同じ味なら、たい焼きが楽しい。

砂山一座

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その日、俺はいつものように、ハクビシンがスイカを齧りに来ないか見回りに来ていただけだったのだ。
 昨日も、耕した土に点々と足跡が残されていた。あいつら、スイカに穴をあけて頭を突っ込んで中身を食べるのだ。
 最近じゃアライグマもいるらしいくて、足跡で害獣を特定するビラが、回覧板で回ってきた。
 日が落ちて、もうカラスの心配はなくなったが、何となく心配で、念のため籠でもかぶせておくかと畑に戻った。

 近づくと物音がする。
 灯りを消して音のする方に近づいて、パッと懐中電灯で照らした光の先で、鹿のように身を固めていたのは、若い女だった。
 
 驚いた顔で目も口も開けっぱなしだ。
 うちのスイカを両手で抱えている。
 
「おい、やめろ。そのすいかをそっと降ろせ」

(ど、泥棒、泥棒だ……)
 
 俺の心拍数は跳ね上がった。
 ついさっきニュースで見た、農作物を持ち去る窃盗団を思い出して、畑の周りを照らす。
 今年もメロン農家がやられて、大損害を被ったらしい。桃もやられている。スイカだって狙われる。
 懐中電灯を振り回すが、何かの動物の目が光に反射しただけで、女の他は人影などはない。複数の犯人と出くわす危険はなさそうだ。
 俺は、刺激しないように声を落として女に話しかける。

「あの、なにをされているんですか? 泥棒の方ですか……?」
 大変場違いな質問だが、他にどんな声をかければいいのか分からない。
 女は華奢な腕でスイカを持ち上げたまま、ふるふるとしている。
 あの高さから落とされたら、せっかく詰まってきたスイカが割れてしまう。
 どうかそのままスイカを傷つけないでくれ。傷がつくと値がさがる。警察沙汰もめんどうだ。
 まだ今だったら、単にで済む。
 
「あの、あの……スイカってすごく重いんですね……それに、こんなにつるが固くて痛いなんて……」
 女は大きなつばの帽子の下で、鼻をすすりながらすごく困った顔をしている。どうやら蔓を引きちぎろうとして失敗したんだろう。
 とげが刺さって痛かったのかもしれない。

「ええと、もしかして、何かお困りですか……?」
 
 スイカを本気で盗りにきたのなら、素手で蔓を引きちぎろうとはしないだろう。
 女はゆっくりとスイカを敷き藁の上に戻すと、よろけながら俺の方に近づいてくる。
 そうして蚊の泣くような声で本来の目的を告げた。
 
「あの、申し訳ありませんが、何か飲む物を恵んでいただけませんでしょうか」
 憔悴しきっている。下草に足を取られてよろよろと、よろよろと――。
「あ、そこ……」
 烏よけのテグスに足を引っ掛けて女は盛大に転んだ。
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