異世界からやってきた、自称・王国最強のハラペコ戦士とギャルJKのおかしな同居生活

釈 余白(しやく)

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第五章 学園入学

26.いいことばかりはありゃしない

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 思い返せばこういった光景を見た記憶があった。若い女に囲まれ、チヤホヤされ、猫なで声を聞かされると言うやつだ。しかしあくまで体験したことがあるのではなく見たことがある、だったが。

 あの男はハーフエルフだったか? 腕はまあそれなりと言ったところで、王国の剣術大会でも中の下と言ったところなのだがとにかく人気者で、出場する大会全てを見学に行くような女子(おなご)も大勢いたらしい。

 その時は特段羨ましいと思ってはいなかったが、いざこう自分がその立場になってみるなかなかに悪くない。過去には当たり前だった、むさくるしい男たちに憧れの目を向けられ取り囲まれ称賛されるのも悪いことではないが、今こうして俺を取り囲んでいる女たちからはとてもいい匂いがする。

「海人君、気に入ってくれたならいつ来てくれてもいいのよ?
 私の家だから気兼ねする必要だってないんだから。
 だから、その…… お友達になってくれる?」

「友人に? それはわざわざ申し込むようなものか?
 共に行動しているうちに自然と交友関係が深まる、ただそれだけのことだと思っていた。
 だが柳、ご馳走されて大変満足だが、さすがに毎日というわけにはいかない。
 そう何度も施しを受けるいわれはないし、かといって支払える当てもない。
 俺には自由に出来る財産は何もなくジョアンナに食わせてもらっているんだからな」

「はあああ、やっぱりその話し方カッコいいわぁ。
 なんでそんなに古風で渋みがあるの?
 私っておじいちゃんの影響で時代小説とかが大好きなのよ」

「古風? おかしいな、もうちょっと普通に話したいと考えているんだが……
 まあ癖みたいなものだから仕方ないか」

 時代小説と言う物がどういうものなのかはっきりとはわからないが、内容から察するに古典文学のようなものだろう。俺も英雄譚や古い冒険活劇は好きなほうだったが、書物はこれほど手軽でなく高価なものだったこともあってほとんど読んだことはない。第一そもそも文字があまり読めなかった。

「じゃあさ、週に一回くらいならいいかな?
 毎週月曜に勉強会をすることにして家へ来てくれたらいいじゃない。
 だから次は一週間後ね」

「あ、ああ、それくらいなら気も咎めないし構わないか。
 だが毎週月曜と決めるのはジョアンナに相談してから決めさせてくれ。
 こちらも家の仕事や食事当番もあって暇ではないんだ」

「すごい! 海人君ってお料理ができるんだね。
 中学生の男子で食事を作れるなんて珍しいよ!
 私もごちそうになってみたいなぁ。
 そうだ! 週に一度は私が海人君の家に行って一緒に料理作るのはどう?
 ちゃんと食材も持っていくから迷惑はかけないよ?」

「そ、それも確認してからだ。
 とにかく居候の俺にはどんなことでも勝手に決める権限はない」

 まさか臣下だから勝手はできないなんて言えるはずがない。それにしても柳は押しが強くてどちらかと言えば苦手なタイプである。だがパフェをご馳走してくれたんだから申し出を無碍にすることもできず、今は回答を先送りにするのが精いっぱいだった。

 パフェをごちそうになり数学を教えてもらっているうちすっかり遅くなってしまった。他のクラスメイトが引き上げる時間になったとのことなので、俺もそれにあわせて帰ることにした。


 薄暗くなった空とは対照的に、家路の途中にある商店街は煌々と灯りがともっている。まるで毎日が祭りのようであり、それにふさわしく人々の数も活気も元の世界とは比べ物にならない。

『ああ、本当に別の世界へやってきたんだなぁ。
 こんな幸せな世界があるなんて夢に見たこともなかった。
 俺はいつまでもここで暮らせるんだろうか』

 そんなことを考えながら商店街を抜けると商店の灯りは徐々に減っていき、住宅の多い地区へと入っていった。この辺りは夜になるとかなり薄暗い。俺の唯一の弱点と言ってもいい、夜目があまり効かないことも相まって、すれ違う人の表情すら見えづらくなってきていた。

 家からはすぐ近くの曲がり角まで来た俺は、死角に潜む気配に気が付いた。二人、いや三人か? こんなところで足を止めているのは不自然だ。物取りや誘拐の類か、それとも俺を狙っているのか。

 気が付いてないふりをして不意を突かせ返り討ちにするのが一番妥当な手段だが、相手を確認してからじゃないとうっかり怪我をさせてしまうかもしれない。この世界に俺を倒せる奴がいるとは思えないし、先ずは出かたを確認することにしよう。

 こうして腹を決め角を曲がると、そこには若い男女が乳繰り合っている姿があった。やれやれこんなところでこんなことをしている奴らがいるとはな…… 俺は呆れながら目をそむけてそいつらに背を向けた。

 いやまてよ? 先ほどの気配は三人だったはず、もう一人はどうした? 一緒にいたのではなくまったく別の人間だったのか?

 その瞬間、俺は頭に袋のような物をかぶせられ視界を失った


◇◇◇


「ジョアンナ…… ジョアンナ…… 姫…… 主……」

 俺は小さな声でジョアンナに助けを求めていた。一体どうすればいいんだろう。こんな窮地に陥ったのは初めてと言ってもいい。混乱すると余計に頭が回らなくなり冷や汗がにじんでくる。

「頼む、姫…… ジョアンナ…… 返事をしてくれ……」

「なによ! そんな小声で言われたってすぐに気が付くわけないでしょ!
 何ならインターフォンでも押せばいいじゃないの!
 ―― ってなに!? そんな三人も引き連れてどうしたのよ!?
 まさかアンタ、やっちゃったわけ!?」

「しっ、声が大きいぞ。
 三人とも気を失っているだけなんだが、問題はそれだけじゃないんだ。
 詳しくは入ってから話すからこいつらの置き場所を確保してくれ」

 ジョアンナが扉を開けているすきに俺は男二人と女一人を引きずって家の中へ入れた。それから念のために全員の腕と足を繋げて縛り座らせておく。

「それで? 一体何があったの?
 てゆーかこの男って…… 名前なんだっけな。
 とにかく、例のグループの下っ端じゃないの」

「やはりそうか、似たような雰囲気を感じたんだ。
 俺のことを待ち伏せして襲いかかってきやがってな。
 鉄棒で殴りかかってきたんで思わず剣で応戦してしまった……」

「ちょっと!? それはいくらなんでもやり過ぎでしょ。
 本当に死んでないんでしょうね……」

「それがな? 不思議なことに斬れなかったんだ。
 間違いなく両断したはずなんだが、身体は何とも無いようでな?
 だがその直後、その切った男はガックリとうなだれた。
 そして突然前触れもなく懺悔を始めたんだよ」

「ええっ!? 一体どういうことなの?
 身体は斬れないで傷一つ付いてないんでしょ?
 斬られたと思ってびっくりしちゃったのかな?」

「俺もよくわからなかったから残りの二人も斬ってみたんだ。
 すると同じように謝りだして泣き喚いたりしてうるさかった……」

「なんで追加で斬ってみたりするのよ……
 まったく考え方がおかしいわよ。
 でもそれならなんて全員気絶してるの?」

「いや、だからな、あまりにうるさいから殴って気絶させた。
 本当に軽くだ、ちょんと小突いただけ、本当だとも」

「気絶するほどっていうのはちょっとじゃないわよ……
 アンタのちょっとはホント当てにならないわ」

 正直に事情を話したが、やっぱりそれでも呆れられながら軽く怒られた俺は、この後のことについて相談を始めるのだった。
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