婚約破棄されましたが…親友のおかげで馬鹿王子だとわかりました

まきじた

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親友

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「な、何だと………!?」

「カノン、立てるかしら?」

「…!マリエル、どうして……」

「親友の一大事に駆けつけないわけないじゃない。……ゆっくり、深呼吸して」

「お、おい貴様、今なんと言った!?」

「私の名は貴様ではありません」

 怒り狂った目で怒鳴るアキレウス様。私の背を撫でながらも毅然とした態度で彼を睨みつけるマリエルは、この場で誰よりも輝いていた。

「ウォルター公爵家が長女、マリエルにございます。そして…私は『ふざけていらっしゃるのでしょうか』と申しました」

「……自分で何を言っているかわかっているのか?」

「だってあなたたち、場違いなんですもの」

「なッ……言葉を慎め!」

 堂々としていてとっても素敵なのだが、不敬になりかねないのでヒヤヒヤする。
 そんなマリエルをユーナは、信じられないものを見るような目で見ていた。

「アキレウス・ロルナンド第二王子。まず、ここがどこであるのかをご存知ですか?」

 マリエルがぐるっと辺りを見回すと、生徒たちはハッとしたように顔を見合せた。

 それもそのはず。今日は学園の卒業パーティ…それも、1つ年上の先輩の卒業を祝うものなのだから。

「先日華々しく学園を卒業された先輩方、おかしいと思いませんか?皆様のお祝いの場で後輩がこんな騒ぎを起こすなんて」

 思い思いに喋っていた彼らは口を閉ざし、気まずそうに俯いた。自分たちのお祝いの場を邪魔する後輩を擁護したということに何かしらの違和感をおぼえたのでしょう。

「ええい、うるさい!大体、お前こそ関係ないだろう!」

「まあ!確かにそうですわね!」

「………へ?」

 まさかこんなにあっさり認められると思わなかったのか、アキレウス様は気の抜けた声を出す。

「当事者はカノンですものね。でしたら、まさか当事者のカノンに『口答えするな』と言うなんてことありませんよね?」

「あ、あぁ…」

 アキレウス様はきまり悪そうに口ごもった。きっと自身の発言を思い出したのだろう。

「……嘘つきね、彼」

 私にしか聞こえない声で悪戯っぽくそう言われると何だかおかしくて、マリエルに微笑み返した。いつの間にか重苦しい負の感情や圧も軽くなっている。少し落ち着けたみたいだ。

 マリエルは良かった、と言って背筋をもう一度伸ばし優雅に扇を開いた。

「カノン」

「…ええ」

 マリエルに促され、アキレウス様とユーナ、2人の顔を交互に見た。アキレウス様はユーナの腰に手を回して身を寄せあっている。アキレウス様は私とマリエルを睨み、ユーナはただ呆然と震えていた。

 まるで恋人同士…いや、もう既に恋人同士だったのね。そして私は2人の愛を阻むヴィラン。お前は邪魔者だと、彼らの目がそう言っている。

 それを見て、なんだかどうでもよくなった。
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