白い結婚のはずでしたが、幼馴染の夫が離してくれません!

妄夢【ピッコマノベルズ連載中】

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12 遠征

ノエル先生が抱きしめてくれて、優しい温かさに包まれていた。


「お一人で辛かったですね……」

そういって、背中をさすってくれた。

私はディートハルトが好きで、そんな彼にちゃんと女性に見られたかったんだ……。

友人としてではなくて、女性として好きになってほしかったんだ……。

そんな気持ちに気づいてしまった……。

これから、どうしよう……。

「旦那様とはこのことについてちゃんと話し合ってみましたか?」

「いえ……、ちゃんとは話せてなくて……。お義母様がこの話題を話した時、怒りだしてしまいました」

「そうだったのですね。旦那様の気持ちが、まだ整っていないのかもしれませんね。でも、アーシュレイ様ほど魅力的な女性はいませんから、きっと旦那様も応えてくれますよ。その時が来た時の為に、妊娠しやすい体に整えていきましょう」

先生は優しくそう言ってくれた。

今日ここに来て良かった……。私はお義母様に心の中でお礼を言った。



 ――その夜。


「ディー、お疲れ様」

「アーシュ、ただいま……。明日も仕事なんだから、先に寝ていていいのに……」

「今日ね、病院にいったの」

ディートハルトが大きく目を見開き、すぐ私の所まで来た。

肩をつかんで「ど、どこか悪いの?」と焦って聞いてきた。

「ううん、体は大丈夫。お義母様の紹介で、不妊の……病院に行ってきたの」

「不妊て……」

「うん……。女医さんで、すごく優しく話を聞いてくれたの! なんかうれしくなっちゃって」

「今日体を診てもらったけど、妊娠には問題ないって」

私はディートハルトの腕をつかみ、その美しい翡翠の瞳に問いかけた。

「ディー、子供……作らない……?」

言ったあと、体中の熱が顔に集まり、心臓の音がディートハルトに聞こえるんじゃないかと焦ってしまった。

落ち着いて彼をみると、翡翠の瞳が揺れていた。そして、視線を外された。

私は、ガウンの紐を外しシースルーのナイトドレスになった。胸元も大胆に開き、谷間も深く見えている。

「私じゃダメかな……。女性として見られない?」

ディートハルトを掴んでいる手が震えてきた。

ガバッ!とディートハルトに抱きしめられた。

「アーシュはどこから見ても、素敵だよ。そんなこと言わないで……」

「うん……。じゃあ……」

ディートハルトも同じ気持ちになってくれたのかな……?

私はディートハルトの力強い腕や胸板にドキドキしていた。

幼なじみの友人から、男性として意識してから初めての触れ合いに、思った以上に恥ずかしくなった。

「でも、子供はもう少し待ってほしい……」

「もう少し……?」

「あぁ、今はお互い若いし、仕事が楽しいだろ? だから、子供はもう少し落ち着いてからにしたいんだ。もちろん母さんに何か言われたら、俺がちゃんと言うから。もう少し待ってほしい……」

ディートハルトの真剣な気持ちが伝わってきて、私は頷く事しか出来なかった。拒否はされなかっただけ、良しと思わなきゃね。

「じゃあ、寝ようか。寒いからガウン着ようね」と言って、またしっかりとガウンを着せられてしまった。

二人でベッドに入り、また背を向けられるのか思ったら、両手を広げられた。

私が目をパチパチしていると、「アーシュ、おいで」と言ってくれた。

私はディートハルトの胸に飛び込んだ。

上を向くと、美しいディートハルトの顔がすぐそこにあり、優しく口づけられた。

私は恥ずかしくなり、ディートハルトの逞しい胸に隠れた。

これだけでも、恥ずかしいのに子作りなんて本当に出来るのかな。

ディートハルトのいう通り、少し待った方がいいかもしれない。

私は赤くなった頬を隠すように、ディートハルトに抱き着いた。

人肌の温もりにほっとして、私は瞼を閉じた。

子作りしなくても、こうやって触れ合うだけでも今は嬉しいな……。

 
◇◇◇

「近々、討伐の遠征部隊が組まれるらしいわよ」

「へ?」

「あなたの旦那さんも、もしかしたらその部隊に配属されるかもしれないわよ」

「えっ……」

私はフォークに巻いたスパゲッティの麺を落とした。

職員用の食堂でイヴェッタが唐突に話し始めた。

「お兄様の話だから、ほぼ確実よ。あの人魔法省で攻撃魔法得意だから、その部隊にも入るみたいだしね」

 昨日、ディートハルトがもう少し待ってほしいって、このこともあったのかな。

「短くて半年、長くて一年はかかるみたい……」

「そんなに長く……?」

ディートハルトが討伐部隊になっちゃったら、どうしよう……。

王立騎士団だから、いつかはこんなこともあるかとは思ってたけど……。

気持ちを知ってしまってからは、辛い……。

「アーシュも仕事に専念出来るじゃない。旦那さんがいないんじゃ、子どものことも言われないだろうしね」

それは確かにそうだ。

ディートハルトがいない伯爵邸に一人でいるのは、正直辛いけど仕方ない。

こうなったら、仕事に没頭しよう。

「今夜帰ってきたら、聞いてみる!」

「そうね、その方がいいかも。それに、私達も遠征部隊用の魔道具の発注で忙しくなるわよ」

討伐部隊となると、防具から回復アイテムまで、様々な魔道具を持っていく。編成が多くなれば尚更だ。

気を引き締めなければいけない。

そして、ディートハルトに会えたのはその2日後だった。


 ◇◇◇


「アーシュ、話がある」

「うん、何?」

いつもより早く帰宅したディートハルトが、話しかけてきた。

やはり、イヴェッタの言っていた事かもしれない。

「噂で聞いているかもしれないが、魔獣討伐部隊が組まれた。俺もその部隊に行くよう上官から言われた」

やっぱり……。

「うん……」

「断ることも出来るが、俺は行きたいと思っている。騎士団員として、成長できる良い機会だと思っているんだ」

ベッドの端に座っている私の前に、ディートハルトが跪いた。

そして、冷たくなった私の手を両手で包み込んでくれた。

「アーシュを一人この家に残して行くのは、本当に心苦しい……。でも、市民に危険が及んでいるんだ。どうかわかってほしい」

ディートハルトはおじい様との約束を果たしたいと思ってるんだ。

そんなの反対できるはずないじゃない……。

「絶対にケガしないで……、無事に帰ってくるって約束して……」

「ああ、もちろん約束する」

私はディートハルトの顔を見る事が出来なかった。

顔を見たら、情けなく縋りついてしまいそうだったから。涙ながらに訴えて、ディートハルトの意志を曲げてしまう。

それだけはしたくなかった。

ディートハルトは私の一番の理解者だから。女性の身で、幼い頃から魔道具に没頭する私をいつも見守り、どんな時も理解してくれた唯一の人だ。
 
私はディートハルトにとって、そんな人になりたい。友人としても、愛のない夫婦だとしても……。

――そして2週間後、ディートハルトは討伐部隊に参加し、遠征に出発した。

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