異世界からやってきた、自称・王国最強のハラペコ戦士とギャルJKのおかしな同居生活

釈 余白(しやく)

文字の大きさ
45 / 46
第八章 異世界人の最後

45.神々との戦い

しおりを挟む
「いやあああ!!! だめええええ!!!」

 俺の背後からジョアンナの叫ぶ声が聞こえる。目の前には光の弾が迫り、おそらくはこれに包まれるとンダバーへ帰ることになるのだろう。

 光の弾は俺の周囲をこれ以上ないくらい明るく照らしている。そのまま俺にぶつかりやがて全身を包み込む、はずだった。

 俺の右手には愛刀と同じ形状である霊体の刀が握られている。それは光の弾を切り裂いた後、まるで残骸を吸い込んだように白く光っていた。

「なっ!? 聖球を斬っただと!?
 お主なにをしたのかわかっているのか?」

「ふふ、お前が俺に何をしようとしたのかを教えてやろう。
 神が強大な力をひけらかし、か弱い人間を一方的になぶろうとしたのだ
 すなわちそんなことをする奴は邪神と言われても仕方あるまい。
 俺は悪を許せぬ義人として邪神を斬る!」

「バカなことを言うでない。
 我は神だぞ? 神殺しをするとでも言うのか!」

「神は人のために存在するのではなく、神の体裁や秩序を守るために存在するのだろ?
 それであれば人は神のための存在ではない!
 己の信念と生きる道のために神とでも戦おうじゃないか」

「いかん、そんなことは赦されんぞ。
 神を殺した人間なんぞ過去にも、もちろん未来にも存在してはならぬ!
 あってなるものか!」

「言い訳は地獄でするんだな、覚悟しろ!」

 俺はまっ白い蛇神の首を斬り落とすつもりで目の前を横薙ぎにした。空間が歪み現実と霊界の狭間を斬ったような不思議な感覚がして歪んだ視界を覗き込んだ。

『―― カキン!』

 しかし蛇の首は胴体と繋がったままだった。どうやら本命のお出ましと言うわけか。

「もう、ホント短気で物騒なんだから。
 君たちももっと柔軟に対応してくれないと困るよ。
 こういうのは相手があるものなんだからねぇ」

 そこには白無垢のローブを身に纏った小さな子供が立っており、俺の刃を細い木の枝のような杖で受け止めていた。

「その力、雑魚とは比べ物にならんな。
 貴様が統率神だな?」

「さすが百戦錬磨の戦士なだけのことはあるね。
 いかにも僕が統率神だよ。
 今回はホント混乱を招き迷惑を掛けて悪かったね」

「悪いと思っているならそのままにしておいてくれないか。
 俺は力を悪用するつもりはないし、ジョアンナだって俺を利用しようだなんて考えていない。
 この世界に適応し、誰にも迷惑を掛けずまっとうに生きていくつもりなんだ」

「うん知ってるよ。
 だけどやっぱり異端はそのままにしておけないよ。
 いつ事故が起きるかわからないし、ルールにも反してるからね」

「転生のルールと言うやつか。
 それは俺の知ったことではない。
 今ここに存在していることが全てさ」

「つまり? その存在を認めろって言うのかい?
 イレギュラーだとわかっていて見過ごせと?」

「そうだな、それが神のしたことであるのだからなおさらだ。
 知っているか? いい上司は部下の尻拭いが出来るものらしいぞ?
 俺がこの世界へ来て学んだことの一つだ」

「なるほどね、そう言われると一理あると言わざるを得ない。
 でもね、部下の失敗の責任を取るのも上司の仕事なのさ」

「ならば仕方ない、貴様を斬って終わらせるとしよう。
 神であろうと敵対するものに従うようなやわな心は持たんのでな」

「ちょっとうみんちゅ、やりすぎだよ。
 神様倒すとかムリムリだし、出来たとしてもずっと業を背負うことになるんじゃない?」

「構わん、俺には俺の信念がある。
 こいつらに俺の、俺たちの邪魔をする権利はない!」

「でもうみんちゅがこの世からいなくなっちゃう方がもっとヤダよ。
 元の世界へ帰っても生きてるならそれでいいからさ……
 だからここで死んだりして欲しくないの」

「俺は死なんさ、生きてここで共に暮らそうじゃないか。
 神のいない世界も悪くないと思うぞ?」

 正直勝ち目があるかと問われたら答えようがない。何しろ相手はこの世のすべてをつかさどる存在なのだ。人間なんてちっぽけな存在が勝ち負けを争えるような存在であるはずがない。

 だがやるしかない。今を護るためには戦うしかないのだ。勝てばそれでよし、負ければ存在が消えてなくなり、ジョアンナの記憶からも抹消されるだろうから大人しく帰ったのと結果は同じこと。悔いが残るかどうかと俺の覚悟の問題だけだ。

 右手に念を込め霊体の刀をしっかりと握る。先ほどはか細い杖で俺の一刀を止められてしまったのだ。次も同じ結果になることは目に見えていた。だがやらないわけにはいかない。

 今にも斬りかかろうとしたその瞬間、ンダバーの神が叫んだ。

「統率神様! お待ちください!
 ワシがすべて悪いのです、だから二人を許してやってください!
 ンダバーの武力均衡に関しましては私がなんとかします!」

「ふうん、それでいったいどうするつもり?
 まさか人間の諍いが起きるたびに介入するなんて言わないよね?」

「もちろんです。
 ワシが神の座を降り、グライブとして蘇りたいと思います。
 同じ働きはできなくとも存在を示すだけで充分抑止力となりますゆえ効果はあるかと。
 ですからこの二人を引き離すのはおやめいただけませんか?」

