138 / 146
大作戦の始まり
しおりを挟む
「やっっっと着いた。……って、白っ」
目の前に続く白いタイルとその先に見える純白の建物を見て、思わず声が出た。
周囲にいた思い思いの白い服を着た信徒であろう人々が、じろりとこちらを見る。
やば。
俺も信徒なんだからそれらしくしとかないとな。
しっかし、俺が神みたいにされてる意味も分からないし、何で白?
前の髪は確かに銀髪だったが、白じゃないし、別に白い服を好んで着ていた訳でもない……謎だ。
改めて気合いをいれるために、ふっと息を吐く。
そんな俺の目の前を疲れた顔で歩みを進めている信徒たち。
「信仰してもらうつもりなんて、これっぽっちもなかったのにな……」
俺が想像していたよりも、多くの信徒が大神殿へ向かうために歩いていた。
この白いタイルが敷かれた聖地からは皆徒歩が義務づけられている。
しかし、ここまでの道程は裕福な者ならば馬車で、魔力のある者ならば転移で来ることができる。
しかし、そうでない信徒は各地から徒歩で来ているのであろう。
そして数刻祈りを捧げ、またそれぞれの家へ帰る。
それが、どれほどの労力か。
自分がそう仕向けた訳ではないけれど、何か胸に重くのしかかる。
……いかん。
俺は俺の感傷に浸るために来た訳じゃない。
ある意味俺の我儘でここまで来させてもらったんだから。
目の前に続く白い道の先にある大聖堂へと歩みを進めながら、出発ギリギリまで、揉めに揉めたことを思い出す。
「え?作戦?普通に一番デカイ聖堂に乗り込むけど?」
それ以外に何か方法あるか?
俺は平民だし、たとえ聖教に帰依したって貴族のバーンと接することなんてないだろう。
何か式典などあれば一堂に会することもあるかもしれないが、基本的に平等とされている神の下においても平民と貴族が同じ場で共に祈りを捧げたりなどしない。
「大聖堂とやらで大暴れでもしたら、バーンも止めに来るんじゃないのか?」
なんとなーく俺が考えた作戦とやらをみんなの前で元気よく発表したら、四人の顔が突然怖くなった。
「貴方って、ほんっとに、考えなし!」
「本気でそれが上手くいくと考えているのか?」
「いや、バーンに会う前に捕まって終わりでは?」
「バーンと会う目的が戦ってどうするの!」
一気に俺を責め立ててきたんだけど。
そんなこと言われても。
「じゃ、じゃあ、どうするんだ?」
もっと良い案があるとでも?
結局、俺の作戦になるんじゃないのか?
俺は四人に出せるものなら何か他の作戦出せよって上から目線で言ってみた。
たぶん、俺の作戦が一番だ!
四人はそんな俺を憐れみの目で見ると、俺に背を向けて四人で話し合いを始めた。
「バーンくらいの高位の貴族ならきっと世話人が付くはずよ。それも気負わなくてすむような同年代が」
「今、こちらが得ている情報では貴族の子息で同年代の者は聖堂にはいない。子女なら数人報告があるが、何かあってはいけないと子女は付けないだろう」
「それなら、ルカをどこかの貴族の子息として聖堂に向かわせたらいいのでは?僕の名前だと何か情報が伝わっているかもしれないから、低位の知られていない家名なら聖教側も怪しまないかと」
「ルカ一人よりも、別にどこかの貴族の子息を送り込むのはどうですか?フォルクス様の命であれば、聖教を探る目的として協力を仰ぐんです。もし、露呈してもルカの目眩ましには良いし、有力な情報を得られるかもしれませんし」
「それならば、寄宿学校に魔力不足で入れなかった男爵家の三男が聖堂入りを希望していると情報があったな。こちらに取り込むか」
「黒髪黒目も少し目立つわね。髪は色粉で染めて、瞳は点眼薬で変えましょう。あとは白い服を取り寄せて……」
俺抜きでどんどん話は進められてる。
まぁ俺が考えた作戦よりもきっと、いや、絶対に良い作戦なんだろうなって素直に負けを認めた。
なんか、いいな。
あの時もこうやって皆で相談していればきっと……いや、過去を悔いてばかりいるのはもう止めよう。
悔いて、前へ進むんだ。
「「「「でも、やっぱり心配」」」」
