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第七章 新たな旅へ
76.目指せハッピーエンド
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ふと気が付くと私は仮住まいの前にいた。グランが隣に立っていて話しかけてくるところから再開のようだ。無事にやり直しが出来たのだから今度はゲームオーバーじゃなくハッピーエンドを目指さなくては!
「ひとまずはお疲れさん。
俺は夕飯を調達しに行ってくる。
なにか欲しいものはあるか?」
ついさっき聞いたばかりのセリフが聞こえてきたが、ここでもたもたしているとまた魔女として焼かれてしまう。なんとかしなければまた熱い思いをしてからコンティニュー画面に行く羽目になる。
「ねえ、私いやな予感がするの。馬を家の後ろへ回しておきましょう。
それで買い物へ行かないで一緒にいてほしいの」
「なんだどうしたんだよ。
腹減ってないのか?
ここにはなにも食うもんがないぜ?」
「それでもいい、だから一緒にいてよ。
私のこと大切に思ってくれているならここにいてちょうだい」
「随分と甘えん坊だな。
それじゃお茶でも淹れるとするか」
グランが湯を沸かしはじめてしばらくすると表が騒がしくなってきた。大勢の人が家の前に集まっている様子が手に取るようにわかる。
「来た! 彼らが来たんだわ!」
「彼らって誰だ?
なんだか外が騒がしいな」
『今のうちだ! 早くやってしまえ!』
『魔女を焼き殺せ!』
随分と物騒な声が聞こえてくる。さすがにグランの顔にも緊張が走る。
「こりゃどういうことだ?
まさかお前をやりに来たってのか。
今まで散々女神だなんて持ち上げてたのによ」
「あんなことしたんだもの仕方ないわ。
でもこのまま焼け死ぬのは嫌だわ、逃げましょう」
「あたりめえだ、こんなとこで焼け死んでたまるか。
しかし追いかけてきたりしねえだろうな」
「火をつけられたら全体へ燃え移るくらいまで待ちましょうよ。
それから脱出して馬で逃げればいいわ。
逃げたところを見られると領地まで攻めてこられないとも限らないもの」
そうこうしているうちに外で物音がし始めた。どうやら松明が投げつけられているらしい。その炎はすぐに家屋へと燃え移り、次第に火の手が家全体へと広がっていった。
私はもう限界と言うくらいまで粘ってから裏手の壁を壊して表へ出た。
「よし、今ならだれも見てねえぞ。
さっさとずらかっちまおう」
「ええ、急がなくっちゃ」
夜が更けて薄暗い街中を二人で駆け抜けていく。そのまま街を出てどこへ行くと言うわけでもなく馬を走らせる。なるべく早くなるべく遠くへ――
夜が明けて周囲が明るくなったころ、二人は街から大分離れた場所にいた。おそらく旧トーラス領の名もなき荒野だ。
私は喉が渇いたと言いだしたグランのために果物を剥こうと思い、彼の荷物の中に入っていた短剣を取り出した。煌びやかで凝った装飾が見事な短剣はグランが先代から託されていた物だと言う。
年代物なのかその短剣は柄に巻いてある滑り止めの布が取れかかっていた。こういうところには革が巻いてあるはずなのに、高級そうな短剣とは似つかわないごく普通の布、いやこれは包帯かもしれない。何となく気になってほどいてみると、柄の先端には粘土で固めた何かが埋め込まれているようだ。
粘土をほぐすと短剣の柄に埋め込まれていた物が姿をあらわした。それは指輪、いや蝋封印だ。随分手の込んだ細工をして巧妙に隠されていたがなにか特別なものなのだろうか。
私はその指輪を手に取ってじっくりと眺めてみる。すると――
「グラン!? この蝋封印に掘られている紋章、これって王族の意匠じゃないの!」
「なんだそりゃ、俺はそんなもの知らねえ。
先代か誰かが作った偽物じゃねえのかな」
そう言ってグランは高笑いしている。それにつられて私もけらけらと笑う。二人の笑い声は何もない荒野へ溶けるように吸い込まれていった。
「ひとまずはお疲れさん。
俺は夕飯を調達しに行ってくる。
なにか欲しいものはあるか?」
ついさっき聞いたばかりのセリフが聞こえてきたが、ここでもたもたしているとまた魔女として焼かれてしまう。なんとかしなければまた熱い思いをしてからコンティニュー画面に行く羽目になる。
「ねえ、私いやな予感がするの。馬を家の後ろへ回しておきましょう。
それで買い物へ行かないで一緒にいてほしいの」
「なんだどうしたんだよ。
腹減ってないのか?
