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第四章 目指せ!フランチャイズで左団扇編
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「やあ、ブッポム殿、急な訪問失礼するよ。
そちらの女性が神人様ですかな?
ごきげんよう、お初にお目にかかります。
わたくしはノミーと申しまして、ジョイポンで魔法関連の研究をしている者でございます」
ノミーと名乗った中年のエルフは、丁寧なあいさつをしながら深々とお辞儀をしたあと、ミーヤの手を取ってその甲にキスをした。こんな事されたのは初めてなので、緊張と合わせてどぎまぎしてうろたえた様子が表に出てしまった。
「こ、これはご丁寧に、ありがとうございます、ノミー様。
私はミーヤ・ハーベスと申します」
「これはこれは美しい獣人のお姫様、お会いできて光栄に存じます。
いやはやブッポム殿には感謝ですなあ。
偶然とはいえ声をかけていただいてありがとう、わが友よ」
どうもこのノミーと言う方はいちいち大げさな物言いと態度をする。別に嫌味があるわけではないし、気分が悪くなることはないが、ミーヤもつられておかしな言葉遣いになりそうである。
「ノミー様、こちらはチカマと言います。
私の姉妹のような間柄なので同席させていただいております」
「おお、こちらはまたかわいらしい魔人どのでございますなあ。
きっとこれがお似合いになりますよ。
お二方ともどうぞお納めくださいまし」
そう言って目の前に差し出されたのは、貝殻を使った髪留めだった。カナイ村はもちろん、ジスコも内陸部なので生きた貝どころか貝殻を見たのも初めてだ。
「なんてきれいな髪留め! これは貝ですね!
こんな貴重なもの、いただいてよろしいのですか?」
「もちろんでございます。
ジョイポンではそれほど珍しくもない粗末な品で申し訳ありません。
ただこちらでは珍しいのではないでしょうか。
逆にジョイポンでは鹿の角や獣の毛皮が珍重されております。
場所により物の価値が違うことは当然でしょう?」
「まさしくその通りですね。
それでは遠慮なくいただいておきます。
チカマ、良かったわね」
「えっと、ノミーさまありがと
ボク大事にします」
「喜んでいただけたようで幸いです。
それにしても貝をご存知とはさすが神人様。
実はコレ、ジスコのマーケットで販売してもまったく売れないのですよ」
「そうなんですか!? こんなにきれいなのに。
あ、もしかしてこれが何か知らないから、身に着けるのに抵抗があるのかしらね」
「ご明察! いやあ噂にたがわぬ聡明さでございますな。
これではブッポム殿がひいきするのも当然と言うもの。
わたくしもできることならジョイポンへお連れしたいくらいです」
「そんな大げさな…… 私は普通の人とそう変わりありません。
あまり持ち上げられても困ってしまいます」
事実それほど大した知識もなく、異世界にないものを紹介したら、たまたまヒットしてしまっただけのことだ。どうもみんなに買いかぶられる傾向が有り、それはこのノミーも同様だった。
「ミーヤさま、おかわり
あまいのもう一つちょうだい?」
おっと、ここでまったく状況を理解する気もない娘がいた。でもそれがミーヤの緊張を少しほぐしてくれてありがたい。
「ちょっとまってね。
お皿に出すけど独り占めはダメよ?」
「だいじょぶ、ボク計算できるよ?
一人何個までってわかるから」
本当にわかっているのか、それを守るつもりがあるのかは何とも言えないが、まあとりあえず今持っている分はすべて出してしまおう。
「良かったらノミー様も商人長も摘まんでください。
卵で作ったムラングというお菓子です」
「おお、これはありがとうございます。
このムラングも売れ行き好評のようですね」
「はい、いつも真っ先に売り切れになってますよ。
ノミー様も食べてみてください、卵は苦手ではありませんか?」
「いやはや、卵は食べたことがございません。
存在は知っておりますが、ジョイポンには流通しておりませんのでね。
それではおひとつ頂戴いたします」
そう言ってムラングを口に入れたノミーを見ていると、目を丸くして口元を押さえている。口に合わなかったのだろうか。
「おおお、これは口の中で溶けていくような不思議な味わい。
すばらしいお味でございますな!
ぜひお土産で持ち帰りたいものです」
「お褒め頂き光栄です。
今はこれで全部なのですが、次回お越しになる日がわかっていれば事前にお作りしておきます。
どうぞご遠慮なくお申し付けくださいね」
「これはありがたい。
ジスコにも独自の食文化が生まれつつあると言うことですなあ。
ジョイポンには魚を使った料理や調味料がありますので、次の機会にはお持ちいたします。
実はその調味料は本日お持ちした発酵器で作ったものなのです」
魚の調味料!? それはナンプラーだろうか。確かあれは魚で作った醤油だった気がする。でもそもそも醤油を作るには大量の塩が必要だ。
「ジョイポンでは塩はそれほど貴重ではないのでしょうか。
ジスコではそこそこ値の張るものですし、私の生まれたカナイ村では貴重品扱いでした」
「まあそれはそうでしょう、なんせ王国ではジョイポンでしか塩を作っておりません。
そこから全国へ出荷し流通しているのですから、どうしても高価になってしまいます。
別の国では山から塩が取れる場所があるらしいのですが、本当かどうかはわかりません」
「そう言う場所もあるのですね。
知らないことばかりで勉強になります」
どうやら岩塩自体は存在しているようだ。しかしトコスト国内では見つかっていない。何とか探せないだろうか。いや、それよりもジョイポンへ行って買い付けた方が早いかもしれない。
「全国へ塩を安く潤沢に提供したいのは山々ですが、ジョイポンは農業も狩猟も盛んではありません。
そのため塩造りが唯一の産業と言ってもいいでしょう。
ですからあまり安売りもできないという事情もございます」
「それは確かにそうでしょうね。
他の都市から物資を取り寄せるための貴重な資源でしょうから。
ちなみに塩は海水を煮詰めて作っているのですか?」
「左様でございます。やはり神人様は博識でございますね。
煮詰めたものを最後にカラカラになるまで焼くと出来上がりです」
焼き塩と言うことはにがりが含まれていないと言うことになる。つまり豆腐を作る意識はないと言うことになりそうだ。そう感じたミーヤはノミーへ尋ねてみることにした。
「ジョイポンで豆は流通していますか?
ジスコでは全然見かけないんです。
白あんと言うものはあったのですが、作っているのは王都のようでした」
「豆ですか、無くはないですがやはり王都から少量入ってくるくらいですな。
積極的に食べているということはございません。
ジョイポンでは麦粥に魚や野菜を食べるのが一般的でございます」
「そうですか…… 豆を作っているのは王都だけと言うのは、独占ではなく食事情でしょうかねえ。
できれば栽培したいと思っているのですが、その辺りの事情は分かりませんか?」
「王都にも商売仲間がおりますので確認しておきましょう。
ブッポム殿は相変わらず農作物の取り扱いはしておりませぬか?」
「ですねえ、私はそれほど食に興味が無かったものですから。
今は少し後悔しているところですよ。
なんといっても神人様のお料理はとてもおいしいですからね」
「ふむふむ、確かにこのムラングは素晴らしいですからね。
他にも卵料理をお作りになっているのですか?」
「はい、いくつかを商人長へご案内して、今はお店で販売しています。
今のところ好評なのでホッとしています」
「ほおう、羨ましいことですなあ。
ジョイポンでもなにか出来そうなものがあればお教えいただきたい。
いかがですか? 神人様、ブッポム殿?」
もしかしてここで照り焼きだれレシピを売ることができるのではないだろうか。そうひらめいたミーヤが商人長を見ると、構いませんか? と小声で確認してきた。おそらく同じことを考えていたのだ。ミーヤはもちろんOKであると伝えた。
「ノミー殿、実はこちらでは手が足りなくて販売を諦めかけているレシピがあるのですよ。
よろしければそれをご案内しましょう。
もちろん神人様もご承知くださっておりますよ?」
「まことでございますか!
どのようなものかはわかりませんが、ジョイポンに無いものであればぜひお願いしたい!
やはり新しい味、未知の料理と言うものは、常に大衆に求められておりますからなあ」
「それでは明日またこちらでお会いいたしましょう。
きっとお気に召すものをお出しできると思います。
もちろんレシピも一緒にお渡しできるはずです、そうですよね? 商人長?」
「もちろんでございます。
俗な話はこちらで済ませておきますので、神人様はお気になさらずに」
もし商人長とノミーの交渉がうまく行ったら、ミーヤのレシピがジスコ外でも受け入れられるかがわかるかもしれない。そんな期待を胸に秘め、なんとなく隣のチカマをなでるミーヤだった。
そちらの女性が神人様ですかな?
ごきげんよう、お初にお目にかかります。
わたくしはノミーと申しまして、ジョイポンで魔法関連の研究をしている者でございます」
ノミーと名乗った中年のエルフは、丁寧なあいさつをしながら深々とお辞儀をしたあと、ミーヤの手を取ってその甲にキスをした。こんな事されたのは初めてなので、緊張と合わせてどぎまぎしてうろたえた様子が表に出てしまった。
「こ、これはご丁寧に、ありがとうございます、ノミー様。
私はミーヤ・ハーベスと申します」
「これはこれは美しい獣人のお姫様、お会いできて光栄に存じます。
いやはやブッポム殿には感謝ですなあ。
偶然とはいえ声をかけていただいてありがとう、わが友よ」
どうもこのノミーと言う方はいちいち大げさな物言いと態度をする。別に嫌味があるわけではないし、気分が悪くなることはないが、ミーヤもつられておかしな言葉遣いになりそうである。
「ノミー様、こちらはチカマと言います。
私の姉妹のような間柄なので同席させていただいております」
「おお、こちらはまたかわいらしい魔人どのでございますなあ。
きっとこれがお似合いになりますよ。
お二方ともどうぞお納めくださいまし」
そう言って目の前に差し出されたのは、貝殻を使った髪留めだった。カナイ村はもちろん、ジスコも内陸部なので生きた貝どころか貝殻を見たのも初めてだ。
「なんてきれいな髪留め! これは貝ですね!
こんな貴重なもの、いただいてよろしいのですか?」
「もちろんでございます。
ジョイポンではそれほど珍しくもない粗末な品で申し訳ありません。
ただこちらでは珍しいのではないでしょうか。
逆にジョイポンでは鹿の角や獣の毛皮が珍重されております。
場所により物の価値が違うことは当然でしょう?」
「まさしくその通りですね。
それでは遠慮なくいただいておきます。
チカマ、良かったわね」
「えっと、ノミーさまありがと
ボク大事にします」
「喜んでいただけたようで幸いです。
それにしても貝をご存知とはさすが神人様。
実はコレ、ジスコのマーケットで販売してもまったく売れないのですよ」
「そうなんですか!? こんなにきれいなのに。
あ、もしかしてこれが何か知らないから、身に着けるのに抵抗があるのかしらね」
「ご明察! いやあ噂にたがわぬ聡明さでございますな。
これではブッポム殿がひいきするのも当然と言うもの。
わたくしもできることならジョイポンへお連れしたいくらいです」
「そんな大げさな…… 私は普通の人とそう変わりありません。
あまり持ち上げられても困ってしまいます」
事実それほど大した知識もなく、異世界にないものを紹介したら、たまたまヒットしてしまっただけのことだ。どうもみんなに買いかぶられる傾向が有り、それはこのノミーも同様だった。
「ミーヤさま、おかわり
あまいのもう一つちょうだい?」
おっと、ここでまったく状況を理解する気もない娘がいた。でもそれがミーヤの緊張を少しほぐしてくれてありがたい。
「ちょっとまってね。
お皿に出すけど独り占めはダメよ?」
「だいじょぶ、ボク計算できるよ?
一人何個までってわかるから」
本当にわかっているのか、それを守るつもりがあるのかは何とも言えないが、まあとりあえず今持っている分はすべて出してしまおう。
「良かったらノミー様も商人長も摘まんでください。
卵で作ったムラングというお菓子です」
「おお、これはありがとうございます。
このムラングも売れ行き好評のようですね」
「はい、いつも真っ先に売り切れになってますよ。
ノミー様も食べてみてください、卵は苦手ではありませんか?」
「いやはや、卵は食べたことがございません。
存在は知っておりますが、ジョイポンには流通しておりませんのでね。
それではおひとつ頂戴いたします」
そう言ってムラングを口に入れたノミーを見ていると、目を丸くして口元を押さえている。口に合わなかったのだろうか。
「おおお、これは口の中で溶けていくような不思議な味わい。
すばらしいお味でございますな!
