神様が創りし地〜勇者パーティーの回復魔法師、転生しても回復魔法を極める!〜

立花 黒

文字の大きさ
26 / 76
ダンジョン断崖絶壁の虚空城

第26話、エルを現地で訓練

しおりを挟む
 噴水広場から伸びる道の一つ。煉瓦造りの民家が立ち並ぶ細い路地を選び進んでいると、緩い上り坂に変わる。
 どうやら城下町を奥へと進んで行くと、最終的には前方斜め上方に見えるあの荘厳な城へと行き着くようで、どこも上り坂となっているようだ。また途中から道幅が広がりを見せる通りを歩いていると、フラフラと徘徊している二体の骸骨兵士スケルトンに出くわす。
 そいつらは私たちに気づくと、全身をカシャカシャいわせながら駆け出した。
 骸骨兵士は剣を持った奴と槍を持った奴、それぞれ一体ずつか。ここも念のため、私が対処するか。

 先頭は剣を振り下ろそうと駆けてくる骸骨兵士か。
 迎え討つ私は剣を振り下ろされる直前に間合いを詰めると、骸骨兵士の肘部分を左手で下から掴む事で攻撃を阻止。そして次の瞬間には粗雑に振り下ろした右手で、引き千切るようにして骸骨兵士の肩口から胴体部分までを影の悪魔ドギーマンごと破壊する。

 そこへ後続の骸骨兵士が槍で突いてきたためそれをクルリと半身になり躱すと、そのままの流れで身体を回転させ骸骨兵士の懐に飛び込み密着。そこから流れるように骸骨兵士の手首を右手で取り脇の下に肩を潜り込ませる事により全身を持ち上げると、その持ち上げた状態で力強く踏み込む事により民家の壁へ突撃。そのため私の背と堅い壁に挟まれた骸骨兵士は、衝撃で粉々になり影の悪魔ごと消滅した。

「アルド、あんたもしかして武闘家モンクなの? 」

「いえ、私はただの勤勉な聖職者です」

 とそこで、道端に放置された荷馬車の陰から新手の彷徨う人形が一体現れた。そいつは先ほどの彷徨う人形と同じように、ゆっくりこちらへ向かって来ている。

 そこでエルの魔力回路を確認する。
 ふむふむ、私が施した聖魔法防御プロテクションが効果を発揮する中、第一魔力回路が綺麗に回転しているのが見えるから万が一もないだろう。
 よし、ここは頑張って貰うか。

「エル、今度はお前があいつを倒す番だ。私が見込んだお前なら、必ず倒せる」

「……はい、やってみます! 」

 エルは剣を握り締め、間合いをそろりそろりと縮めて行く。そして——

「やぁー! 」

 思い切って一歩踏み込んだエルが、右上から左下へと剣を振る袈裟斬りをする。それにより彷徨う人形は胸元に亀裂が走る。またその時与えた衝撃により、彷徨う人形はその場に転倒した。

 因みに聖魔法防御を武器に唱えると、強度が上がる代わりに斬れ味は落ちてしまう。そのため斬れ味が関係ない弓や素手は耐久性が上がり、剣でも殴打に有効な敵を前にした時にはこの聖魔法防御が大いに役立つ。

「やっ、やった! 」

「エル、まだだ。踏みつけて彷徨う人形パペットを破壊すると同時に影の悪魔ドギーマンへもトドメを刺すのだ」

 彷徨う人形は倒れはしているが、身体をピクピク動かし立ち上がろうとしている。

「はっ、はい! 」

 そして何度も繰り出されるフットスタンプにより、倒れた彷徨う人形は粉々に砕かれていく。そしてエルの身体はエンチャントされた状態になっているため、その中の影の悪魔にもきちんとダメージを与え続け遂には消滅させた。しかし反応が消えた事が分からないエルは、一生懸命踏みつけを続けている。

 そこで閃いた私は小石を拾うと、こちらに背中を向けているエルへ向け投げる。

「おおわぁ! 」

 エルはそれを寸でのところで躱す。そして振り返ると、目を見開き信じられないモノでも見るような顔で私に視線を送り出した。

 なるほど、そういう事か。エルは自身の身体から溢れ出る闘気量が、現段階少しだけ人より多い。そして今の小石や初めて会った時のヒールのように迫り来る脅威は、その纏う闘気で察知していたのだろう。また常人なら例え闘気に触れた時点で気が付いたとしても手遅れなのだが、そこはエルの天才的な感覚と身体能力の高さでそこからの回避を可能にしているようだ。

「躱すとはやるじゃないか。ただこれからも気を抜かずに、常に周囲に気を配るのだ」

「……アルドさんって、スパルタ教育なんですか? 」

 そこでさらに新手、骸骨兵士が一体現れた。相手は剣を持ってはいるが、祝福を受けているエルの状態ならば例え直撃を受けても少し肉を切られる程度。
 エルの今後のため、ここも一人で任せるか。

