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第一章
王子ってこんな人だったの⁉
しおりを挟む「スピネル~‼」
さきほど、ラリマーから他国で仕入れた茶葉で作られた紅茶を嗜んでいると、廊下からは小さな子どものような声が響いて耳がキーンっとなり肩が跳ねてしまう。
声のする方に視線を向け、紅茶を飲みながら眺めていると「スピネル‼ 会いたかったぞ‼」そう涙を武器に扉を大胆に開き、私の元まで走ってくる。
「ジャスパー・ペリドット様~‼」
この声はラリマーの声。てことはこの男こそ、私の婚約者であり、この国の第二王子。
この様子では王子は私にしがみついてくるのでは…?
そう思った瞬間、どうしようか考える余地もなく、ジャスパー・ペリドットが私に触れる寸前で、素早く王子を私が座っていた椅子に着席させ、ラリマーの背後に隠れた。
「……お嬢様⁉」
「スピネル~! どうして逃げるの⁉」
「…王子が突然飛びつこうとするからです」
「だって! 弱ってるって聞いたから‼」
その理由だともし私がベッドで横になっていればそのまま飛び込む…。
体調が良くなって良かった…。スピネルは安堵し、息を吐いた。
「…そうですか。ですが、突然はやめてください。びっくりします」
「分かった! 次からは宣告して飛び込むよ‼」
ん~? ちょっと違う気が…。まぁ、それなら逃げることもできるか。
「お、お嬢様…。そろそろ…」
「あ、ラリマーごめんなさい」
気づけば、私の両手はラリマーの両肩にそれぞれ置かれて拘束する状態になっていた。
「ふぅ…。と、とりあえず! お嬢様はお疲れになっているのです。もう少し安静にし、ジャスパー様?」
「は、はい!」
「いいですか? ここにいてもいいですが、くれぐれもお嬢様の体調が悪くなるような行為はやめていただいです。いいですね?」
「はい…‼」
きっと、ラリマーを怒らせれば私ではどうにもならなくなりそう。そこもギャップがあって好みなんだけどね。
「ラリマー。すまないのだけど王子に私と同じ紅茶を用意してくれないかしら?」
「えぇ、かしこまりました」
ワゴンを持ってラリマーが部屋から去った途端、王子は「ラリマーってあれほど怖かったっけ…」と少し私同様、弱っているように感じた。
「ふふ、そうね。優しさうえじゃないかしら」
「そうかな…」
「そうですよ。王子」
今の王子はなんだか小動物みたいで可愛い。
「お持ちいたしましたジャスパー様」
「あぁ、ありがとう」
ジャスパーは、最初はあれほど泣いていたが落ち着きを取り戻し、ある程度は紳士な対応ができるようだ。これがギャップなら可愛らしいものだ。
やはり王子というだけあって礼儀作法もの見方も絵に描いたような美しさ。ただ憶測で判断してはいけないのは分かっているが王子は多分、「王子だから美しい」とか「王子だから当たり前だ」とか散々言われてきただろう。
それをスピネルは権力のためだけに「ジャスパー様を一人の男として見ています」などと小言を申していた。これは記憶上にこびりついていたもの。
要は王子とお近づきになりたがために甘い言葉を言っていたに過ぎない。前世の私の一番嫌いなタイプ…。虚偽で人を喜ばせて何が楽しいのか。理解しがたいです。
「王子、あなたは一人の男です。なのでこれからは王子だからと贔屓するつもりはありません。間違っていたら素直に言います」
紅茶の入ったティーカップを机に置く。漂う湯気は開いた窓から入り込む風になびいている。
「ですので、王子。あなたの臆病なところは私の前だけに見せてください」
片膝を置き、ティーカップを持たない空いた手を優しく顔元まで持ち上げ、手の甲にゆっくりとキスをする。
「いいですね? 王子」
「……はひ…⁉」
あれ、照れると顔が真っ赤になるんだ。こういうところ、他の女子からもモテるんだろうな…。
きっとヒロインとかも現れるかもしれない。王子も私を無視してその子の元まで行くのだろうな…。
今はお互い十五かもしれないが、学園は四年制。最高学年になっていれば、王子もその泣いたお姿を拝見することもなくなり、勇ましくかっこいいと周りの生徒にも言われるだろう。
もしそうなれば、恋人にはラリマーに来てもらおう。さすがに王子と付き合っている状態でラリマーとお近づきになれば、浮気と言われかねないし、ラリマーには迷惑をかけてしまう。
でもどうしてか、王子と別れるのはあまり好いてもいない。
まぁ、前世では二十五年生きたんだ。子どもも授からずにこちらに来てしまった。多分、王子を私の子だと思ってしまって成長が楽しみなのだろう。
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