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第一章 始まり
10話 部下による後始末
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別視点になります。
※※※※※※※※※※
地面に倒れ込む前に、シアリィルドを受け止める。その身体は酷く熱かった。
「隊長っ!」
呼び掛けても動きはない。完全に意識を手放したようだ。この状態はまずい。
「おい、エルゼフィド!」
「わかってるっ!やはり毒が回ってるんだ。早く解毒しないとヤバいっ」
シアリィルドの膝裏に手を回し、エルゼフィド・フォン・カルフィーは抱えるように抱き上げた。指揮官であるシアリィルドがこの状態であるならば、代わりに指示をしなければならない。
「馬車は警護隊に引き渡して、我々は戻る。怪我人の治療が先だ」
「カルフィー卿、隊長はっ!?」
「私が連れていく。これ以上動かすのはまずい。急ぐぞっ」
馬車を引く馬は負傷していて、動かすことは出来ない。力自慢の連中が馬車を引く。せっかく助けたというのだ。ここでまた襲われてはたまらない。何よりも、シアリィルドがその身を挺して救ったのだから。
気持ち速めに、出来るだけシアリィルドを揺らさないように気を付けながらエルゼフィドは門を目指した。
門の前には警護隊長を初めとする隊員らが控えている。門の前を守っていたのだろう。エルゼフィドに抱えられたシアリィルドを見ると、インギスは目を見開いた。
「おい、公子殿はどうした?」
「……少女を庇ってレッドウルフに噛まれました。説明をしている時間はないので、後はお願いします」
「そう、か……わかった。任せろ」
「では」
状況は理解できたのだろう。目配せをして隊員たちに道を開けさせた。その道を通り抜ければ、後は屋敷まで向かうだけだ。来たときよりも遠く感じる道のりを、エルゼフィドは走る。
屋敷に着けば、護衛として残ったルドルフとケイオスが待っていた。エルゼフィドの姿に安堵するとともに、腕に抱えられているシアリィルドを見て絶句する。
「はぁはぁ、ケイ、オス殿、はぁはぁ」
休まず走ってきたため、息が上がり話すのもままならない。だが、それでも伝えなければならないことだ。
「たい、ちょうを……はぁはぁ、レッドウルフに」
「レッドウルフですかっ! 何故ここに……いえ、それは後ですね。わかりました。直ぐに部屋へ。ルドルフ代われますか?」
「はっ」
エルゼフィドは限界だった。シアリィルドはその年齢にしては軽い方だ。だが、いかに軽いとはいえ、人を一人抱えて走ることは、簡単ではない。ルドルフへとシアリィルドを渡せば、エルゼフィドはその場に座りこんでしまった。暫くは立ち上がれそうにない。
「お願い、します……はぁはぁ」
「わかっています。さぁ、行きますよ」
そのままケイオスは屋敷内へと小走りで入っていった。
ケイオスはシアリィルドの部屋に向かいながら、指示を飛ばしていた。
部屋に入りベッドへと横たわらせると、まずは着衣を脱がせる。血で固まっているシャツは簡単には脱がすことは出来ないため、ナイフで切った。
「ひっ、お、お湯とタオルをお持ちしました」
「そこにおいてください。あと包帯と、消毒液を」
「はいっ」
侍女はお湯を持ってきたが、シアリィルドの状態を見て息をのんでいた。あまり女性が見るものではないだろう。特に耐性がないものには、辛く映るはずだ。慌てて逃げるように部屋を出ていった。
「ケイオス様」
「手当ては私がやります。ルドルフ、貴方は戻ってくる者たちを迎えて休ませてあげてください。部屋には誰も入れないように」
「……わ、かりました」
本来ならば、副隊長であるケイオスがやることではない。ルドルフもそう伝えたかったのだろう。だが、ケイオスの雰囲気に気圧されたのかルドルフは口をつぐんだ。そのままルドルフが出ていく。
「多少手荒になりますよ、隊長」