「なんで一人の人間にそこまで肩入れするの?
 自分が殺しちゃったから?」

「もちろんそれもありますが、この二人には運命的な絆を感じるのです。
 この娘の前にグライブが現れたのは全くの偶然でした。
 ですがすぐに労わる優しき心を持っていました。
 そしてお互いの境遇が似ていたとはいえ、信頼感がここまで早く芽生えたことも想定外です。
 神である立場で運命などと言うのはおかしいかもしれません。
 それでもこの二人にはまだまだ共に歩んでもらいたいと感じるのです」

「まあそこまで言うなら考えなくもないけどさ。
 今後どうなるかはわからないよ?
 人間なんてすぐにくっついたり別れたりするもんだしね。
 しかも君だって神を降りたら二度と様子を知ることはできないじゃないの」

「ワシが知る必要はありませぬ。
 この二人ならきっとお互いを尊重し合って助け合い生きていくことでしょう。
 それが永遠に続かなくてもそれはそれですから後悔はしません」

「そこまで肩入れするのも不自然だよね。
 君はまだなにか隠してるんじゃない?
 例えば百五十年くらい前のことにこだわってるとかさ」

 そう言えばこの海人と言う少年の体は水神の知り合いだったと聞いた。だがンダバーの神も知り合いだったとは聞いていない。いったいどういうことだろうか。

「それは…… 無関係とは申しませんが、もはや別人ですから……」

「でも君ってあの少年のこと好いてたでしょ?
 それくらいはわかってるんだけどな」

「な、なんですって!?
 この神様ったらお爺さんなのに男色家なの!?」

「こら! 相変わらず無礼なやつじゃの。
 ワシはれっきとした女性、つまり女神じゃぞ!」

「嘘でしょ…… 全然そんな風に見えないんだけど……
 もしかしてンダバーの女性ってみんなこんな感じなの?」

「バカ言うな、そんなわけなかろう。
 年老いてこいつみたいになった女もいなくはないが稀だろうよ。
 それにしても自ら女神と口にするとはなぁ。
 老婆心ながら忠告しておくが、とてもじゃないが女神には見えんよ。
 さながら老婆神といったところか、ぶわっはっは」

「ちっ、随分とツマラン冗談を言うのう。
 ワシはどちらかと言うと貴様らの味方をしてやっていると言うのになんという扱いじゃ。
 それともやはりンダバーへ帰るか?」

「いや帰らん、絶対に!
 この統率神を倒してでも帰ってなるものか」

 すっかり興が削がれた気もするが、ここで諦めるわけにはいかない。俺は改めて剣を握りしめ少年のような姿をした統率神へと向き合ったのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

スライム退治専門のさえないおっさんの冒険

守 秀斗
ファンタジー
俺と相棒二人だけの冴えない冒険者パーティー。普段はスライム退治が専門だ。その冴えない日常を語る。

【完結】異世界で魔道具チートでのんびり商売生活

シマセイ
ファンタジー
大学生・誠也は工事現場の穴に落ちて異世界へ。 物体に魔力を付与できるチートスキルを見つけ、 能力を隠しつつ魔道具を作って商業ギルドで商売開始。 のんびりスローライフを目指す毎日が幕を開ける!

不遇スキル「わらしべ長者」で殺せぬ勇者 〜魔力ゼロでも無双します〜

カジキカジキ
ファンタジー
 スキル「わらしべ長者」って何ですか? アイテムを手にすると、スキル「わらしべ長者」が発動し、強制イベントになるんです。  これ、止めること出来ないんですか?! 十歳のスキル授与で「わらしべ長者」を授かった主人公アベルは幼い頃から勇者への憧れが強い子供だった、憧れていたスキル「勇者」は引っ込み思案の友達テツが授かり王都へと連れて行かれる。  十三歳になったアベルは自分のスキル「わらしべ長者」を使いながら冒険者となり王都を目指した。 王都に行き、勇者のスキルを得た友達に会いたいと思ったからだ。  魔物との戦争が行われているはずの王都は、平和で市民は魔物なんて全く知らずに過ごしていた。 魔物のいる南の地を目指すため、王立学園へと入学するアベル、勇者になった友達の行方は、アベルのスキルはどう進化して行くのか。 スキルを駆使して勇者を目指せ! ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 扉絵は、AI利用したイラストです。 アベルとニヤ、イヅミのFA大歓迎です!! 描いて下さる絵師さんも募集中、要相談Xにて。

俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない

宍戸亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。 不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。 そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。 帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。 そして邂逅する謎の組織。 萌の物語が始まる。

エリクサーは不老不死の薬ではありません。~完成したエリクサーのせいで追放されましたが、隣国で色々助けてたら聖人に……ただの草使いですよ~

シロ鼬
ファンタジー
エリクサー……それは生命あるものすべてを癒し、治す薬――そう、それだけだ。 主人公、リッツはスキル『草』と持ち前の知識でついにエリクサーを完成させるが、なぜか王様に偽物と判断されてしまう。 追放され行く当てもなくなったリッツは、とりあえず大好きな草を集めていると怪我をした神獣の子に出会う。 さらには倒れた少女と出会い、疫病が発生したという隣国へ向かった。 疫病? これ飲めば治りますよ? これは自前の薬とエリクサーを使い、聖人と呼ばれてしまった男の物語。

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

処理中です...