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第六章 初めてのカチコミ
32.決戦は反則的に
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カバンが小刻みに揺れている。怒りか、はたまた忍耐のそれかはわからないが、これ以上口を出さず俺に任せるため必死で耐えているのかもしれない。
「お前が何をしようと許すことはない。
自分の罪と向き合うことが出来る幸せをかみしめるんだな」
ジョアンナの母上殿を人質に捕ったつもりの卑劣な男が口を開く間もなく、俺は剣を取り出しながら薙ぎ払いの一刀を喰らわせた。もちろん母上殿も一緒にだが、別段罪悪感を抱えていなければ何の問題もないはずだ。
しかし目の前の女は突然うずくまり、頭を抱え泣きながら懺悔を始めた。
「うわあああ、ごめんなさい!
私はジョアンナの母親なんかじゃないの!
こいつの言うこときけば薬くれるからって!」
「ちっ、なんでこいつ急にそんなこと言いだしやがる?
おかげでばれちまったじゃねえかよ、この役立たずめ!」
「ちょっと!? 嘘つかないで答えなさいよ?
アンタは本当にアタシのママじゃないの?」
「ええそうよ! そうやって演技していれば生活の保障がされてたのよ!
だから今まで遊んで暮らせていたのに…… あぁごめんなさい」
男は女の腕をつかんで振り回しながら床へと打ち付けた。まったく部下への労わりがなっていないクズめ。それにしてもさすがに悪業を信念もって貫いているだけのことはある。俺の放った魂砕斬が効いた気配がまったくない。
「けっ、斬られたと思ったがこけおどしか。
おかしな真似しやがって、あの世で後悔させてやんよ!」
『パーン! パーン!』
乾いた音が鳴り、テーブルが倒れる音、そしてガラスの割れる音がした。俺の背後の壁には真新しい真っ赤な染みが広がっていく。そして床にはポタポタと血が垂れていた。
「うみんちゅ!! やだよ! そんなのヤダ!!
なんで銃なんて! そんなの反則だよ!」
「バカヤロウ、俺に逆らうからそんなことになるんだ!
ザマア見やがれってんだ!!」
「ふむ、高笑いしているところすまない。
一つ聞かせてほしいんだが、それは何かの武器で、回転する豆粒を発射するものか?」
「なんだこのガキ、拳銃もしらねえのかよ。
今おめえの体を貫いていったのは鉛の弾だ!
理解しないまま死んでいけ!」
『パーン! パーン!』
続いて二度同じ音がすると、今度は天井にある電灯が派手な音を上げて飛びちり、背後の壁から少量の小さな瓦礫がパラパラと落ちて行った。
「なるほど、原理はわからんが相当威力があるようだな。
こんなものを持っている奴がいるとは、この世界の戦闘力も侮れん」
「ちょっとうみんちゅ? なんともないの?
後ろにあんないっぱい血がついてる…… のに……?」
「誰かの血がついているのか?
ああ、俺の指からも血が垂れているな。
これは驚きだ、初めて見た物なのでうまく対処できなかったようだ」
「ふざけんなコイツ、何しやがった!?
なんでピンピンしてんだよ!!」
『パーン! パーン! パーン!』
今度は三度のチャンスが到来した。俺に向かって飛んできた先端のとがった物質は恐ろしく高速回転している。先ほどはそれを指で摘まんで受け取ろうとしたが、指先の皮をめくりながら後ろへすり抜けて行き背後の壁へ刺さったようだ。
さすがに二発同時に対処するのは難しかったので、一発は後ろへ受け流したところ、壁に並べてあった酒ビンを割ってしまったようだ。なんともったいない。
次に撃たれた際、一発は同じように受け流し、もう一発は指ではじいて天井へ逃がしてみた。それでも電灯を粉々にする威力があることが確認できたのは収穫だ。
そしてこの三度目、まずは一つ目を指ではじき後ろから来る二つ目へぶつけて相殺する。満を持して迎えた三発目は、回転方向を合わすように腕を回しながら指でつまんで受け取ることに成功した。
「ほほう、ようやく成功したな。
コツを掴めばそれほど難しくはないが、さすがに指の皮が剥けてしまったよ。
温度もかなり高いので、おそらくこれは炎系魔法の類だろ? な?」
「な? じゃないわよ!
