3 / 6
第一章
父との出会いと専属メイド
しおりを挟む
「おぉスピネルよ‼ 目が覚めたのか! パパ心配したんだぞ!」
あれ? さきほどの記憶では寂しい思いを…。
ん? 記憶の中では……。
──お父様が話してくれない…。仕事が忙しいのかしら。いつもは、一時間抱きしめてくださるのに今日は…三十分だけですわ! 寂しい‼
あぁ、私が見ていたのは寂しい思いをしているところだけ。本来はこのお父さんがだる絡みしすぎてそれが当たり前になってしまったのか。
親も親だな。
子どもを甘やかせすぎれば、それが定着し、今後の子育てに支障をきたす。例えば、駄々をこねてどうにかしてお願いを聞いてもらおうといろんな手を使うだろう。それが罪であっても本人には自覚がない。あったとしても「自分の言うことを聞いてもらうためだから仕方がない」。きっとそう考えるはずだ。スピネルもそう。
「お父様、お忙しい中、申し訳ございません」
「…お、おう体調は大丈夫か?」
「おかげさまで。お騒がせしてすみません」
「スピネルよ。頭でも打ったのか?」
「…?」
ちょうど、扉の前にはラリマーが礼儀正しく、静かに立っているのが見え、目を合わせると口パクで何か伝えようとしている。
け・い・ご・は・だ・め
最後は分かりやすく大胆に自分の顔の前に両腕を持ってきて『×』と記した。
「あ…」
さっきラリマーが言っていたことを思い出し、つい声が漏れてしまった。
「どうしたんだ? スピネルよ」
やばい、やばい。なんと言い訳をしよう…。
「お、お嬢様は少し疲れていて、あの…お父様の威厳が凄すぎて、感極まってしまったのだと思います!」
な、なるほど? 言い訳的には変でしかないが、彼女なりのフォローだ。ありがたくうけとめておこう。
「ははは‼ そうかそうか。スピネルがな」
高笑いで少し頭痛を患っている身にとっては悪影響でしかないが、どうにか話が無理やりでもまとまったようで一安心。
「え、えぇ! お父様を心の底から尊敬していますから‼」
とりあえず、彼女に合わせるので精一杯。深く聞かないでくれ…。
今の私には説明を考えるのがめんどくさいし、頭が痛い。
「スピネルよ愛しているぞ‼」
「……旦那様、急遽クォーツ・アンバー様がいらっしゃいました」
「またあいつか、聞き分けの悪い者だな」
突然、笑顔だった男は、ある人の名前でおもむろに怪訝な顔を出している。
「ではスピネル。また夜食の時間に会おう。ラリマー、スピネルに何かあれば近くの大人に報告せよ」
「「はい、お父様」」
彼の足音は少し重く威圧のあるもの。大体、足音で予想できるが、きっと喧嘩をするような会話になるだろう。
「…ラリマー。クォーツ・アンバーとは誰ですか」
足音一つ立てず、私の座るベッド横の椅子に腰かけると、質問に応えてくれた。
「クォーツ・アンバーとは、隣国の王様で、政治と経済については一流と持て囃《はや》されているが、計画性に難ありと言われている男です」
政治と経済は良くて、計画性がダメってそれで国が成り立っているのなら、相当なものね…。ただ、上司がその人であれば私はすぐにでも逃亡したい。前世の上司とほぼ変わらないじゃない。
「ラリマーありがとう」
「いえ‼ お嬢様、体調は大丈夫ですか?」
「えぇ、さきほどの大声は頭に響きましたが、多分大丈夫です!」
「…ふふ、そうですね。お父様は声が大きいですから」
「演説では活躍しそうな声ですよね」
「ですね」
二人で父の話をメインに笑い合う。前世ではこういう時間なんて取る暇すらなかった。
あっても年に数回程度、有休ももらえなかったものだから、今この時間、この雰囲気、すべて居心地が良い。落ち着くし、ラリマー可愛いから癒される。スピネルも目がないわね。
こんな可愛い子をいじめるなんて…。でも私の世界では男同士も女同士も抵抗なく恋愛ができた者だ。
記憶上、この世界ではそれがおかしなこと。そう認識されてもおかしくないのかもしれない。だからといっていじめる理由にはならないはずなのに…。
「お嬢様⁉ やはりどこか医者を呼ぶべきですか⁉」
え? どうして?
私の頬あたりに何か冷たい小さなものが下へと落ちていく。手に触れると、水のようなもの。でも、私はこれを知っている。だってさっきも出したから。
「……いや、呼ばなくて大丈夫。ただ今までやってきた罪は消えないのを理解して泣いただけ。ごめ…」
「謝らなくていいです。私は今のお嬢様が好きです。だから過去のことは気にしません。それに過去を後悔だけしても何も良いことは残りません」
そうだ。前世でも経験した。後悔は自分を負のどん底に突き落とすだけ。それを登ろうとしても力が足りず、再び底に尻もちをつくだけ。
「そうだね、分かった。ありがとう愛しのラリマー」
「え⁉ あ、ありがとうございます‼ 私もお嬢様のことが好きです!」
こんな癒しの時間が続けばいいな…。
夢見た物語ではこの後、平凡じゃなくなるけど本当なのかな。それとも物語だけ?
