8 / 12
またもや追放
しおりを挟む
『カインよ、アベルはどこにいるのか』
「神よ、アベルがどこにいるのか私は知りません。私は彼の守り人なのでしょうか」
『それでは汝の足元に広がっている血の池は何を示しているのだ。アベルを殺してしまったことは、未来永劫ついて回るであろう』
「おお神よ、これはあなたが悪いのです。私にばかり苦労させているのにアベルのみを可愛がったのですから」
『それは供物のことを言っているのであろう? しかしそれは誤った考え方である。供物はそのものを指すのではなく、捧げた者の心を写すものである。それがわからない汝はこの地から立ち去ることを命ずる』
「そんなことをされたら私は生きていけません。どうかお許しください」
『人は人を赦すことができるが、神は人を赦すことはできない。数千年の後にはそのことがわかる日が来るだろう。だが今はその時ではない』
こうしてカインは神の保護下にある、この肥沃な大地を追われることになった。これが異世界聖書に残されている三度目の追放である。
これまで長きにわたって耕してきた大地を失ったカインは、後悔はしているものの神やアベル、そして父アダムへの恨みを募らせていた。行く当てもなく彷徨い、やがてたどり着いたのは乾ききった大地と僅かに湧き出る穢れた水をすする人々が住まう荒れ果てた土地だった。
「何故神はこのような仕打ちをなさるのか。私が何をしたと言うのか、アベルを妬むように仕向けたのは父や弟、そして神だと言いうのに」
「その通りですよね? あなたは悪いことなどしてはいません」
「私に話しかけているのは誰だ!? どこにも姿が見えない、姿を現しなさい!」
「私の名はサタン、あなたの足元にいますよ。そうです、この蛇が私です」
「そんな、言葉を発する蛇が存在するなんて信じられない。お前はいったい何者なのだ」
「私は全てを総べる者の使いです。あなたを迎えにやって来ました」
「全てを総べる者? それは神ではないのか? なぜ私を迎えに来たのだ」
「神は何も見ず、人の気持ちを知ろうとしない愚者です。あなたにはそれがよくわかっていることでしょう。だからこそ私たちの王があなたへ慈悲をかけようとしているのです」
「慈悲…… 私を救ってくれると言うのか。神は赦さない、赦すには数千年かかると言っていたというのに? あなたの王ならそれが出来ると言うのでしょうか」
「もちろんです、我らが魔王に不可能はありません。 すべてを赦しすべてを愛す、そしてすべてを滅することの出来る唯一の存在なのです」
カインは蛇の言葉に訝しんだが、最後はその後ろへついて歩いて行った
「神よ、アベルがどこにいるのか私は知りません。私は彼の守り人なのでしょうか」
『それでは汝の足元に広がっている血の池は何を示しているのだ。アベルを殺してしまったことは、未来永劫ついて回るであろう』
「おお神よ、これはあなたが悪いのです。私にばかり苦労させているのにアベルのみを可愛がったのですから」
『それは供物のことを言っているのであろう? しかしそれは誤った考え方である。供物はそのものを指すのではなく、捧げた者の心を写すものである。それがわからない汝はこの地から立ち去ることを命ずる』
「そんなことをされたら私は生きていけません。どうかお許しください」
『人は人を赦すことができるが、神は人を赦すことはできない。数千年の後にはそのことがわかる日が来るだろう。だが今はその時ではない』
こうしてカインは神の保護下にある、この肥沃な大地を追われることになった。これが異世界聖書に残されている三度目の追放である。
