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第一章
私ってそんなに変わってしまった?
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「すみません、ヘリオドール・サンストーン! ラリマーが今日は休暇を取っていて図書館に行きたいんですがどこにありますか?」
「……」
「どうしましたか?」
「…いえ、こちらです」
「こんなことがあったけど、ラリマーなんだか分かる?」
いつものように紅茶を急須から注いでいる最中のラリマーに問いかける。楽観的に聞いたのが悪かったのか、ラリマーはすごく驚いた顔で見てきた。それはもう「なんで分かってないの⁉」と驚きを通り越して呆れが目に表れているように。
「……それはですね。お嬢様の性格、というか使用人への接し方が以前と違いすぎるからです」
急須を静かにワゴンに乗せ、呆れた顔を露わにして私に応えた。
「なるほど??」
「お嬢様は以前、使用人から裏でなんと呼ばれていたか知っていますか?」
「いえ、分からないわ」
「最悪の令嬢ですよ。だって少しでもミスをした使用人には折檻と称して様々な暴力を与えていました。その積み重ねがその名に繋がりました。そして今のお嬢様にその名は似合わないし、ふさわしくない。そう言った声が上がっています」
「なるほどね…」
スピネル、どれだけ悪いことをしてきたんだ…。
考え込むように指を顎に触れさせ、スピネルの記憶を振り返る。そこには前と変わらず使用人に暴言や暴力を振るう姿も。どう抗っても言い逃れのできない現実。
よし! やっぱりこの現状変えるしかない!
しかしどうしたものか…。前世で学んだが、人の印象はそう簡単には変わらない。長い年月を経て…となる。
「ラリマー。私の行動は前と比べてどうなの?」
「…すごく好きです‼ 失礼なこと言いますが、以前のお嬢様は正直言って怖かったです。いつ殴られるかも分からないし、いつ解雇になるのか分からない。……嫌われた時が命日だと思っている人もいました」
やっぱり、スピネルは前世の知識でいう悪役令嬢ってポジションなのね…。でも、学園に行くから行動に移すとしても帰ってきてからになるわね。そのあたりは余裕のある時に行動しましょう。
「ラリマーは本当に優しいのね。私もラリマーのこと好きよ」
「…え、あ、ありがとうございます!」
言われることを予想していなかったのか、顔を赤く染め、はにかんで喜んでいる。
もし、王子がヒロインを好きになれば、ラリマーを嫁として側にいてもらおうかしら‼
「ラリマー。もしもですが、あの王子が他の女の元へ行ってもあなたは私の側にいてくれますか?」
「はい‼ もちろんです!」
元気の良い声が寒さを覚えた部屋の中に響き、冷たかった私の心をほんのりと温もりを感じる。
「…そうだ。そろそろ学園に行く用意をしないといけませんね」
「そうね。私もそうだけど、ラリマーにもついてきて欲しいの。お父様が言うには、『学園に行くならば、付人が必要だ。そこはお前の自由で良いぞ‼』って言っていたし!」
「私なんかが良いのですか⁉」
「ラリマー。『私なんかが』と自分を卑下してはいけません。それに、私はあなたに来てほしいの」
驚きと私なんかで良いのかという不安を顔に出すラリマーの手を取った。女でありながら、私は勇敢な騎士のように片足を床に下げ、彼女の手の甲にキスをする。
「お、お、お嬢様⁉」
「私はあなたが良いの。誰でもないあなただけに頼めることなのよ」
「は、はい…」
彼女のメンタルはもう限界のようで、頭からは湯気が立って赤面になりすぎて片手で顔を隠してしまっている。
「やっぱりラリマーは可愛いわね‼」
「照れることを言わないでくださいお嬢様‼ 褒めても何も出てきませんよ!」
「私はあなたが欲しいわ。…ふふ」
「お嬢様!」
部屋には暖かい空気が室内の冷たい空気に打ち勝ち、その時だけは紅茶の香りがお香のように感じた。
学園に行く今日、ラリマーとのいちゃつきもありながら、学園に行く馬車が用意され、持っていく荷物を馬車に押し込み、ラリマーとともに乗り、門の前で旅立つ私たちにエールを送ってくれたのは家族だけじゃなく使用人のほとんどが私を見送ってくれた。
「道中もそうだが、学園では他の貴族に迷惑をかけるではないぞ‼ 何度も言うが、あの学園は貴族も平民も地位の関係はないところだ」
「分かっているわお父様。大丈夫」
なんせ前世で学んだことだもの。社畜にとって自分の地位を維持、昇格は戦争と同じ。だからこそ、密かに仕事を遂行するのもお手の物。どれだけ上司やら先輩に叩き込まれたと思っているの!
「ラリマー・カルサイトもだぞ。お前は平民から来た者。他の貴族に何かされたらすぐスピネルに報告しろ」
「分かりましたお父様」
お父様…それはどういう意味ですか。頼られるのは嬉しいけど、私は番犬ではないのですよ…。
まぁでもラリマーを守れるならこれ以上の喜びはないわ。
「それではそろそろ出発します! お嬢様もラリマーもお忘れ物はないですか?」
「えぇ、ないわ」
「私もないです!」
今回学園まで長い時間馬車を引く人はグラナイトだ。仕事も溜まっているはずなのに、お父様が『危ないから』と言って信用のできるグラナイトを引率として馬車を運転することになった。
「グラナイト。決して二人に怪我のないように。そしてお前も何事もなく帰ってこいよ」
「はい。かしこまりました」
「では出発します‼」
「達者でな‼」
「「はい‼」」
馬車で家との距離が遠くなるなか、私たちはずっと手を振ってくれる皆に振り返して感謝を伝えた。
「……」
「どうしましたか?」
「…いえ、こちらです」
「こんなことがあったけど、ラリマーなんだか分かる?」
いつものように紅茶を急須から注いでいる最中のラリマーに問いかける。楽観的に聞いたのが悪かったのか、ラリマーはすごく驚いた顔で見てきた。それはもう「なんで分かってないの⁉」と驚きを通り越して呆れが目に表れているように。
「……それはですね。お嬢様の性格、というか使用人への接し方が以前と違いすぎるからです」
急須を静かにワゴンに乗せ、呆れた顔を露わにして私に応えた。
「なるほど??」
「お嬢様は以前、使用人から裏でなんと呼ばれていたか知っていますか?」
「いえ、分からないわ」
「最悪の令嬢ですよ。だって少しでもミスをした使用人には折檻と称して様々な暴力を与えていました。その積み重ねがその名に繋がりました。そして今のお嬢様にその名は似合わないし、ふさわしくない。そう言った声が上がっています」
「なるほどね…」
スピネル、どれだけ悪いことをしてきたんだ…。
考え込むように指を顎に触れさせ、スピネルの記憶を振り返る。そこには前と変わらず使用人に暴言や暴力を振るう姿も。どう抗っても言い逃れのできない現実。
よし! やっぱりこの現状変えるしかない!
しかしどうしたものか…。前世で学んだが、人の印象はそう簡単には変わらない。長い年月を経て…となる。
「ラリマー。私の行動は前と比べてどうなの?」
「…すごく好きです‼ 失礼なこと言いますが、以前のお嬢様は正直言って怖かったです。いつ殴られるかも分からないし、いつ解雇になるのか分からない。……嫌われた時が命日だと思っている人もいました」
やっぱり、スピネルは前世の知識でいう悪役令嬢ってポジションなのね…。でも、学園に行くから行動に移すとしても帰ってきてからになるわね。そのあたりは余裕のある時に行動しましょう。
「ラリマーは本当に優しいのね。私もラリマーのこと好きよ」
「…え、あ、ありがとうございます!」
言われることを予想していなかったのか、顔を赤く染め、はにかんで喜んでいる。
もし、王子がヒロインを好きになれば、ラリマーを嫁として側にいてもらおうかしら‼
「ラリマー。もしもですが、あの王子が他の女の元へ行ってもあなたは私の側にいてくれますか?」
「はい‼ もちろんです!」
元気の良い声が寒さを覚えた部屋の中に響き、冷たかった私の心をほんのりと温もりを感じる。
「…そうだ。そろそろ学園に行く用意をしないといけませんね」
「そうね。私もそうだけど、ラリマーにもついてきて欲しいの。お父様が言うには、『学園に行くならば、付人が必要だ。そこはお前の自由で良いぞ‼』って言っていたし!」
「私なんかが良いのですか⁉」
「ラリマー。『私なんかが』と自分を卑下してはいけません。それに、私はあなたに来てほしいの」
驚きと私なんかで良いのかという不安を顔に出すラリマーの手を取った。女でありながら、私は勇敢な騎士のように片足を床に下げ、彼女の手の甲にキスをする。
「お、お、お嬢様⁉」
「私はあなたが良いの。誰でもないあなただけに頼めることなのよ」
「は、はい…」
彼女のメンタルはもう限界のようで、頭からは湯気が立って赤面になりすぎて片手で顔を隠してしまっている。
「やっぱりラリマーは可愛いわね‼」
「照れることを言わないでくださいお嬢様‼ 褒めても何も出てきませんよ!」
「私はあなたが欲しいわ。…ふふ」
「お嬢様!」
部屋には暖かい空気が室内の冷たい空気に打ち勝ち、その時だけは紅茶の香りがお香のように感じた。
学園に行く今日、ラリマーとのいちゃつきもありながら、学園に行く馬車が用意され、持っていく荷物を馬車に押し込み、ラリマーとともに乗り、門の前で旅立つ私たちにエールを送ってくれたのは家族だけじゃなく使用人のほとんどが私を見送ってくれた。
「道中もそうだが、学園では他の貴族に迷惑をかけるではないぞ‼ 何度も言うが、あの学園は貴族も平民も地位の関係はないところだ」
「分かっているわお父様。大丈夫」
なんせ前世で学んだことだもの。社畜にとって自分の地位を維持、昇格は戦争と同じ。だからこそ、密かに仕事を遂行するのもお手の物。どれだけ上司やら先輩に叩き込まれたと思っているの!
「ラリマー・カルサイトもだぞ。お前は平民から来た者。他の貴族に何かされたらすぐスピネルに報告しろ」
「分かりましたお父様」
お父様…それはどういう意味ですか。頼られるのは嬉しいけど、私は番犬ではないのですよ…。
まぁでもラリマーを守れるならこれ以上の喜びはないわ。
「それではそろそろ出発します! お嬢様もラリマーもお忘れ物はないですか?」
「えぇ、ないわ」
「私もないです!」
今回学園まで長い時間馬車を引く人はグラナイトだ。仕事も溜まっているはずなのに、お父様が『危ないから』と言って信用のできるグラナイトを引率として馬車を運転することになった。
「グラナイト。決して二人に怪我のないように。そしてお前も何事もなく帰ってこいよ」
「はい。かしこまりました」
「では出発します‼」
「達者でな‼」
「「はい‼」」
馬車で家との距離が遠くなるなか、私たちはずっと手を振ってくれる皆に振り返して感謝を伝えた。
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