あれ? さきほどの記憶では寂しい思いを…。
ん? 記憶の中では……。
──お父様が話してくれない…。仕事が忙しいのかしら。いつもは、一時間抱きしめてくださるのに今日は…三十分だけですわ! 寂しい‼
あぁ、私が見ていたのは寂しい思いをしているところだけ。本来はこのお父さんがだる絡みしすぎてそれが当たり前になってしまったのか。
親も親だな。
子どもを甘やかせすぎれば、それが定着し、今後の子育てに支障をきたす。例えば、駄々をこねてどうにかしてお願いを聞いてもらおうといろんな手を使うだろう。それが罪であっても本人には自覚がない。あったとしても「自分の言うことを聞いてもらうためだから仕方がない」。きっとそう考えるはずだ。スピネルもそう。
「お父様、お忙しい中、申し訳ございません」
「…お、おう体調は大丈夫か?」
「おかげさまで。お騒がせしてすみません」
「スピネルよ。頭でも打ったのか?」
「…?」
ちょうど、扉の前にはラリマーが礼儀正しく、静かに立っているのが見え、目を合わせると口パクで何か伝えようとしている。
け・い・ご・は・だ・め
最後は分かりやすく大胆に自分の顔の前に両腕を持ってきて『×』と記した。
「あ…」
さっきラリマーが言っていたことを思い出し、つい声が漏れてしまった。
「どうしたんだ? スピネルよ」
やばい、やばい。なんと言い訳をしよう…。
「お、お嬢様は少し疲れていて、あの…お父様の威厳が凄すぎて、感極まってしまったのだと思います!」
な、なるほど? 言い訳的には変でしかないが、彼女なりのフォローだ。ありがたくうけとめておこう。
「ははは‼ そうかそうか。スピネルがな」
高笑いで少し頭痛を患っている身にとっては悪影響でしかないが、どうにか話が無理やりでもまとまったようで一安心。
「え、えぇ! お父様を心の底から尊敬していますから‼」
とりあえず、彼女に合わせるので精一杯。深く聞かないでくれ…。
今の私には説明を考えるのがめんどくさいし、頭が痛い。
「スピネルよ愛しているぞ‼」
「……旦那様、急遽クォーツ・アンバー様がいらっしゃいました」
「またあいつか、聞き分けの悪い者だな」
突然、笑顔だった男は、ある人の名前でおもむろに怪訝な顔を出している。
「ではスピネル。また夜食の時間に会おう。ラリマー、スピネルに何かあれば近くの大人に報告せよ」
「「はい、お父様」」
彼の足音は少し重く威圧のあるもの。大体、足音で予想できるが、きっと喧嘩をするような会話になるだろう。
「…ラリマー。クォーツ・アンバーとは誰ですか」
足音一つ立てず、私の座るベッド横の椅子に腰かけると、質問に応えてくれた。
「クォーツ・アンバーとは、隣国の王様で、政治と経済については一流と持て囃《はや》されているが、計画性に難ありと言われている男です」
政治と経済は良くて、計画性がダメってそれで国が成り立っているのなら、相当なものね…。ただ、上司がその人であれば私はすぐにでも逃亡したい。前世の上司とほぼ変わらないじゃない。
「ラリマーありがとう」
「いえ‼ お嬢様、体調は大丈夫ですか?」
「えぇ、さきほどの大声は頭に響きましたが、多分大丈夫です!」
「…ふふ、そうですね。お父様は声が大きいですから」
「演説では活躍しそうな声ですよね」
「ですね」
二人で父の話をメインに笑い合う。前世ではこういう時間なんて取る暇すらなかった。
あっても年に数回程度、有休ももらえなかったものだから、今この時間、この雰囲気、すべて居心地が良い。落ち着くし、ラリマー可愛いから癒される。スピネルも目がないわね。
こんな可愛い子をいじめるなんて…。でも私の世界では男同士も女同士も抵抗なく恋愛ができた者だ。
記憶上、この世界ではそれがおかしなこと。そう認識されてもおかしくないのかもしれない。だからといっていじめる理由にはならないはずなのに…。
「お嬢様⁉ やはりどこか医者を呼ぶべきですか⁉」
え? どうして?
私の頬あたりに何か冷たい小さなものが下へと落ちていく。手に触れると、水のようなもの。でも、私はこれを知っている。だってさっきも出したから。
「……いや、呼ばなくて大丈夫。ただ今までやってきた罪は消えないのを理解して泣いただけ。ごめ…」
「謝らなくていいです。私は今のお嬢様が好きです。だから過去のことは気にしません。それに過去を後悔だけしても何も良いことは残りません」
そうだ。前世でも経験した。後悔は自分を負のどん底に突き落とすだけ。それを登ろうとしても力が足りず、再び底に尻もちをつくだけ。
「そうだね、分かった。ありがとう愛しのラリマー」
「え⁉ あ、ありがとうございます‼ 私もお嬢様のことが好きです!」
こんな癒しの時間が続けばいいな…。
夢見た物語ではこの後、平凡じゃなくなるけど本当なのかな。それとも物語だけ?
10
あなたにおすすめの小説
毒姫の婚約騒動
SHIN
恋愛
卒業式を迎え、立食パーティーの懇談会が良い意味でも悪い意味でもどことなくざわめいていた。
「卒業パーティーには一人で行ってくれ。」
「分かりました。」
そう婚約者から言われて一人で来ましたが、あら、その婚約者は何処に?
あらあら、えっと私に用ですか? 所で、お名前は?
毒姫と呼ばれる普通?の少女と常に手袋を着けている潔癖症?の男のお話し。
そのフラグをへし折りまくっていることに気づかなかったあなたの負け
藤田あおい
恋愛
卒業パーティーで、婚約破棄を言い渡されたアリエッタ。
しかし、そこにアリエッタの幼馴染の男が現れる。
アリエッタの婚約者の殿下を奪った少女は、慌てた様子で、「フラグは立っているのに、なんで?」と叫ぶ。
どうやら、この世界は恋愛小説の世界らしい。
しかし、アリエッタの中には、その小説を知っている前世の私の人格がいた。
その前世の私の助言によって、フラグをへし折られていることを知らない男爵令嬢は、本命ルート入りを失敗してしまったのだった。
煤かぶり姫は光の貴公子の溺愛が罰ゲームだと知っている。
朝霧心惺
恋愛
「ベルティア・ローレル。僕の恋人になってくれないかい?」
煌めく猫っ毛の金髪に太陽の瞳、光の貴公子の名を欲しいがままにするエドワード・ルードバーグ公爵令息の告白。
普通の令嬢ならば、嬉しさのあまり失神してしまうかもしれない状況に、告白された令嬢、ベルティア・ローレルは無表情のままぴくりとも頬を動かさない。
何故なら———、
(罰ゲームで告白なんて、最低の極みね)
黄金の髪こそが美しいという貴族の価値観の中で、煤を被ったような漆黒の髪を持つベルティアには、『煤かぶり姫』という蔑称がある。
そして、それは罰ゲーム結果の恋人に選ばれるほどに、貴族にとっては酷い見た目であるらしい。
3年間にも及ぶ学園生活も終盤に迫ったこの日告白されたベルティア、実家は伯爵家といえども辺境であり、長年の凶作続きにより没落寸前。
もちろん、実家は公爵家に反抗できるほどの力など持ち合わせていない。
目立つ事が大嫌いでありながらも渋々受け入れた恋人生活、けれど、彼の罰ゲームはただ付き合うだけでは終わらず、加速していく溺愛、溺愛、溺愛………!!
甘すぎる苦しみが、ベルティアを苦しめる。
「どうして僕の愛を疑うんだっ!!」
(疑うも何も、そもそもこの恋人ごっこはあなたへの罰ゲームでしょ!?)
悪役令嬢はヒロインに敵わないのかしら?
こうじゃん
恋愛
わたくし、ローズ・キャンベラは、王宮園遊会で『王子様を巻き込んで池ポチャ』をした。しかも、その衝撃で前世の記憶を思い出した。
甦る膨大な前世の記憶。そうして気づいたのである。
私は今中世を思わせる、魔法有りのダークファンタジー乙女ゲーム『フラワープリンセス~花物語り』の世界に転生した。
――悪名高き黒き華、ローズ・キャンベルとして。
(小説家になろうに投稿済み)
愛する義兄に憎まれています
ミカン♬
恋愛
自分と婚約予定の義兄が子爵令嬢の恋人を両親に紹介すると聞いたフィーナは、悲しくて辛くて、やがて心は闇に染まっていった。
義兄はフィーナと結婚して侯爵家を継ぐはずだった、なのにフィーナも両親も裏切って真実の愛を貫くと言う。
許せない!そんなフィーナがとった行動は愛する義兄に憎まれるものだった。
2023/12/27 ミモザと義兄の閑話を投稿しました。
ふわっと設定でサクっと終わります。
他サイトにも投稿。
悪役令嬢だったので、身の振り方を考えたい。
しぎ
恋愛
カーティア・メラーニはある日、自分が悪役令嬢であることに気づいた。
断罪イベントまではあと数ヶ月、ヒロインへのざまぁ返しを計画…せずに、カーティアは大好きな読書を楽しみながら、修道院のパンフレットを取り寄せるのだった。悪役令嬢としての日々をカーティアがのんびり過ごしていると、不仲だったはずの婚約者との距離がだんだんおかしくなってきて…。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる