白い結婚のはずでしたが、幼馴染の夫が離してくれません!

妄夢【ピッコマノベルズ連載中】

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23 デート

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そう言ってディートハルトは優しく抱きしめてくれて、背中をさすってくれた。

ズルい私はその優しさに甘えて、たくさん泣いてしまった。

 『もう女性を愛することはできない』って、きっとすごく勇気のいる告白だったと思う。

そのことを隠して自分は好きな男性と過ごすことだってできる。でも、ディートハルトはちゃんと伝えてくれた。

それなのに……。こんな風に言ったらきっと私に告白したことを後悔するかもしれない。可愛くない人間だって思ったと思う。俺の大嫌いな女性そのものだって思うかもしれない。残りの一年弱、もしかしたら彼はもう家に戻ってこないかもしれない……。

そんなことが頭の中でぐるぐると回って、涙を助長した。

「アーシュ、本当にごめん。君を追い詰めたのは俺だ……。本当にすまない。でも、信じてほしい。俺の人生のパートナーはアーシュだけだよ。母がなんと言おうと、離婚はしない。母さんだってそんな権限はないんだから。まぁ、いざとなったら地方の田舎や辺境に二人でいってもいいし。騎士団は各地に散らばってるから、どこでも食べていける。魔道具だって場所をえらばないだろ?」

やっぱり、優しい。ディートハルトは伯爵家の嫡男でみんなの期待を背負ってる。家族もみんなディートハルトを愛してる。私のせいで、そんな家族の仲を引き裂いてはいけない。

ディートハルトはそう言ってくれたけど、代理父親制度に失敗したら潔く身を引こう。田舎で魔道具屋を開くのだっていい。

 「ディー、ありがとう。その気持ちだけでもうれしいよ」

 「元気でた?」

そんな時、ぐぅ~と緊張感のない音が私のお腹から聞こえた。
 
 「お腹は空いてるみたいだね。こっちきて!」

そういってディートハルトは私に手を優しく握って、走り始めた。

着いた先は、デザート屋らしいかわいい屋台だった。

「屋台でがっかりした?」

「ううん。びっくりしただけ……。ディーもこういう所で食べるんだね」

「王都の街の警備や巡回で良く見かけて、恋人同士がここで仲良く食べてるの見てて気になってたんだ」

「そうなんだ……」

「注文しちゃっていい?」

「うん……」

ディートハルトは慣れたように注文してくれた。レインって子ともよく来るのかな…。二人が笑いあって食べ会うシーンが脳裏に浮かび、顔を左右に振った。


私たちは近くのベンチに座った。

大き目の紙カップに一口ほどの丸いパンケーキのようなものが何個も入っていて、トッピングにバニラのアイスやチョコフレークがかかっていた。

うん、確かに美味しそうだ。私の空腹もいよいよ本格的になってきた。

ディートハルトはフォークにパンケーキをさして、アイスをつけた。そしてそれを私の口元まで持ってきた。

えっ?そのまま食べるの?という顔を私がすると彼は、うんうんというジェスチャーをした。

私は買ってもらったばかりの洋服と、髪の毛に気を付けながら、パンケーキを頬張った。

「んっ!おいひい!」

パンケーキは程よい甘さと柔らかさで、アイスとの調和が絶妙だった。チョコのフレークが触感に刺激を与えてくれて、すごくおいしかった。

ディートハルトが今度は私にフォークを渡してきた。

私が首をかしげると、「今度はアーシュが食べさせて」と言ってきた。

私は頬がカッっと熱くなるのを感じた。こんな恋人同士みたいなこと……、なんで……。

ディートハルトの視線に耐えきれず、私はフォークにパンケーキとクリームを刺した。

すると、ディートハルトの方が近づいてきて、パクッと食べた。

おでことおでこがつきそうなほどの距離で、彼のさわやかな香りまでも感じ取れた。

近くで見ても、本当に綺麗だな……。ディートハルトに似た容姿の人にあったけど、本物は全くの別物だわ。

山盛りに盛られたパンケーキはあっという間に、二人のお腹におさまった。

「次はどこに行きたい? せっかく街に来たんだし。町の魔道具屋でも見にいく?」
 
街の魔道具屋!それはなんて魅力的な!

