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第一章 始まり
9話 異変の終息
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門の外に出ると、舗装された街道より大きく外れたところに黒い塊のようなものが見えた。否、あれは塊ではなく集団だ。良く見れば白い、馬車のようなものもある。
「隊長っあそこに人がっ!」
部下が声を張り上げる。指し示された場所は、門からは距離がある。数人が倒れているのが、辛うじて確認できた。馬車だろうところから、追い出されたのか逃げ出したのだろう。とはいえ、黒い塊、恐らくは魔物が迫ってきているのが見えていた。
「隊長っここからでは間に合いませんっ!」
この距離。到着する頃には手遅れだ。だが、目の前で行われる行為を黙ってみていることは出来ない。
「先に行く」
「えっ、隊長?」
「……集え」
「ま、魔法!たいーー」
「加速」
刹那、シアリィルドの周囲に大風が吹き荒れた。その風に乗り高速移動する。風属性の中位魔法だ。一瞬に近い感覚で、移動できる。だが、魔物は既にその牙と爪で襲いかかろうとしているところだ。
(間に合うか……っ)
心の中で舌打ちをしながら、シアリィルドは魔物と人の間に入り込む。右手で剣を目の前に構え、その牙を受ける。だが、振り下ろされる爪を防ぐことは出来ない。後ろには頭を抱えながらも無防備な状態の少女がいる。迷っている暇はなかった。
空いている左腕を突き出し、魔物の爪を受ける。
「いゃぁぁぁ!」
「っ……風斬刃」
爪が腕に食い込む痛みに耐えながら、シアリィルドは魔法を唱える。無数の風の刃が魔物を斬りつけた。傷つけられたことに怯んだ魔物が距離を取ると、すかさず剣で一刀する。
「グシャァァ……」
「……レッドウルフ、か」
魔物は紫の霧となって姿を消す。痕が残らない。これは、魔族である証だ。遠目からはわからなかったが、赤い目に青い体躯の獣だった。赤目は魔族の特徴の一つ。なぜ、このような場所にいるのかは気になるが、まずはこの状況を打開するのが先だ。
「隊長っ!」
「来たか……」
「たいちょ、!?その腕、は、早く止血を」
「後でいい。あれらを殲滅する。行くぞ」
「え、あ、はいっ」
滴り落ちる血を見て顔色を青くしている部下を叱咤しながら、シアリィルドは残りのレッドウルフを片付けるため馬車の方へと向かった。
人と馬車がいるため、魔法での攻撃は使えない。襲ってきているのは、全てレッドウルフだ。この辺りには生息しない魔物である。
「はぁっ!」
「ギャシャア……」
最後の一匹を倒し終えた。全部で20匹近くはいただろう。群れと言っていいのかもしれない。
「隊長、一先ず馬車に彼らを乗せようと思いますが」
「あぁ、構わない。状況は?」
「怪我人は多いようです。ですが、森の中にも人がいると……どう、しますか?」
森の中を突っ切ったと言うことなのだろう。無謀と言うか考えなしというか、普通ならば考えられない行動だ。馬車に乗る人を見れば、多くが年端もいかない少年少女。
「奴隷商人、か」
「そのようです」
「……残念だが、俺たちがするのは脅威の排除だ。森の中までは出来ない」
「……は、い」
シアリィルドらがここにいるのは、ジークランスの護衛だ。脅威が去った以上、森の中まで探索するのは、元の護衛任務を離れすぎている。突き放すようだが、優先するべきはジークランスであって彼らではない。わかっていても、捨てきれないのだろうが、ここで出来ることはもうないのだ。
「第四に任せるしかない。戻り次第伝える」
「はいっ」
代わりにそう伝えれば、部下は明るく答える。任務とはいえ、見捨てるようで嫌だったのだろう。その気持ちはシアリィルドにも良くわかる。
「それより、隊長は止血をしなければ」
「……あぁ、そうだな」
戦闘に集中していたので、気にならなかった。改めて見てみれば、かなり深く抉られている。袖口は破れているので、捲れば血だらけだ。その様子に、シアリィルドはため息をつく。
「まずい、か」
「隊長、早く洗わねばっ!レッドウルフに噛まれたとなれば、毒があるかもしれません!何を悠長にしているのですかっ!」
「そう、だな……」
頭ではわかっている。だが、シアリィルドはそれが恐らく手遅れだということを認識していた。負傷してからも絶えず動き回っていたのだ。それが意味するところを理解できない訳がない。
「隊長っ!」
徐々に部下達が集まってくる。呼ばれていることはわかっているが、それに応えられるほどの気力はなかった。だが、確認はしておかなければならない。
「他に、噛まれたのは、いるか?」
「そんなことっ!」
「かすり傷程度です!直ぐに対処します」
「そう、か……」
ならば問題はないだろう。それかわかったからか、シアリィルドは気力が尽きるのを感じた。駄目だと思ったときには、力がぬけ倒れる。地面につく前に部下に支えられるが、シアリィルドはそのまま意識を手放した。
「隊長っあそこに人がっ!」
部下が声を張り上げる。指し示された場所は、門からは距離がある。数人が倒れているのが、辛うじて確認できた。馬車だろうところから、追い出されたのか逃げ出したのだろう。とはいえ、黒い塊、恐らくは魔物が迫ってきているのが見えていた。
「隊長っここからでは間に合いませんっ!」
この距離。到着する頃には手遅れだ。だが、目の前で行われる行為を黙ってみていることは出来ない。
「先に行く」
「えっ、隊長?」
「……集え」
「ま、魔法!たいーー」
「加速」
刹那、シアリィルドの周囲に大風が吹き荒れた。その風に乗り高速移動する。風属性の中位魔法だ。一瞬に近い感覚で、移動できる。だが、魔物は既にその牙と爪で襲いかかろうとしているところだ。
(間に合うか……っ)
心の中で舌打ちをしながら、シアリィルドは魔物と人の間に入り込む。右手で剣を目の前に構え、その牙を受ける。だが、振り下ろされる爪を防ぐことは出来ない。後ろには頭を抱えながらも無防備な状態の少女がいる。迷っている暇はなかった。
空いている左腕を突き出し、魔物の爪を受ける。
「いゃぁぁぁ!」
「っ……風斬刃」
爪が腕に食い込む痛みに耐えながら、シアリィルドは魔法を唱える。無数の風の刃が魔物を斬りつけた。傷つけられたことに怯んだ魔物が距離を取ると、すかさず剣で一刀する。
「グシャァァ……」
「……レッドウルフ、か」
魔物は紫の霧となって姿を消す。痕が残らない。これは、魔族である証だ。遠目からはわからなかったが、赤い目に青い体躯の獣だった。赤目は魔族の特徴の一つ。なぜ、このような場所にいるのかは気になるが、まずはこの状況を打開するのが先だ。
「隊長っ!」
「来たか……」
「たいちょ、!?その腕、は、早く止血を」
「後でいい。あれらを殲滅する。行くぞ」
「え、あ、はいっ」
滴り落ちる血を見て顔色を青くしている部下を叱咤しながら、シアリィルドは残りのレッドウルフを片付けるため馬車の方へと向かった。
人と馬車がいるため、魔法での攻撃は使えない。襲ってきているのは、全てレッドウルフだ。この辺りには生息しない魔物である。
「はぁっ!」
「ギャシャア……」
最後の一匹を倒し終えた。全部で20匹近くはいただろう。群れと言っていいのかもしれない。
「隊長、一先ず馬車に彼らを乗せようと思いますが」
「あぁ、構わない。状況は?」
「怪我人は多いようです。ですが、森の中にも人がいると……どう、しますか?」
森の中を突っ切ったと言うことなのだろう。無謀と言うか考えなしというか、普通ならば考えられない行動だ。馬車に乗る人を見れば、多くが年端もいかない少年少女。
「奴隷商人、か」
「そのようです」
「……残念だが、俺たちがするのは脅威の排除だ。森の中までは出来ない」
「……は、い」
シアリィルドらがここにいるのは、ジークランスの護衛だ。脅威が去った以上、森の中まで探索するのは、元の護衛任務を離れすぎている。突き放すようだが、優先するべきはジークランスであって彼らではない。わかっていても、捨てきれないのだろうが、ここで出来ることはもうないのだ。
「第四に任せるしかない。戻り次第伝える」
「はいっ」
代わりにそう伝えれば、部下は明るく答える。任務とはいえ、見捨てるようで嫌だったのだろう。その気持ちはシアリィルドにも良くわかる。
「それより、隊長は止血をしなければ」
「……あぁ、そうだな」
戦闘に集中していたので、気にならなかった。改めて見てみれば、かなり深く抉られている。袖口は破れているので、捲れば血だらけだ。その様子に、シアリィルドはため息をつく。
「まずい、か」
「隊長、早く洗わねばっ!レッドウルフに噛まれたとなれば、毒があるかもしれません!何を悠長にしているのですかっ!」
「そう、だな……」
頭ではわかっている。だが、シアリィルドはそれが恐らく手遅れだということを認識していた。負傷してからも絶えず動き回っていたのだ。それが意味するところを理解できない訳がない。
「隊長っ!」
徐々に部下達が集まってくる。呼ばれていることはわかっているが、それに応えられるほどの気力はなかった。だが、確認はしておかなければならない。
「他に、噛まれたのは、いるか?」
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「そう、か……」
ならば問題はないだろう。それかわかったからか、シアリィルドは気力が尽きるのを感じた。駄目だと思ったときには、力がぬけ倒れる。地面につく前に部下に支えられるが、シアリィルドはそのまま意識を手放した。
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