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#05 【完】
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次の日、夜に行われる盆踊りまで祖父母の手伝いをすることを和樹は申し出た。二人から、頻りに晶と過ごすように言われたが、ここでの正しい時間の使い方とは違ってしまう。
「……和樹、こんな物も用意してみたんだけど……、良かったら着てみない?」
盆踊りが始まる前、祖母が言い難そうにしながら和樹に浴衣を勧めてきた。普段の和樹であれば断っていたことでもあるが、
「あぁ、ありがとう。せっかくだから着てみるよ。」
素直に応えることができていた。
たったこれだけのことでも祖母の嬉しそうな顔を見られるのであれば、普段の自分と違うことも悪くはない。
帰省している家族たちが一同に集まっており、盆踊りの会場になっている場所は賑わっていた。浴衣姿の晶もいる。
「あっ!和樹君も浴衣を着せてもらったんだ。案外、似合ってると思うよ。」
「……そっちも、ね。」
ここでは恥ずかしさがあり、和樹は素直に『似合ってる』とは言えなかった。偶然の再開を果たす前まで、和樹の記憶にいた名取晶は男の子だったのだから無理はない。
「今日は何してたの?」
「祖父ちゃんたちの手伝いかな……。ここにいる時は、それが正しい時間の使い方なんだ。」
「私と散歩するよりも?」
「少しくらいなら良いかもしれないけど、ここでは祖父ちゃんや祖母ちゃんが喜ぶようにしてあげたいかな?」
「そうなんだ。……せっかく、お祖父ちゃんやお祖母ちゃんたちの狙い通り、和樹君と付き合ってあげても良いかなって思ってたのに。」
「なっ、何言ってるんだよ。……数年ぶりに会っただけで、そんなことにはならないだろ?」
「そんなことはないよ。小さい頃は和樹君に優しくしてもらってたんだから、ちゃんと好きだよ。」
何気なく『好き』と言われてしまったことは軽く聞き流しておく。全てを真に受けてしまっては気持ちが保てなくなってしまう。
「そんな子どもの頃の記憶だけで言われても信じられないね。」
「子供の頃の記憶だけ……本当にそれだけだと思う?」
晶は和樹の顔を覗き込むようにして聞いてくる。
「……また、からかってるんだろ?俺はアキラ『君』だと思ってたんだから、もう騙されない。」
「えー、騙してないよ。勝手に思い込んでただけでしょ?」
確かに勝手に思い込んでいただけではある。それでも、男の子だと思って一緒に遊んでいたのだから仕方ない。
それでも和樹には、一つ年下の男の子を優しく遊んであげていた記憶しかなかった。
「……明日の夕方、帰るんだろ?」
「うん。和樹君は明後日だったよね?」
二人は並んだまま、皆が幸せそうに楽しんでいる様子を眺めていた。時間の流れは変わらないはずだが、田舎の時間の流れは遅く感じてしまう。
こんな時間を過ごすのも悪くないと、和樹は考えていた。
晶が帰る日になったが、和樹は祖父に連れられて監視小屋を訪れている。
宿老とでも言えばいいのだろうか、木の上にある小屋とは思えないほど安定しており快適だった。壁掛けの扇風機もあったが、木に囲まれて日陰になっているので想像以上に涼しく感じる。狭い室内には双眼鏡があり、通信設備も充実していた。
「……すごい、子どもたちが作った秘密基地が一望できる。」
こんなにも見渡せてしまっている時点で『秘密基地』ではなくなってしまっているが、子どもたちには気付かれていなければ問題ない。
帰省する家族の日程は違っているので、秘密基地で遊んでいる子もいれば川で泳いでいる子どももいる。そんな状況に各所で対応するため、高齢者とは思えない素早い動きで移動を繰り返すので、和樹がついていくのもやっとのことだった。
移動する道も、隠れながらになるので道なき道を走り抜けていく。走りながらもトランシーバーで状況確認をして、空いた手には次の遊び道具まで持っている。
――なんだこれ!……思ったよりも全然ハードだ。
最初、和樹は動き回る老人たちを見つけることができず気配だけを感じていたのだが、だんだんと慣れてきていた。どの辺りを移動しているか分かっていれば、何とか見つけることもできる。
あちらこちらで老人たちが走り抜けていく様子は壮絶な物だった。これに加えて夜中も作業しているのだから驚きであった。
――孫にも一緒に帰省してほしいだけで、こんなにも頑張れるんだ。
