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68. 継母の告白(4)
しおりを挟むその日は、突然、訪れた。
トトが、可愛らしい娘さんを3人も連れて、カスタネット準男爵の屋敷にやって来たのである。
しかも、そのうちの一人は、銀髪でどう考えても王族。
無知過ぎる長男カークが、マール王国のお姫様が居るというのに無礼な態度を取り、夫に叩き殺されそうになったのを必死に止めたりと、とても大変だったが、それより、やっと私にも、トトに謝るチャンスが到来したのだ。
だけれども、私は、トトに謝ろうと機会を伺うが、そんなチャンスは訪れそうもない。
トトは、私に対してだけ、よそよそしく他人のように接して来るのだ。
無理もない。私が今迄、トトにして来た事を考えれば。
私は、それだけの事をトトにやって来たのだから。
そして、私同様、トトと確執があった夫は、トトと剣を交えて語り合い、頭を下げ、トトと和解した。
私も、トトに頭を下げて謝りたいのだが、そんな機会は残念ながら、最後まで訪れなかったのだ……
何故なら、トトは私を避けている。
形の上で挨拶などはするが、それ以外は、絶対に私と目を合わようとしないのだ。
トトに目を合わせられないのは慣れているが、それでも少し凹んでしまう。
これ程まで、私はトトに嫌われていたんだと。
トトが王都への帰り際に、久しぶりに街で手相占いをしてから帰るというと、喜んで付いていってしまった娘のリーナの事が、物凄く恨めしく感じてしまう。
そして、街で手相占いをして、そのまま帰ってしまうと思ってたトトが、何故だか知らないが、もう一度、家に戻って来たのだ。
まあ、リーナがトトに付いて行ってしまったので、送り届ける為だったのだが、私は、これが最後のチャンスだと思ったのだ。
トトは、今度、いつ実家に帰って来るか分からない。
この家の事を、本当に実家と思っているのかも疑わしい。
ならば、絶対に今回のチャンスを逃す事など出来ないのだ。
トトは、リーナを家まで送ったら、すぐ王都へ帰ると思っていたのだが、何故か自分の部屋に向かった。
何か、忘れ物があったのかもしれない。
自分としては、トトの帰り際に、トトを捕まえて謝ろうと思ってたのに、肩透かしをくらってしまった格好だ。
仕方がないので、トトの後をつける。
そして、トトの部屋の前で待つ。
トトが部屋を出る時、戸の目の前に居たら、絶対に、アッ!と、トトと目が合うのだ。
そしたら、その時、謝ろう。
普通に、謝ろうとしても絶対に逃げられるなら、この方法しかない。
私は、意を決して、戸の外で待ってたのだが、突然、トトの部屋の中から、戸が閉まるバタン!という音聞こえて来たのである。
私は、何か起こったのかと、すぐさまトトの部屋のドアを開ける。
もしかしたら、私が戸の外に居るのに気付いて、部屋の窓から脱出したのかもしれない。
だけれど、トトの部屋にあったのは、見た事もない扉。
扉の周りを一周回ってみたが、裏側からは何もない。
そして、正面に戻ると、また扉があるのだ。
この不思議な扉が何かは分からないが、トト達が、この扉の中に入っていったのは確か。
何故なら、扉が閉まる音がしたから。
私は、意を決して、扉の中に入る事にしたのだ。
なのだが、扉を開けて中に入ると、そこは鉄格子の牢屋の中。
意味が分からない。どこかの部屋だと思うのだが、その中央に鉄格子の牢屋があり、私は、その中に囚われてしまったようである。
私は、牢屋の外に出ようとするが鍵が掛かってるようで、牢屋の外に出られない。
何とか出ようと、牢屋の鉄格子を掴みガンガンするが、とても頑丈で私の力ではどうする事も出来ない。
「キィーー!! なんなの!コレ! 何で牢屋の中なのよ!?」
私は、開かない鉄格子にイラつき、思わず叫んでしまう。
ただ、トトに謝ろうと付いて来ただけなのに、それなのに牢屋?
もしかして、トトは、私がトトの後を付いて来てる事に気付いて、捕まえようとしてたの?
そして、この中で、私に拷問でもして復讐しようと……
頭の中で、色々な事が思い巡る。
だけれども、それも仕方が無い事かもしれない。
私は、それだけの事をしたのだ……
「あの……そこで何をしてるんですか?」
絶望して項垂れてると、突然、トトの声が聞こえて来た。
項垂れた顔を上げてみると、そこには呆れた顔のトトの姿があった。
「ええと……それは……リーナがトトさんの部屋から消えたと、使用人から連絡があったので、トトさんの部屋を調べてみたら知らない扉があったので、入ってみたのよ……」
私は、牢屋の中から、思わず言い訳をしてしまう。
だけれども、トトは、私の言い訳などどうでも良いのか、私がこの牢屋の部屋に来る事になった、不思議な扉の話をし出す。
「えっと、その牢屋を出るには、1000万マール必要ですので、払えるならいつでも自由に、その転移扉を使っても良いですよ」
「転移扉ですって!!」
牢屋を出るのに1000万マールと聞いた時は、それ程までに、トトが私を恨んでるのかと絶望したが、転移扉と聞いて、それ以上に思わずビックリしてしまう。
何故なら、普通、人を転移させる魔法陣など、ダンジョンの中にしか存在しないと思ってたから。
普通は、ダンジョンの中にある転移トラップ。もしくは常闇の魔女が設置した転移陣が、ダンジョンの中にあるだけなのである。
その転移陣が、トトの部屋にあった?
もう、トトが何を言ってるのか理解出来なくなる。
「そう。ここは、マールダンジョンの31階層。我々、『銀のカスタネット』のパーティーハウスの牢屋部屋ですからね。
流石に、部外者に勝手、転移扉を使われてパーティーハウスの中に入れる訳には行きませんから、部外者がパーティーハウスに入るには、1000万必要と設定してるんですよ」
トトが色々説明してるが、部外者という言葉に、私はショックを受けてしまう。
血の繋がってない継母ではあるけれど、私とトトは親子で間違いないのだ。
親子だから、私を無視するトトが憎たらしく感じ、気になって仕方がなかったのに……
ただの他人なら、私は、こんな醜い感情など湧かなかったのだ。
「部外者って! 私と貴方は、親子でしょ!」
私は、思わず感情が昂り、トトに怒鳴ってしまう。
「はい。血の繋がりの無い親子で、ほぼ他人ですよね?」
完全なる正論。トトは、私の事を他人と思っていたのだ。
「牢屋の鍵は、決して開けてくれないの?」
「自分が、俺に長年して来た事を、自分の胸に手を当てて考えて下さい」
「……」
多分に心当たりがある……
私が、トトにして来た事は、決して許されない事なのだ。
私は勘違いしてたのだ。
優しいトトなら、謝れば許してくれると……
「もう、転移扉が閉まっているみたいですけど、転移扉の鍵穴の部分に、もう一度、1万マール金貨を入れれば、元の場所に帰れますので、それでは!」
トトは、最後に、元の場所には1万マール払うだけで帰れると教えてくれた。
流石に、カスタネット準男爵家では1000万マールも捻出出来ないので、どうしようかと思ってたが、1万マールならどうにかなる。
やはり、トトは優しい子なのだ。
だけれども、今の私は1万マールなど持ってない。
普通、自分の家に居るのに財布など持ち歩かないし。
これは、私に対する罰なのだ。
天におわす女神様が、私に、暫く牢屋の中で反省しなさいと言っているに違いないのである。
私は、女神様のどんな罰でも受け止めよう。
そんな事で、トトが許してくれるなら……
そして、トトと目を合わし、お義母さんと呼んで貰うのだ。
それだけが、今の私の望み。
私は、トトと、本当の家族になりたいのである。
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