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第五章 別れと出会い、旅再び編

91.小さな追跡者

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 組合を出たミーヤとチカマ、それにレブンをあわせた三人は少し街をぶらつくことにした。目的は特にないが、人気の飲食店があれば見ておきたい。

「レブン、どこかお勧めの店は無いの?
 変わったものか、おいしいものか、人気のお店のどれかね」

「うーん、何がいいんだろ。
 おいらはあんま興味ないからなあ」

「普段好んで食べているものでもいいし、食べてみたいものでもいいわよ?
 それかお醤油売っているところでもいいわ」

「醤油なら武勇側のマーケットにあったかも。
 あそこには豆屋があってたまに買いに行くんだ」

「じゃあそこへ行きましょ。
 豆と醤油が欲しいと思ってたのよね」

 こうして三人は武勇の神殿側にあるマーケットへ向かった。とにかく人が多くて、ぶつからないようにするだけでも一苦労である。

「ミーヤさま、誰かついてくるよ?
 多分動物じゃない」

「分かったわ、さりげなく確認してみようかしらね」

 ミーヤはチカマを追い抜かすように前へ出てから、チカマへ話しかけるふりをしながら振り向いた。すると真後ろの少し離れたところにいた小さな少女と目が合った。しかし彼女は視線をそらす。どう考えても怪しい人の動きである。

「チカマ、ここでまってて!」

 ミーヤが急いでその少女の元へ駆け寄ると、彼女は逃げて―― 行かなかったのですぐ近くで向き合うことになった。近くで見るとその小ささが際立つ。背丈は百二十センチ程度しかなさそうだ。

「あなた、なんで私たちの後をつけて来たの?
 冒険者組合からかしら」

「あの、えっと、あの……
 魔封結晶を探しているんですよね?」

「どうしてそんなこと知ってるの?
 あの時は別の部屋で話していたはずよ?」

「いや、えっと、あの……
 南門でお見かけしたので…… つけてきました」

 なんとそんな前からずっとついて来ていたとは驚きだ。チカマを見ると首を振っているので、嘘のようではある。でも魔封結晶の入手先を知っているなら教えてもらえるかもしれないし、そうでないならつけてきた意味がわからない。

「それでえっと、あなたはなんでつけて来たの?
 魔封結晶を売りたいの? それとも情報を売りたいとかかしら?」

「いいえ、えっと、あの……
 必要なら差し上げるというかですね、冒険者なんですよね?
 私を仲間にしてくれませんか?」

「唐突過ぎてよくわからないけど、名前くらい名のってくれてもいいんじゃない?
 わたしはミーヤ、こっちはチカマよ、そっちにいるのは宿屋の子だから仲間ではないわ」

「あ、えっと、あの……
 私はナウィンと言います。
 一応冒険者を目指しているのですが、いまいち強くなれなく……
 実はこの前パーティーを追い出されたばかりなんです」

 パーティーを追い出されるなんてことあるのか。それほどに使い物にならないとか、足手まといだとか、そう言う理由があったのだろうか。

「なんで追い出されたの?
 冒険者に向いてない理由でもあるのかしら
 話を聞くくらいはいいけど、今はマーケットへ行きたいのよね」

「ああ、えっと、あの……
 ごめんなさい、迷惑でしたか?
 お時間出来るまで待ってますからぜひお願いします」

「ミーヤさま、かわいそうだから聞いてあげて?
 ボクまだお腹空いてないから、ね?」

 ミーヤはチカマの気遣いを嬉しく思い、その要望を受け入れると約束した。そもそもマーケットが閉まってしまう前に寄りたかっただけで、はなから話は聞くつもりだった。

「とりあえずマーケットへ行きましょう。
 豆が買えると嬉しいんだけどねえ」

 こうして新たな仲間? というのか、おまけを加えたみんなでマーケットへ向かった。


 王都のマーケットは、さすがにジスコよりも規模が大きく物が豊富で活気がある。とは言え売っているものには大差がない。残念ながら果物に野菜、肉類や調味料の種類が似たようなものだった。しかし大きく違っていたのはスパイスが多数並んでいることだ。これならカレーも作れそうだなんて思っていたら、食欲をを刺激する香りが漂ってきた。

「このスパイスの香り凄いわね。
 種類が多すぎて、どれをどう使うのかなんて見てもわからないわ」

「辛いとか甘いとか好みを言えば調合してくれるんだよ。
 うちでも結構使ってるんだ」

 レブンがそう教えてくれたのだが、ミーヤは頭の中でとげぬき地蔵の近くで売っている七味唐辛子を連想していた。それにしても、好みに合わせてその場で調合すると言うのはいいアイデアだし、ひとつひとつの風味がわからなくてもトータルで好みの味になるならハズレも少ないだろう。

 興味を持ったので一つ買ってみることにした。辛さ抑え目でスパイシー、色目は黄色くなるように調合してもらう。お金を払って品物を受け取ろうとすると、配合レシピをつけるかどうか聞かれた。もし次回以降同じ物が欲しければ、そのレシピを渡せばまた作ってくれるらしい。これは憎い配慮だと感心しながら追加料金を払い木片に書かれたレシピを付けてもらった、

「なかなか商売上手ね。
 でもまた同じ物が買えるなら安心して使えるわ」

「姉ちゃんは料理人なのか?
 冒険者だと思ってたんだけどなあ」

「姉ちゃんじゃなくてお客様でしょ!
 まったく口が悪いんだから。
 私は料理人じゃないけど冒険者でもないわよ。
 あえて言うなら…… 自分でもわからないわ」

「なんだそれ、へんなの。
 そろそろ夕飯が出来るみたいだから宿へ帰ろうよ。
 豆は売り切れだったんだからまた明日だな」

「わかってるわよ、後は蜂蜜だけ買いたいわ。
 さっきのあそこの店ね、戻りながら寄っていきましょ」

 ジスコには無かった蜂蜜が嬉しくて、使い道も決めてないのについ買ってしまった。だがチカマに舐められないよう注意しておかなければいけない。そろそろ水飴も無くなる頃なので飴玉は買ってあげたが、練ることができないのがちょっと不満らしい。

「ナウィンも一緒に来たらいいわ。
 ねえレブン? 夕飯は一人増えても平気かしら?」

「多分平気だけど一応伝えておくよ。
 今日は肉の鍋だけど、言われた通り麦粥じゃなくてトウモロコシにしたぞ。
 あんまあわなそうだけど要望に応えたんだからちゃんと食ってくれな」

 リクエストに応えてくれたのは嬉しいが、主食におかずをあわせるという考えはなかったのだろうか。それにしてもレブンは生意気である。宿屋の跡継ぎならもっと客商売に向いた話し方を学ぶようにと、親へ注文をつけたいくらいだ。

 そんなことを考えながら宿屋と戻った。何もかもが謎な小さな少女、ナウィンも連れて。

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