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第四章 目指せ!フランチャイズで左団扇編
67.ヒステリック戦乙女
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「だーかーらー! そんなこと言われてもできないよ!」
「だから! 強く握らないで軽くでいいんだってば!」
「そんなこと言われてもできないものはできないの!」
「こうやって―― すっ、くるって回すのよ!」
「軽くつまんで…… ああもう! ちゃんと持たないと落としちゃうじゃないの!」
「めげずにもう一度よ! ああー! それじゃ量が多すぎるってば!
さっきも言ったでしょ!!」
「そんなに言うならミーヤが全部焼いてくれればいいじゃないの!
私だって一生懸命やってるのにさ!!
ダメダメダメばあああーっかり!」
もう朝から何時間たっているのだろうか。せっかく細工屋で特製の鉄板を作ってもらったのに、フルルは全然うまくできなくて諦めかけている。しまいには癇癪を起こして二人でケンカしながら調理の練習をしているのだが、付き合わせているレナージュのうんざり顔が目に痛い。
「フルルって案外不器用ね」
「なんですって!
じゃあレナージュやってみなさいよ!
すごく難しいんだからね!!」
もうずっとこの調子である。ミーヤの提案で、皿へ乗せて提供するのでは回収が大変なので、クレープ生地に乗せたり挟んだりして持って帰ってもらうことにしたのだ。しかしトンボを回すのがフルルにとっては難しいらしく、朝から一度も成功していない。卵と違って麦の粉は大量にあるので気兼ねなく練習できるのだが、さすがに疲れてきて集中力も無くなっているようだ。
「わかったわ…… ちょっと早いけどお昼でも食べて落ち着きましょう?
怒鳴り過ぎてもう喉カラカラよ」
「だったら怒鳴らなければいじゃないの……
そりゃ何度やってもできない私も悪いけどさあ」
「違うわよ、できないから怒ってるんじゃないのよ?
すぐに弱音吐くから怒ってるんだってば」
この会話、もう何度も繰り返していてさすがに参ってきた。ミーヤが初めてクレープを作ったのは保育園の頃だったのでもっと簡単に考えていたのだが、幼児用おもちゃのクレープメーカーとは違って、トンボで生地を伸ばすのが難しいようである。
「そうよ、なにも生地を使わないでトンボを回す練習から始めたらいいのよ。
こうやって指先で軽くつまんで、くるっと回すだけなんだからフルルなら出来るわ」
「ちょっと? 休憩するんじゃなかったの?
ミーヤの焼いたこの生地食べましょうよ」
レナージュはもう我慢の限界らしいし、チカマはすでに勝手につまんで食べている。
「ミーヤさま、これ味しない。
おいしくないの初めて」
「これはね、野外食堂のパンみたいに中へ具材を入れるのよ。
今の予定だと目玉焼きだけど、甘いクリームもお勧めなの」
「ベーコンと果実でもいい?」
「ええもちろん、チカマの好きな物を挟みましょうね。
今ベーコンを焼くから待っていてね」
「ミーヤ、私は卵がいいな。
フルルが焼いてくれてもいいのよ?」
まったく食べるだけの人たちは気楽でいいわね、なんてフルルがやさぐれている。目玉焼きとゆで卵をマスターし、料理スキルが順調に上がっていたはずが、できないことに直面し相当参っているようだ。せっかくおかずクレープを食べるのだから、刻んだ野菜と一緒に簡単オムレツを作ったところ、またフルルが癇癪を起した。
「なんで次から次へと新しいもの作るのよ!
そんなにされても全部はできないよ!
しかもなにそれは? 彩りよくておいしそうじゃないの!」
「別に全部を作らなくてもいいのよ?
でもこれは簡単だから覚えた方がいいと思うけどね!」
怒っているのか褒めてくれているのかわかないフルルに対し、ミーヤもケンカ腰で応戦してしまう。きっと疲れてどちらもイライラしているのだろう。
「これおいしいわ、オムレツって言ったわね。
新メニューに加えましょうよ」
「また他人事だと思ってレナージュは簡単に言うんだから!
作って店を切り盛りするのは私なのよ?
これ以上お客が増えたら寝る時間がまったく無くなっちゃうわ!」
だが結局、クレープを作るのは一時中断し、オムレツレシピをマスターすることになった。流石に卵の扱いは慣れたもので、あっという間にレシピを習得したおかげで機嫌が直ってきたようだ。
「なんで卵料理はすぐマスターできるのかしらね。
特別な事情でもあるのかしら」
「特別な事情なんて知らないわよ。
そんなことよりこのまま卵料理しか作れなかったらどうしよう……」
「そんなはずないわ、がんばりましょう!
食べ終わったならクレープの続きやるわよ?」
「仕方ないわね…… 今度こそマスターして見せるわ!」
「そうよ! その意気よ! きっと出来るようになるわ!」
こうしてミーヤとフルルのクレープ戦争は続き、、夜中になってもまだ終わらなかった。レナージュはイライザと合流して酒場へ行ってしまったし、チカマはもうお腹いっぱいと言いながらクレープ生地を食べ続けていた。
「だから! 強く握らないで軽くでいいんだってば!」
「そんなこと言われてもできないものはできないの!」
「こうやって―― すっ、くるって回すのよ!」
「軽くつまんで…… ああもう! ちゃんと持たないと落としちゃうじゃないの!」
「めげずにもう一度よ! ああー! それじゃ量が多すぎるってば!
さっきも言ったでしょ!!」
「そんなに言うならミーヤが全部焼いてくれればいいじゃないの!
私だって一生懸命やってるのにさ!!
ダメダメダメばあああーっかり!」
もう朝から何時間たっているのだろうか。せっかく細工屋で特製の鉄板を作ってもらったのに、フルルは全然うまくできなくて諦めかけている。しまいには癇癪を起こして二人でケンカしながら調理の練習をしているのだが、付き合わせているレナージュのうんざり顔が目に痛い。
「フルルって案外不器用ね」
「なんですって!
じゃあレナージュやってみなさいよ!
すごく難しいんだからね!!」
もうずっとこの調子である。ミーヤの提案で、皿へ乗せて提供するのでは回収が大変なので、クレープ生地に乗せたり挟んだりして持って帰ってもらうことにしたのだ。しかしトンボを回すのがフルルにとっては難しいらしく、朝から一度も成功していない。卵と違って麦の粉は大量にあるので気兼ねなく練習できるのだが、さすがに疲れてきて集中力も無くなっているようだ。
「わかったわ…… ちょっと早いけどお昼でも食べて落ち着きましょう?
怒鳴り過ぎてもう喉カラカラよ」
「だったら怒鳴らなければいじゃないの……
そりゃ何度やってもできない私も悪いけどさあ」
「違うわよ、できないから怒ってるんじゃないのよ?
すぐに弱音吐くから怒ってるんだってば」
この会話、もう何度も繰り返していてさすがに参ってきた。ミーヤが初めてクレープを作ったのは保育園の頃だったのでもっと簡単に考えていたのだが、幼児用おもちゃのクレープメーカーとは違って、トンボで生地を伸ばすのが難しいようである。
「そうよ、なにも生地を使わないでトンボを回す練習から始めたらいいのよ。
こうやって指先で軽くつまんで、くるっと回すだけなんだからフルルなら出来るわ」
「ちょっと? 休憩するんじゃなかったの?
ミーヤの焼いたこの生地食べましょうよ」
レナージュはもう我慢の限界らしいし、チカマはすでに勝手につまんで食べている。
「ミーヤさま、これ味しない。
おいしくないの初めて」
「これはね、野外食堂のパンみたいに中へ具材を入れるのよ。
今の予定だと目玉焼きだけど、甘いクリームもお勧めなの」
「ベーコンと果実でもいい?」
「ええもちろん、チカマの好きな物を挟みましょうね。
今ベーコンを焼くから待っていてね」
「ミーヤ、私は卵がいいな。
フルルが焼いてくれてもいいのよ?」
まったく食べるだけの人たちは気楽でいいわね、なんてフルルがやさぐれている。目玉焼きとゆで卵をマスターし、料理スキルが順調に上がっていたはずが、できないことに直面し相当参っているようだ。せっかくおかずクレープを食べるのだから、刻んだ野菜と一緒に簡単オムレツを作ったところ、またフルルが癇癪を起した。
「なんで次から次へと新しいもの作るのよ!
そんなにされても全部はできないよ!
しかもなにそれは? 彩りよくておいしそうじゃないの!」
「別に全部を作らなくてもいいのよ?
でもこれは簡単だから覚えた方がいいと思うけどね!」
怒っているのか褒めてくれているのかわかないフルルに対し、ミーヤもケンカ腰で応戦してしまう。きっと疲れてどちらもイライラしているのだろう。
「これおいしいわ、オムレツって言ったわね。
新メニューに加えましょうよ」
「また他人事だと思ってレナージュは簡単に言うんだから!
作って店を切り盛りするのは私なのよ?
これ以上お客が増えたら寝る時間がまったく無くなっちゃうわ!」
だが結局、クレープを作るのは一時中断し、オムレツレシピをマスターすることになった。流石に卵の扱いは慣れたもので、あっという間にレシピを習得したおかげで機嫌が直ってきたようだ。
「なんで卵料理はすぐマスターできるのかしらね。
特別な事情でもあるのかしら」
「特別な事情なんて知らないわよ。
そんなことよりこのまま卵料理しか作れなかったらどうしよう……」
「そんなはずないわ、がんばりましょう!
食べ終わったならクレープの続きやるわよ?」
「仕方ないわね…… 今度こそマスターして見せるわ!」
「そうよ! その意気よ! きっと出来るようになるわ!」
こうしてミーヤとフルルのクレープ戦争は続き、、夜中になってもまだ終わらなかった。レナージュはイライザと合流して酒場へ行ってしまったし、チカマはもうお腹いっぱいと言いながらクレープ生地を食べ続けていた。
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