婚約破棄されましたが…親友のおかげで馬鹿王子だとわかりました

まきじた

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翌日の話

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「こ、国王陛下を交えた会議……!?」

「そうよ、ロルナンド・カーチェスト・ウォルターの三家で…それはもう、大波乱だったわ」

 マリエルは可笑しそうに笑いながら言うけど、全然笑えない。

 私はあの後、お見舞いに来たマリエルから眠っていた間の出来事を教えてもらっていた。



 ―卒業パーティはすぐにお開きになったそうだ。私が倒れて気まずい雰囲気になったという。

 まあ、仕方ない。
 
 マリエルはウォルター家の侍女に私を家に送り届けるように伝えて、自分はやることがあるからと会場に残ったらしい。

 その後マリエルはなんと…

「だから私言ってやったのよ、『あら、1人の令嬢を酷く虐めて泣かせたのはどちらかしら?』ってね!!」

「マリエルったら……」

 聞くだけで背筋が凍るような不敬罪に問われかねないことを、言っていたらしい。

 詳しく言及されれば最悪の場合は首がとんでしまうというのに、「あんな馬鹿王子、存在自体がロルナンド王家への不敬だわ」とへらへらしている。

「…でも、お父様から聞いたわ。マリエルのおかげで円満に婚約解消になったって。ありがとう、マリエル」

「あはは、まあ、最初からそのつもりだったのよ」

 彼女は顔を赤くして照れ隠しをして早口になる。

 そういうところは、父と似ているかもしれない。

「僕のユーナだとかなんとか言ってたけど、婚約者がいる身で浮気なんてありえないからね。三つ巴会議もすぐに終わったわ」

「うーん………まず、カーチェスト家とロルナンド王家が話し合うのはわかるわ。当事者同士だもの。でも、なんでウォルター家が?」

「あぁ、それ?もちろん、私が立候補したからよ」

 なんてことない、という風にサラッと言う。

「カノンも気づいてたと思うけど、国王陛下はあの馬鹿王子の所業を黙認………いや、承認…ううん、奨励してたのよ!」

 国王陛下が婚約破棄を許可したというのは、あの日にアキレウス様がおっしゃっていた。だけどまさか、乗り気だったなんて……。

「ああいう話し合いなんて、権力の強い方が勝ってしまうでしょう?だから、ウォルター家が第三者目線で仲立ちをすることにしたの。………といっても、王妃様はまともな方だったから、私たちウォルター家がでしゃばる必要はなかったかも」

 確かに、王妃様の印象が悪かったことはない。私もよく可愛がってもらえてたし、招いて下さったときは美味しいお菓子をたくさんいただいた。いつも洗練された美しい動作に見惚れてしまう。

「王妃様、すごかったのよ!話を聞くなりあの馬鹿を平手打ちにして…」

「ひ、平手打ち!?」

 あの優雅な王妃様が!?

「あははは、もうおかしかったわよ。生まれて初めて人に手をあげられて、目をひんむいてるの!こーんなに」

 そういって目を見開くマリエルを見ていると、失礼だとはわかっていても笑ってしまう。

「もう、マリエルったら」

 私があはは、とつられて笑うのを見て、マリエルは目を細めた。

「よかった、笑ってくれて」

「え?」

「いくら馬鹿王子とはいえ、ずっと好きだったでしょ?それが、こんなことになって…」

「あ………うん」

 幼い頃から決められた婚約とはいえ、私はアキレウス様を愛していた。彼と話せればどんな内容でも幸せだったし、あの輝く笑顔が向けられた日には胸が高鳴って眠れない日もあったほどだ。

 正直、今でも………。

 いえ、そんな気持ちは捨てるべきだわ。もう私は彼の婚約者ではないもの。



 マリエルは、そんな私をじっと見つめていた。
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