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6話 言わないでください
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アデルからとんでもない解毒方法を聞かされ、透は息を呑んだ。
「そ、そんな……」
顔が一気に熱を帯び、言葉を失う。グレイドに薬を口移しした時のことが、鮮明によみがえってしまったからだ。自分の中で必死に封じ込めていた記憶が、アデルによって引っ張り出された気分だった。
アデルはそんな透の様子を楽しむように、からかうような笑みを浮かべる。
「万能薬は効かないのに、どうやって解毒したの?」
「……っ!」
透は真っ赤になり、慌てて手で口元を覆った。
「アデルさん……お願いです。解毒方法のことは、グレイドさんに言わないでください……!」
必死の訴えに、アデルはにこやかに答える。
「ふふ、安心して。オレは口が堅いんだ」
わざとらしく素知らぬ顔をしてお茶を飲むアデルに、透は大きくため息をつくしかなかった。
その時、コンコンと軽快なノックの音が部屋に響いた。透がびくりと肩を揺らすと、アデルは立ち上がってドアへ向かう。
(まさか……グレイドさん!?)
鼓動が早まったが、そこに立っていたのは別の騎士だった。
「アデル様! 騎士団長が倒れました! 急いで来てください!」
その一言で、透の血の気が引いた。考えるより先に、彼は立ち上がり、アデルと共に訓練場へ駆け出した。
訓練場に着いた時、数人の騎士に囲まれて床に横たわるグレイドの姿が目に入った。透は胸を締め付けられるような思いで駆け寄り、優しく声をかける。
「グレイドさん、大丈夫ですか……!」
「……透?」
苦しそうに目を開いたグレイドの頬は赤く染まり、呼吸も乱れている。毒がまだ完全には抜けていないことを透は悟り、眉を寄せた。
「早く薬を……」
そう言いかけた瞬間、不意に唇を塞がれた。
「……っ!?」
透の瞳が大きく見開かれる。驚きの声を上げる暇もなく、熱を帯びた舌が深く押し込まれる。
「騎士団長が、キスしてるぞ!」
「さすが団長、キスも激しいな……!」
周りの騎士たちがざわめき、歓声すら上げ始める。透の顔は恥ずかしさで火が付いたように真っ赤になり、必死でグレイドの胸を叩いた。
「こ、ここでは……ダメ、です……っ!」
途切れ途切れに抗議するが、グレイドは止まらない。唇を重ねたまま、透の腰を強く抱き寄せる。その腕の力強さに、透は逃げ場を失った。
必死にアデルの方へ視線を送ると、彼は口元に笑みを浮かべ、楽しそうにこちらを見ていた。
(アデルさん、助けてください……!)
懇願するような透の目に気づき、アデルは「仕方ないな」という顔をして軽く指を鳴らした。
次の瞬間、透とグレイドの身体は紫の光に包まれ、一瞬で応接間へ転移していた。
静寂に包まれた部屋で、透は大きく息を吐き安堵した。だが、まだ唇は塞がれたまま。むしろ二人きりになったことで、グレイドの手がさらに大胆になっていた。腰に触れる指先が熱を帯び、透の心臓は早鐘を打つようだった。
「グレイドさん……薬を、飲んでください……!」
「……君の口から、飲みたい」
低く囁く声に、透の全身が震えた。甘く噛まれる唇に、理性が揺さぶられる。
アデルの言葉を思い出しながら、透はこれはグレイドのためだと自分に言い聞かせた。薬を取り出し、口に含んでそっと唇を重ねた。
途端に、グレイドの舌が遠慮なく絡みついてきた。薬液を受け渡すというより、口の中を支配されるような熱烈な口づけだった。
「んっ……!」
頭がくらくらして、息が続かない。なぜ彼はこんなにもキスが上手いのか。透は理性の隅でそんな場違いな疑問を抱いた。
やがてキスから解放されると、グレイドはぐったりと透の肩に寄りかかり、そのまま強く抱きしめる。
「はぁ……透……」
「グレイドさん……?」
支えながらソファに寝かせようとするが、彼の手は透の腰を掴んだまま離さない。指先に込められた力が、彼の切実さを物語っていた。
「透……身体が熱い……助けてくれ……」
かすれた声と熱を帯びた吐息に、透の心が強く揺ぶられた。
「そ、そんな……」
顔が一気に熱を帯び、言葉を失う。グレイドに薬を口移しした時のことが、鮮明によみがえってしまったからだ。自分の中で必死に封じ込めていた記憶が、アデルによって引っ張り出された気分だった。
アデルはそんな透の様子を楽しむように、からかうような笑みを浮かべる。
「万能薬は効かないのに、どうやって解毒したの?」
「……っ!」
透は真っ赤になり、慌てて手で口元を覆った。
「アデルさん……お願いです。解毒方法のことは、グレイドさんに言わないでください……!」
必死の訴えに、アデルはにこやかに答える。
「ふふ、安心して。オレは口が堅いんだ」
わざとらしく素知らぬ顔をしてお茶を飲むアデルに、透は大きくため息をつくしかなかった。
その時、コンコンと軽快なノックの音が部屋に響いた。透がびくりと肩を揺らすと、アデルは立ち上がってドアへ向かう。
(まさか……グレイドさん!?)
鼓動が早まったが、そこに立っていたのは別の騎士だった。
「アデル様! 騎士団長が倒れました! 急いで来てください!」
その一言で、透の血の気が引いた。考えるより先に、彼は立ち上がり、アデルと共に訓練場へ駆け出した。
訓練場に着いた時、数人の騎士に囲まれて床に横たわるグレイドの姿が目に入った。透は胸を締め付けられるような思いで駆け寄り、優しく声をかける。
「グレイドさん、大丈夫ですか……!」
「……透?」
苦しそうに目を開いたグレイドの頬は赤く染まり、呼吸も乱れている。毒がまだ完全には抜けていないことを透は悟り、眉を寄せた。
「早く薬を……」
そう言いかけた瞬間、不意に唇を塞がれた。
「……っ!?」
透の瞳が大きく見開かれる。驚きの声を上げる暇もなく、熱を帯びた舌が深く押し込まれる。
「騎士団長が、キスしてるぞ!」
「さすが団長、キスも激しいな……!」
周りの騎士たちがざわめき、歓声すら上げ始める。透の顔は恥ずかしさで火が付いたように真っ赤になり、必死でグレイドの胸を叩いた。
「こ、ここでは……ダメ、です……っ!」
途切れ途切れに抗議するが、グレイドは止まらない。唇を重ねたまま、透の腰を強く抱き寄せる。その腕の力強さに、透は逃げ場を失った。
必死にアデルの方へ視線を送ると、彼は口元に笑みを浮かべ、楽しそうにこちらを見ていた。
(アデルさん、助けてください……!)
懇願するような透の目に気づき、アデルは「仕方ないな」という顔をして軽く指を鳴らした。
次の瞬間、透とグレイドの身体は紫の光に包まれ、一瞬で応接間へ転移していた。
静寂に包まれた部屋で、透は大きく息を吐き安堵した。だが、まだ唇は塞がれたまま。むしろ二人きりになったことで、グレイドの手がさらに大胆になっていた。腰に触れる指先が熱を帯び、透の心臓は早鐘を打つようだった。
「グレイドさん……薬を、飲んでください……!」
「……君の口から、飲みたい」
低く囁く声に、透の全身が震えた。甘く噛まれる唇に、理性が揺さぶられる。
アデルの言葉を思い出しながら、透はこれはグレイドのためだと自分に言い聞かせた。薬を取り出し、口に含んでそっと唇を重ねた。
途端に、グレイドの舌が遠慮なく絡みついてきた。薬液を受け渡すというより、口の中を支配されるような熱烈な口づけだった。
「んっ……!」
頭がくらくらして、息が続かない。なぜ彼はこんなにもキスが上手いのか。透は理性の隅でそんな場違いな疑問を抱いた。
やがてキスから解放されると、グレイドはぐったりと透の肩に寄りかかり、そのまま強く抱きしめる。
「はぁ……透……」
「グレイドさん……?」
支えながらソファに寝かせようとするが、彼の手は透の腰を掴んだまま離さない。指先に込められた力が、彼の切実さを物語っていた。
「透……身体が熱い……助けてくれ……」
かすれた声と熱を帯びた吐息に、透の心が強く揺ぶられた。
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