甘い毒

麗華

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第一話

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 彼にメッセージを返信すると、月末の精算や勤怠の申請、必要書類の提出など残務を一気に片付けていった。
 定時になると同時に身支度を整え、「お疲れ様でした」という挨拶もそこそこに足早に会社を後にする。

 駅のホームで電車を待つ間に、これから着ていく服装について考える。
 そうだ、先週買った白いニットのワンピースにしよう。
 そんなことを考えているうちに、帰宅ラッシュで満員になっている電車が駅のホームに到着した。
 満員電車に揺られながら帰宅するまでの30分。
 いつもなら仕事でヘトヘトになった週末だから勘弁してほしいと思うところだが、これから彼に会えるのだから今日は全く気にならない。

 地元に駅に到着すると、自宅までの帰り道にあるコンビニに立ち寄り、夕食を調達する。
 これから彼に会うことを考えるとあんまり重たいものは食べたくないなと思い、サラダと野菜ジュースだけをカゴに入れてお会計を済ませた。

 自宅に着いて時計に目をやると、時刻は19時前。
 どうせだったらシャワーも浴びて行きたと思い、部屋着に着替えると早速、先程買ってきた夕食に手を伸ばした。
 
 本来の私は美味しいご飯が大好きだし、趣味は友達との食べ歩き。
 それでも、彼の好みで居たいから…大好きなものを我慢して、サラダと野菜ジュースを流し込んだ。

 19時20分をまわり、私は本格的に準備を始める。
 シャワーを浴びて、髪を乾かす。
 白いニットのワンピースに袖を通して、彼好みの化粧もした。
 「緩やかに巻いてる髪が好き」と言った彼の言葉を思い返し、髪型もセット。

 準備を終えた頃には、時刻は21時を回っていた。
 家を出るまでの間に一息つこうと部屋のソファに腰を下ろすと、ちょうど彼からのメッセージが届いた。

 ……またか。
 その瞬間、嫌な予感が頭をよぎって体が強ばるが、不安になっても仕方ないのでスマホを弄ることにした。

「ごめん、予定が入って今日無理になった」

 彼との約束はいつもこう。
 予定が入ったり、仕事が長引いたり、こうやって頻繁に約束は破られる。

「そっか、分かった。残念だけどまた次に大丈夫な日があったら教えてね」

 聞き分けの”いい子”でいるための返信を送ると、私はそのままソファーに突っ伏した。
 慣れてはいても、傷つかないわけではないから。
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