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他人の持ち物
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酒井の容態は良くなる気配がない。
僧侶が魔法による介抱を続けているが意識は未だ戻っていなかった。
「サトシ、これはお前が使え」
勇者が酒井の装備を俺に渡す。
装備と言ってもスマホ、イヤホン、手回し式充電器、ライター、あとは衣類だ。
衣類に関しては体格も違うし趣味も違う。それに他人の未洗濯の服は着る気がしない。
スマホを手に取り画面を起動する。文明的な機器を触るのは久々な気がした。
俺はいつもの癖でブラウザから会社のメールボックスにアクセスした。
メールボックスに接続できた。案の定、クライアントからのメールが大量に届いていた。
メールのやり取りを見ると、俺がいない間は部長がフォローに当たってくれているようだった。
一通のメールが目にとまる。部長からのメールだ。
『【業務外】片山君の容態について』
メールを開く。
~~
プロジェクトメンバー各位
お疲れ様です。
片山君の容態について、
本日片山君のお父様から連絡がありました。
本日時点で意識は未だ回復せず、
予断を許さない状況とのことです。
プロジェクトの状況は苦しいですがメンバー一丸となって頑張りましょう。
以上
~~
俺の事だ。意識不明とはどういう事だろうか。
俺はここにいて、痛みも感じるし意識もはっきりとしている。
メールの文面に嘘がないなら俺はもとの世界とこちらの世界に同時に存在しているのか。
あるいは、これは意識を失った俺が見ている夢なのか。
可能性を整理しよう。すべて現実だと過程した場合、
1、俺は一人しかいない。これは意識を失った俺が見ている夢だ。
2、俺は二人いる。意識を失った俺とここにいる俺は別人だ。
いずれにしても、もとの世界に戻る方法はわからないが、考えることが出来るだけでも不安は軽減する。
何がわからないのかわからない事が不安を生むからだ。
「ヴィィィィン」
スマホがバイブした。酒井宛てにメールが来たようだ。
メールアプリを起動して内容を確認する。
~~
どうして電話に出ない?
シフトが狂って迷惑してます。
連絡ください。
~~
酒井の職場からの連絡だろうか。同じ人物から何度もメールを受けているようだ。
この様子だと相手は相当怒っている。俺ならこんな状況なら切り捨てるけどな。
「ちょっと待てよ......もしかしたら......」
俺はネットである言葉を検索した。......やはりそうか。
これなら俺と酒井がいくら飯を食べても空腹状態だったことにも納得がいく。
酒井は恐らく『飢餓』状態にある。
成人が水無しで意識を保てる日数は長くて大体5-6日、しかし酒井はこの数日間の間に激しい運動と強いストレス、強い興奮の中にあったからその目安より生きられる時間は短いはずだ。
これは意識を失った俺たちが見ている夢なんだ。
本当の俺たちはもとの世界で意識を失った状態で倒れている。
俺の場合は職場で倒れたから医療機関で延命されているが、酒井は部屋にいたと言っていたな......。
うまくいくかはわからないが、酒井の職場の人間に助けを求めてみよう。
もしかしたら助かるかもしれない。
~~
酒井です。体調を崩して動けない状況です。
助けてください。
~~
これで助けてもらえればよいが。
直後、電話が来た。
「酒井大丈夫か?お前具合悪いのか?」
中年男性の声がした。
どうしよう、この状況をどのように説明したら良いのだろうか?
メールなら成りすませるが、電話となると無理だ。俺は焦って電話を切った。
その晩、酒井は意識を取り戻すことなく死んだ。
僧侶が魔法による介抱を続けているが意識は未だ戻っていなかった。
「サトシ、これはお前が使え」
勇者が酒井の装備を俺に渡す。
装備と言ってもスマホ、イヤホン、手回し式充電器、ライター、あとは衣類だ。
衣類に関しては体格も違うし趣味も違う。それに他人の未洗濯の服は着る気がしない。
スマホを手に取り画面を起動する。文明的な機器を触るのは久々な気がした。
俺はいつもの癖でブラウザから会社のメールボックスにアクセスした。
メールボックスに接続できた。案の定、クライアントからのメールが大量に届いていた。
メールのやり取りを見ると、俺がいない間は部長がフォローに当たってくれているようだった。
一通のメールが目にとまる。部長からのメールだ。
『【業務外】片山君の容態について』
メールを開く。
~~
プロジェクトメンバー各位
お疲れ様です。
片山君の容態について、
本日片山君のお父様から連絡がありました。
本日時点で意識は未だ回復せず、
予断を許さない状況とのことです。
プロジェクトの状況は苦しいですがメンバー一丸となって頑張りましょう。
以上
~~
俺の事だ。意識不明とはどういう事だろうか。
俺はここにいて、痛みも感じるし意識もはっきりとしている。
メールの文面に嘘がないなら俺はもとの世界とこちらの世界に同時に存在しているのか。
あるいは、これは意識を失った俺が見ている夢なのか。
可能性を整理しよう。すべて現実だと過程した場合、
1、俺は一人しかいない。これは意識を失った俺が見ている夢だ。
2、俺は二人いる。意識を失った俺とここにいる俺は別人だ。
いずれにしても、もとの世界に戻る方法はわからないが、考えることが出来るだけでも不安は軽減する。
何がわからないのかわからない事が不安を生むからだ。
「ヴィィィィン」
スマホがバイブした。酒井宛てにメールが来たようだ。
メールアプリを起動して内容を確認する。
~~
どうして電話に出ない?
シフトが狂って迷惑してます。
連絡ください。
~~
酒井の職場からの連絡だろうか。同じ人物から何度もメールを受けているようだ。
この様子だと相手は相当怒っている。俺ならこんな状況なら切り捨てるけどな。
「ちょっと待てよ......もしかしたら......」
俺はネットである言葉を検索した。......やはりそうか。
これなら俺と酒井がいくら飯を食べても空腹状態だったことにも納得がいく。
酒井は恐らく『飢餓』状態にある。
成人が水無しで意識を保てる日数は長くて大体5-6日、しかし酒井はこの数日間の間に激しい運動と強いストレス、強い興奮の中にあったからその目安より生きられる時間は短いはずだ。
これは意識を失った俺たちが見ている夢なんだ。
本当の俺たちはもとの世界で意識を失った状態で倒れている。
俺の場合は職場で倒れたから医療機関で延命されているが、酒井は部屋にいたと言っていたな......。
うまくいくかはわからないが、酒井の職場の人間に助けを求めてみよう。
もしかしたら助かるかもしれない。
~~
酒井です。体調を崩して動けない状況です。
助けてください。
~~
これで助けてもらえればよいが。
直後、電話が来た。
「酒井大丈夫か?お前具合悪いのか?」
中年男性の声がした。
どうしよう、この状況をどのように説明したら良いのだろうか?
メールなら成りすませるが、電話となると無理だ。俺は焦って電話を切った。
その晩、酒井は意識を取り戻すことなく死んだ。
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