最初に俺が言い出してから、この大作戦を決行するまで完璧でないと許可できないと言われ、数日をかけた。
なるべく魔力があることは隠そうと用意された馬車に乗る前に、あんなに熟慮して根回ししたにも関わらず、四人は相変わらず渋っていた。
「大丈夫だ。絶対、バーンを連れて帰る。二人で、帰る」
何度も四人に安全を念押しされながら、俺は決意をもって手を振った。
あの時の心配そうな四人の顔……自分で乗り込んだ方がずっとマシだって思っていただろう。
ちゃんと、その思いに答えないとな。
そんなことを考えながら白い道を信徒たちと共に歩いていると、大聖堂がもう目の前だった。
大聖堂という名に恥じない白亜の見上げるほどに大きな建物……壁は磨き上げられ、遠くからは見えなかったが窓枠や入り口の扉には細かい細工もされており、白で統一されているとはいえ、とても華やかさがあった。
かなりの年月と費用がかかったことが想像できた。
建物の入り口は大きく解放されており、その中に吸い込まれるように信徒たちが入っていっている。
出ていく者はいないため、大聖堂の反対側にでも出口があるのだろう。
思ったよりも、信徒が多い。
この扉は日が落ちると閉められると聞いた。
暴れるなら、人が少ない夜にしよう。
「おい、お前!何ぼーっとしているんだ!」
そんなことを考えていると後ろから声をかけられる。
お前って、俺のことか?
振り返ると、俺と同じくらいの少年が立っていた。
背は俺と同じか少し小さく、髪も瞳も今の俺と同じような焦げ茶色だ。
ただ、俺と違って目鼻立ちが整っていて、睫毛が長く大きな瞳と小さいながらも艶がある唇がとても印象的な美少年だった。
「お前……ぱっとしないな?」
俺が美少年だと心の中で褒めた少年は俺のことを「ぱっとしない奴」と評価したらしい。
つら。
目の前に続く白いタイルとその先に見える純白の建物を見て、思わず声が出た。
周囲にいた思い思いの白い服を着た信徒であろう人々が、じろりとこちらを見る。
やば。
俺も信徒なんだからそれらしくしとかないとな。
しっかし、俺が神みたいにされてる意味も分からないし、何で白?
前の髪は確かに銀髪だったが、白じゃないし、別に白い服を好んで着ていた訳でもない……謎だ。
改めて気合いをいれるために、ふっと息を吐く。
そんな俺の目の前を疲れた顔で歩みを進めている信徒たち。
「信仰してもらうつもりなんて、これっぽっちもなかったのにな……」
俺が想像していたよりも、多くの信徒が大神殿へ向かうために歩いていた。
この白いタイルが敷かれた聖地からは皆徒歩が義務づけられている。
しかし、ここまでの道程は裕福な者ならば馬車で、魔力のある者ならば転移で来ることができる。
しかし、そうでない信徒は各地から徒歩で来ているのであろう。
そして数刻祈りを捧げ、またそれぞれの家へ帰る。
それが、どれほどの労力か。
自分がそう仕向けた訳ではないけれど、何か胸に重くのしかかる。
……いかん。
俺は俺の感傷に浸るために来た訳じゃない。
ある意味俺の我儘でここまで来させてもらったんだから。
目の前に続く白い道の先にある大聖堂へと歩みを進めながら、出発ギリギリまで、揉めに揉めたことを思い出す。
「え?作戦?普通に一番デカイ聖堂に乗り込むけど?」
それ以外に何か方法あるか?
俺は平民だし、たとえ聖教に帰依したって貴族のバーンと接することなんてないだろう。
何か式典などあれば一堂に会することもあるかもしれないが、基本的に平等とされている神の下においても平民と貴族が同じ場で共に祈りを捧げたりなどしない。
「大聖堂とやらで大暴れでもしたら、バーンも止めに来るんじゃないのか?」
なんとなーく俺が考えた作戦とやらをみんなの前で元気よく発表したら、四人の顔が突然怖くなった。
「貴方って、ほんっとに、考えなし!」
「本気でそれが上手くいくと考えているのか?」
「いや、バーンに会う前に捕まって終わりでは?」
「バーンと会う目的が戦ってどうするの!」
一気に俺を責め立ててきたんだけど。
そんなこと言われても。
「じゃ、じゃあ、どうするんだ?」
もっと良い案があるとでも?
結局、俺の作戦になるんじゃないのか?
俺は四人に出せるものなら何か他の作戦出せよって上から目線で言ってみた。
たぶん、俺の作戦が一番だ!
四人はそんな俺を憐れみの目で見ると、俺に背を向けて四人で話し合いを始めた。
「バーンくらいの高位の貴族ならきっと世話人が付くはずよ。それも気負わなくてすむような同年代が」
「今、こちらが得ている情報では貴族の子息で同年代の者は聖堂にはいない。子女なら数人報告があるが、何かあってはいけないと子女は付けないだろう」
「それなら、ルカをどこかの貴族の子息として聖堂に向かわせたらいいのでは?僕の名前だと何か情報が伝わっているかもしれないから、低位の知られていない家名なら聖教側も怪しまないかと」
「ルカ一人よりも、別にどこかの貴族の子息を送り込むのはどうですか?フォルクス様の命であれば、聖教を探る目的として協力を仰ぐんです。もし、露呈してもルカの目眩ましには良いし、有力な情報を得られるかもしれませんし」
「それならば、寄宿学校に魔力不足で入れなかった男爵家の三男が聖堂入りを希望していると情報があったな。こちらに取り込むか」
「黒髪黒目も少し目立つわね。髪は色粉で染めて、瞳は点眼薬で変えましょう。あとは白い服を取り寄せて……」
俺抜きでどんどん話は進められてる。
まぁ俺が考えた作戦よりもきっと、いや、絶対に良い作戦なんだろうなって素直に負けを認めた。
なんか、いいな。
あの時もこうやって皆で相談していればきっと……いや、過去を悔いてばかりいるのはもう止めよう。
悔いて、前へ進むんだ。
「「「「でも、やっぱり心配」」」」
最初に俺が言い出してから、この大作戦を決行するまで完璧でないと許可できないと言われ、数日をかけた。
なるべく魔力があることは隠そうと用意された馬車に乗る前に、あんなに熟慮して根回ししたにも関わらず、四人は相変わらず渋っていた。
「大丈夫だ。絶対、バーンを連れて帰る。二人で、帰る」
何度も四人に安全を念押しされながら、俺は決意をもって手を振った。
あの時の心配そうな四人の顔……自分で乗り込んだ方がずっとマシだって思っていただろう。
ちゃんと、その思いに答えないとな。
そんなことを考えながら白い道を信徒たちと共に歩いていると、大聖堂がもう目の前だった。
大聖堂という名に恥じない白亜の見上げるほどに大きな建物……壁は磨き上げられ、遠くからは見えなかったが窓枠や入り口の扉には細かい細工もされており、白で統一されているとはいえ、とても華やかさがあった。
かなりの年月と費用がかかったことが想像できた。
建物の入り口は大きく解放されており、その中に吸い込まれるように信徒たちが入っていっている。
出ていく者はいないため、大聖堂の反対側にでも出口があるのだろう。
思ったよりも、信徒が多い。
この扉は日が落ちると閉められると聞いた。
暴れるなら、人が少ない夜にしよう。
「おい、お前!何ぼーっとしているんだ!」
そんなことを考えていると後ろから声をかけられる。
お前って、俺のことか?
振り返ると、俺と同じくらいの少年が立っていた。
背は俺と同じか少し小さく、髪も瞳も今の俺と同じような焦げ茶色だ。
ただ、俺と違って目鼻立ちが整っていて、睫毛が長く大きな瞳と小さいながらも艶がある唇がとても印象的な美少年だった。
「お前……ぱっとしないな?」
俺が美少年だと心の中で褒めた少年は俺のことを「ぱっとしない奴」と評価したらしい。
つら。
45
あなたにおすすめの小説
伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい
マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。
最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡)
世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。
私と子供より、夫は幼馴染とその子供のほうが大切でした。
小野 まい
恋愛
結婚記念日のディナーに夫のオスカーは現れない。
「マリアが熱を出したらしい」
駆けつけた先で、オスカーがマリアと息子カイルと楽しげに食事をする姿を妻のエリザが目撃する。
「また裏切られた……」
いつも幼馴染を優先するオスカーに、エリザの不満は限界に達していた。
「あなたは家族よりも幼馴染のほうが大事なのね」
離婚する気持ちが固まっていく。
悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?
* ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。
悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう!
せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー?
ユィリと皆の動画をつくりました!
インスタ @yuruyu0 絵も動画もあがります。ほぼ毎日更新
Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新
プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら!
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!
【完結】義妹(いもうと)を応援してたら、俺が騎士に溺愛されました
未希かずは(Miki)
BL
第13回BL大賞 奨励賞 受賞しました。
皆さまありがとうございます。
「ねえ、私だけを見て」
これは受けを愛しすぎて様子のおかしい攻めのフィンと、攻めが気になる受けエリゼオの恋のお話です。
エリゼオは母の再婚により、義妹(いもうと)ができた。彼には前世の記憶があり、その前世の後悔から、エリゼオは今度こそ義妹を守ると誓う。そこに現れた一人の騎士、フィン。彼は何と、義妹と両想いらしい。まだ付き合えていない義妹とフィンの恋を応援しようとするエリゼオ。けれどフィンの優しさに触れ、気付けば自分がフィンを好きになってしまった。
「この恋、早く諦めなくちゃ……」
本人の思いとはうらはらに、フィンはエリゼオを放っておかない。
この恋、どうなる!? じれキュン転生ファンタジー。ハピエンです。
番外編。
リナルド×ガルディア。王族と近衞騎士の恋。
――忠誠を誓った相手を、愛してはいけないと思っていた。切ない身分差、年の差の恋。恋の自覚は、相手が成人してからになります。
記憶を無くしたら家族に愛されました
レン
BL
リオンは第三王子で横暴で傲慢で侍女や執事が少しでも気に入らなかったら物を投げたり怒鳴ったりする。家族の前でも態度はあまり変わらない…
家族からも煩わしく思われたていて嫌われていた… そんなある日階段から落ちて意識をなくした…数日後目を覚ましたらリオンの様子がいつもと違くて…
有能すぎる親友の隣が辛いので、平凡男爵令息の僕は消えたいと思います
緑虫
BL
第三王子の十歳の生誕パーティーで、王子に気に入られないようお城の花園に避難した、貧乏男爵令息のルカ・グリューベル。
知り合った宮廷庭師から、『ネムリバナ』という水に浮かべるとよく寝られる香りを放つ花びらをもらう。
花園からの帰り道、噴水で泣いている少年に遭遇。目の下に酷いクマのある少年を慰めたルカは、もらったばかりの花びらを男の子に渡して立ち去った。
十二歳になり、ルカは寄宿学校に入学する。
寮の同室になった子は、まさかのその時の男の子、アルフレート(アリ)・ユーネル侯爵令息だった。
見目麗しく文武両道のアリ。だが二年前と変わらず睡眠障害を抱えていて、目の下のクマは健在。
宮廷庭師と親交を続けていたルカには、『ネムリバナ』を第三王子の為に学校の温室で育てる役割を与えられていた。アリは花びらを王子の元まで運ぶ役目を負っている。育てる見返りに少量の花びらを入手できるようになったルカは、早速アリに使ってみることに。
やがて問題なく眠れるようになったアリはめきめきと頭角を表し、しがない男爵令息にすぎない平凡なルカには手の届かない存在になっていく。
次第にアリに対する恋心に気づくルカ。だが、男の自分はアリとは不釣り合いだと、卒業を機に離れることを決意する。
アリを見ない為に地方に移ったルカ。実はここは、アリの叔父が経営する領地。そこでたった半年の間に朗らかで輝いていたアリの変わり果てた姿を見てしまい――。
ハイスペ不眠攻めxお人好し平凡受けのファンタジーBLです。ハピエン。
なぜ処刑予定の悪役子息の俺が溺愛されている?
詩河とんぼ
BL
前世では過労死し、バース性があるBLゲームに転生した俺は、なる方が珍しいバットエンド以外は全て処刑されるというの世界の悪役子息・カイラントになっていた。処刑されるのはもちろん嫌だし、知識を付けてそれなりのところで働くか婿入りできたらいいな……と思っていたのだが、攻略対象者で王太子のアルスタから猛アプローチを受ける。……どうしてこうなった?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる