4 / 46
第一章 世界を跨いだ出会い
4.申し出
しおりを挟む
遅い、遅すぎる。いったいいつになったらあの男はやってくるのだ。俺は空腹のせいも有り大分イライラしていた。追加の飯は来たものの、薄っぺらいパンが一枚とジャムに乳製品がついて来たのみで何の足しにもならなかった。
「はあ、それにしても落ち着かない場所だな。
飯は足りんしどこもかしこも真っ白で目が痛くなるわ。
さっき飯屋を見かけたが、どうやら金が必要らしいし……」
オカのやつがくれば食わせてもらえるだろうが、その前に検査とやらもあるはずだ。それが全部終わってからとなると、腹が膨れるのは一体いつになるのやら。
一人でベッドに腰掛けブツブツと一人ごとを言っていると、ドアを叩く音がした。ようやくオカがやってきたのだろう。
「遅かったじゃないか。
まったく腹が減って敵わんぞ?」
「なんだ、元気そうじゃない。
病院で注射でも打たれて泣いてるかと思ったわ。
それにしてもいつもお腹すかせているのね」
「なんだジョアンナじゃないか。
どうしてこんなところまで来たのだ?
貴様も俺をえむあーとかいうのに入れて処刑させるつもりか?」
とにかく病院内は落ち着かず武器も防具もないので心もとない。昨日は何とも思わなかったこの女も今はどこからかの刺客に見えてくるくらいである。
「もしかしてMRIが怖いの?
ああいう機械見たことない?
全然怖くないからついていってあげようか?」
「そうやって俺を騙そうとしているんじゃないのか?
さっきここの兵士が頭を割るような話をしていたからな。
警戒せずにはいられん」
「もう、臆病なんだから。
それでオカさん待ってるの?
あははっ、案外かわいいところあるのね」
「くぅ、貴様! 愚弄するのか!
俺は身を護るための勘を頼りにここまで生き残ってきたのだ。
こんなわけのわからない施設の中で処刑されてたまるか!」
「処刑なんてされないっての。
いったいどんなところで育ったのか知らないけどさ。
日本で普通に暮らしてたら簡単に殺されるなんてことないよ、普通はね」
「なにやら含みのある言い方だな」
「そりゃね、たまにはおかしなことも起こるよ。
絶対安心の完全な安全が無いなんて当たり前でしょ?」
俺はゆっくりと頷いた。昨日も感じたこのジョアンナの負の部分、きっと何かを心の中に抱えているのだろう。だがそれをわざわざ聞きだすほどの仲でもないし必要性も感じられない。今の俺に必要なものは自由と飯だ。
「でもさ、そんなに検査が嫌ならなんで逃げ出さないの?
あんたの身体能力なら余裕で逃げられるでしょ。
それともオカさんに義理立てでもしてるの?」
「あやつに義理なぞないわ。
あるとすれば飯の恩だが…… それももう切れそうだな。
まったく腹が減って敵わんよ」
「病院のご飯て質素だもんね。
食堂で何か食べる?
お金持ってないなら出してあげようか?」
「ぐっ、確かに金はない……
それにここがどこだかも未だわからん。
だから仕方なく留まっているのだ。
とりあえずあやつの言うことを聞いていれば飯と宿が手に入るからな」
「へえ、以外と冷静だけど臆病なのね。
いや違うか、生きることが最優先で何事にも慎重ってことかな」
「まあそうだな、この世界のことはわからんが、俺がいた世界ではいつ死んでもおかしくなかった。
選択を間違えることが即死に繋がる、そんな世界、だったような…… 気がする……」
「すごいね、まるでゲームか映画みたいだわ。
いわゆる異世界転生ってやつでしょ」
「異世界…… 異なる世界と言うことか。
やはり俺が元いた世界とは異なり戻ることはできないのかもしれんな」
俺がうつむいて考え事をしていると、ジョアンナが優しく声をかけてきた。
「さみしいの?
向こうにはお友達とか家族とかいたのかな?
慣れるまで大変かもしれないけどアタシに出来ることがあったら力になるよ?」
「ああ、心配をかけてすまない。
向こうでそれなりに持っていた財産はどこへ行ったのか考えていたんだ。
金目のものがあれば食うくらいできるだろ?」
「なーんだ、寂しくはないの? 不安とかさ」
「不安がないわけではないが、食うことだけ何とかなればどうにでもなろう。
狩りをしてもいいんだが狩猟道具がないしなあ。
そう言えば俺の武具はどこへ行ってしまったのだろうか。
あ、ああ、寂しいかって聞いてるのか。
身よりも親しい友人もいなかったからまったく寂しくないぞ」
「それはそれで聞いてる方が寂しいわよ……
ねえ、あんたって強いの?