これまでの人生で培った技術を余すところなく活用して、更に新しい技術を取り込むことも忘れない。そして、体力の限界まで使って帰省した孫たちをフォローし続けていた。
――これはこれで、人生を楽しんでるのかもしれないな……。
もちろん寂しさもあるが、生き生きとしている姿を見ているのは嬉しくもある。シーズンオフには様々なことを勉強したり、練習を繰り返したり、違った意味で忙しくもあるだろう。
慌ただしく時間は過ぎていき、夕方になっていた。晶たちの家族が帰る時間だったので、和樹は祖父に言われて見送りに行った。
「楽しめた?」
「あぁ、それなりにね。……ちゃんとしなきゃ、って思えたよ。」
「今まで、ちゃんとしてなかったの?」
和樹は笑って誤魔化した。『ちゃんと』しているつもりではいたが、自分たちの力だけで大きくなったわけではないことに気付くことも出来た。教えられて、見守られて、今の自分が存在していることを知る機会にはなっていた。
「それじゃぁ、次に会えるとしたら正月かな?」
「お正月も帰省するの?」
「……たぶんね。正月に、ここで何が起こるのかも興味あるし。」
「そうなんだ。……でも、次はお正月じゃないと思うんだ。」
それぞれの予定がある。移動に半日を費やしてしまう場所であれば、出会える機会は僅かでしかないのだろう。
「……連絡先、交換する?」
「いや……。次に会う時までに『名取晶』が女の子だって記憶を書き換えておくから、その時でいいや。」
「それじゃぁ、次に会ったときは、ちゃんと『晶』って名前で呼んでよ。」
「うっ……。」
名前を呼べていなかったことを指摘されてしまい、和樹は恥ずかしくなってしまった。以前は『アキラ』と気軽に名前を呼んでいたのだから、女の子であることを意識していたことは明らかにバレていた。
そうして、晶たちは帰って行った。
この夏、和樹が祖父母と一緒に過ごす最後の夜になった。最初は少しだけ怖いこともあったが、充実した一週間であったと感じている。
まだ数人の子どもたちが残っているので、夜中の作業は継続されており、和樹も同行させてもらうことにした。皆も笑顔で和樹を迎えてくれる。
出来ることは少なかったが、養殖されたカブトムシを林の木々に配置していく。逃げ出さないようにしながら、子どもたちに見つけやすい場所を選ぶ必要もあり意外に難しい。
――こんなことまで研究してるんだ。
こんな時も、他のお爺ちゃんたちが親切に指導してくれている。
――俺も、まだまだ子どもってことだな……。
秘密基地を見守る活動に参加することになっても、和樹も周囲から見守られる存在であることに変わりはなかった。
最終日は昼食を済ませてから帰路に就くことにしていた。帰る時、祖父母の寂しそうな顔を見て、
「正月も遊びに来るよ。……来年の夏休みは受験だけど、こっちに受験勉強しに来てもいいかな?」
嬉しそうな顔で『もちろん、待ってるよ』と返事をしてくれる祖父母を見て、和樹も嬉しくなる。
あの様子を見ている限り元気でいてくれると思えてはいたが、いつまでも変わらずにいられるわけではない。元気に笑い合っていられる時を大切にしなければならないのだろう。
お爺ちゃんとお婆ちゃんの熱い夏は、あと少しで終わりになる。だが、今度は冬の支度が始まって忙しい毎日は続くことになる。
田舎での一週間は退屈で長いと思っていた和樹も満喫してしまっていたのだ。
そして、短かった夏休みは終わり、高校の新学期が始まる。
田舎での一週間とは切り離された生活が繰り返されることになると思っていたが、予想外のことが起きた。
「次に会った時には、『晶』って呼んでくれて、連絡先の交換もしてくれるんですよね?……小泉先輩。」
休み時間に廊下ですれ違った女子は不敵な笑みを浮かべて和樹に声をかけてくる。
「えっ!?……同じ高校だったのか?……もしかして、ずっと知ってたのか?」
「同じ高校に通ってるから、夏休みの計画に私が選ばれたのかもしれませんよ。」
「はぁ?祖父ちゃんたちは、そんなことまで全部知ってるのか?……何を考えて、そんなことを計画してたんだ?」
そして、祖父の部屋と台所に和樹の制服姿の写真が貼ってあったことを和樹は思い出していた。
冷静に考えれば、両親ですら持っていない写真があることは不自然なことだったのだ。
「……まさか、あの写真は……。」
「やっぱり『知らない方が幸せなこと』って、あると思いませんか?……ねぇ?先輩。」
晶は楽しそうに笑っていた。
祖父ちゃん祖母ちゃんが何か計画していることがあったのならば、和樹は踊らされていたのかもしれない。
ー完ー
「……和樹、こんな物も用意してみたんだけど……、良かったら着てみない?」
盆踊りが始まる前、祖母が言い難そうにしながら和樹に浴衣を勧めてきた。普段の和樹であれば断っていたことでもあるが、
「あぁ、ありがとう。せっかくだから着てみるよ。」
素直に応えることができていた。
たったこれだけのことでも祖母の嬉しそうな顔を見られるのであれば、普段の自分と違うことも悪くはない。
帰省している家族たちが一同に集まっており、盆踊りの会場になっている場所は賑わっていた。浴衣姿の晶もいる。
「あっ!和樹君も浴衣を着せてもらったんだ。案外、似合ってると思うよ。」
「……そっちも、ね。」
ここでは恥ずかしさがあり、和樹は素直に『似合ってる』とは言えなかった。偶然の再開を果たす前まで、和樹の記憶にいた名取晶は男の子だったのだから無理はない。
「今日は何してたの?」
「祖父ちゃんたちの手伝いかな……。ここにいる時は、それが正しい時間の使い方なんだ。」
「私と散歩するよりも?」
「少しくらいなら良いかもしれないけど、ここでは祖父ちゃんや祖母ちゃんが喜ぶようにしてあげたいかな?」
「そうなんだ。……せっかく、お祖父ちゃんやお祖母ちゃんたちの狙い通り、和樹君と付き合ってあげても良いかなって思ってたのに。」
「なっ、何言ってるんだよ。……数年ぶりに会っただけで、そんなことにはならないだろ?」
「そんなことはないよ。小さい頃は和樹君に優しくしてもらってたんだから、ちゃんと好きだよ。」
何気なく『好き』と言われてしまったことは軽く聞き流しておく。全てを真に受けてしまっては気持ちが保てなくなってしまう。
「そんな子どもの頃の記憶だけで言われても信じられないね。」
「子供の頃の記憶だけ……本当にそれだけだと思う?」
晶は和樹の顔を覗き込むようにして聞いてくる。
「……また、からかってるんだろ?俺はアキラ『君』だと思ってたんだから、もう騙されない。」
「えー、騙してないよ。勝手に思い込んでただけでしょ?」
確かに勝手に思い込んでいただけではある。それでも、男の子だと思って一緒に遊んでいたのだから仕方ない。
それでも和樹には、一つ年下の男の子を優しく遊んであげていた記憶しかなかった。
「……明日の夕方、帰るんだろ?」
「うん。和樹君は明後日だったよね?」
二人は並んだまま、皆が幸せそうに楽しんでいる様子を眺めていた。時間の流れは変わらないはずだが、田舎の時間の流れは遅く感じてしまう。
こんな時間を過ごすのも悪くないと、和樹は考えていた。
晶が帰る日になったが、和樹は祖父に連れられて監視小屋を訪れている。
宿老とでも言えばいいのだろうか、木の上にある小屋とは思えないほど安定しており快適だった。壁掛けの扇風機もあったが、木に囲まれて日陰になっているので想像以上に涼しく感じる。狭い室内には双眼鏡があり、通信設備も充実していた。
「……すごい、子どもたちが作った秘密基地が一望できる。」
こんなにも見渡せてしまっている時点で『秘密基地』ではなくなってしまっているが、子どもたちには気付かれていなければ問題ない。
帰省する家族の日程は違っているので、秘密基地で遊んでいる子もいれば川で泳いでいる子どももいる。そんな状況に各所で対応するため、高齢者とは思えない素早い動きで移動を繰り返すので、和樹がついていくのもやっとのことだった。
移動する道も、隠れながらになるので道なき道を走り抜けていく。走りながらもトランシーバーで状況確認をして、空いた手には次の遊び道具まで持っている。
――なんだこれ!……思ったよりも全然ハードだ。
最初、和樹は動き回る老人たちを見つけることができず気配だけを感じていたのだが、だんだんと慣れてきていた。どの辺りを移動しているか分かっていれば、何とか見つけることもできる。
あちらこちらで老人たちが走り抜けていく様子は壮絶な物だった。これに加えて夜中も作業しているのだから驚きであった。
――孫にも一緒に帰省してほしいだけで、こんなにも頑張れるんだ。
これまでの人生で培った技術を余すところなく活用して、更に新しい技術を取り込むことも忘れない。そして、体力の限界まで使って帰省した孫たちをフォローし続けていた。
――これはこれで、人生を楽しんでるのかもしれないな……。
もちろん寂しさもあるが、生き生きとしている姿を見ているのは嬉しくもある。シーズンオフには様々なことを勉強したり、練習を繰り返したり、違った意味で忙しくもあるだろう。
慌ただしく時間は過ぎていき、夕方になっていた。晶たちの家族が帰る時間だったので、和樹は祖父に言われて見送りに行った。
「楽しめた?」
「あぁ、それなりにね。……ちゃんとしなきゃ、って思えたよ。」
「今まで、ちゃんとしてなかったの?」
和樹は笑って誤魔化した。『ちゃんと』しているつもりではいたが、自分たちの力だけで大きくなったわけではないことに気付くことも出来た。教えられて、見守られて、今の自分が存在していることを知る機会にはなっていた。
「それじゃぁ、次に会えるとしたら正月かな?」
「お正月も帰省するの?」
「……たぶんね。正月に、ここで何が起こるのかも興味あるし。」
「そうなんだ。……でも、次はお正月じゃないと思うんだ。」
それぞれの予定がある。移動に半日を費やしてしまう場所であれば、出会える機会は僅かでしかないのだろう。
「……連絡先、交換する?」
「いや……。次に会う時までに『名取晶』が女の子だって記憶を書き換えておくから、その時でいいや。」
「それじゃぁ、次に会ったときは、ちゃんと『晶』って名前で呼んでよ。」
「うっ……。」
名前を呼べていなかったことを指摘されてしまい、和樹は恥ずかしくなってしまった。以前は『アキラ』と気軽に名前を呼んでいたのだから、女の子であることを意識していたことは明らかにバレていた。
そうして、晶たちは帰って行った。
この夏、和樹が祖父母と一緒に過ごす最後の夜になった。最初は少しだけ怖いこともあったが、充実した一週間であったと感じている。
まだ数人の子どもたちが残っているので、夜中の作業は継続されており、和樹も同行させてもらうことにした。皆も笑顔で和樹を迎えてくれる。
出来ることは少なかったが、養殖されたカブトムシを林の木々に配置していく。逃げ出さないようにしながら、子どもたちに見つけやすい場所を選ぶ必要もあり意外に難しい。
――こんなことまで研究してるんだ。
こんな時も、他のお爺ちゃんたちが親切に指導してくれている。
――俺も、まだまだ子どもってことだな……。
秘密基地を見守る活動に参加することになっても、和樹も周囲から見守られる存在であることに変わりはなかった。
最終日は昼食を済ませてから帰路に就くことにしていた。帰る時、祖父母の寂しそうな顔を見て、
「正月も遊びに来るよ。……来年の夏休みは受験だけど、こっちに受験勉強しに来てもいいかな?」
嬉しそうな顔で『もちろん、待ってるよ』と返事をしてくれる祖父母を見て、和樹も嬉しくなる。
あの様子を見ている限り元気でいてくれると思えてはいたが、いつまでも変わらずにいられるわけではない。元気に笑い合っていられる時を大切にしなければならないのだろう。
お爺ちゃんとお婆ちゃんの熱い夏は、あと少しで終わりになる。だが、今度は冬の支度が始まって忙しい毎日は続くことになる。
田舎での一週間は退屈で長いと思っていた和樹も満喫してしまっていたのだ。
そして、短かった夏休みは終わり、高校の新学期が始まる。
田舎での一週間とは切り離された生活が繰り返されることになると思っていたが、予想外のことが起きた。
「次に会った時には、『晶』って呼んでくれて、連絡先の交換もしてくれるんですよね?……小泉先輩。」
休み時間に廊下ですれ違った女子は不敵な笑みを浮かべて和樹に声をかけてくる。
「えっ!?……同じ高校だったのか?……もしかして、ずっと知ってたのか?」
「同じ高校に通ってるから、夏休みの計画に私が選ばれたのかもしれませんよ。」
「はぁ?祖父ちゃんたちは、そんなことまで全部知ってるのか?……何を考えて、そんなことを計画してたんだ?」
そして、祖父の部屋と台所に和樹の制服姿の写真が貼ってあったことを和樹は思い出していた。
冷静に考えれば、両親ですら持っていない写真があることは不自然なことだったのだ。
「……まさか、あの写真は……。」
「やっぱり『知らない方が幸せなこと』って、あると思いませんか?……ねぇ?先輩。」
晶は楽しそうに笑っていた。
祖父ちゃん祖母ちゃんが何か計画していることがあったのならば、和樹は踊らされていたのかもしれない。
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