3 / 41
短編
魔力訓練
しおりを挟む
翌朝。
目覚めたオレは顔と歯を磨いて宿屋の食堂へ向かう。
ここが異世界である事にまだ実感はわかない。
しばらくするとナスカ達も起きてくる。
「おはよう勇飛。迷い人はいつもこんなに早く起きるのか?」
「あはは。おはよ。何もする事がなくて昨夜は早く寝たんだ。あんなに早く寝たのなんて子供の時以来だよ」
この世界にはテレビなどの娯楽はない。
娯楽どころか機械的なものが何一つ無かった。
本を読もうにも意味不明な文字が書かれてあって読めない。
諦めて昨夜は二十一時には眠りについた。
朝食を摂って宿を出る。
カインとエレナは回復薬を買い足しに行き、オレとナスカが向かったのは街の東側。
東門から出てすぐの拓けた草原だ。
「こんなとこ来て何をするんだ?」
「魔力の制御だよ。勇飛は回復魔法だけど魔力の訓練はするべきだと思うんだ。強化自体は私達の魔力だろうがヒーラーの魔力だろうが同じ事だからね」
「なるほど。強化して武器で戦う分には冒険者としてもやれなくはないな」
「そういう事! 難易度の高いクエストは受けられないけど、低難易度のクエストであれば報酬は少ないけど冒険者やれるだろ?」
「奴隷にならずに済むのならそれだけでも助かるわぁ……」
まずは一安心。
収入は少なくても生きていく糧を得る事ができる。
「ヒーラーの魔力の訓練は魔法医のエルリーから聞いてきた。エルリーは仕事があるから訓練には付き合えないし私が教えるよ」
ナスカは男のような口調だが、面倒見のいい性格らしい。
「まずは指先に魔力を集中してみるんだ。自分の体内にある魔力を放出するんだけどイメージできるか?」
指先に集中してみる。
魔力の放出どころか魔力の事がイマイチわからない。
「魔力はそうだな…… 今は勇飛の体の表面を包んでいるから、それを感覚で掴めればわかると思うんだけど」
それならわかるかも。
なんか体が軽い気もするし強化されてるって言われればそうなのかもしれない。
目を閉じて体の表面に流れる魔力を感じとるよう意識する。
少し光ってて…… ふわっとしてて…… 暖かい…… 指先に集中させるイメージ。
指先に熱をもつ感覚がある。
目を開くと指先にキラキラとした光が舞っていた。
指先を左右に動かすと、光の粒子が指を追ってくる。
「これが魔力か? 思った以上に綺麗だな」
「あー、やっぱりヒーラーの魔力だな。私達のとは違うし」
言って魔力を掌から出すナスカ。
光の球が浮いている。
「確かに見た目は違うけどどう違うんだ?」
「エルリーの話だとヒーラーの魔力は火や風なんかを発生させられないらしい」
ナスカは魔力球から魔法を発動し、火球にして見せる。
「その魔法は儀式とか呪文とか発動条件はあるのか?」
「いや、魔法は基本的にはイメージだ。魔力にイメージをしっかりと乗せると魔法になる」
「なるほど」
魔力の集まっている指先に火をイメージする。
何も変化は起こらずキラキラと光の粒子が舞っている。
「うーん。火は出ないか」
「ヒーラーの魔力じゃ仕方ないな。まぁイメージが魔力に上手く乗らないと魔法は発動しないんだけどね」
とりあえず魔力の訓練法もわかったし今後毎日やっていこうと思う。
しばらく魔力の放出を安定させた状態で保ち、ある程度は魔力を放出できるようになった。
昼食を摂って午後からはナスカから字を学び、夕方には二人共机に突っ伏して寝ていた。
教える側も教わる側もダメダメである。
迎えに来たカインとエレナが呆れ顔で起こしてくれた。
「あ、やべ。寝てる場合じゃなかった」
「もう十八時よ。今からじゃ何もできないだろうから、今夜も宿代出してあげるわ」
「いやいや、さすがに悪いしいいよ」
「私にも責任があるからな、今夜も宿に泊まっていけ」
そんなわけで異世界に来て二日目も宿代を奢ってもらった。
さらに翌朝。
「助けてもらったうえいろいろとありがとう。生活が安定したらこのお礼をさせてもらうよ」
「期待しないで待つわ。せっかく助けた命なんだから無理しちゃダメよ?」
「僕達も君の話を聞けて楽しかったよ」
「しっかり訓練するんだぞ」
お礼を告げてナスカ達と別れた。
街の外はモンスターが出るので危険だろうと、街の中央広場で魔力の訓練。
別に魔法を放つ訳でもないので問題はないと思っていたのだが、自衛騎士団の男に注意されてしまった。
他人に危害を加える意思がなくとも、街の中では魔法の使用や魔力の放出などは極力控えなければいけないらしい。
安全に訓練できる場所を聞いてみると、昨日行った東門付近はモンスターも出る事はなく安全らしい。
東門を出て魔力の訓練を始める。
実は昨夜暇だったしなかなか寝付けなかった為、宿の部屋で魔力の訓練をしていた。
すでに右手の五本の指だけでなく、掌から魔力を放出できるようになっている。
左手は今後訓練していこう。
今日はとりあえず魔法を少し調べてみようと思う。
掌に集まった魔力を燃やすイメージ。
火を発生させようと意識を集中するが、魔力に火が灯る事はなかった。
