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33.幕間2 そのころ紅玉は
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実はレティシアは兄の婚約者候補だったのだ。
王族を抜けなかったら確実に婚約者とされていた。
その事実を長兄から聞かされた時は血の気が引いた。
2人してほっと胸を撫で下ろしたほどだ。
何故なら、レティシアと結婚した暁には次兄は隣国へ婿入りしてしまうからだ。
表向きはレティシアが嫁入りとされているが、母である王妃が婿入りさせることは必須である。
兄も立派なブラコンである。
あまり孔雀とリアルに接することが出来ない代わりに実は兄の影をつけられている。
本来なら長兄の護衛が影の役割なため、最初は影達は難色を示した。
だから専属は決めず、シフトを組んで渋々やっていたはずなのだが…気付いたら今や当番は取り合いである。
当番決めの本気の勝負をするおかげで影の実力がメキメキと上がっていくという嬉しい誤算。
さすが紅玉の宝である。深く関わった全ての人を魅了してしまう。
なぜかと影達に問えば、敢えて姿を現してそうとは知られずに兄に接触をしているらしいのだが、兄の魔術の実力の高さに敬服し、また飾らない人柄に魅了されたらしいのだ。
「美人が今日もお仕事お疲れ様、とニコッと微笑んでくれるだけで疲れが吹っ飛ぶ」
とか言っていて、そうだろうそうだろうと自慢に思いつつもその笑顔と魔術鍛錬姿を見ることが出来ない悔しさに思わず顔面にファイアーボールを放ってしまったが、軽く避けられてしまった。
さすが長兄の影である。
『紅玉様…』
「スミレ?いいよー」
音もなく軽やかに着地をするスミレの左腕の裾がはためいた。
「どうだったー?」
『ハッ、本日は特に動きもなく』
「そっかー。まぁ、そんな頻繁に何かしら動くもんでもないかー」
『……』
顔のほとんどを仮面で覆ったスミレに、紅玉が幼少期の頃の朗らかな雰囲気はない。
目元を下に落としたままのスミレを見て紅玉はニヤリと口元を歪めた。
「ちぃ兄さまのこと、気になるでしょ」
『…!』
何も言わないが、肩が跳ねているのでバレバレである。
「相変わらず美しくてねー、優しくてー、僕のこと大好きってのがダダ漏れでねー!」
くふふと笑う。
「聞いていたとおり、髪の毛の色は抜け落ちて瞳も片方色が変わっていたけど、ちぃ兄さまの美しさは何一つ損なわれていなかったよ!
さすがはちぃ兄さまだよね!あとね!兄上の祝辞も素晴らしかったんだよー!光魔法をあんな風に美しく扱えるなんてさすがだよね!益々、尊敬したよ!あ!そうそう!師匠もいたよ!相変わらずちぃ兄さまへの愛が暑苦しかったよー」
スミレの雰囲気がほぐれて、楽しそうな気配が伝わってくる。
「いつか…きっと、ちぃ兄さまと師匠達に会わせてあげる。そして、スミレの声も取り戻してあげる。その為に、僕は学園でもっともっと学ばなければ…」
ぎゅうっと固く握った拳を、スミレの右手が優しく包み込んだ。
まだまだ片手の手のひらに収まるほどの小さな体で、魔力量も技量も同年代の子供に比べてどちらも優秀な領域ではあるが、子供の領域でしかない。
心は急くが、焦っても仕方がないのだ。
怒りと焦りで昂って震える体を深く息を吐いて鎮める。
「スミレは僕の家族だ。宝だ。僕のものを傷つけた報いは必ず受けさせる。それがたとえ、親殺しになったとしてもだ」
スミレの手が宥めるように紅玉の手を撫でる。
王族を抜けなかったら確実に婚約者とされていた。
その事実を長兄から聞かされた時は血の気が引いた。
2人してほっと胸を撫で下ろしたほどだ。
何故なら、レティシアと結婚した暁には次兄は隣国へ婿入りしてしまうからだ。
表向きはレティシアが嫁入りとされているが、母である王妃が婿入りさせることは必須である。
兄も立派なブラコンである。
あまり孔雀とリアルに接することが出来ない代わりに実は兄の影をつけられている。
本来なら長兄の護衛が影の役割なため、最初は影達は難色を示した。
だから専属は決めず、シフトを組んで渋々やっていたはずなのだが…気付いたら今や当番は取り合いである。
当番決めの本気の勝負をするおかげで影の実力がメキメキと上がっていくという嬉しい誤算。
さすが紅玉の宝である。深く関わった全ての人を魅了してしまう。
なぜかと影達に問えば、敢えて姿を現してそうとは知られずに兄に接触をしているらしいのだが、兄の魔術の実力の高さに敬服し、また飾らない人柄に魅了されたらしいのだ。
「美人が今日もお仕事お疲れ様、とニコッと微笑んでくれるだけで疲れが吹っ飛ぶ」
とか言っていて、そうだろうそうだろうと自慢に思いつつもその笑顔と魔術鍛錬姿を見ることが出来ない悔しさに思わず顔面にファイアーボールを放ってしまったが、軽く避けられてしまった。
さすが長兄の影である。
『紅玉様…』
「スミレ?いいよー」
音もなく軽やかに着地をするスミレの左腕の裾がはためいた。
「どうだったー?」
『ハッ、本日は特に動きもなく』
「そっかー。まぁ、そんな頻繁に何かしら動くもんでもないかー」
『……』
顔のほとんどを仮面で覆ったスミレに、紅玉が幼少期の頃の朗らかな雰囲気はない。
目元を下に落としたままのスミレを見て紅玉はニヤリと口元を歪めた。
「ちぃ兄さまのこと、気になるでしょ」
『…!』
何も言わないが、肩が跳ねているのでバレバレである。
「相変わらず美しくてねー、優しくてー、僕のこと大好きってのがダダ漏れでねー!」
くふふと笑う。
「聞いていたとおり、髪の毛の色は抜け落ちて瞳も片方色が変わっていたけど、ちぃ兄さまの美しさは何一つ損なわれていなかったよ!
さすがはちぃ兄さまだよね!あとね!兄上の祝辞も素晴らしかったんだよー!光魔法をあんな風に美しく扱えるなんてさすがだよね!益々、尊敬したよ!あ!そうそう!師匠もいたよ!相変わらずちぃ兄さまへの愛が暑苦しかったよー」
スミレの雰囲気がほぐれて、楽しそうな気配が伝わってくる。
「いつか…きっと、ちぃ兄さまと師匠達に会わせてあげる。そして、スミレの声も取り戻してあげる。その為に、僕は学園でもっともっと学ばなければ…」
ぎゅうっと固く握った拳を、スミレの右手が優しく包み込んだ。
まだまだ片手の手のひらに収まるほどの小さな体で、魔力量も技量も同年代の子供に比べてどちらも優秀な領域ではあるが、子供の領域でしかない。
心は急くが、焦っても仕方がないのだ。
怒りと焦りで昂って震える体を深く息を吐いて鎮める。
「スミレは僕の家族だ。宝だ。僕のものを傷つけた報いは必ず受けさせる。それがたとえ、親殺しになったとしてもだ」
スミレの手が宥めるように紅玉の手を撫でる。
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