これまで長きにわたって耕してきた大地を失ったカインは、後悔はしているものの神やアベル、そして父アダムへの恨みを募らせていた。行く当てもなく彷徨い、やがてたどり着いたのは乾ききった大地と僅かに湧き出る穢れた水をすする人々が住まう荒れ果てた土地だった。
「何故神はこのような仕打ちをなさるのか。私が何をしたと言うのか、アベルを妬むように仕向けたのは父や弟、そして神だと言いうのに」
「その通りですよね? あなたは悪いことなどしてはいません」
「私に話しかけているのは誰だ!? どこにも姿が見えない、姿を現しなさい!」
「私の名はサタン、あなたの足元にいますよ。そうです、この蛇が私です」
「そんな、言葉を発する蛇が存在するなんて信じられない。お前はいったい何者なのだ」
「私は全てを総べる者の使いです。あなたを迎えにやって来ました」
「全てを総べる者? それは神ではないのか? なぜ私を迎えに来たのだ」
「神は何も見ず、人の気持ちを知ろうとしない愚者です。あなたにはそれがよくわかっていることでしょう。だからこそ私たちの王があなたへ慈悲をかけようとしているのです」
「慈悲…… 私を救ってくれると言うのか。神は赦さない、赦すには数千年かかると言っていたというのに? あなたの王ならそれが出来ると言うのでしょうか」
「もちろんです、我らが魔王に不可能はありません。 すべてを赦しすべてを愛す、そしてすべてを滅することの出来る唯一の存在なのです」
カインは蛇の言葉に訝しんだが、最後はその後ろへついて歩いて行った
0
あなたにおすすめの小説
魔力ゼロで出来損ないと追放された俺、前世の物理学知識を魔法代わりに使ったら、天才ドワーフや魔王に懐かれて最強になっていた
黒崎隼人
ファンタジー
「お前は我が家の恥だ」――。
名門貴族の三男アレンは、魔力を持たずに生まれたというだけで家族に虐げられ、18歳の誕生日にすべてを奪われ追放された。
絶望の中、彼が死の淵で思い出したのは、物理学者として生きた前世の記憶。そして覚醒したのは、魔法とは全く異なる、世界の理そのものを操る力――【概念置換(コンセプト・シフト)】。
運動エネルギーの法則【E = 1/2mv²】で、小石は音速の弾丸と化す。
熱力学第二法則で、敵軍は絶対零度の世界に沈む。
そして、相対性理論【E = mc²】は、神をも打ち砕く一撃となる。
これは、魔力ゼロの少年が、科学という名の「本当の魔法」で理不尽な運命を覆し、心優しき仲間たちと共に、偽りの正義に支配された世界の真実を解き明かす物語。
「君の信じる常識は、本当に正しいのか?」
知的好奇心が、あなたの胸を熱くする。新時代のサイエンス・ファンタジーが、今、幕を開ける。
追放された俺のスキル【整理整頓】が覚醒!もふもふフェンリルと訳あり令嬢と辺境で最強ギルドはじめます
黒崎隼人
ファンタジー
「お前の【整理整頓】なんてゴミスキル、もういらない」――勇者パーティーの雑用係だったカイは、ダンジョンの最深部で無一文で追放された。死を覚悟したその時、彼のスキルは真の能力に覚醒する。鑑定、無限収納、状態異常回復、スキル強化……森羅万象を“整理”するその力は、まさに規格外の万能チートだった! 呪われたもふもふ聖獣と、没落寸前の騎士令嬢。心優しき仲間と出会ったカイは、辺境の街で小さなギルド『クローゼット』を立ち上げる。一方、カイという“本当の勇者”を失ったパーティーは崩壊寸前に。これは、地味なスキル一つで世界を“整理整頓”していく、一人の青年の爽快成り上がり英雄譚!
