同じ味なら、たい焼きが楽しい。

砂山一座

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 収穫まで目前だ。
 こなつは相変わらず畑の手伝いをして、ここにいる。
 軽トラを運転して買い物に出たり、資材店でお使いもするようになった。
 よく働くし、人当たりもいいので近所からも評判だ。

 こなつを軽トラの助手席に乗せて、街に出る。いつもより大型のホームセンターへ行くのだ。
 
「私、あまり買い物に出たことが無いので、こんな大きな売り場、新鮮です」
「そうなんだ。お嬢様って、銀座とかで買い物するの?」
 大雑把なイメージでしか、お嬢様の日常を想像できない。
 
「さぁ、どうでしょう。だいたい誰かが必要なものは取りそろえてくれますから。銀座は混むので苦手です。本屋さんとか文具店は行きますよ」
 こなつの都会での生活を更に想像するけれど、俺の想像上のお嬢様こなつは現実より貧相に違いない。
 
「もう、どんなお嬢様話を聞かされても驚かないけどね。そうだ、そこにたい焼きの屋台があるんだけど、食べる? 尾頭付きしか食べたことないでしょ?」
 資材売り場の横にひっそりと佇むたい焼き屋を指さす。
 長いこと変わらない見た目の老夫婦が営むたい焼き屋には、今日は数人が並んで順番を待っている。
 
「もちろん食べたことありますよ。でも、食べたいです!」
 こうやってニコニコと強請られては、おすすめのものをいくつか買い与えずにはいられないというか……なんだかんだで買いすぎた。

「美味しいですね! 美味しいし、楽しい! 材料的には大判焼きと変わらないのに、魚の形をしているだけでこんなに楽しい!」
 
 何がそんなに楽しいのか、こなつは「美味しい」ではなくて「楽しい、楽しい」と繰り返す。
 あらかた食べ尽くして、食べすぎたのか、お腹をさすりながら助手席に反り返ると目を閉じる。
 
「――私、ここに来てからも、今までの仕事の量って変わっていないんです。リモートで現場とやりとりして、電話で色々決めて。あとはジムに行ったり、カフェに行ったりしていた時間が農作業に変わっただけで……」
「だいぶ違う世界だろ?」
「いいえ。そうでもなかったなと思って。その場所に行けば、その場所でちゃんと楽しいことがあるんだとわかりました。どこでも生きていけるんだって、少し安心したというか」
「つまり、大判焼きとたい焼きは、それほど変わらないって結論?」
 きらびやかな都会での生活がたい焼きで、地味な田舎暮らしが大判焼きってことかと自嘲気味にいえば、こなつは体を起こして俺を覗き込む。
 
「いえ、結論は、同じ味ならたい焼きが楽しい、です」
「え? それじゃ、たい焼きが田舎暮らしのほう?」
「当り前じゃないですか!」
 物珍しいだけじゃないのかと、首をひねる。
「お嬢様の考えることは、わからないなぁ」
 

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