悪役令嬢に転生したけど、旦那様が臆病すぎ! ヒロイン、この人で本当に大丈夫?

花魁童子

文字の大きさ
5 / 6
第一章

王子ってこんな人だったの⁉

しおりを挟む
「スピネル~‼」


 さきほど、ラリマーから他国で仕入れた茶葉で作られた紅茶を嗜んでいると、廊下からは小さな子どものような声が響いて耳がキーンっとなり肩が跳ねてしまう。


 声のする方に視線を向け、紅茶を飲みながら眺めていると「スピネル‼ 会いたかったぞ‼」そう涙を武器に扉を大胆に開け、私の元まで走ってくる。


「ジャスパー・ペリドット様~‼」


 この声はラリマーの声。ということはこの男こそ、私の婚約者であり、この国の第二王子。


 
 この様子では王子は私にしがみついてくるのでは…?


 
 そう思った瞬間、どうしようか考える余地もなく、ジャスパー・ペリドットが私に触れる寸前で、素早く王子を私が座っていた椅子に着席させ、ラリマーの背後に隠れた。


「……お嬢様⁉」


「スピネル~! どうして逃げるの⁉」


「…王子が突然飛びつこうとするからです」


「だって! 弱ってるって聞いたから‼」


 その理由だともし私がベッドで横になっていればそのまま飛び込む…。


 体調が良くなって良かった…。スピネルは安堵し、息を吐いた。


「…そうですか。ですが、突然はやめてください。びっくりします」


「分かった! 次からは宣告して飛び込むよ‼」


 ん~? ちょっと違う気が…。まぁ、それなら逃げることもできるか。


「お、お嬢様…。そろそろ…」


「あ、ラリマーごめんなさい」


 気づけば、私の両手はラリマーの両肩にそれぞれ置かれて拘束する状態になっていた。


「ふぅ…。と、とりあえず! お嬢様はお疲れになっているのです。もう少し安静にし、ジャスパー様?」


「は、はい!」


「いいですか? ここにいてもいいですが、くれぐれもお嬢様の体調が悪くなるような行為はやめていただいです。いいですね?」


「はい…‼」


 きっと、ラリマーを怒らせれば私ではどうにもならなくなりそう。そこもギャップがあって好みなんだけどね。


「ラリマー。すまないのだけど王子に私と同じ紅茶を用意してくれないかしら?」


「えぇ、かしこまりました」


 ワゴンを持ってラリマーが部屋から去った途端、王子は「ラリマーってあれほど怖かったっけ…」と少し私同様、弱っているように感じた。



「ふふ、そうね。優しさゆえじゃないかしら」


「そうかな…」


「そうですよ。王子」


 今の王子はなんだか小動物みたいで可愛い。




「お持ちいたしました、ジャスパー様」


「あぁ、ありがとう」


 ジャスパーは、最初はあれほど泣いていたが落ち着きを取り戻し、ある程度は紳士な対応ができるようだ。これがギャップなら可愛らしいものだ。


 やはり王子というだけあって礼儀作法も物の見方も絵に描いたような美しさ。ただ憶測で判断してはいけないのは分かっているが王子は多分、「王子だから美しい」とか「王子だから当たり前だ」とか散々言われてきただろう。


 それをスピネルは権力のためだけに「ジャスパー様を一人の男として見ています」などと甘言を申していた。これは記憶にこびりついていたもの。


 要は王子とお近づきになりたがために甘い言葉を言っていたに過ぎない。前世の私の一番嫌いなタイプ…。虚偽で人を喜ばせて何が楽しいのか。理解しがたいです。


「王子、あなたは一人の男です。なのでこれからは王子だからと贔屓ひいきするつもりはありません。間違っていたら素直に言います」


 紅茶の入ったティーカップを机に置く。漂う湯気は開いた窓から入り込む風になびいている。


「ですので、王子。あなたの臆病なところは私の前だけに見せてください」


 片膝を置き、ティーカップを持たない空いた手を優しく顔もとまで持ち上げ、手の甲にゆっくりとキスをする。


「いいですね? 王子」


「……はひ…⁉」


 あれ、照れると顔が真っ赤になるんだ。こういうところ、他の女子からもモテるんだろうな…。


 きっとヒロインとかも現れるかもしれない。王子も私を無視してその子の元まで行くのだろうな…。


 今はお互い十五かもしれないが、学園は四年制。最高学年になっていれば、王子もその泣いたお姿を拝見することもなくなり、勇ましくかっこいいと周りの生徒にも言われるだろう。


 もしそうなれば、恋人にはラリマーに来てもらおう。さすがに王子と付き合っている状態でラリマーとお近づきになれば、浮気と言われかねないし、ラリマーには迷惑をかけてしまう。