返ってくる言葉はない。完全に意識は落ちているようだ。
左腕の血を洗い、ケイオスは牙の痕が残っている箇所へと口を当てて吸い付いた。毒を吸い込むためだ。
「ゴホッ……ゴホッ」
深く傷がついているため、恐らくはもう毒は回り始めている。ケイオスがしていることは、最低限の対処でしかない。治癒や解毒の魔法が使えればいいのだが、使い手は王国軍にはほとんどいない。それらは聖属性を持つ魔法師のみが行使出来るとされており、かなり貴重な使い手であるため師団に配属されることはないのだ。今は、その事実が惜しくてならない。
シアリィルドは公爵子息。城に戻れば治癒を受けることも出来る。しかしそれは、あくまで戻ればの話だ。
「ゴホッ」
何度も繰り返し、ケイオスは血だらけになった口元を綺麗なタオルで拭った。
「後は……」
チラリとシアリィルドの顔色を伺う。熱を持っているためか、苦しげに眉を寄せていた。毒を異物として排除しようと身体が耐えているのだろう。このまま耐えることが出来ればいいのだが、どうなるかはまだわからない。城に戻るまで繋いでくれれば、最悪は免れる。
汚れた腕をお湯で洗い流す。持ってきてくれたお湯は、直ぐに血で真っ赤に染まった。
コンコン。
「あの、包帯と消毒液をお持ちしました」
「入ってください」
「失礼します」
入ってきた侍女の目に傷口が見えないように、ケイオスはタオルで隠す。包帯と消毒液を置けば、侍女はまたも慌てて出ていった。本来ならば、咎められることだが、ケイオスにそんな余裕はない。
「これで、止血出来ればいいですが……」
大量のガーゼも持ってきたようで、ケイオスはそれらに消毒液を浸し傷口を覆う。更に上から乾いているガーゼを巻き、その上から包帯を巻き付けた。
傷口の上の方にも、止血のためきつく包帯で縛る。これで終わりだ。
「一先ずこれくらいです、か……隊長、どうか持ちこたえてください。でなければ、私はマナフィールに申し訳がないです」
祈るように、ケイオスはシアリィルドの手を取って握りしめた。
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地面に倒れ込む前に、シアリィルドを受け止める。その身体は酷く熱かった。
「隊長っ!」
呼び掛けても動きはない。完全に意識を手放したようだ。この状態はまずい。
「おい、エルゼフィド!」
「わかってるっ!やはり毒が回ってるんだ。早く解毒しないとヤバいっ」
シアリィルドの膝裏に手を回し、エルゼフィド・フォン・カルフィーは抱えるように抱き上げた。指揮官であるシアリィルドがこの状態であるならば、代わりに指示をしなければならない。
「馬車は警護隊に引き渡して、我々は戻る。怪我人の治療が先だ」
「カルフィー卿、隊長はっ!?」
「私が連れていく。これ以上動かすのはまずい。急ぐぞっ」
馬車を引く馬は負傷していて、動かすことは出来ない。力自慢の連中が馬車を引く。せっかく助けたというのだ。ここでまた襲われてはたまらない。何よりも、シアリィルドがその身を挺して救ったのだから。
気持ち速めに、出来るだけシアリィルドを揺らさないように気を付けながらエルゼフィドは門を目指した。
門の前には警護隊長を初めとする隊員らが控えている。門の前を守っていたのだろう。エルゼフィドに抱えられたシアリィルドを見ると、インギスは目を見開いた。
「おい、公子殿はどうした?」
「……少女を庇ってレッドウルフに噛まれました。説明をしている時間はないので、後はお願いします」
「そう、か……わかった。任せろ」
「では」
状況は理解できたのだろう。目配せをして隊員たちに道を開けさせた。その道を通り抜ければ、後は屋敷まで向かうだけだ。来たときよりも遠く感じる道のりを、エルゼフィドは走る。
屋敷に着けば、護衛として残ったルドルフとケイオスが待っていた。エルゼフィドの姿に安堵するとともに、腕に抱えられているシアリィルドを見て絶句する。
