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第三章:激しくも長き決戦
26.予感と予測
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二十二時を知らせる鐘の音とともにシンデレラは前線へと加わった。代わりに十人ほど下がらせて休息を取らせなければならない。
なんと言っても戦いは毎日陽が沈んでから夜明けまで続くのだ。しかも彼女は零時を過ぎると普通の少女に戻ってしまい、到底戦力になどなりはしない。
「姫様、ご無理はしないでくださいませ。後ほど戻ってまいりますので、残しておいて構いませんぞ?」
「それはお約束できません。隊長こそ余計なことは考えずしっかりと休息を取ってください。他の方も同じ、よろしくお願いしますね」
十人が交代で下がるとさすがに前線は閑散としてしまう。だが人数が少ないことは戦力としての問題ではない。本当はもっと下げてもいいくらいなのだ。
しかし悪魔が前線をすり抜ける危険性を考えると、あまり少なくし過ぎることははばかられる。なんと言っても街へ入られてしまったら大ごとになってしまう。
そう考えてのことだったが、前線に現れたシンデレラには多くのガーゴイルが群がっていた。もちろんそれは、自分の獲物にしようとせん悪魔の本能によるもの。
悪魔たちをこの場から逃がしたくない彼女らにとっては好都合だが、当の本人さえうっかり忘れていたのだ。だがそれを逆手にとって次々に悪魔を葬っていく。
彼女のか細い腕に握られているのは馬車から外してきた鉄の牽引棒である。それをほうきのごとく振り回し悪魔を撲殺して回る少女――
白いシンプルなワンピースに鎧を重ねた姿と相まって、戦場では一般兵どころか悪魔たちよりも異形な存在と言えよう。
『もしかしてジャンヌダルクもこんな裏があったのかもしれないな』
戦闘中に余計なことを考えられるくらいには余裕のあるシンデレラの中の灰賀だったが、流石にもう四日も同じことをしているとパターン化してくるのも確かである。
ガーゴイルに変わってから明日で五日、もしまた同じように波に変化があるとすれば明日だろうと考えている。それは隊長も同じだった。
明け方がやってきて四日目の波が終わった後、歴戦の兵はさらに別の可能性を口にした。
「姫様、これは完全なる推察で最悪側の考えではあるのですが、六十年前にンノーミヤン帝国が滅んだ際の悪魔襲来が十日続いたと言う記録――」
「ええ、ですから今晩が山ではないかと考えたわけですよね? それがなにか?」
「本当に最悪の話として聞いてくださいませ。帝国は十日の襲来で滅んだのではなく、十日しか持たなかったのではないかと…… すなわち悪魔は五日ごとに強くなっていく可能性もあるのでは?」
「ま、まさか!? いいえ、その考えを否定しきれない記録もありました。百六十年前に王国を襲った悪魔は人間の倍ほどの体躯を持ち空を飛ぶと残されています。つまりは先ほどまで戦っていた中悪魔とは特徴が異なりますよね?」
「さようでございますな。もし今宵現れる悪魔がその特徴に合致していない場合は、さらに五日以降の種であることが示唆されましょう」
「現在のガーゴイルから倍以上大きな悪魔に変わるかも疑問です。理由はわかりませんが強さも急激に強くなったのではなく、わずかに上回る程度でした。もし徐々に強くなっていきまだ間があるとしたら……」
「考えたくもないですが、念のため頭の片隅には置いておくべきでしょうな。はたしてどれくらい続くのはわかりませんが、兵たちの精神力が持つのかが心配です」
「もう限界が近づいている方もいますね。明らかに発言がおかしかったり、感情の起伏が大きくなっていたりと、異常を表し始めていますから。まさかとは思いますが、これも悪魔の影響なのでしょうか」
「それは考えすぎ―― と言うことにしておきましょう。少なくとも現段階では」
だが悪い予感と言うものは得てして当たってしまうものだ。ガーゴイルを相手にしたこの日の夜始まった戦いの最中、数名の部隊員が動物型の悪魔を倒したと報告してきたのだった。
なんと言っても戦いは毎日陽が沈んでから夜明けまで続くのだ。しかも彼女は零時を過ぎると普通の少女に戻ってしまい、到底戦力になどなりはしない。
「姫様、ご無理はしないでくださいませ。後ほど戻ってまいりますので、残しておいて構いませんぞ?」
「それはお約束できません。隊長こそ余計なことは考えずしっかりと休息を取ってください。他の方も同じ、よろしくお願いしますね」
十人が交代で下がるとさすがに前線は閑散としてしまう。だが人数が少ないことは戦力としての問題ではない。本当はもっと下げてもいいくらいなのだ。
しかし悪魔が前線をすり抜ける危険性を考えると、あまり少なくし過ぎることははばかられる。なんと言っても街へ入られてしまったら大ごとになってしまう。
そう考えてのことだったが、前線に現れたシンデレラには多くのガーゴイルが群がっていた。もちろんそれは、自分の獲物にしようとせん悪魔の本能によるもの。
悪魔たちをこの場から逃がしたくない彼女らにとっては好都合だが、当の本人さえうっかり忘れていたのだ。だがそれを逆手にとって次々に悪魔を葬っていく。
彼女のか細い腕に握られているのは馬車から外してきた鉄の牽引棒である。それをほうきのごとく振り回し悪魔を撲殺して回る少女――
白いシンプルなワンピースに鎧を重ねた姿と相まって、戦場では一般兵どころか悪魔たちよりも異形な存在と言えよう。
『もしかしてジャンヌダルクもこんな裏があったのかもしれないな』
戦闘中に余計なことを考えられるくらいには余裕のあるシンデレラの中の灰賀だったが、流石にもう四日も同じことをしているとパターン化してくるのも確かである。
ガーゴイルに変わってから明日で五日、もしまた同じように波に変化があるとすれば明日だろうと考えている。それは隊長も同じだった。
明け方がやってきて四日目の波が終わった後、歴戦の兵はさらに別の可能性を口にした。
「姫様、これは完全なる推察で最悪側の考えではあるのですが、六十年前にンノーミヤン帝国が滅んだ際の悪魔襲来が十日続いたと言う記録――」
「ええ、ですから今晩が山ではないかと考えたわけですよね? それがなにか?」
「本当に最悪の話として聞いてくださいませ。帝国は十日の襲来で滅んだのではなく、十日しか持たなかったのではないかと…… すなわち悪魔は五日ごとに強くなっていく可能性もあるのでは?」
「ま、まさか!? いいえ、その考えを否定しきれない記録もありました。百六十年前に王国を襲った悪魔は人間の倍ほどの体躯を持ち空を飛ぶと残されています。つまりは先ほどまで戦っていた中悪魔とは特徴が異なりますよね?」
「さようでございますな。もし今宵現れる悪魔がその特徴に合致していない場合は、さらに五日以降の種であることが示唆されましょう」
「現在のガーゴイルから倍以上大きな悪魔に変わるかも疑問です。理由はわかりませんが強さも急激に強くなったのではなく、わずかに上回る程度でした。もし徐々に強くなっていきまだ間があるとしたら……」
「考えたくもないですが、念のため頭の片隅には置いておくべきでしょうな。はたしてどれくらい続くのはわかりませんが、兵たちの精神力が持つのかが心配です」
「もう限界が近づいている方もいますね。明らかに発言がおかしかったり、感情の起伏が大きくなっていたりと、異常を表し始めていますから。まさかとは思いますが、これも悪魔の影響なのでしょうか」
「それは考えすぎ―― と言うことにしておきましょう。少なくとも現段階では」
だが悪い予感と言うものは得てして当たってしまうものだ。ガーゴイルを相手にしたこの日の夜始まった戦いの最中、数名の部隊員が動物型の悪魔を倒したと報告してきたのだった。
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