「エル、次の相手が来たぞ。アレも一人で倒すのだ」

「えー、連戦ですか!? それに相手は剣を持っていますよ! 斬られたら死んじゃいますよ! 」

「大丈夫だ、仮に怪我をしてもすぐに回復をしてやる。だから安心して斬られても良いぞ」

「お姉ちゃーん、アルドさんは鬼です! スパルタ鬼コーチです! 」

「アルドくん、エルちゃんもあぁ言っていますし、休ませてあげたほうが良いのではないですか? 」

「リーヴェ、これはエルのためなのだ。冒険者になるからには、いつか格上と戦う状況が必ず訪れる。その時にその場から逃げ出せるぐらいの力は持っていないと、その遭遇イコール人生の最後となってしまう。だから経験は多いに越した事はない。リーヴェもエルが死んだら悲しいだろ? 」

「そうですけど……」

「なぁに、私が考える冒険者とは、常に自身の安全マージンを確保して行動をする者だ。無謀な戦いや無理な冒険はさせないよ」

「……わかりました! アルドくんが言うなら間違いありません! 」

「おっ、お姉ちゃんがあっさり陥落した!? むしろ当然の結果と言えば当然なんだけど——」

「エル、私は付いて来るかと誘いはしたが、強制はしていない。冒険者をするかどうか、または街で他の暮らし方をするのか、決めるのはお前の自由だ」

「……わかりましたよ、やれば良いんでしょ。ボクだってお姉ちゃん達に付いて行くって決めた時に、覚悟は決めています。ちょっとだけ甘えてしまったと言うか。その、それにアルドさんの事は信頼していますし——」

「エル、人は誰しも道に迷うものさ。それと思った事は今みたいになんだって言ってくれ。その度に話し合い、決めて行こうじゃないか。私達は仲間なんだから。それにお前の才能が随一なのは私が保証する。今回の試練もお前なら必ずやり遂げられる。だから諦めずに、頑張るんだ! 」

「わかりました! いくぞ、骸骨兵士! 」

 それからリーヴェがララノアから弓の扱いを受けながら、まだこちらに気付いていない敵を弓矢で狙撃する練習をする中、私は接近戦を繰り広げるエルに向かい問答無用で小石を投げ続けた。

「なんかアルドって、立派なギルド専任講師レクチャラーになりそうよね」

「リーヴェもそう思います」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編

風魔法を誤解していませんか? 〜混ぜるな危険!見向きもされない風魔法は、無限の可能性を秘めていました〜

大沢ピヨ氏
ファンタジー
地味で不遇な風魔法──でも、使い方しだいで!? どこにでもいる男子高校生が、意識高い系お嬢様に巻き込まれ、毎日ダンジョン通いで魔法検証&お小遣い稼ぎ! 目指せ収入UP。 検証と実験で、風と火が火花を散らす!? 青春と魔法と通帳残高、ぜんぶ大事。 風魔法、実は“混ぜるな危険…

ギャルい女神と超絶チート同盟〜女神に贔屓されまくった結果、主人公クラスなチート持ち達の同盟リーダーとなってしまったんだが〜

平明神
ファンタジー
 ユーゴ・タカトー。  それは、女神の「推し」になった男。  見た目ギャルな女神ユーラウリアの色仕掛けに負け、何度も異世界を救ってきた彼に新たに下った女神のお願いは、転生や転移した者達を探すこと。  彼が出会っていく者たちは、アニメやラノベの主人公を張れるほど強くて魅力的。だけど、みんなチート的な能力や武器を持つ濃いキャラで、なかなか一筋縄ではいかない者ばかり。  彼らと仲間になって同盟を組んだユーゴは、やがて彼らと共に様々な異世界を巻き込む大きな事件に関わっていく。  その過程で、彼はリーダーシップを発揮し、新たな力を開花させていくのだった!  女神から貰ったバラエティー豊かなチート能力とチートアイテムを駆使するユーゴは、どこへ行ってもみんなの度肝を抜きまくる!  さらに、彼にはもともと特殊な能力があるようで……?  英雄、聖女、魔王、人魚、侍、巫女、お嬢様、変身ヒーロー、巨大ロボット、歌姫、メイド、追放、ざまあ───  なんでもありの異世界アベンジャーズ!  女神の使徒と異世界チートな英雄たちとの絆が紡ぐ、運命の物語、ここに開幕! ※不定期更新。最低週1回は投稿出来るように頑張ります。 ※感想やお気に入り登録をして頂けますと、作者のモチベーションがあがり、エタることなくもっと面白い話が作れます。

ダンジョンで有名モデルを助けたら公式配信に映っていたようでバズってしまいました。

夜兎ましろ
ファンタジー
 高校を卒業したばかりの少年――夜見ユウは今まで鍛えてきた自分がダンジョンでも通用するのかを知るために、はじめてのダンジョンへと向かう。もし、上手くいけば冒険者にもなれるかもしれないと考えたからだ。  ダンジョンに足を踏み入れたユウはとある女性が魔物に襲われそうになっているところに遭遇し、魔法などを使って女性を助けたのだが、偶然にもその瞬間がダンジョンの公式配信に映ってしまっており、ユウはバズってしまうことになる。  バズってしまったならしょうがないと思い、ユウは配信活動をはじめることにするのだが、何故か助けた女性と共に配信を始めることになるのだった。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

処理中です...