平日は仕事で行けないし、土日は伯爵家にいなきゃいけないから、行きたくても行けなかった。昔は祖父に連れられて、良く行ったものだ。

「うん!行きたい!」

ディートハルトははははと笑って、良い顔だと言ってきた。私からすると、彼の方がよっぽど良い顔なのだが……。

魔道具屋は屋台から、割と近かった。

キィ……。古い木の分厚い扉を開く。そこは所狭しと、いろんな魔道具が売っていた。市民が使いやすい、小さな魔道具から、大型魔道具まで置かれていた。

なんて、素敵な空間だろう……。私は古びた店内が、まるで宝石屋さんのように輝いて見えた。

あっ、これ……。

丸くて小さな魔道具を手に取った。

「お嬢ちゃん、それが気になるのかい?」

「あ、はい……」

「それはね、魔道具界で有名な貴族の方が、市民の為に作ってくれた魔道具で、重さが軽減するんだ、安価なもので簡単に生産せきるんで、今じゃ市民の労働者の必須アイテムになっているよ」

おじい様があの時作った魔道具……。本当に市民の助けになってるんだ……。なんてすごい人なんだろう……。目頭があつくなった。

「これください!」気がついたら、私はその魔道具を購入していた。

「これ、おじい様の魔道具だよね?懐かしいな……」

後ろから、ディートハルトが覗き込んできた。

「うん……。本当に……」

「ありがとうな」

魔道具屋のおじさんはそう言って、店を閉めた。どうやら閉店時間だったようだ。

「ディー、連れてきてくれてありがとう。なんか、おじい様にまた会えたようでうれしかった」

 私は心の底からの笑みをディートハルトに向けた。

 「うん。良かった。アーシュ、後ろ向いてくれる?」

 「うん……」

 そして、後ろの髪の毛を前に持ってきて、首に何かをかけた。

 「はい、どうぞ……」

 下をみると、雫型の小さな宝石がついたネックレスがかけられていた。色は翡翠色をしていた。

 「これ、さっきの魔道具屋でかったから、そんなに高くないし、気にしないで。持ち主の魔力がなくなると、翡翠から黒に変色するらしいよ。魔力切れは危ないからね」

 「えっ!そうなの?そんな魔道具聞いたことない!すごい!ありがとう!」

くくくっとディートハルトがまた笑った。目には涙まで貯めている。

 「なんでそんなに笑ってるの?」

 「だって、さっき服をプレゼントした時はすごい嫌がったのに、魔道具って言ったら目をキラキラさせてお礼言うんだもん」

そう言って、ディートハルトはまたお腹を抱えて笑った。

「アーシュは本当に魔道具オタクだね」

 「否定はしないわ……」

私は恥ずかしくなり、ディートハルトより先に歩き出した。

 「ははは。待ってよ、アーシュ」

そういって、彼は手をつないできた。恋人のように指を絡ませて。

夕日に照らされた髪が昼間より、濃い金色に映り、さらに美しく見えた。
 
その微笑みが優しく私を包み込んだ。

今日だけ、今日だけは本当の夫婦のように……。夢が覚めた時、この思い出を大切にして生きていこう……。

ありがとう、ディートハルト……。

私は彼の優しい笑みを心に焼き付けた。


◇◇◇

 
 「アーシュ、いい? 絶対に仮面は外しちゃだめよ」

 「うん! わかったわ!」

 「中には体目当ての貴族令息もいるから、変な人には気をつけてね」

 「うん、わかった!ターゲットの人以外には近づかないわ!」

 「今日は付き合ってあげられなくて、ごめんね」

 「ううん。これ以上してもらうわけにはいけないわ」

 今日は仮面舞踏会に行くために、イヴェッタの邸宅で支度をさせてもらっていた。ドレスも仮面もイヴェッタに借りた。

 イヴェッタは家族の集まりがあり、どうしても行けないと悔しがっていた。うちの伯爵家で支度をするわけにはいかなかったので、とても助かった。

 私は待っていた馬車に乗り込んだ。あらかじめチェックしていた男性がこの仮面舞踏会に参加する為、私も行くことにしたのだ。

 今回の仮面舞踏会は王家も出資していて、若い貴族の出会いの場として開かれたもの。一応安全と言われているから、イヴェッタも一人で行かせてくれた。

 今回はピンクヘアにピンクの瞳にした。これなら、万が一知り合いにあっても気づかれないだろう……。


 ――会場につくと、ひと際女性に囲まれた男性に目がいった。私のターゲットではありませんように……。そう思って、近づくと……。

 美しい金髪に長身、正装の上からでもその逞しい体が伺えた。仮面で瞳の色がわかりづらく、もう少し近づく……。

 見えた!翡翠色だ!でも、ターゲットはそんなに長身ではなくて、たしか文官って言ってたから体も逞しくないはず。髪型も違う……。

 そのターゲットに似た主が、こちらを射抜いてきた。じっと見つめられて、思わず後ろ歩きになり、足早に柱の陰に隠れた。

 ちょっと、まって!ターゲットどころじゃない!!あれは、まるでディートハルトそのものじゃない!


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