なんで鉄砲の弾を摘まんで受け止めるなんて発想になるわけ・
そんなのあり得なさ過ぎて頭がおかしくなりそうだわ」
目の前の『兄貴』は足を小刻みに震わせているが、恐怖からなのか怒りからなのかは判断し辛い。まあその判断に意味などないし、コイツにはもう打つ手がないと言うのも明白だった。
俺は一瞬で間を詰め、手に持った拳銃とやらを持った腕を真下へと引いて肩を外した。叫び声を上げながら痛みでうずくまる男を見下ろしながら顔を上げてから鼻を捻じりあげる。
「うむ、これが戦う男の顔だ、大分いい男になったな。
安全なところで命令を出しているだけでは立派な戦士にはなれんぞ?
さあ、色々と聞きたいことがある、話してもらおうか」
その後はカバンをしっかり締めて、ジョアンナが顔を出さないよう配慮しながら尋問を行った。
まずは母上殿についてだが、確かにその女はジョアンナの母親ではなく、母親似で男好きのする顔立ちのジョアンナを自分の手ごまにするため、騙すために用意した女だとのことだ。こいつよりももっと上の世代では、ジョアンナの母親は悪い意味でそこそこ有名人だったらしく、地方へ行ってしまう前にも世話になった男は多かったと聞いた。
そこまではジョアンナも知っていたことなのでショックを受けているわけではなかったが、今まで騙されていたことと、本物の母親に会えてなんていなかったことの落胆は当然のように大きいもののようだ。
さらに今まで荒稼ぎしてきた金を管理している幹部を呼び出して、顧客リストをもとに被害者へ返金するよう命じたり、俺たちの存在を口止めしたりとやることは多かった。これでこいつらの店もグループも壊滅間違いなしだろう。
とは言え悪が一つ無くなっただけで、食い物にされていた女たち全てが目を覚ますとは思えないが、それでも一時しのぎにはなるだろうし、もしかしたら立ち直るものが少しはいるかもしれない。
そんなわずかな希望を持つことも生きる楽しみの一つだし、そのために自分の振るった力が役に立ったなら喜ばしいことだ。それがたとえ自己満足であったとしても。
さすがに派手に暴れたので表が騒がしくなってきた。警察が来る前にここを立ち去るため、カバンにジョアンナを入れたまま裏口から出る。幸い裏通りはそれほど人も多くなく、あっさり逃げることが出来た。
後には罪悪感にさいなまれて泣いている男たちと一人の女、両手両足の自由が奪われたままうずくまる大男、そして尋問に抵抗した数だけ指を折られた鼻の曲がった男が残っている。きちんと口止めはしておいたことだし、警察が来ればきっとうまいこと処置してくれるだろう。
「どちらにしたって、あれを中学生がやったなんて信じる人いないわよ。
対抗するグループや組織の犯行とか、まあそういう連中の仕業ってことになるんじゃない?
ならなそうなら神様にごまかしてもらえばいいわよ」
「なるほど、その手があったな。
俺たちがやったことは間違いなく正義だ!
いやあ、この世界には明確な法律と言う物があるから善悪が決めやすくていいところだな。
権力者の気分や利害関係で処罰される側が決まるなんてまともじゃないぜ」
「まあこの国でもそう言うことはあるけどね。
なんだかんだ言って政治の世界なんて似たようなものなんじゃない?