それならばと、光の粒子を火薬に例えて燃やすようにイメージする。
するとボンッ! と掌で爆発が起こった。
「び、びっくりしたぁ!」
突然の爆発に驚いた。
なんとなく魔力が粉末みたいだったから火薬をイメージして着火しただけだ。
もしかしたらこの爆発があれば戦闘用魔法として使えるのではないかと考える。
魔力を掌に集めて近くにあった枯れて朽ちた木を爆発させてみる。
バラバラに吹き飛んだ木。手には小さな反動があるのみ。
「よーっし! 俄然やる気出てきた!」
魔力を放出するスピードをあげる訓練を始め、昼になる頃には三秒もあれば充分な爆発をできる魔力を放出できるようになった。
目覚めたオレは顔と歯を磨いて宿屋の食堂へ向かう。
ここが異世界である事にまだ実感はわかない。
しばらくするとナスカ達も起きてくる。
「おはよう勇飛。迷い人はいつもこんなに早く起きるのか?」
「あはは。おはよ。何もする事がなくて昨夜は早く寝たんだ。あんなに早く寝たのなんて子供の時以来だよ」
この世界にはテレビなどの娯楽はない。
娯楽どころか機械的なものが何一つ無かった。
本を読もうにも意味不明な文字が書かれてあって読めない。
諦めて昨夜は二十一時には眠りについた。
朝食を摂って宿を出る。
カインとエレナは回復薬を買い足しに行き、オレとナスカが向かったのは街の東側。
東門から出てすぐの拓けた草原だ。
「こんなとこ来て何をするんだ?」
「魔力の制御だよ。勇飛は回復魔法だけど魔力の訓練はするべきだと思うんだ。強化自体は私達の魔力だろうがヒーラーの魔力だろうが同じ事だからね」
「なるほど。強化して武器で戦う分には冒険者としてもやれなくはないな」
「そういう事! 難易度の高いクエストは受けられないけど、低難易度のクエストであれば報酬は少ないけど冒険者やれるだろ?」
「奴隷にならずに済むのならそれだけでも助かるわぁ……」
まずは一安心。
収入は少なくても生きていく糧を得る事ができる。
「ヒーラーの魔力の訓練は魔法医のエルリーから聞いてきた。エルリーは仕事があるから訓練には付き合えないし私が教えるよ」
ナスカは男のような口調だが、面倒見のいい性格らしい。
「まずは指先に魔力を集中してみるんだ。自分の体内にある魔力を放出するんだけどイメージできるか?」
指先に集中してみる。
魔力の放出どころか魔力の事がイマイチわからない。
「魔力はそうだな…… 今は勇飛の体の表面を包んでいるから、それを感覚で掴めればわかると思うんだけど」
それならわかるかも。
なんか体が軽い気もするし強化されてるって言われればそうなのかもしれない。
目を閉じて体の表面に流れる魔力を感じとるよう意識する。
少し光ってて…… ふわっとしてて…… 暖かい…… 指先に集中させるイメージ。
指先に熱をもつ感覚がある。
目を開くと指先にキラキラとした光が舞っていた。
指先を左右に動かすと、光の粒子が指を追ってくる。
「これが魔力か? 思った以上に綺麗だな」
「あー、やっぱりヒーラーの魔力だな。私達のとは違うし」
言って魔力を掌から出すナスカ。
光の球が浮いている。
「確かに見た目は違うけどどう違うんだ?」
「エルリーの話だとヒーラーの魔力は火や風なんかを発生させられないらしい」
ナスカは魔力球から魔法を発動し、火球にして見せる。
「その魔法は儀式とか呪文とか発動条件はあるのか?」
「いや、魔法は基本的にはイメージだ。魔力にイメージをしっかりと乗せると魔法になる」
「なるほど」
魔力の集まっている指先に火をイメージする。
何も変化は起こらずキラキラと光の粒子が舞っている。
「うーん。火は出ないか」
「ヒーラーの魔力じゃ仕方ないな。まぁイメージが魔力に上手く乗らないと魔法は発動しないんだけどね」
とりあえず魔力の訓練法もわかったし今後毎日やっていこうと思う。
しばらく魔力の放出を安定させた状態で保ち、ある程度は魔力を放出できるようになった。
昼食を摂って午後からはナスカから字を学び、夕方には二人共机に突っ伏して寝ていた。
教える側も教わる側もダメダメである。
迎えに来たカインとエレナが呆れ顔で起こしてくれた。
「あ、やべ。寝てる場合じゃなかった」
「もう十八時よ。今からじゃ何もできないだろうから、今夜も宿代出してあげるわ」
「いやいや、さすがに悪いしいいよ」
「私にも責任があるからな、今夜も宿に泊まっていけ」
そんなわけで異世界に来て二日目も宿代を奢ってもらった。
さらに翌朝。
「助けてもらったうえいろいろとありがとう。生活が安定したらこのお礼をさせてもらうよ」
「期待しないで待つわ。せっかく助けた命なんだから無理しちゃダメよ?」
「僕達も君の話を聞けて楽しかったよ」
「しっかり訓練するんだぞ」
お礼を告げてナスカ達と別れた。
街の外はモンスターが出るので危険だろうと、街の中央広場で魔力の訓練。
別に魔法を放つ訳でもないので問題はないと思っていたのだが、自衛騎士団の男に注意されてしまった。
他人に危害を加える意思がなくとも、街の中では魔法の使用や魔力の放出などは極力控えなければいけないらしい。