ぜひお土産で持ち帰りたいものです」
「お褒め頂き光栄です。
今はこれで全部なのですが、次回お越しになる日がわかっていれば事前にお作りしておきます。
どうぞご遠慮なくお申し付けくださいね」
「これはありがたい。
ジスコにも独自の食文化が生まれつつあると言うことですなあ。
ジョイポンには魚を使った料理や調味料がありますので、次の機会にはお持ちいたします。
実はその調味料は本日お持ちした発酵器で作ったものなのです」
魚の調味料!? それはナンプラーだろうか。確かあれは魚で作った醤油だった気がする。でもそもそも醤油を作るには大量の塩が必要だ。
「ジョイポンでは塩はそれほど貴重ではないのでしょうか。
ジスコではそこそこ値の張るものですし、私の生まれたカナイ村では貴重品扱いでした」
「まあそれはそうでしょう、なんせ王国ではジョイポンでしか塩を作っておりません。
そこから全国へ出荷し流通しているのですから、どうしても高価になってしまいます。
別の国では山から塩が取れる場所があるらしいのですが、本当かどうかはわかりません」
「そう言う場所もあるのですね。
知らないことばかりで勉強になります」
どうやら岩塩自体は存在しているようだ。しかしトコスト国内では見つかっていない。何とか探せないだろうか。いや、それよりもジョイポンへ行って買い付けた方が早いかもしれない。
「全国へ塩を安く潤沢に提供したいのは山々ですが、ジョイポンは農業も狩猟も盛んではありません。
そのため塩造りが唯一の産業と言ってもいいでしょう。
ですからあまり安売りもできないという事情もございます」
「それは確かにそうでしょうね。
他の都市から物資を取り寄せるための貴重な資源でしょうから。
ちなみに塩は海水を煮詰めて作っているのですか?」
「左様でございます。やはり神人様は博識でございますね。
煮詰めたものを最後にカラカラになるまで焼くと出来上がりです」
焼き塩と言うことはにがりが含まれていないと言うことになる。つまり豆腐を作る意識はないと言うことになりそうだ。そう感じたミーヤはノミーへ尋ねてみることにした。
「ジョイポンで豆は流通していますか?
ジスコでは全然見かけないんです。
白あんと言うものはあったのですが、作っているのは王都のようでした」
「豆ですか、無くはないですがやはり王都から少量入ってくるくらいですな。
積極的に食べているということはございません。
ジョイポンでは麦粥に魚や野菜を食べるのが一般的でございます」
「そうですか…… 豆を作っているのは王都だけと言うのは、独占ではなく食事情でしょうかねえ。
できれば栽培したいと思っているのですが、その辺りの事情は分かりませんか?」
「王都にも商売仲間がおりますので確認しておきましょう。
ブッポム殿は相変わらず農作物の取り扱いはしておりませぬか?」
「ですねえ、私はそれほど食に興味が無かったものですから。
今は少し後悔しているところですよ。
なんといっても神人様のお料理はとてもおいしいですからね」
「ふむふむ、確かにこのムラングは素晴らしいですからね。
他にも卵料理をお作りになっているのですか?」
「はい、いくつかを商人長へご案内して、今はお店で販売しています。
今のところ好評なのでホッとしています」
「ほおう、羨ましいことですなあ。
ジョイポンでもなにか出来そうなものがあればお教えいただきたい。
いかがですか? 神人様、ブッポム殿?」
もしかしてここで照り焼きだれレシピを売ることができるのではないだろうか。そうひらめいたミーヤが商人長を見ると、構いませんか? と小声で確認してきた。おそらく同じことを考えていたのだ。ミーヤはもちろんOKであると伝えた。
「ノミー殿、実はこちらでは手が足りなくて販売を諦めかけているレシピがあるのですよ。
よろしければそれをご案内しましょう。
もちろん神人様もご承知くださっておりますよ?」
「まことでございますか!
どのようなものかはわかりませんが、ジョイポンに無いものであればぜひお願いしたい!
やはり新しい味、未知の料理と言うものは、常に大衆に求められておりますからなあ」
「それでは明日またこちらでお会いいたしましょう。
きっとお気に召すものをお出しできると思います。
もちろんレシピも一緒にお渡しできるはずです、そうですよね? 商人長?」
「もちろんでございます。
俗な話はこちらで済ませておきますので、神人様はお気になさらずに」
もし商人長とノミーの交渉がうまく行ったら、ミーヤのレシピがジスコ外でも受け入れられるかがわかるかもしれない。そんな期待を胸に秘め、なんとなく隣のチカマをなでるミーヤだった。
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