前世は救国の騎士だが、今世は平民として生きる!はずが囲われてます!?

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再会の時

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 俺の腹は決まった。
 バーンに会うために行動を起こしたいと思った時は、軽い気持ちで暴れたいと言ってみんなに反対されたが、次は真剣に説得だ。
 もう、一人で勝手に暴れたりはしない。
 うん。もう一つやりたいことが増えたな。 
 まずは、明日、バーンに会う。会って、また友達だと思って貰えるように誠心誠意でぶつかる。
 で、バーンの記憶が戻ったら、まずはバーンに聖教をぶっ潰す相談をしよう。あいつはエルンストとのこともあるから反対しそうだが、そこは俺が何とかうまいこと言って説得しよう。
 バーンが味方についてくれたら、今度は二人でみんなを説得だ。

 聖堂内部を心の中でふわっとした作戦を立てながら散歩する。我ながら完璧な作戦だ。
 歩きながら作戦を考えていたが、聖堂の造りは簡素的で簡単に理解出来た。思った通り四角い箱のようで、ぐるっと建物を一周歩いだが、左右とも似たような造りだった。
 そのせいで少しお腹も空いたので、部屋に帰る前に食堂に寄った。
 やはり、予想通り食堂も白で統一されている。棚も食器も白だ。
 食堂は入ってすぐの棚にお盆が置かれ、その隣の広い机の上に小皿料理が並べられおり、その場で食べる広さはないし、椅子もないことから、小皿料理をお盆に取って勝手に部屋に持って帰って食べる、という形のようだった。
 小皿料理は数種類で、肉や魚、野菜などを使った質素でも豪華でもない平均的な食事が並んでいた。たぶん、高位の神官には別の料理が支給されているのだと思う。
 ……さすがに、料理は白じゃないんだな。
 ここまで徹底していたので、食事がどうなるのか心配だった。さすがに真っ白の食べ物ばかりを用意することは出来なかったようだ。お盆の横に白い布が置かれていたのは、移動する人目がある場所ではその布をかけろ、という意味だろう。
 俺はお盆に載るギリギリまで小皿料理を載せると、白い布は無視して食堂を後にしようとした。
「君、新しい子?白い布はかけないといけないよ」
 背後から声をかけられ振り返ると、食堂の奥の厨房からかけられたようだった。壁や柱で直接は見えなかったが幾人か人の気配がした。
「あのー、これは部屋で食べた後すぐ戻すんですか?あんまり説明されてなくて」
 俺はどんな人達がここで働いているのか見たくて、声をかけてみた。
「戻さなくて大丈夫。次にここに来る時に持ってきて、返却の棚に置いて貰えばこちらで片付けるから」
 相変わらず、声は聞こえるが姿は見えない。なぜだ?
「返却の棚ってどれですか?」
「料理を並べている机の奥に厨房との敷居があるだろう?その前の棚だよ」 
 言われて見ると、確かに厨房と繋がっていそうな奥行の深い棚があった。棚の前まで行き中を覗くと、厨房が見えた。この棚に使用済みの皿を置くと、そのまま厨房から回収することができ、厨房からわざわざ扉を開けて回収する手間が省ける仕組みに感心した。厨房内ではやはり数人の人が洗い物をしたり、翌日の仕込みをしているようだった。皆、白装束のため信徒ではあるんだろう。
「あ、中を覗かないで。作業できないから」
 先程の声の人物に咎められたので、覗くのはやめた。
「なぜ、見てはいけないんですか?」
「僕たちは平民だからね。貴族の方の中には平民の作った料理は口にされたくないという方もいる。だから、目に触れないようにという決まりなんだ。直接見なければ、気にならない方もいるからね。君に覗かれると、僕たちは作業の手を止めて、隠れなければいけない」 
 また身分差の話か。舌打ちしそうだった。
「同じ信徒として、不満はないんですか?聖教は平等であると説いているのに」
「ないよ」
「え?」
 思わず、また中を覗いてしまう。思っていた返答と違った。仕方がないとか諦めの言葉が返ってくると思っていたのに。
「もうすぐだからね」
 ……もうすぐ?何がだ?神官にでもなれるのだろうか?
「さぁ、君も早く食べて寝ないと!明日は忙しいよ」 
「はぁ」
 何かひっかかるものがあったが。仕事の邪魔になっていることは明白だったので、そのまま会話を続けることなくお盆を持ち部屋へと帰った。
 セシルが食べるかなと思い多めに持って帰ったものの、セシルの寝台からは寝息が聞こえる。よっぽど疲れていたんだろう。
 残すのももったいないしな、と持って帰った小皿料理を全部を平らげた。さすがに満腹だ。
 食べた後の皿は明日の朝、食堂に持って行きやすいようにお盆の上にまとめ、寝台に寝転ぶ。
 俺も疲れていたし、満腹だし、すぐに深い眠りについた。その時には会話途中の違和感などすっかり忘れていた。
 俺は後々、それを悔やむことになる。

 翌朝、目が覚めるとセシルはすでに身支度を整えていた。
「おはよー、セシル」
「遅いよ、シュー。今日はご子息と会うのだから、早く身支度を整えろ。朝食を取りに行って、その後に隣の部屋の確認や使われる品に不備があればその手配もある」
「へーい」
 俺は寝台で大きく体を伸ばし、軽く柔軟をする。寝ぼけた身体をスッキリさせた後、セシルと一緒に朝食を取りに食堂へ向かった。 もちろん、昨日の小皿とお盆も忘れずに持つ。
 廊下では昨日と違って幾人もすれ違う。皆、忙しそうにしていた。
 俺たちは食堂に向かいながらすれ違う度に会釈をしたが、同じように返す人の方が稀で、基本的にはみんな無視して通り過ぎていった。
「なんか、バタバタしてるな。その、貴族の子息のせい、か?」
「いや、それもあるんだろうけど、大神官様が来られるから、だろう  」 
「大神官?一番えらいやつ?」
 俺の言葉にセシルは呆れた声を出した。
「何も知らないな?大神官様は神の代理人と言われ、聖教でただ一人の最高位だ」
「ふぅん」
 ま、神の代理人だか最高位だか知らないが、とりあえず俺がぶん殴る。
 この聖教は腐っている。
 テオの父さんのことで救いとなる宗教が裏で行っていることに衝撃を受けたが、この聖堂の中ですら、平然と目を覆いたくなるようなことが行われている。
 脳裏にあの時の白装束の男が浮かぶ。かなりの使い手だった。簡単にはいかないことも分かってる。
 でも、俺は決めた。

 セシルと食堂からまた夜と同じように小皿料理をお盆に乗せて自室に運ぶ。
 昨日食べ過ぎたため、軽めの物を選んだのに「そんなに食べるのか」と驚かれた。
 セシルの朝食の量は小鳥かな?くらいで、むしろそれでよくもつな、と思う。

 二人自室で朝食を食べていると、部屋の扉を数度軽く叩く音がした。セシルが対応する為に扉を開けると、昨日ここまで案内してくれた男性だった。二人が何かしら会話を交わしている間に、俺は朝食を食べきる。
 会話に混ざろうかなと立ち上がると、ちょうど話が終わったようで男性は去り、セシルが戻ってきた。
「なんて?」
「ご子息が到着したらしい」
 バーン!
 やっと……鼓動が高まる。でも、セシルは俺とバーンとのことを知らない。あくまで初対面だ。少し呼吸を深くし、冷静さを取り戻す。
「今、大神官様との面会待ちらしく、謁見の間に入られたら、許可が出るまで控えておくようにって」
「分かった」
 セシルが聞いたところによると、謁見の間は祭壇の奥に位置し、普段は立ち入ることはできない場所らしい。俺たちも許可がでるまでは入ることは出来ない。 
「まずは急いで部屋の準備をしよう」
 セシルに急かされる様にバーンが生活する隣室の準備に取り掛かる。
 といっても、急いで入った隣室は十分綺麗だし、バーンが使う物もすべて寝台に置かれていた。
 部屋としては俺とセシルが使っている部屋と同じ大きさだった。それを一人で使うので、もちろん広く感じる。
 準備されている品にも大きな差があった。寝台も寝具も机も、明らかに品質の良い物だ。高位の貴族の子息が暮らすにしては、これでも質素なのかもしれない。
 セシルも「これでは満足されないのでは?お怒りになる可能性もある」と心配していた。
 まぁ、バーンはそんな事で機嫌が悪くなったりしないだろ。

 もうすぐだ……もうすぐ。

 バーンの部屋の確認を終え、 謁見の間へ向かう。
 途中目にした祭壇には髪の長い男性の立像があり、その周囲を白い花々が埋めつくしていた。
 たぶん、あれはなんだろうなぁ。
 その像を見ても何の感慨もなく、像の前で熱心に祈りを捧げている人たちを横目に見た。
 何を祈っているんだろう。そいつには何も届いていないのに。

 謁見の間の前に一人神官が立っていた。 身なりからして、昨日俺たちを案内してくれた男性などよりもずっと高位なんだろう。
「ここで待て」
 少し高圧的な声音で指示を与えられ、扉の前で待つ。中からは何も音は聞こえない。
 でも、この中に大神官とバーンがいるんだろう。
 身動ぎもせず、三人が待機していると、扉の向こうで魔力の揺らぎを感じた。大聖堂の中で、魔法の使用は禁止されている。
 
「大神官様は退室された。後はお前達でご子息をお連れしろ。失礼のないように」
 扉の前にいた神官もあの揺らぎに気づいたんだろう。俺たちに謁見の間への入室の許可を出すと、すぐに去っていった。
 この中にはもうバーンしかいないってことだ。

「入ろう」
 セシルに声をかけると、セシルは緊張した面持ちで頷いた。
「あのー、もう入っていいって言われたんですけど……」
 言葉をかけながら少し重い扉を開ける。すると、バーンがなぜか床に座り込んでいた。そのまま、ゆっくりこちらを振り返る。
 その顔は青ざめていだ。

「どうした!?」 
 思わず敬語も忘れ、駆け寄る。セシルも驚き、俺に続いた。 
「体調が悪いのか?それとも大神官に何かされたのかっ?」
 慌ててバーンの身体を支えようと手を伸ばすと、強い力で弾かれる。
「許可なく触れるな」
 バーンからの第一声は強い拒絶の言葉だった。
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