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またもや追放

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『カインよ、アベルはどこにいるのか』

「神よ、アベルがどこにいるのか私は知りません。
 私は彼の守り人なのでしょうか」

『それでは汝の足元に広がっている血の池は何を示しているのだ。
 アベルを殺してしまったことは、未来永劫ついて回るであろう』

「おお神よ、これはあなたが悪いのです。
 私にばかり苦労させているのに、アベルのみを可愛がったのですから」

『それは供物のことを言っているのであろう。
 しかしそれは誤った考え方である。
 供物はそのものを指すのではなく、捧げた者の心を写すものである。
 それがわからない汝には、この地から立ち去ることを命ずる』

「そんなことをされたら私は生きていけません。
 どうかお許しください」

『人は人を赦すことができるが、神は人を赦すことはできない。
 数千年の後には、そのことがわかる日が来るだろう。
 だが今はその時ではない』

 こうしてカインは神の保護下にある、この肥沃な大地を追われることになった。これが異世界聖書に残されている三度目の追放である。

 これまで長きにわたって耕してきた大地を失ったカインは、後悔はしているものの神やアベル、そして父アダムへの恨みを募らせていた。行く当てもなく彷徨い、やがてたどり着いたのは乾ききった大地と僅かに湧き出る穢れた水をすする人々が住まう荒れ果てた土地だった。

「何故神はこのような仕打ちをなさるのか。
 私が何をしたと言うのか、アベルを妬むように仕向けたのは父や弟、そして神だと言いうのに」

「その通りですよね?
 あなたは悪いことなどしてはいません」

「私に話しかけているのは誰だ!?
 どこにも姿が見えない、姿を現しなさい!」

「私の名はサタン、あなたの足元にいますよ。
 そうです、この蛇が私です」

「そんな、話をする蛇が存在するなんて信じられない。
 お前はいったい何者なのだ」

「私は全てを総べる者の使いです。
 あなたを迎えにやって来ました」

「全てを総べる者? それは神ではないのか?
 なぜ私を迎えに来たのだ」

「神は何も見ず、人の気持ちを知ろうとしない愚者です。
 あなたにはそれがよくわかっているはず。
 だからこそ私たちの王があなたへ慈悲をかけようとしているのでしょう」

「慈悲…… 私を救ってくれると言うのか。
 神は赦さない、赦すには数千年かかると言っていたというのに?
 あなたの王ならそれが出来ると言うのでしょうか」

「もちろんです、我らが魔王に不可能はありません。
 すべてを赦しすべてを愛す、そしてすべてを滅することの出来る唯一の存在なのです」

 カインは蛇の言葉に訝しんだが、最後はその後ろへついて歩いて行った
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