「はぁはぁ、ケイ、オス殿、はぁはぁ」
休まず走ってきたため、息が上がり話すのもままならない。だが、それでも伝えなければならないことだ。
「たい、ちょうを……はぁはぁ、レッドウルフに」
「レッドウルフですかっ! 何故ここに……いえ、それは後ですね。わかりました。直ぐに部屋へ。ルドルフ代われますか?」
「はっ」
エルゼフィドは限界だった。シアリィルドはその年齢にしては軽い方だ。だが、いかに軽いとはいえ、人を一人抱えて走ることは、簡単ではない。ルドルフへとシアリィルドを渡せば、エルゼフィドはその場に座りこんでしまった。暫くは立ち上がれそうにない。
「お願い、します……はぁはぁ」
「わかっています。さぁ、行きますよ」
そのままケイオスは屋敷内へと小走りで入っていった。
ケイオスはシアリィルドの部屋に向かいながら、指示を飛ばしていた。
部屋に入りベッドへと横たわらせると、まずは着衣を脱がせる。血で固まっているシャツは簡単には脱がすことは出来ないため、ナイフで切った。
「ひっ、お、お湯とタオルをお持ちしました」
「そこにおいてください。あと包帯と、消毒液を」
「はいっ」
侍女はお湯を持ってきたが、シアリィルドの状態を見て息をのんでいた。あまり女性が見るものではないだろう。特に耐性がないものには、辛く映るはずだ。慌てて逃げるように部屋を出ていった。
「ケイオス様」
「手当ては私がやります。ルドルフ、貴方は戻ってくる者たちを迎えて休ませてあげてください。部屋には誰も入れないように」
「……わ、かりました」
本来ならば、副隊長であるケイオスがやることではない。ルドルフもそう伝えたかったのだろう。だが、ケイオスの雰囲気に気圧されたのかルドルフは口をつぐんだ。そのままルドルフが出ていく。
「多少手荒になりますよ、隊長」
返ってくる言葉はない。完全に意識は落ちているようだ。
左腕の血を洗い、ケイオスは牙の痕が残っている箇所へと口を当てて吸い付いた。毒を吸い込むためだ。
「ゴホッ……ゴホッ」
深く傷がついているため、恐らくはもう毒は回り始めている。ケイオスがしていることは、最低限の対処でしかない。治癒や解毒の魔法が使えればいいのだが、使い手は王国軍にはほとんどいない。それらは聖属性を持つ魔法師のみが行使出来るとされており、かなり貴重な使い手であるため師団に配属されることはないのだ。今は、その事実が惜しくてならない。
シアリィルドは公爵子息。城に戻れば治癒を受けることも出来る。しかしそれは、あくまで戻ればの話だ。
「ゴホッ」
何度も繰り返し、ケイオスは血だらけになった口元を綺麗なタオルで拭った。
「後は……」
チラリとシアリィルドの顔色を伺う。熱を持っているためか、苦しげに眉を寄せていた。毒を異物として排除しようと身体が耐えているのだろう。このまま耐えることが出来ればいいのだが、どうなるかはまだわからない。城に戻るまで繋いでくれれば、最悪は免れる。
汚れた腕をお湯で洗い流す。持ってきてくれたお湯は、直ぐに血で真っ赤に染まった。
コンコン。
「あの、包帯と消毒液をお持ちしました」
「入ってください」
「失礼します」
入ってきた侍女の目に傷口が見えないように、ケイオスはタオルで隠す。包帯と消毒液を置けば、侍女はまたも慌てて出ていった。本来ならば、咎められることだが、ケイオスにそんな余裕はない。
「これで、止血出来ればいいですが……」
大量のガーゼも持ってきたようで、ケイオスはそれらに消毒液を浸し傷口を覆う。更に上から乾いているガーゼを巻き、その上から包帯を巻き付けた。
傷口の上の方にも、止血のためきつく包帯で縛る。これで終わりだ。
「一先ずこれくらいです、か……隊長、どうか持ちこたえてください。でなければ、私はマナフィールに申し訳がないです」
祈るように、ケイオスはシアリィルドの手を取って握りしめた。
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