【改稿版】夫が男色になってしまったので、愛人を探しに行ったら溺愛が待っていました

妄夢【ピッコマノベルズ連載中】

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えっ、ディートハルトから!?

私はあわてて手紙を開いた。

『愛しいアーシュへ

 アーシュ元気にしてる?
 
 なかなか会えず、寂しい思いをさせてしまって申し訳ない。
 
 夜はちゃんと寝てる?魔道具作りに没頭してご飯をぬいてない?
 
 ちゃんと夜は寝て、ご飯もしっかり食べるんだよ。

 一週間後に王家主催の夜会があるね。ぜひ、エスコートさせてほしい。
 
 ドレス一式送らせてもらうね。(きっと君の事だから、仕事に熱中してドレス注文してないだろうから)

 では夜会で。アーシュのドレス姿楽しみにしてるよ。

 君のディーより』

うわぁ……、全てバレてる……。実は監視されてる……? 私は周りをキョロキョロ見てしまった。

やっぱり、騎士団が忙しくても出席するのね。

一番大きな箱を開けてみる。

黒と赤を基調にした豪華なドレスだった。レースや刺繍、スパンコールにビジューと、眩しいくらいに装飾が施されていた。

こんな豪華なドレス着た事ないわ……。いったいいくらかかったのかしら……。

途中まで計算して、怖くなって止めた。

小さい箱を開けるとネックレスと、ブローチが入っていた。

翡翠色の宝石だった。これは社交界ではやっている、お互いの瞳の色ってやつね。

ちょっと恥ずかしいなぁ……。

夜会……中止にはならないわよね……。

でも、私のサイズなんでわかったんだろう……。まぁ、深く考えるのはやめよう……。

 
◇◇◇

あれから仕事をしていたらあっという間に夜会当日になった。

普段侍女はいないため、女性のコンシェルジュに手伝ってもらった。

社員寮の玄関口の扉を開くと、そこには光沢のある黒と赤のタキシードに身を包んだ、ディートハルトが待っていてくれた。

「アーシュ!」

ディートハルトの笑顔が満開で、私までつられて笑顔になってしまった。

「すごくきれいだね!」
 
「ありがとう……」
 
ディートハルトにエスコートされながら、王宮の会場まで歩く。
 
社員寮から会場まで徒歩5分だが、ヒールが高くいつものように歩けなかった。
 
 「ちゃんと会うのは3年ぶりだね」

「そうね」

3年ぶりに会うディートハルトは、肌の色が焼けていて少し男らしく感じた。

背はもともと高かったが、さらに筋肉がついて屈強な騎士団員という感じだ。

正装姿、なんてかっこいいんだろう。これではまたご令嬢に囲まれるわね。

胸元には赤い宝石のブローチがつけられており、頬が熱くなった。

幼馴染のはずなのにまるで知らない人になってしまったようで、少し心の距離を感じてしまった。

「あの……、ドレスとか一式ありがとう……。ディートハルトのいう通り、仕事ばかりしちゃってて……、本当に助かったわ」

 「アーシュは本当に変わらないね……」とディートハルトはクスクス笑った。

 「でも、呼び方……」

愛称呼びしろってことね。一応婚約者としていくんだもんね。

 「うん、ごめんね。ディー」

 「うん」と言って、ディートハルトは満足そうに私の手に自分の手を重ねた。

こんな素敵な人が婚約者だなんて、本当にいいのかしら……。

いや、ディートハルトの為にも、今日は話し合わないと。

 「ディー、夜会の後なんだけど……。少し時間貰えるかな?」

 「うん、もちろんだよ」

 「ありがとう……」

大人になってしまった幼馴染に、動機が止まらなかった。その美しい瞳に見つめられると、上手く息ができなかった。


 
 「ディートハルト様よ……」

 「本当だわ……」

 「前は美少年だったけど、すっかり逞しくなられてさらに素敵ね……」

 「確かまだご結婚されてないわよね……」

 「でも、確か婚約者はいたような……」

 「あ、あの隣にいる赤髪のご令嬢じゃない?いかにも悪女って感じの」

 「学生時代から、良い噂を聞かないわよね。今も夜遅くまで遊び歩いて、男性もとっかえひっかえしてるらしいわよ……」

 「まぁ!見た目通りじゃない!」

 「ディートハルト様が騎士団で頑張ってらっしゃるのに……」

 「ディートハルト様……、おかわいそう」

王宮での夜会会場で、もう噂話をされている。

確か同じ王立学園の生徒だったご令嬢たちだ。もう結婚されている人もいれば、まだの人もいる。

女性も仕事をする人が増えて、昔よりは結婚の年齢が上がってきている。

遅くに帰っているのは、仕事なんだけどね……。やっぱり髪が赤毛で、顔が派手なのがいけないのかな……。

今ディートハルトが騎士団のメンバーに挨拶をしているので、私は笑顔で終わるのを待っている所だ。

「アーシュ!」

振り向くと、イヴェッタが兄様と共に立っていた。知った顔に会えて、緊張がゆるんだ。

二人は水色を基調としたドレスとタキシードで、とてもさわやかだった。

私はイヴェッタの兄のバーデン様に一礼した。

「君が作った耐炎の白衣とインクのなくならない万年筆、すごく重宝しているよ。君は本当にすごいな」

「本当ですか⁉使っていただけてうれしいです!」

「あぁ、こちらこそありがとう。これからも期待しているよ。では、私は同僚にあいさつしてくる」

「はい」

バーデンが手を振り、私も手を振った。

「はぁ……、素敵……。なんてクールなのかしら」

イヴェッタが「どこがよ」と言わんばかりの目を向けてきた。

「ところで、また悪目立ちしてるわよ」

「うん。知ってる」

私は白ワインを一口、口に含んだ。酸味が効いていて、すごくおいしい。

「アーシュって、見た目が派手だから、昔から女性に敵作るわよね。逆に言えば、きれいで羨ましいのよ」

「はっ?私がきれい?魔道具しか作ってないのに?まぁ、今日はきれいにしてもらったけど……」

イヴェッタがはぁ……とため息をついた。

「騎士団の人たちも、アーシュの事羨望のまなざしで見てるわよ」

後ろを振り向くと、何人かの団員達と目が合い、頬を赤らめていた。

 「ワインの飲みすぎかな……?」と私が言うと、こりゃダメだとイヴェッタがおでこを触り溜息をついた。


騎士団員たちの中に、私に対して鋭い視線を向けている人がいるなんて、その時の私は全く気づけなかった。





中央ホールには楽器を持った楽団員達がゾロゾロと決まった席に着く。

騎士団員との挨拶が済んだのか、ディートハルトが戻ってきた。

イヴェッタと久しぶりに会ったので、軽く挨拶している。
 
 「アーシュ、そろそろファーストダンスの時間だよ。私と踊って頂けますか?」

ディートハルトがそう言って、私に手を差し出した。

どうしよう……、ダンスなんて全然練習してこなかった……。

これは誰でも踊れる靴でも発明しないといけないかも……。

 「……はい、喜んで……」

私はそう答えて、上げた口角がひきつった。

 「ねぇ、ディー……、私学園を卒業してから全然踊ってないの!大丈夫かな?」

中央ホールに向かう中、私は小声でディートハルトにそう伝えた。

それはダメだねって、引き返してくれないかな……。

「大丈夫、私がリードするから……。それに体が覚えているものだよ」と笑った。


 
──散々だった……。私はガクンと肩を落とした。
 
「アーシュすごかったね……」

私は今バルコニーで、先ほどのダンスでグネった足を休めている。

隣ではお腹を抱えたディートハルトが声を殺して笑っている。

「だって、あんなに踊れないって……」と言って、思い出したのかまたケラケラと笑い始めた。

はぁ……、本当に最悪だ……。もう会場に戻りたくない……。

隣を見ると笑いすぎたディートハルトが目じりの涙を指で拭っていた。

「こんなに笑ったの、久しぶりだよ。やっぱり、ディーは最高だね」

いや、これ完全にけなされてるよね。淑女として終わってるよね……。
 
「そんな怒んないでよ!アーシュ」

ディートハルトが頭を撫でてきた。

でも、やっと変な意識をしないでディートハルトと過ごせているかも。

うん、やっぱり私たちの関係はこうじゃなきゃ!よし、婚約解消の話もしちゃおう!そう思った矢先……。

「母さんが、屋敷に遊びに来いって……」と先手を打たれてしまった。

「へ……?」


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