 でもどうしてか、王子と別れるのはあまり好いてもいない。



 まぁ、前世では二十五年生きたんだ。子どもも授からずにこちらに来てしまった。多分、王子を私の子だと思ってしまって成長が楽しみなのだろう。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

……モブ令嬢なのでお気になさらず

monaca
恋愛
……。 ……えっ、わたくし? ただのモブ令嬢です。

毒姫の婚約騒動

SHIN
恋愛
卒業式を迎え、立食パーティーの懇談会が良い意味でも悪い意味でもどことなくざわめいていた。 「卒業パーティーには一人で行ってくれ。」 「分かりました。」 そう婚約者から言われて一人で来ましたが、あら、その婚約者は何処に? あらあら、えっと私に用ですか? 所で、お名前は? 毒姫と呼ばれる普通?の少女と常に手袋を着けている潔癖症?の男のお話し。

そのフラグをへし折りまくっていることに気づかなかったあなたの負け

藤田あおい
恋愛
卒業パーティーで、婚約破棄を言い渡されたアリエッタ。 しかし、そこにアリエッタの幼馴染の男が現れる。 アリエッタの婚約者の殿下を奪った少女は、慌てた様子で、「フラグは立っているのに、なんで?」と叫ぶ。 どうやら、この世界は恋愛小説の世界らしい。 しかし、アリエッタの中には、その小説を知っている前世の私の人格がいた。 その前世の私の助言によって、フラグをへし折られていることを知らない男爵令嬢は、本命ルート入りを失敗してしまったのだった。

煤かぶり姫は光の貴公子の溺愛が罰ゲームだと知っている。

朝霧心惺
恋愛
「ベルティア・ローレル。僕の恋人になってくれないかい?」  煌めく猫っ毛の金髪に太陽の瞳、光の貴公子の名を欲しいがままにするエドワード・ルードバーグ公爵令息の告白。  普通の令嬢ならば、嬉しさのあまり失神してしまうかもしれない状況に、告白された令嬢、ベルティア・ローレルは無表情のままぴくりとも頬を動かさない。  何故なら———、 (罰ゲームで告白なんて、最低の極みね)  黄金の髪こそが美しいという貴族の価値観の中で、煤を被ったような漆黒の髪を持つベルティアには、『煤かぶり姫』という蔑称がある。  そして、それは罰ゲーム結果の恋人に選ばれるほどに、貴族にとっては酷い見た目であるらしい。  3年間にも及ぶ学園生活も終盤に迫ったこの日告白されたベルティア、実家は伯爵家といえども辺境であり、長年の凶作続きにより没落寸前。  もちろん、実家は公爵家に反抗できるほどの力など持ち合わせていない。  目立つ事が大嫌いでありながらも渋々受け入れた恋人生活、けれど、彼の罰ゲームはただ付き合うだけでは終わらず、加速していく溺愛、溺愛、溺愛………!!  甘すぎる苦しみが、ベルティアを苦しめる。 「どうして僕の愛を疑うんだっ!!」 (疑うも何も、そもそもこの恋人ごっこはあなたへの罰ゲームでしょ!?)

悪妻と噂の彼女は、前世を思い出したら吹っ切れた

下菊みこと
恋愛
自分のために生きると決めたら早かった。 小説家になろう様でも投稿しています。

悪役令嬢はヒロインに敵わないのかしら?

こうじゃん
恋愛
わたくし、ローズ・キャンベラは、王宮園遊会で『王子様を巻き込んで池ポチャ』をした。しかも、その衝撃で前世の記憶を思い出した。 甦る膨大な前世の記憶。そうして気づいたのである。  私は今中世を思わせる、魔法有りのダークファンタジー乙女ゲーム『フラワープリンセス~花物語り』の世界に転生した。 ――悪名高き黒き華、ローズ・キャンベルとして。 (小説家になろうに投稿済み)

愛する義兄に憎まれています

ミカン♬
恋愛
自分と婚約予定の義兄が子爵令嬢の恋人を両親に紹介すると聞いたフィーナは、悲しくて辛くて、やがて心は闇に染まっていった。 義兄はフィーナと結婚して侯爵家を継ぐはずだった、なのにフィーナも両親も裏切って真実の愛を貫くと言う。 許せない!そんなフィーナがとった行動は愛する義兄に憎まれるものだった。 2023/12/27 ミモザと義兄の閑話を投稿しました。 ふわっと設定でサクっと終わります。 他サイトにも投稿。

悪役令嬢だったので、身の振り方を考えたい。

しぎ
恋愛
カーティア・メラーニはある日、自分が悪役令嬢であることに気づいた。 断罪イベントまではあと数ヶ月、ヒロインへのざまぁ返しを計画…せずに、カーティアは大好きな読書を楽しみながら、修道院のパンフレットを取り寄せるのだった。悪役令嬢としての日々をカーティアがのんびり過ごしていると、不仲だったはずの婚約者との距離がだんだんおかしくなってきて…。

処理中です...