【R18】童貞のまま転生し悪魔になったけど、エロ女騎士を救ったら筆下ろしを手伝ってくれる契約をしてくれた。

飼猫タマ

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23. 剣神ビクトル·クロムウェル(4)

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 ビクトルはフレシア王国主催の格闘大会の受け付けを済ませ、控え室で待っていた。

 控え室では、屈強な男達が殺気を漲らせて、各々武器の手入れや準備体操に余念がない。

 耳を澄ませて聞き耳を立てていると、今回の大会にはフレシア王国の騎士団の人達もたくさん参加するらしい。

 チラホラ、フレシア王国の騎士団の鎧を装備している者達がいるのだ。

 なんでも今回の大会は、フレシア王国が自らが率いる冒険者ギルド、その名も『フレシア』の前衛職を決める大会らしいのだ。

 この世界の冒険者ギルドは、とんでもない影響力を持っていると言われている。

 その冒険者ギルドには、冒険者ギルドランキングというものがあり、そのランキング10位以内に入ると、冒険者ギルドの運営に関わられるのだ。

 西の大陸の大国である神聖フレシア王国は、冒険者ギルドランキング10位入りする事を、国家戦略としている。

 気合いの入れ方も相当だ。

 代々『フレシア』の団長には、フレシア王国の王位継承権第一位の王子が付く習わしになっている。

 なので、王子を守る為にも『フレシア』のパーティーメンバーの厳選は、実力史上主義なのだ。

 例え、フレシア王国の貴族の家の者であっても、コネなどではパーティーメンバーに入る事などできない。
 それ程、ギルドランキング10位以内に入る事は難しいのだ。
 『フレシア』のパーティーメンバーに入る事は、神聖フレシア王国の騎士団にとって とても栄誉な事で、次期王様の側近になれるチャンスなのである。

 そして、この神聖フレシア王国で、三年に一度行われる格闘大会の面白い所は、神聖フレシア王国の国民だけではなく誰でも参加できてしまう所だ。

『フレシア』のパーティーメンバーになる為の条件は、神聖フレシア王国に忠誠を誓う事と、強い事だけなのだ。
 国内外、誰にでも平等にチャンスがある。
 獣人でも奴隷でも構わない。
 この格闘大会に優勝して、神聖フレシア王国に忠誠を誓えさえすれば、明るい将来が約束されるのだ。

 これまでにも、獣人や奴隷出身で優勝した者が何人もいる。
 その殆どの者は、『フレシア』引退後、神聖フレシア王国の要職に就く事が約束されているのだ。

「それでは今から予選を初めたいと思います!
 参加者は全員、大会会場の王国練兵所に集合して下さい!」

 ビクトルは、言われるがまま王国練兵所に移動する。

「凄いな……」

 流石は西の大陸最大の王国の練兵所、この大会の参加者800人全員が入っても、全然余裕のある広さである。

 話によると本戦は、神聖フレシア王国が誇るコロッセオで行われるらしい。
 今日と明日は、この巨大な練兵所で数減らしが行われる訳だ。

 練兵所には、試合場所と思われる丸い円が10箇所描かれており、そこに審判一人に副審が二人づつ配置されている。
 一度に10箇所で試合が行われるみたいである。

「第一試合は、現神聖フレシア王国の騎士団長で、『フレシア』の前衛職をやっておられるアナル·アナシアの試合となります!」

 司会者の紹介により登場した、神聖フレシア王国の騎士団長アナル·アナシアは、無言で、数字の1と書かれた黄色いボールを大会参加者に見せつけた。

「このように数字が書かれたボールを、このクジ引き箱から取って下さい!
 その番号で対戦相手を決定します!
 1番は2番と、2番は3番、4番は5番と対戦して貰います!
 最初は、ルール説明を兼ねて第一試合を王国騎士団長に務めて貰います!
 その後、一気に試合を進め、今日と明日中に予選を全て終わらせる段取りになります!
 それでは皆さん、クジを引いて下さいませ!」

 司会者の指示により、大会参加者達がクジ引きを始める。

「絶対、2番だけは引きたくないな」

「イキナリ、王国騎士団長と試合なんて地獄だろ!」

「皆の前で、負けが決定した試合なんて、誰もやりたくないもんな」

「雷剣アナル·アナシア。現役剣王の称号を持つ、正真正銘の化け物となんて戦いにもならないだろ!」

 どうやら王国騎士団長アナル·アナシアは、相当な剣士であるようだ。

 俺も2番だけは、絶対に引きたくない。
 出来るだけ勝ち進み、日銭を稼ぐのが目的なのだ。

 一回戦目から、剣王レベルの化け物となんて、絶対に当たりたくない。

 そうこう考え事をしていると、ビクトルのクジ引きの順番がやってきた。

『頼むから、2番だけは出てくれるな!』

 ビクトルは目をつぶり、祈りながら、クジ引きの箱からボールを一つ取り出す。

「アッ!」

 クジ引き箱の前にいた、格闘大会の運営のお姉さんが、声を発した。

 続けて、格闘大会の司会者の声も聞こえてくる。

「遂に出ました! 記念すべき神聖フレシア王国格闘大会一回戦の選手は、この黒髪の少年に決定しました!」

 ワアァァァァ!

 俺の周りから、耳をつんざくような大歓声が聞こえる。

『まさかな……』

 ビクトルが目を開け、右手で掴んだ黄色いボールを見てみると、2という数字がクッキリと書かれてあった。

「嘘だろ……」

 ビクトルは、自分の運の無さに、辟易したのだった。


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