力はすごくありそうだったし身のこなしもタダものじゃないって感じだったわよね」
「俺は強いぞ? 昨年の御前試合では決勝を務めたくらいだからな。
まあ御前試合は模擬戦だが、実戦でもそこそここなして来たぞ。
冒険者ランクはゴールドだったからな」
「ランクなんてあるんだ。
でも基準がわからないから凄さが伝わらないわね。
もっとわかりやすいのないの?
ドラゴン倒したとかさ」
「そうだな、ドラゴンはまあ余裕で倒していたぞ。
しかしそれほど特別な事でもなく、シルバーランクなら普通のドラゴンくらい一人で倒せる。
大型のエンシャントドラゴンや魔法が強力なデーモンは別物だがな」
「すごい! 本当にドラゴンが居たりするんだね。
どうやって戦うの? やっぱり大きな剣を振り回したりするの?」
「あ、うむ、俺の武器は両刃の大型剣で背中に背負うものだった。
だが小型の剣で速度重視や槍を使うものもいたぞ。
まあ人それぞれということだな。
ちなみに俺は徒手格闘も得意分野だから武器が無くても強いぞ」
「すごいじゃない、じゃあさ、アタシのボディーガードになってよ。
ちゃんとお給料も払うからさ」
「ボディー? なんだって?
何かの仕事と言うことか?」
「だ・か・らぁ、食べるものと住むところを提供するからさ。
アタシのボディーガード、つまり護衛をしてってこと」
何の因果か知らないが、こうして俺は平民の娘ごときに配下になれと見下される事態に陥ってしまったのだった。
「はあ、それにしても落ち着かない場所だな。
飯は足りんしどこもかしこも真っ白で目が痛くなるわ。
さっき飯屋を見かけたが、どうやら金が必要らしいし……」
オカのやつがくれば食わせてもらえるだろうが、その前に検査とやらもあるはずだ。それが全部終わってからとなると、腹が膨れるのは一体いつになるのやら。
一人でベッドに腰掛けブツブツと一人ごとを言っていると、ドアを叩く音がした。ようやくオカがやってきたのだろう。
「遅かったじゃないか。
まったく腹が減って敵わんぞ?」
「なんだ、元気そうじゃない。
病院で注射でも打たれて泣いてるかと思ったわ。
それにしてもいつもお腹すかせているのね」
「なんだジョアンナじゃないか。
どうしてこんなところまで来たのだ?
貴様も俺をえむあーとかいうのに入れて処刑させるつもりか?」
とにかく病院内は落ち着かず武器も防具もないので心もとない。昨日は何とも思わなかったこの女も今はどこからかの刺客に見えてくるくらいである。
「もしかしてMRIが怖いの?
ああいう機械見たことない?
全然怖くないからついていってあげようか?」
「そうやって俺を騙そうとしているんじゃないのか?
さっきここの兵士が頭を割るような話をしていたからな。
警戒せずにはいられん」
「もう、臆病なんだから。
それでオカさん待ってるの?
あははっ、案外かわいいところあるのね」
「くぅ、貴様! 愚弄するのか!
俺は身を護るための勘を頼りにここまで生き残ってきたのだ。
こんなわけのわからない施設の中で処刑されてたまるか!」
「処刑なんてされないっての。
いったいどんなところで育ったのか知らないけどさ。
日本で普通に暮らしてたら簡単に殺されるなんてことないよ、普通はね」
「なにやら含みのある言い方だな」
「そりゃね、たまにはおかしなことも起こるよ。
絶対安心の完全な安全が無いなんて当たり前でしょ?」
俺はゆっくりと頷いた。昨日も感じたこのジョアンナの負の部分、きっと何かを心の中に抱えているのだろう。だがそれをわざわざ聞きだすほどの仲でもないし必要性も感じられない。今の俺に必要なものは自由と飯だ。
「でもさ、そんなに検査が嫌ならなんで逃げ出さないの?
あんたの身体能力なら余裕で逃げられるでしょ。
それともオカさんに義理立てでもしてるの?」
「あやつに義理なぞないわ。
あるとすれば飯の恩だが…… それももう切れそうだな。
まったく腹が減って敵わんよ」
「病院のご飯て質素だもんね。
食堂で何か食べる?
お金持ってないなら出してあげようか?」
「ぐっ、確かに金はない……
それにここがどこだかも未だわからん。
だから仕方なく留まっているのだ。
とりあえずあやつの言うことを聞いていれば飯と宿が手に入るからな」
「へえ、以外と冷静だけど臆病なのね。
いや違うか、生きることが最優先で何事にも慎重ってことかな」
「まあそうだな、この世界のことはわからんが、俺がいた世界ではいつ死んでもおかしくなかった。
選択を間違えることが即死に繋がる、そんな世界、だったような…… 気がする……」
「すごいね、まるでゲームか映画みたいだわ。
いわゆる異世界転生ってやつでしょ」
「異世界…… 異なる世界と言うことか。
やはり俺が元いた世界とは異なり戻ることはできないのかもしれんな」
俺がうつむいて考え事をしていると、ジョアンナが優しく声をかけてきた。
「さみしいの?
向こうにはお友達とか家族とかいたのかな?
慣れるまで大変かもしれないけどアタシに出来ることがあったら力になるよ?」
「ああ、心配をかけてすまない。
向こうでそれなりに持っていた財産はどこへ行ったのか考えていたんだ。
金目のものがあれば食うくらいできるだろ?」
「なーんだ、寂しくはないの? 不安とかさ」
「不安がないわけではないが、食うことだけ何とかなればどうにでもなろう。
狩りをしてもいいんだが狩猟道具がないしなあ。
そう言えば俺の武具はどこへ行ってしまったのだろうか。
あ、ああ、寂しいかって聞いてるのか。
身よりも親しい友人もいなかったからまったく寂しくないぞ」
「それはそれで聞いてる方が寂しいわよ……
ねえ、あんたって強いの?
力はすごくありそうだったし身のこなしもタダものじゃないって感じだったわよね」
「俺は強いぞ? 昨年の御前試合では決勝を務めたくらいだからな。
まあ御前試合は模擬戦だが、実戦でもそこそここなして来たぞ。
冒険者ランクはゴールドだったからな」
「ランクなんてあるんだ。
でも基準がわからないから凄さが伝わらないわね。
もっとわかりやすいのないの?
ドラゴン倒したとかさ」
「そうだな、ドラゴンはまあ余裕で倒していたぞ。
しかしそれほど特別な事でもなく、シルバーランクなら普通のドラゴンくらい一人で倒せる。
大型のエンシャントドラゴンや魔法が強力なデーモンは別物だがな」
「すごい! 本当にドラゴンが居たりするんだね。
どうやって戦うの? やっぱり大きな剣を振り回したりするの?」
「あ、うむ、俺の武器は両刃の大型剣で背中に背負うものだった。
だが小型の剣で速度重視や槍を使うものもいたぞ。
まあ人それぞれということだな。
ちなみに俺は徒手格闘も得意分野だから武器が無くても強いぞ」
「すごいじゃない、じゃあさ、アタシのボディーガードになってよ。
ちゃんとお給料も払うからさ」
「ボディー? なんだって?
何かの仕事と言うことか?」
「だ・か・らぁ、食べるものと住むところを提供するからさ。
アタシのボディーガード、つまり護衛をしてってこと」
何の因果か知らないが、こうして俺は平民の娘ごときに配下になれと見下される事態に陥ってしまったのだった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
【完結】異世界で魔道具チートでのんびり商売生活
シマセイ
ファンタジー
大学生・誠也は工事現場の穴に落ちて異世界へ。 物体に魔力を付与できるチートスキルを見つけ、 能力を隠しつつ魔道具を作って商業ギルドで商売開始。 のんびりスローライフを目指す毎日が幕を開ける!
不遇スキル「わらしべ長者」で殺せぬ勇者 〜魔力ゼロでも無双します〜
カジキカジキ
ファンタジー
スキル「わらしべ長者」って何ですか?
アイテムを手にすると、スキル「わらしべ長者」が発動し、強制イベントになるんです。
これ、止めること出来ないんですか?!
十歳のスキル授与で「わらしべ長者」を授かった主人公アベルは幼い頃から勇者への憧れが強い子供だった、憧れていたスキル「勇者」は引っ込み思案の友達テツが授かり王都へと連れて行かれる。
十三歳になったアベルは自分のスキル「わらしべ長者」を使いながら冒険者となり王都を目指した。
王都に行き、勇者のスキルを得た友達に会いたいと思ったからだ。
魔物との戦争が行われているはずの王都は、平和で市民は魔物なんて全く知らずに過ごしていた。
魔物のいる南の地を目指すため、王立学園へと入学するアベル、勇者になった友達の行方は、アベルのスキルはどう進化して行くのか。
スキルを駆使して勇者を目指せ!
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
扉絵は、AI利用したイラストです。
アベルとニヤ、イヅミのFA大歓迎です!!
描いて下さる絵師さんも募集中、要相談Xにて。
俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない
宍戸亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。
不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。
そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。
帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。
そして邂逅する謎の組織。
萌の物語が始まる。
エリクサーは不老不死の薬ではありません。~完成したエリクサーのせいで追放されましたが、隣国で色々助けてたら聖人に……ただの草使いですよ~
シロ鼬
ファンタジー
エリクサー……それは生命あるものすべてを癒し、治す薬――そう、それだけだ。
主人公、リッツはスキル『草』と持ち前の知識でついにエリクサーを完成させるが、なぜか王様に偽物と判断されてしまう。
追放され行く当てもなくなったリッツは、とりあえず大好きな草を集めていると怪我をした神獣の子に出会う。
さらには倒れた少女と出会い、疫病が発生したという隣国へ向かった。
疫病? これ飲めば治りますよ?
これは自前の薬とエリクサーを使い、聖人と呼ばれてしまった男の物語。
40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私
とうとうキレてしまいました
なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが
飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした……
スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる