乙女ゲームの攻略対象者から悪役令息堕ちポジの俺は、魂の番と幸せになります

琉海

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28.再会

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「母さま、今日から学園に入学です。
ちょっとドキドキするけど、頑張ってきますね!帰ってきたたーっくさん報告しますからね!セフィは昨日からお仕事で帰ってきてないんですよ。
1人息子の門出だってのに!仕事人間は相変わらずです。まったく、もう若くないんだから無理しちゃダメだっていっつも言ってるのに…だから、早く目を覚まして怒ってあげて下さいね。きっと、母さまの言うことなら聞くから」
「ホントよ~。いっつも加齢臭を漂わせてるのよ?ルチルさま、早く目を覚まして臭い!って怒ってあげて?」

アカネがすげぇ酷いことを言っている。


「……あら?」
「え?」

母さまが「ふっ」と笑った!相変わらず目は閉じたままだけど、確かに笑った!

「アカネ兄さま!」
「くぅちゃん!!」

俺らは手を握り合ってぴょんぴょん跳ねて喜んだ。


「じゃあ、行ってまいります!」

母の近くの窓に摘んできた花を差した花瓶を置いて、声をかけて部屋を出た
妖精の加護付きの花なのだ。症状が良くなるに決まってる!
妖精と触手も含めた使用人達とセバスチャンのお辞儀に見送られて俺とアカネは出発した。
アカネはセフィロスに代わって保護者として。
俺は2回目だし(もちろん内緒だが)別にいらないって言ったんだけど、鼻息荒くついていくって煩いから来てもらった。

「混んできたわねぇ」
「ホントだ」

もうすぐ学園に着くという段階になって混み始めて、馬車が完全に止まってしまった。

「ちょうど重なったとはいえここまで混雑するのは珍しいわ」
「そうなの?」
「えぇ。もしかしたら…要人がいるのかもしれないわね」

アカネのその言葉になぜか背筋に寒いものが走った。


無事に学園に着いて下車をした。
人波と同じ方向に進むんだが…ジロジロと視線がうるさい。

「やっぱり、認識阻害のペンダント付けてくるべきだったかなぁ」
「気になるわよねぇ」
「うん。ここまで注目を浴びると思わなかった」
「珍しいからね…もし嫌なら今からでも魔法かけてあげましょうか?今日一日中くらいなら持つわよ?」
「うぅん、いいや。もうすでに目立っちゃったし、これから何年も通うわけだし」
「そう…」

アカネが少しだけ切なそうに目を細めて微笑んでくれた。

「孔雀!!!!!」

腹に響く胴間声が聞こえてキョロりと周りを見渡すと、非常に悪目立ちするでっかい大男が人垣をかき分けて歩いてきた。

「セフィ!!!きてくれたの?」
「あぁ。すまんな、昨日の夜には戻る予定だったんだが…ちょっと予想外の事が起きてな。
早馬を出して知らせようと思ったんだが、夜も遅かったし直接学園に来て俺から話そうと思ってな」
「な、なに…?なんか悪い知らせ?」
「いや…うーーん、そうだな。今のお前にはあまり良くないかもしれない…第二殿下が飛び級で入学なさるそうだ」
「え゛…」

冷や汗が背中をたらりと垂れた。
なにそのシナリオ。俺しらねぇーーーーよ!!!!


非常に優秀かつ聡明な第二殿下こと、紅玉が俺の同学年として入学されるそうだ。
以前は仲が良かった俺らだがあの夜以来、断絶している。
そう、まるで前世のシナリオと同じように…。
いや、接点がないおかげで直接的な嫌がらせはないからそこは大きく違っているが。

目が覚めて落ち着いてから一度だけ紅玉に手紙を送ったが、手紙はそっくりそのまま突っ返された。
スミレではない侍従が「紅玉さまがもう二度と送ってこないようにと仰せです」と伝言と共に持ってきたのだ。
なぜだと聞いたが慇懃無礼に申し訳ないがと謝るばかりで話してくれない。
ただ、一言「関係を続けるのは非常に迷惑なのです」と。

俺はその日、病み上がりで心が弱っていたようでかなり凹んで泣いてしまった。
流石に家族に拒否されるのは辛い。
ちい兄さまと可愛く甘い声で呼んでくれた紅玉の声が脳裏によぎって切なくなってしまったんだよ。仕方ないじゃん、今生では仲良かったんだ。
すでに立派なブラコンになってしまった俺には堪えたんだ。


ざわりと空気が大きく動いた。
発生源の所へと目をやると、人垣が割れたところから紅玉が馬車から降りてくるのが見えて心臓がドクンと大きく揺れた。

あぁ…大きくなったな。きりりと勇ましく前を見据えて降り立つ紅玉を見て胸がいっぱいになる。
飛び級だから俺らよりも少しだけ幼い顔つきだが、それでも最後に見た紅玉より大人っぽくなっている。

さらに喧騒が大きくなり、あちこちから「琥珀さまだ!」という囁きが聞こえる。

「紅玉、入学おめでとう」
「兄上ありがとうございます」
「期待しているぞ。王族という責務を忘れず、よくよく勉学に励むように」
「はい!!」

激励を受けて目がキラキラと輝いているのがこちらからでも分かる。
あーーほっぺた真っ赤にしちゃって!可愛いなぁ!もう!
紅玉は兄上が大好きだからな。
大人っぽくなったけど、やっぱり可愛い紅玉を親のような心持ちでちょっと感慨深く見ていると「くぅちゃん…」と呆れ気味のアカネに肘で突かれた。
気がつくと泣いていて、鼻水まで垂らしていた。
いかんいかん。今日は俺の入学式でもあるんだったわ。

ふと、紅玉がこちらを見た。

「……!」

刺すような蔑んだ冷たい眼差し。
俺はあの眼差しを知っている。
前回の生で俺は紅玉からあの眼差しで見られていた。
頭が真っ白になる。こちらを見たのはほんの数秒で、すぐに興味を無くしたように立ち去った。

「くぅちゃん…」
「ハハ…分かっていても結構、辛いね」

気がつけば指先は細かく震えていて冷たくなっていた。
俺は…こんなところで立ち止まってはいけない。もう、二度と死ぬつもりはない。
だから、紅玉達とは関わらない。向こうだって関わるつもりもないだろうし。

式へ参加すべく重くなった足を引き摺るように講堂へ向かった。
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