奥様は聖女♡
喜楽直人
ファンタジー
聖女を裏切った国は崩壊した。そうして国は魔獣が跋扈する魔境と化したのだ。
ある地方都市を襲ったスタンピードから人々を救ったのは一人の冒険者だった。彼女は夫婦者の冒険者であるが、戦うのはいつも彼女だけ。周囲は揶揄い夫を嘲るが、それを追い払うのは妻の役目だった。
英雄一家は国を去る【一話完結】
青緑 ネトロア
ファンタジー
婚約者との舞踏会中、火急の知らせにより領地へ帰り、3年かけて魔物大発生を収めたテレジア。3年振りに王都へ戻ったが、国の一大事から護った一家へ言い渡されたのは、テレジアの婚約破棄だった。
- - - - - - - - - - - - -
ただいま後日談の加筆を計画中です。
2025/06/22
後日譚追加【完結】冤罪で追放された俺、真実の魔法で無実を証明したら手のひら返しの嵐!! でももう遅い、王都ごと見捨てて自由に生きます
なみゆき
ファンタジー
魔王を討ったはずの俺は、冤罪で追放された。 功績は奪われ、婚約は破棄され、裏切り者の烙印を押された。 信じてくれる者は、誰一人いない——そう思っていた。
だが、辺境で出会った古代魔導と、ただ一人俺を信じてくれた彼女が、すべてを変えた。 婚礼と処刑が重なるその日、真実をつきつけ、俺は、王都に“ざまぁ”を叩きつける。
……でも、もう復讐には興味がない。 俺が欲しかったのは、名誉でも地位でもなく、信じてくれる人だった。
これは、ざまぁの果てに静かな勝利を選んだ、元英雄の物語。
防御力を下げる魔法しか使えなかった俺は勇者パーティから追放されたけど俺の魔法に強制脱衣の追加効果が発現したので世界中で畏怖の対象になりました
かにくくり
ファンタジー
魔法使いクサナギは国王の命により勇者パーティの一員として魔獣討伐の任務を続けていた。
しかし相手の防御力を下げる魔法しか使う事ができないクサナギは仲間達からお荷物扱いをされてパーティから追放されてしまう。
しかし勇者達は今までクサナギの魔法で魔物の防御力が下がっていたおかげで楽に戦えていたという事実に全く気付いていなかった。
勇者パーティが没落していく中、クサナギは追放された地で彼の本当の力を知る新たな仲間を加えて一大勢力を築いていく。
そして防御力を下げるだけだったクサナギの魔法はいつしか次のステップに進化していた。
相手の身に着けている物を強制的に剥ぎ取るという究極の魔法を習得したクサナギの前に立ち向かえる者は誰ひとりいなかった。
※小説家になろうにも掲載しています。
追放された私の代わりに入った女、三日で国を滅ぼしたらしいですよ?
タマ マコト
ファンタジー
王国直属の宮廷魔導師・セレス・アルトレイン。
白銀の髪に琥珀の瞳を持つ、稀代の天才。
しかし、その才能はあまりに“美しすぎた”。
王妃リディアの嫉妬。
王太子レオンの盲信。
そして、セレスを庇うはずだった上官の沈黙。
「あなたの魔法は冷たい。心がこもっていないわ」
そう言われ、セレスは**『無能』の烙印**を押され、王国から追放される。
彼女はただ一言だけ残した。
「――この国の炎は、三日で尽きるでしょう。」
誰もそれを脅しとは受け取らなかった。
だがそれは、彼女が未来を見通す“預言魔法”の言葉だったのだ。
一級魔法使いになれなかったので特級厨師になりました
しおしお
恋愛
魔法学院次席卒業のシャーリー・ドットは、
「一級魔法使いになれなかった」という理由だけで婚約破棄された。
――だが本当の理由は、ただの“うっかり”。
試験会場を間違え、隣の建物で行われていた
特級厨師試験に合格してしまったのだ。
気づけばシャーリーは、王宮からスカウトされるほどの
“超一流料理人”となり、国王の胃袋をがっちり掴む存在に。
一方、学院首席で一級魔法使いとなった
ナターシャ・キンスキーは、大活躍しているはずなのに――
「なんで料理で一番になってるのよ!?
あの女、魔法より料理の方が強くない!?」
すれ違い、逃げ回り、勘違いし続けるナターシャと、
天然すぎて誤解が絶えないシャーリー。
そんな二人が、魔王軍の襲撃、国家危機、王宮騒動を通じて、
少しずつ距離を縮めていく。
魔法で国を守る最強魔術師。
料理で国を救う特級厨師。
――これは、“敵でもライバルでもない二人”が、
ようやく互いを認め、本当の友情を築いていく物語。
すれ違いコメディ×料理魔法×ダブルヒロイン友情譚!
笑って、癒されて、最後は心が温かくなる王宮ラノベ、開幕です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる