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第25話 ここが、僕の場所
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夜が更け、あやかし荘の囲炉裏部屋には、穏やかな灯りがゆれていた。
「ただいまー!」
カナエの声に続いて、小さな狐のあやかし……サクヤがちょこちょこと現れ、風呂敷に包まれた何かを大切そうに抱えていた。
「これ、サクヤが作ったんだって!」
広げられたのは、桜の葉で編まれた冠。繊細な爪で器用に編まれたその冠に、澪も思わず目を見張る。
「すごいね。……クロノくんも、見て?」
部屋の隅に静かにうずくまっていたクロノが、びくりと肩を震わせる。でも、カナエがふんわりと隣に座ると、おずおずと顔を上げた。
「……かわ、いい……」
「ほんと?サクヤ、クロノくんに似合うと思ったんだって!」
クロノはしばし黙っていたが、やがておそるおそる、冠へと手を伸ばした。
そして……小さく、でも確かに言った。
「……ありがとう」
その言葉に、サクヤもカナエも、そして澪も静かに笑った。
あの朝の勇気が、確かに誰かの心に届いていた。
その夜の食卓は、春の味で彩られていた。たけのこの炊き込みご飯、鶏の照り焼き、白澤の薬膳が効いた味噌汁、そしてふわふわの卵焼き。
「今日はクロノくんが主役ですね」
アサギが優しく笑いながら、お皿に卵焼きを盛る。
「クロノくんは三つ、カナエちゃんのは二つね!」
「えーっ!でも、いいや! クロノくん、ほんとにがんばったもんね!」
わいわいと賑やかな輪の中、クロノは湯飲みを両手で包みながら、少しはにかんだように笑っていた。
「……こわかったけど……あのとき、動けてよかった。サクヤやカナエちゃんが……あんなふうに、泣きそうな顔してるの、見ていられなかったから……」
その言葉に、澪がそっと頷く。
「怖さを抱えたまま誰かのために動けるのは……とても強いことだよ」
クロノは視線を落としながら、小さく、でも嬉しそうにしっぽを揺らした。
「……ぼく、ここにいていいのかなって……今日、ちょっとだけ思えた」
「もうね、いるんだよ」
澪が優しく答える。
「ここは、あなたの居場所だから」
静かな夜、囲炉裏のまわりに広がるのは、小さなあやかしたちのぬくもりの輪。
それは、ようやく家の中を歩きはじめた……かつて、誰にも気づかれなかった、忘れられた足音が、たしかに家の中を歩いているという確かな響きだった。
「ただいまー!」
カナエの声に続いて、小さな狐のあやかし……サクヤがちょこちょこと現れ、風呂敷に包まれた何かを大切そうに抱えていた。
「これ、サクヤが作ったんだって!」
広げられたのは、桜の葉で編まれた冠。繊細な爪で器用に編まれたその冠に、澪も思わず目を見張る。
「すごいね。……クロノくんも、見て?」
部屋の隅に静かにうずくまっていたクロノが、びくりと肩を震わせる。でも、カナエがふんわりと隣に座ると、おずおずと顔を上げた。
「……かわ、いい……」
「ほんと?サクヤ、クロノくんに似合うと思ったんだって!」
クロノはしばし黙っていたが、やがておそるおそる、冠へと手を伸ばした。
そして……小さく、でも確かに言った。
「……ありがとう」
その言葉に、サクヤもカナエも、そして澪も静かに笑った。
あの朝の勇気が、確かに誰かの心に届いていた。
その夜の食卓は、春の味で彩られていた。たけのこの炊き込みご飯、鶏の照り焼き、白澤の薬膳が効いた味噌汁、そしてふわふわの卵焼き。
「今日はクロノくんが主役ですね」
アサギが優しく笑いながら、お皿に卵焼きを盛る。
「クロノくんは三つ、カナエちゃんのは二つね!」
「えーっ!でも、いいや! クロノくん、ほんとにがんばったもんね!」
わいわいと賑やかな輪の中、クロノは湯飲みを両手で包みながら、少しはにかんだように笑っていた。
「……こわかったけど……あのとき、動けてよかった。サクヤやカナエちゃんが……あんなふうに、泣きそうな顔してるの、見ていられなかったから……」
その言葉に、澪がそっと頷く。
「怖さを抱えたまま誰かのために動けるのは……とても強いことだよ」
クロノは視線を落としながら、小さく、でも嬉しそうにしっぽを揺らした。
「……ぼく、ここにいていいのかなって……今日、ちょっとだけ思えた」
「もうね、いるんだよ」
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それは、ようやく家の中を歩きはじめた……かつて、誰にも気づかれなかった、忘れられた足音が、たしかに家の中を歩いているという確かな響きだった。
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