ここにはなにも食うもんがないぜ?」
「それでもいい、だから一緒にいてよ。
私のこと大切に思ってくれているならここにいてちょうだい」
「随分と甘えん坊だな。
それじゃお茶でも淹れるとするか」
グランが湯を沸かしはじめてしばらくすると表が騒がしくなってきた。大勢の人が家の前に集まっている様子が手に取るようにわかる。
「来た! 彼らが来たんだわ!」
「彼らって誰だ?
なんだか外が騒がしいな」
『今のうちだ! 早くやってしまえ!』
『魔女を焼き殺せ!』
随分と物騒な声が聞こえてくる。さすがにグランの顔にも緊張が走る。
「こりゃどういうことだ?
まさかお前をやりに来たってのか。
今まで散々女神だなんて持ち上げてたのによ」
「あんなことしたんだもの仕方ないわ。
でもこのまま焼け死ぬのは嫌だわ、逃げましょう」
「あたりめえだ、こんなとこで焼け死んでたまるか。
しかし追いかけてきたりしねえだろうな」
「火をつけられたら全体へ燃え移るくらいまで待ちましょうよ。
それから脱出して馬で逃げればいいわ。
逃げたところを見られると領地まで攻めてこられないとも限らないもの」
そうこうしているうちに外で物音がし始めた。どうやら松明が投げつけられているらしい。その炎はすぐに家屋へと燃え移り、次第に火の手が家全体へと広がっていった。
私はもう限界と言うくらいまで粘ってから裏手の壁を壊して表へ出た。
「よし、今ならだれも見てねえぞ。
さっさとずらかっちまおう」
「ええ、急がなくっちゃ」
夜が更けて薄暗い街中を二人で駆け抜けていく。そのまま街を出てどこへ行くと言うわけでもなく馬を走らせる。なるべく早くなるべく遠くへ――
夜が明けて周囲が明るくなったころ、二人は街から大分離れた場所にいた。おそらく旧トーラス領の名もなき荒野だ。
私は喉が渇いたと言いだしたグランのために果物を剥こうと思い、彼の荷物の中に入っていた短剣を取り出した。煌びやかで凝った装飾が見事な短剣はグランが先代から託されていた物だと言う。
年代物なのかその短剣は柄に巻いてある滑り止めの布が取れかかっていた。こういうところには革が巻いてあるはずなのに、高級そうな短剣とは似つかわないごく普通の布、いやこれは包帯かもしれない。何となく気になってほどいてみると、柄の先端には粘土で固めた何かが埋め込まれているようだ。
粘土をほぐすと短剣の柄に埋め込まれていた物が姿をあらわした。それは指輪、いや蝋封印だ。随分手の込んだ細工をして巧妙に隠されていたがなにか特別なものなのだろうか。
私はその指輪を手に取ってじっくりと眺めてみる。すると――
「グラン!? この蝋封印に掘られている紋章、これって王族の意匠じゃないの!」
「なんだそりゃ、俺はそんなもの知らねえ。
先代か誰かが作った偽物じゃねえのかな」
そう言ってグランは高笑いしている。それにつられて私もけらけらと笑う。二人の笑い声は何もない荒野へ溶けるように吸い込まれていった。
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