おおっぴらにやるかどうかは別にしてさ」
「なるほど、そう言うものなのかもしれん。
ところで母上殿の件は残念だったな、せっかく連れ戻せると思っていたのに」
「ううん、あんな奴らと一緒にサイテーな生き方してるんじゃなかったからホッとした。
もしかしたらどこかで似たような生活してるかもだけどさ」
おそらくジョアンナの心の強さは、恵まれていなかった出自と育てられた環境が合わさって育(はぐく)まれたものだろう。俺は、その歴戦の武人にも劣らない尊い精神を見習いたいと感じていた。
「お前が何をしようと許すことはない。
自分の罪と向き合うことが出来る幸せをかみしめるんだな」
ジョアンナの母上殿を人質に捕ったつもりの卑劣な男が口を開く間もなく、俺は剣を取り出しながら薙ぎ払いの一刀を喰らわせた。もちろん母上殿も一緒にだが、別段罪悪感を抱えていなければ何の問題もないはずだ。
しかし目の前の女は突然うずくまり、頭を抱え泣きながら懺悔を始めた。
「うわあああ、ごめんなさい!
私はジョアンナの母親なんかじゃないの!
こいつの言うこときけば薬くれるからって!」
「ちっ、なんでこいつ急にそんなこと言いだしやがる?
おかげでばれちまったじゃねえかよ、この役立たずめ!」
「ちょっと!? 嘘つかないで答えなさいよ?
アンタは本当にアタシのママじゃないの?」
「ええそうよ! そうやって演技していれば生活の保障がされてたのよ!
だから今まで遊んで暮らせていたのに…… あぁごめんなさい」
男は女の腕をつかんで振り回しながら床へと打ち付けた。まったく部下への労わりがなっていないクズめ。それにしてもさすがに悪業を信念もって貫いているだけのことはある。俺の放った魂砕斬が効いた気配がまったくない。
「けっ、斬られたと思ったがこけおどしか。
おかしな真似しやがって、あの世で後悔させてやんよ!」
『パーン! パーン!』
乾いた音が鳴り、テーブルが倒れる音、そしてガラスの割れる音がした。俺の背後の壁には真新しい真っ赤な染みが広がっていく。そして床にはポタポタと血が垂れていた。
「うみんちゅ!! やだよ! そんなのヤダ!!
なんで銃なんて! そんなの反則だよ!」
「バカヤロウ、俺に逆らうからそんなことになるんだ!
ザマア見やがれってんだ!!」
「ふむ、高笑いしているところすまない。
一つ聞かせてほしいんだが、それは何かの武器で、回転する豆粒を発射するものか?」
「なんだこのガキ、拳銃もしらねえのかよ。
今おめえの体を貫いていったのは鉛の弾だ!
理解しないまま死んでいけ!」
『パーン! パーン!』
続いて二度同じ音がすると、今度は天井にある電灯が派手な音を上げて飛びちり、背後の壁から少量の小さな瓦礫がパラパラと落ちて行った。
「なるほど、原理はわからんが相当威力があるようだな。
こんなものを持っている奴がいるとは、この世界の戦闘力も侮れん」
「ちょっとうみんちゅ? なんともないの?
後ろにあんないっぱい血がついてる…… のに……?」
「誰かの血がついているのか?
ああ、俺の指からも血が垂れているな。
これは驚きだ、初めて見た物なのでうまく対処できなかったようだ」
「ふざけんなコイツ、何しやがった!?
なんでピンピンしてんだよ!!」
『パーン! パーン! パーン!』
今度は三度のチャンスが到来した。俺に向かって飛んできた先端のとがった物質は恐ろしく高速回転している。先ほどはそれを指で摘まんで受け取ろうとしたが、指先の皮をめくりながら後ろへすり抜けて行き背後の壁へ刺さったようだ。
さすがに二発同時に対処するのは難しかったので、一発は後ろへ受け流したところ、壁に並べてあった酒ビンを割ってしまったようだ。なんともったいない。
次に撃たれた際、一発は同じように受け流し、もう一発は指ではじいて天井へ逃がしてみた。それでも電灯を粉々にする威力があることが確認できたのは収穫だ。
そしてこの三度目、まずは一つ目を指ではじき後ろから来る二つ目へぶつけて相殺する。満を持して迎えた三発目は、回転方向を合わすように腕を回しながら指でつまんで受け取ることに成功した。
「ほほう、ようやく成功したな。
コツを掴めばそれほど難しくはないが、さすがに指の皮が剥けてしまったよ。
温度もかなり高いので、おそらくこれは炎系魔法の類だろ? な?」
「な? じゃないわよ!
なんで鉄砲の弾を摘まんで受け止めるなんて発想になるわけ・
そんなのあり得なさ過ぎて頭がおかしくなりそうだわ」
目の前の『兄貴』は足を小刻みに震わせているが、恐怖からなのか怒りからなのかは判断し辛い。まあその判断に意味などないし、コイツにはもう打つ手がないと言うのも明白だった。
俺は一瞬で間を詰め、手に持った拳銃とやらを持った腕を真下へと引いて肩を外した。叫び声を上げながら痛みでうずくまる男を見下ろしながら顔を上げてから鼻を捻じりあげる。
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安全なところで命令を出しているだけでは立派な戦士にはなれんぞ?
さあ、色々と聞きたいことがある、話してもらおうか」
その後はカバンをしっかり締めて、ジョアンナが顔を出さないよう配慮しながら尋問を行った。
まずは母上殿についてだが、確かにその女はジョアンナの母親ではなく、母親似で男好きのする顔立ちのジョアンナを自分の手ごまにするため、騙すために用意した女だとのことだ。こいつよりももっと上の世代では、ジョアンナの母親は悪い意味でそこそこ有名人だったらしく、地方へ行ってしまう前にも世話になった男は多かったと聞いた。
そこまではジョアンナも知っていたことなのでショックを受けているわけではなかったが、今まで騙されていたことと、本物の母親に会えてなんていなかったことの落胆は当然のように大きいもののようだ。
さらに今まで荒稼ぎしてきた金を管理している幹部を呼び出して、顧客リストをもとに被害者へ返金するよう命じたり、俺たちの存在を口止めしたりとやることは多かった。これでこいつらの店もグループも壊滅間違いなしだろう。
とは言え悪が一つ無くなっただけで、食い物にされていた女たち全てが目を覚ますとは思えないが、それでも一時しのぎにはなるだろうし、もしかしたら立ち直るものが少しはいるかもしれない。
そんなわずかな希望を持つことも生きる楽しみの一つだし、そのために自分の振るった力が役に立ったなら喜ばしいことだ。それがたとえ自己満足であったとしても。
さすがに派手に暴れたので表が騒がしくなってきた。警察が来る前にここを立ち去るため、カバンにジョアンナを入れたまま裏口から出る。幸い裏通りはそれほど人も多くなく、あっさり逃げることが出来た。
後には罪悪感にさいなまれて泣いている男たちと一人の女、両手両足の自由が奪われたままうずくまる大男、そして尋問に抵抗した数だけ指を折られた鼻の曲がった男が残っている。きちんと口止めはしておいたことだし、警察が来ればきっとうまいこと処置してくれるだろう。
「どちらにしたって、あれを中学生がやったなんて信じる人いないわよ。
対抗するグループや組織の犯行とか、まあそういう連中の仕業ってことになるんじゃない?
ならなそうなら神様にごまかしてもらえばいいわよ」
「なるほど、その手があったな。
俺たちがやったことは間違いなく正義だ!
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権力者の気分や利害関係で処罰される側が決まるなんてまともじゃないぜ」
「まあこの国でもそう言うことはあるけどね。
なんだかんだ言って政治の世界なんて似たようなものなんじゃない?
おおっぴらにやるかどうかは別にしてさ」
「なるほど、そう言うものなのかもしれん。
ところで母上殿の件は残念だったな、せっかく連れ戻せると思っていたのに」
「ううん、あんな奴らと一緒にサイテーな生き方してるんじゃなかったからホッとした。
もしかしたらどこかで似たような生活してるかもだけどさ」
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