安全に訓練できる場所を聞いてみると、昨日行った東門付近はモンスターも出る事はなく安全らしい。
東門を出て魔力の訓練を始める。
実は昨夜暇だったしなかなか寝付けなかった為、宿の部屋で魔力の訓練をしていた。
すでに右手の五本の指だけでなく、掌から魔力を放出できるようになっている。
左手は今後訓練していこう。
今日はとりあえず魔法を少し調べてみようと思う。
掌に集まった魔力を燃やすイメージ。
火を発生させようと意識を集中するが、魔力に火が灯る事はなかった。
それならばと、光の粒子を火薬に例えて燃やすようにイメージする。
するとボンッ! と掌で爆発が起こった。
「び、びっくりしたぁ!」
突然の爆発に驚いた。
なんとなく魔力が粉末みたいだったから火薬をイメージして着火しただけだ。
もしかしたらこの爆発があれば戦闘用魔法として使えるのではないかと考える。
魔力を掌に集めて近くにあった枯れて朽ちた木を爆発させてみる。
バラバラに吹き飛んだ木。手には小さな反動があるのみ。
「よーっし! 俄然やる気出てきた!」
魔力を放出するスピードをあげる訓練を始め、昼になる頃には三秒もあれば充分な爆発をできる魔力を放出できるようになった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
『異世界に転移した限界OL、なぜか周囲が勝手に盛り上がってます』
宵森みなと
ファンタジー
ブラック気味な職場で“お局扱い”に耐えながら働いていた29歳のOL、芹澤まどか。ある日、仕事帰りに道を歩いていると突然霧に包まれ、気がつけば鬱蒼とした森の中——。そこはまさかの異世界!?日本に戻るつもりは一切なし。心機一転、静かに生きていくはずだったのに、なぜか事件とトラブルが次々舞い込む!?
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私
とうとうキレてしまいました
なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが
飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした……
スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです
NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた
男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。
カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。
今年のメインイベントは受験、
あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。
だがそんな彼は飛行機が苦手だった。
電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?!
あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな?
急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。
さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?!
変なレアスキルや神具、
八百万(やおよろず)の神の加護。
レアチート盛りだくさん?!
半ばあたりシリアス
後半ざまぁ。
訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前
お腹がすいた時に食べたい食べ物など
思いついた名前とかをもじり、
なんとか、名前決めてます。
***
お名前使用してもいいよ💕っていう
心優しい方、教えて下さい🥺
悪役には使わないようにします、たぶん。
ちょっとオネェだったり、
アレ…だったりする程度です😁
すでに、使用オッケーしてくださった心優しい
皆様ありがとうございます😘
読んでくださる方や応援してくださる全てに
めっちゃ感謝を込めて💕
ありがとうございます💞
異世界に召喚されたが「間違っちゃった」と身勝手な女神に追放されてしまったので、おまけで貰ったスキルで凡人の俺は頑張って生き残ります!
椿紅颯
ファンタジー
神乃勇人(こうのゆうと)はある日、女神ルミナによって異世界へと転移させられる。
しかしまさかのまさか、それは誤転移ということだった。
身勝手な女神により、たった一人だけ仲間外れにされた挙句の果てに粗雑に扱われ、ほぼ投げ捨てられるようなかたちで異世界の地へと下ろされてしまう。
そんな踏んだり蹴ったりな、凡人主人公がおりなす異世界ファンタジー!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる