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5. ミミ、暴走する

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 リーナが、魔聖水(上)を作り出すようになってから、ドレスナー伯爵家の台所事情は、徐々に改善。

 新たな使用人も増えてきて、リーナを避ける使用人も少なくなってきた。
 だって、ミミが専属メイドになってから、定期的にミミを洗わないといけなくなったから。

 ミミは、貧民街出身の孤児。
 元々、体を拭いたり、お風呂に入る習慣がないので、他っておくと、真っ白な毛が汚れて、真っ黒になってしまう。

 そんなの、名付け親として、リーナは耐えられない。

 相変わらず、父親であるドレスナー伯爵は、リーナを毛嫌いしていて、決してお金を与えてくれないので、物が買えない。
 ミミを、石鹸で綺麗で洗いたのに。

 仕方が無いので、たまにスプーンを拝借して、金のスプーンに替えて、昔のリーナを知らない、新しい使用人にお願いして大きなタライと石鹸を買って来て貰ったのだ。

 これで、いつでもお風呂に入れる。
 臭くなければ、リーナは超絶美少女。

 いつの間にか、使用人に文句ばかり言う我儘なアイナより、たまに金のスプーンをくれる、人見知りだけど優しいリーナの方が、新しい使用人に対してだけ、人気が出てきている。

 それにより、リーナも少しづつ自由に行動できるようになって来た。
 ドレスナー伯爵は、リーナは勿論、専属メイドのミミまで、屋敷から出る事を固く禁じている。

 物を買うにも、他の使用人に頼むより、ミミに直接頼む方が楽なのに。

 何故なら、ミミは、孤児であるにも関わらず、文字も読めるし、計算も出来るようになったから。
 買い物ぐらいなら、商人にちょろまかされる事なく、キッチリお買い物出来るくらいには成長してるのだ。

 実を言うと、リーナは、既に、書庫にある本は読み尽くしてしまって、とても暇だという事もあり、ミミに徹底的に、教育を施してたのである。

 名付け親として、当然だよね。

 そして、ミミのステータスを弄って、【超記憶】という、新たなスキルを書き加えたので、ミミは、この国の文字だけじゃなく、ありとあらゆる外国語まで覚えてしまったのだ。

 そんな恩もあり、ミミは、リーナに絶対の忠誠を誓っている。
 多分、死ねといえば、喜んで死ぬぐらいには。

 そして、既に、ドレスナー伯爵家の新たな使用人達を手中に収めてるので、ミミが、ドレスナー伯爵に内緒で、自由に屋敷の外に出れるようになったのだ。

 リーナは、これ幸いにと、読みたかった本を買ってくるように、ミミに頼む。

 やはり、前世に大賢者だったリーナの脳ミソを刺激するような本を買ってくる為には、リーナと同様か、それ以上の脳ミソを持ってるものにしか、買う事が出来ないのだ。

 その点、【超記憶】スキルを持ってるミミは、既にリーナの脳ミソを越えてたりしている。

 だって、ずっとスプーンを、金のスプーンに替えてたのに、ある日、ミミがその辺に落ちてる石をたくさん拾ってきて、これを金の石に変えれば良いと教えてくれたから。

 そう、ミミは、何も教えてなかったのに、既に、リーナが持ってるスキルを理解していたのである。
 お風呂は、決して1人で入ろうとしない癖にね。

 そんなある日、ドレスナー伯爵家にあるニュースが舞い込んできた。

 ドレスナー伯爵領が所属する国、マリリナ王国全土で、体が腐る奇病が流行してると。

 その奇病に掛かると、90パーセントが死亡。
 生き残った者も、生きながらに体が腐るゾンビと成れ果ててしまうのであった。

 案の定、ドレスナー伯爵領でも流行したのだが、リーナは秘密裏に、防腐水(超)を作り、ドレスナー伯爵領中にある全ての井戸に、ミミを使って、散布し事なきを得たのであった。

「流石は、リーナ様です。誰も知りませんが、私だけが、リーナ様がドレスナー伯爵領の領民を救ったと知っております」

【超記憶】スキルのお陰で、まだ10歳程度であるのに、完璧メイドになってしまったミミが、リーナを褒め称える。

「ドレスナー伯爵領の領民を助けるのは、ドレスナー伯爵家の娘として当然の事です」

 ミミに対してだけは、格好良い主人でありたいリーナは、いつも猫背なのだけど、背筋をピンとさせて答える。

「それに引き換え、あのバカ領主と、バカ養女は!
 こんな大変な時に、税金の臨時徴収をしようとする!
 しかも、理由が、もっと贅沢したいとか、バカですか!
 自由にお金が使えるのも、全て、リーナお嬢様のお陰だというのに!」

【超記憶】スキルによって、超絶頭が良くなったミミが憤る。
 もう、既に、ドレスナー伯爵領の運営にまで、興味を持ってるようだ。

「リーナお嬢様、ここで一気に、領民を味方に付けてしまいましょう!
 ドレスナー伯爵が税金を上げるなら、リーナお嬢様はバラ撒きを!
 養女のアイナが散財するなら、リーナお嬢様は倹約家なのをアピールするのです!」

 なんか、ミミが言ってる事が意味分かんない。

 リーナは、別に、今の生活に満足してるのである。

 ただの石ころを、金に変えれるようになってから、お金に困ってないので、父親のドレスナー伯爵から、全くお小遣いを貰えなくても、好きな物買えるし、散財だってしようと思えば出来ちゃうのだ。

 実際、物凄く高い本を買ってたりするしね。

 アイナの高価なドレスが200万マーブルだとすると、リーナが買う歴史的古書は、2000万マーブルとかしてたりするし。

「あの……私、人前に出るのとか、本当に無理なんだけど……」

 なんか、暴走しそうなミミに断りを入れておく。

「それは、私に任せて下さい。リーナお嬢様は、ただ馬車の中で座っててくれるだけで十分ですから。私が全て段取りしますから!」

 そして、ドレスナー伯爵が、税金の臨時徴収をした1ヶ月後。

 ミミが集めた、ドレスナー伯爵領の商人ギルド、職人ギルド、農業ギルドの主要人物を、商人ギルド会館に大集合させ、会合を開いたのであった。
 議長は勿論、リーナ。
 司会は、凄腕敏腕メイドのミミ。

 リーナは、極度の恥ずかしがり屋だと押し通して、会議の円卓から少し離れた、一段高いところに座ってるだけで良いという事になっている。

「それでは、会議を始めます!」

 司会進行のミミが、全てを仕切って会議を始める。

「まず、最初の議題。ドレスナー伯爵が決めた税金の臨時徴収の件について、話ます!」

 ミミの話を聞いて、みんな憮然としてる。
 だって、今回の徴収は、本当に滅茶苦茶だったのだ。
 確かに、他の領地と比べて、ドレスナー伯爵領は、体が腐る奇病の影響はそれ程、無かった。
 だけれども、それが税金を臨時徴収する理由にはならないのだ。

「最初に結論を申します。我が主、リーナお嬢様は、今回の税金の臨時徴収に心を痛めておいでになります!
 つい最近まで、ドレスナー領は、確かに貧しかった。
 だけれども、リーナお嬢様がお作りになられる魔聖水で、ドレスナー領も、ドレスナー伯爵も潤っている。
 それなのに、ドレスナー伯爵は、自分が今まで以上に贅沢する目的で、税金を上げようとしてるんです!」

「そんな理由で、税金徴収したのかよ!」

「ふざけんな!」

 代表者達から、罵詈雑言が飛ぶ。

「ですので、リーナお嬢様は、ドレスナー伯爵が徴収した税金を肩代わりして、皆さんに、払い戻そうと仰っております。
 皆さんが知ってる通り、リーナお嬢様が、魔聖水を作り、ドレスナー伯爵家の財源を支えてるのです!
 そして、ここにドレスナー伯爵の税金を臨時徴収を記録が示された紙があります。
 皆さん、間違いがないか確認宜しくお願いします。
 間違いがなければ、この場で徴収された分のお金を、金でお支払いしますので!」

 ミミは、机な上に、金の粒がたくさん入った袋を、ドン!と置く。

 やはり、金ピカの金の力は絶大である。
 直ちに、商人ギルドや、商人ギルド、農業ギルドの代表の人達は、ミミが提出した紙を確認して、擦り合わせ、その場で納め分の税金分の金の重量を計り、ホクホク顔で金の粒を貰って帰っていったのだった。

 その間、リーナは何もする事がない。
 ただ、笑顔で、会議に参加してた人達に微笑むだけ。

 話さなくていいから、楽な仕事である。
 リーナの周りには、ロープが張られ、2メートル以上近寄れなくなってるので、リーナも必要以上に緊張しなくて良かったのであった。

「リーナお嬢様! 上手く行きましたね! これでリーナお嬢様の評判も、すこぶる良くなりましたから、このまま、もっと畳み掛けますよ!」

 ミミの壮大な計画は、まだまだ続く。

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