一途な恋

花魁童子

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 私には世界一好きな人がいる。その恋が誰かに否定されても私は愛し続けるし、その人のお願い事は全部聞く。これは私が考えて、思って、したかったことだから。だから否定されても私の考えを突き進む。

「せんせ~、大好きだよ?」

 私の声が二人っきりの夕日色に染まる教室に響く。

「俺も好きだよ。恵梨えり

 そう先生は私のことをしっかり内側から見てくれる。そして愛してくれる。そんな先生が大好き。

 つい最近まで、「死にたい」だとか「消えたい」だとかほざいていた私が、先生のおかげで変われた。

 周りの人たちは蔑まれ、私の気持ちなど考えず、いじめばかりをしていた。

「せんせ~、私のどこが好き?」

「恵梨の笑顔や顔かな」

「ちょっと~、顔って面食いじゃん!私も先生の顔好きだけど~」

 図に乗って笑う私とは裏腹にいつも先生は疲れている顔をする。やっぱり仕事で疲れているのかな。私が近くにいれば和らぐかな。

「私ね最近テストの点数がやばいんだ」

「そうか、教科によっては偽装してやる」

 先生は家系の地位が高く、偽装もお手の物。

「ありがとう!先生。いつも通り、条件があるんでしょ?」

 そう、付き合うときにもいじめを無くしてくれる代わりに条件を課せられた。

「じゃぁ、今回も教室に残ってくれるか?」



 …またか。でも、先生は優しく温かく、同級の男より凛々しく堂々としている。


「いいよ~!先生の温もり好きだから」

「そうか」

 そう言い去り、少し話を交わして夜の色が夕日色を飲み込むなか、先生は優しく私の体を触って抱擁を施した。

 …いつもと同じ体温で、私のすべてを包み込んでくれるような抱擁は私にとっては宝物同然。

「先生、本当に大好き。私を好きになってくれてありがとう」

「あ、あぁ」

 先生大丈夫かな…。

 その日は、先生と口を交わした。端的に言えば、キスを行った。





 次の日、いつも通りつまらない時間、飽きた授業を受け、長かったが放課後に行きつくことができた。放課後は大好きだ。もちろん嫌いな生徒がいるからという理由もある。

 しかし一番の目的は先生と言葉だけではなく口まで交わすことができるから。

 まだ、体までの関係はできていない。だけど、体の関係にもなりたい。それほど愛してくれるはずだから。あと、先生は指に誓いの指輪をはめていない。先生が欲しいよ…。


「せんせ~、愛していますよ」

 今日も今日とて愛の言葉を呼吸するように吐き、いつも通り先生に抱擁を求めた。

 先生も先生で抵抗なく私の欲求を満たしてくれる。

「ありがとう。俺も」

 あの時先生に守られて、惚れたのはもう、いつだったろう。そのことを忘れてしまうほどに恵梨は、先生に釘付けで愛している。

 しかし、先生は一回も抱擁と口づけ以上は求めてこない。なぜだ。先生になってから確かもう25年は過ぎていると聞いた。そのため、生徒と先生がいけないことをしたらどうなるのか分かっているから求めてこないのか。

 本当に教師のルールはめんどくさいし、嫌いだ。あんなもの無くなれば…。そうすれば自由であり、優遇もされる。

 今日は少し攻めてみようかしら。

 恵梨の心は不純色で満たされている。


「せんせ~」

 恵梨は呼びかけ、先生を押し倒す努力をした。その結果、油断していた先生は、私に体を預ける形で、埃が少し溜まっている床にのたれかかった。

「いった。恵梨さんどうしたの」

「私ともっと進もうよ。先生」

 甘く魅惑を纏った声で話しかけてみる。

 しかし、先生の反応は恵梨が思っていたものではなかった。そのため、恵梨の心は打たれることになる。

「どいてください」

 素っ気なく、悲しい声だ。

 しかし、自己否定のために「そういうことしましょう」と一蹴したが、その蹴りも届くことはなかった。

「今日はもう帰りましょう。見送りますよ」

「先生!」

 私の言葉に目もくれず、眼鏡のガラスから見えた目は、悲しさもあり、太陽に雲がかぶさってもう二度と晴れることがないような…。



 翌日も、また平凡な日がやってきた。しかし、恵梨の心は穴が開いていた。

 なぜ、いつも優しかった先生があんなことを言うのだろうか。体調が悪かったのか。それとも学校生活が疲れたのかな。自分のことを責めず、他のことに考える。

 そう思ってしまうほど、恵梨にとって先生に自分は必要不可欠なものだと錯覚している。

「先生来ない~~」

 夕日色に染まって夜の色も徐々に浸食する頃、いつもの時間になっても来てくれない。なぜだろうと今も考えているが本当の理由にはたどり着いていない。いや、今の状況ではたどり着くことは不可能だ。

「私の愛しの先生はどこにいるの~」

 ホコリ一つない教室の中で、恵梨の声だけが響く。



「私のこと好きじゃないのかな」

 そう呟くほど、恵梨は落ち込み、哀れさと無力さに悲しんでいる。
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