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第四章 目指せ!フランチャイズで左団扇編

79.魔術師商人

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 一時はどうなることかと思ったが、無事に落としどころが見つかってよかった。さすが大都市ジスコの商人組合を束ねる商人長だ。経験もあるだろうが頭が切れるし気遣いもできる素晴らしい紳士である。こういう上司に出会えていたら色々と変わっていたかもしれない。

 そんな商人長がせっかく店に来ているので、今考えていることをある程度話すことにした。それはクリームを作るための分離器と、水飴を作るための発酵器の入手についてである。

「その二つなら王都から取り寄せることが可能です。
 少し割高になってしまいますが、王都からの便で一緒にもってきてもらいましょう」

「おいくらくらいするものなのでしょうか。
 このお店へ設置する分はお任せしますが、カナイ村へ持って帰りたいんです」

「どうでしたかね…… たしか十数万程度だったかと記憶しております。
 まあそのくらいは私がお出ししますよ。
 そのかわり、今後なにか思いついた際はまず私へご相談ください。
 もちろん今回のようにフルルを通じてでもかまいません」

「それはもう! 何から何までお世話になってしまって……
 本当にありがとうございます」

 本当に世話になり過ぎて、こんなに甘えてばかりでいいのだろうかという想いが頭をよぎる。だが商人長も商売上の利益が見込めるからこそ申し出てくれているのだ。それにミーヤへ恩を売っておきたいという打算もあるはず。つまりは遠慮する方が悪いとも言える、はずだ……

「いえいえととんでもございません。
 私としてもカナイ村の産業が増えると、キャラバン一回での利益が変わってきますからね。
 お互いの利益になることならば何なりとお申し付けください。
 ところで、発酵器での水飴製造は毎日行うものですか?」

「一度作れば数日から一週間程度は持つと思います。
 もちろん串焼きの売れ行きに左右されるので、幅はあるはずですが。
 なにか気になることでもあるのですか?」

「いいえね、発酵器はかなり色々なものが作れるらしいのですよ。
 ですから空いている時間が多いのはもったいないかと思いましてねえ」

「そうですね、でも何が作れるかもわかりませんので、発酵器が手に入ってから考えたいと思います。
 それにスキル熟練度にも関係あると思いますしね」

「それもそうですね、私としたことがつい気が急いてしまいました。
 ではこの辺で失礼するとしますね。
 器具のこともありますし、また明日にでもお会いしましょう」

 こうして商人長は帰っていったのだが、また明日? 王都から取り寄せると言っていたのになぜだろう。確か王都までは十日ほどの道のりだと聞いていた。それとまだ細かい打ち合わせが必要なのだろうか。

 ミーヤは少しだけ気になったが、チカマはそんな時間を与えてくれず、夕飯の支度を急かされるのだった。そして要望に応えて作ったハンバーグを食べたフルルはまた知らない料理だと文句を言い、ハルは再び泣き出してしまった。まったく、何事もそううまくはいかないものである。


 翌朝になり店にはまた客人、ではなく新しい従業員がやってきた。商人長が手配すると言っていたモウブと言う男性である。歳はフルルと同じくらいだろうか。

「モウブ、さっそくだけど手順を説明するわ。
 もちろん全部やってもらうわけではないけど、流れは知っておいてもらいたいからね。
 ちゃんと覚えておいてよ?」

 モウブはうんうんとうなずいているが本当にわかっているのだろうか。なんだか存在感に欠ける雰囲気に不安を覚えてしまう。それにしてもフルルは商人長以外にはかなり強気で話すので、いつか誰かとケンカにでもならないか心配になる。

 そんな時、フルルの説明を一緒になって聞いていたミーヤへ商人長からメッセージが届いた。内容はこれから館へ来てほしいと言うものだ。まもなく開店だと言うのに平気だろうか。

 そのことをフルルへ話すとすぐに行くように言われた。やっぱり商人長へ対するフルルの忠誠心や信頼感は絶対的で、自分が忙しくなるとか大変だとかの考えは後回しになるらしい。まあモウブもやってきて三人になるのだから問題ないだろう。

 それじゃお言葉に甘えて、というか、本来ミーヤは自由のはずだったことを思い出しながらチカマを起こし、それから二人で商人長の館へ向かった。


「お呼び立てして申し訳ございません。
 開店前には時間が取れなそうだったので来ていただくことになってしまいました。
 実はテレポートの巻物を入手しようとしていたのですが、予定が少し変わってしまいましてね」

「そうですか…… やはり難しかったのですね。
 まあでも気長に待ちたいと思います」

「いえいえ、そうではありません。
 神人様が探している話をしたところ、巻物を売るのではなく直接お会いしたいと言われましてね。
 まもなくやってくる予定です。ついでに分離器と発酵器を頼んでおきました」

「それは助かります!
 その方は王都からいらっしゃるのですか?」

「いいえ、ジョイポンに住む魔術師で、私とは旧知の仲でしてね。
 少し変わったところもありますが、なかなか商売上手で気のいい男ですよ」

 旧知の仲なのにテレポート入手で吹っかけられるとは、と思わなくもないが、相手も商人なら致し方ないことか。それでも手に入るだけありがたい。なんといってもテレポートさえあればジスコとカナイ村を自由に行き来できる。それはカナイ村で過ごしながらジスコの生活をいつでも堪能できるという最高の環境が手に入るということだ。

「それにしてもわざわざ私に会いたいとおっしゃって下さるなんて光栄です。
 ただ神人と言っても特別な力もありませんし、取り柄もないのでガッカリされるかも……」

「いえいえ、ご謙遜を。
 十分に才能がございますよ?
 商人にとってはなかなか魅力的かと存じます」

 商人に魅力的と言われるのは褒め言葉だとは思うのだが、ミーヤにとっては嬉しい評価ではない。それにしても、ラーメンや石鹸ならまだしも、個人番号管理機構を発明した神人の頭の中はどうなっているのだろう。元コンピューターメーカーか何かから神人になったのだろうか。

 まあ他人のことを気にしてもミーヤがそうなれるわけではない。今も、これからも、ミーヤができることを見つけながら、マールやチカマをはじめとする周囲に貢献できるよう全力を尽くすだけだ。

 それにしてもミーヤに会いに、遠くからわざわざ来るのはどんな人なんだろう。テレポートが使えるくらいだから遠いなんて感覚はないのかもしれないが、それでも人のために調理器具を買って持ってきてくれるわけだし失礼の無いようにしないといけえないだろう。

 そう思いつつ横を見ると、チカマは大口を開けて寝ていた…… きっと退屈だったのだろう。軽く揺さぶると目を覚ましたので、ムラングを食べさせて起きているようにと言い聞かせた。

「おお、どうやらやってきたようですね」

 商人長がスマメでメッセージを確認したようだ。商人長は気のいい人だと言っていたが、少し変わっているとも言っていた。もし恐い人だったらどうしよう、機嫌を損ねたらどうしよう。良い付き合いができればかなりのメリットがありそうなのでなんとかいい関係を築きたい。

 ミーヤは緊張のあまり手に汗を握って客人の到着を待っていた。

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