサンドイッチを懐かしく思いながら、また一つ、サンドイッチを口の中に入れた。

 昼食会が行われているのは、庭園が見えるテラス。
 城内の食堂とかにしても、オーギュストが顔を出すことはないだろうけど、念のため。

 オーギュストとレイチェルがどうやって知り合ったのかは知らないけど、間違いなく私の開いた昼食会ではない。
 出会いが変われば、後に育まれる愛情も変わってしまうかもしれない。それを危惧して、オーギュストがちらりとでも顔を見せない場所を設定した。

 出会いが早まり、恋心が育つのも早まるのならいいが、もしもそうではなかったら、私は解放されることなく王妃になってしまう。
 そして、彼が愛に目覚める日を怯えて待つ生活を送ることになる。
 
「陛下がお后様を迎える気になって、嬉しく思います。陛下がどのような方を娶られるのか、社交界ではよく話題に上がったもので……こうしてシェリフ様にいらしていただいて、みなさま安心しておられるのですよ」

 ――なんてことを色々考えていたのだけど、杞憂だったらしい。
 口振りからして、レイチェルとオーギュストは少なくとも顔見知り程度の関係ではあったようだ。
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