ネット民、異世界を行く

灰猫ベル

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夜戦 (性的な意味ではない)

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 闇の中で激しく刃のぶつかる音が聞こえる。べリアルと敵が斬り合っているのだ。

 味方の魔導士が援護のために光の玉を打ち上げた。刃まで黒く塗られた二本の大鎌を構えた長身の男の姿が浮かぶ。

「我が名は大鎌のマァル。赤い月の四天王、特級エキスパートよ」
 敵が名乗りをあげる。

「わざわざ名乗りご苦労さん。俺はべリアル。魔界の王だ」

「この様なところで魔王と出くわすとはな。せっかくだ、楽しませてもらうぞ」

 マァルは大鎌でべリアルの首を狙う。べリアルはそれを寸前でかわしつつ印を切る。
闇火炎魔法ダークインフェルノ食らいやがれ!」
 べリアルの前方空間から青い炎が敵に向かって吹き出すが、マァルはそれを高くジャンプして避けた。そして空中で大鎌を高速回転させヘリコプターのように滞空する。

「落としてやるァ! 対空砲撃魔法パトリオットっ!」
 無数の黒い光が上空に放たれるが、簡単に避けられてしまった。

「こんなおもちゃじゃ足りねぇってか! 魔翼展開デビルウイング!」
 べリアルは翼を広げると空に飛び上がり、敵に斬りかかる。マァルは大鎌の回転を車輪のように縦にして応戦する。

 二人は落下しながらも空中で斬り合う。接地した瞬間を狙い大鎌が魔王の足元を襲う。べリアルの両足首が切断される。

「くそがぁっ!」

「もらったぁ!!!」

 大鎌がべリアルの脳天に直撃し、縦に両断する。

「フンっ、五将軍とはこんなものか。フハハハハハ!」

 マァルが高笑いをあげる。

「手前ぇ、やるじゃねぇかよ...」

「ほぉ、その状態でも喋れるとはな」

「喋るだけじゃねぇぜ!」
 べリアルの体が煙のように散る。無数の黒い粒だ。その粒がマァルを包む。

「これはっ!?」

「魔王を舐めるなよ小僧!」
 黒い点は一つ一つが小さなべリアルの形をしている。大量のべリアルがマァルを斬りつける。敵は全身から血を吹き出した。

「むぅっ、流石は魔王、面妖な術を使うわ」

「覚悟しやがれマァル!」
 黒い点が集合し再びべリアルの姿となる。

「フフフ、我の仕事はこれで終わりだ、魔王よまた殺し合いをしようぞ」
 マァルは不敵に笑うと暗闇のなかに姿を消した。


 朝になった。
 低地にいたはずの敵軍は姿を消していた。マァルの部隊は進軍を隠すための陽動だったのだ。物陰から敵を各個撃破する作戦だったが、逆にこちらが狙われる立場となった。
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