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94. メリル
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15歳位に見える、メイド服を着た悪魔の少女に拉致られた冒険者二人組が、世界樹のダンジョンまで、少女を案内した。
「もう帰っていいです」
少女が、ポツリと言う。
「ハイ! 帰らせて頂きます!」と、冒険者二人組は、直立不動で返事をして、そそくさと帰って行った。
この超絶美少女のデーモンメイドの名前は、メリルと言う。
言わずと知れた、大魔王ゴトウ·サイトの専属メイドであったGデーモン族である。
そのメリルが、異界の悪魔アスタロトを探す理由は、400年前のある出来事から遡る。
400年前、『漆黒の森』は、異界の悪魔ベルフェゴールが支配していた。
そして、『漆黒の森』の正統継承者である、ダークエルフのガブリエル·ゴトウ·ツェペシュによる『漆黒の森』奪還戦争の真っ最中に、事件は起こった。
同時期に行われていた、冒険者ギルド主催のダンジョンの探索レイド中に、ベルフェゴールの親玉であるベルゼブブのアジトが見つかり、そのレイドに参加していた、『犬の肉球』のエリスとシャンティさんが、ベルゼブブに捕まるという事件が起きたのだ。(『必ずイカせる!異世界性活』参照)
その時『犬の尻尾』のメンバーは、『漆黒の森』奪還戦争の最中であり、主力であるガブリエル、ブリトニー、アンを送り出す事ができずに、代わりに大魔王ゴトウ·サイトと、ゴトウ·サイトの専属メイドであったGデーモン族のメリルの二人だけで、エリスとシャンティさんを救いに向かったのであった。
しかし、ベルゼブブは思いの他に強く、『犬の肉球』のエリスとシャンティさんを救う事には成功したのだが、大魔王ゴトウ·サイトは、ベルゼブブに殺されてしまったのである。
ゴトウ·サイトと行動を共にしていたメリルは、自分だけが生き残り、主人だけが亡くなってしまった事を悔いた。
そして、400年経つ今日に至るまで、自分にとって ただ一人の主人、大魔王ゴトウ·サイトを殺した、異界の悪魔ベルゼブブとベルゼブブの配下を倒す旅を続けてきたのである。
異界の悪魔ベルゼブブ自体は、50年前の冒険者ギルドの威信をかけた異界の悪魔ベルゼブブ攻略レイドによって、倒す事ができたのだが、配下の悪魔将軍アスタロトにだけには、逃げられてしまっていたのだ。
メリルは、その、逃げた悪魔将軍アスタロトを、ずっと探し続けている。
メリルの復讐は、主人である大魔王ゴトウ·サイトの殺害に関わった、全ての異界の悪魔を抹殺しなければ、終わらないのだ。
そして、悪魔将軍アスタロトは、このダンジョンに居るに違いない。と、メリルは思う。
悪魔将軍アスタロトは、頭が良く狡賢い。
50年前のベルゼブブ攻略レイドでも、ベルゼブブが劣勢になると見るや、いち早く戦線を離脱し逃げ出した。
多分、あの時、アスタロトがベルゼブブを裏切っていなかったら、冒険者連合は、ベルゼブブを倒す事ができなかったかもしれない。
そして、世界樹のダンジョンを支配する悪魔も、頭が良く狡賢いらしい。
悪魔Aと偽名を名乗り、世界樹の果実を独占し、商売までしているのだ。
そんな土着の悪魔など、いる訳がない。
メリルが知っている土着の悪魔は、総じて下品で、人間を調教する事しか考えていない低脳な種族である。
そもそも土着の悪魔が、S5かS6とも思われる世界樹のダンジョンを支配できる筈が無いのだ。
それから考えても、世界樹のダンジョンを支配している悪魔Aは、異界の悪魔アスタロトに違いないのだ。
メリルは、この50年の間、アスタロトを探し続けた。
どこかにアスタロトが居ると噂を聞けば、どこへでも探しに行った。
悪魔族の不倶戴天の敵、天使の縄張りだという西の大陸にさえ、メリルは構わず探しに行き、天使達と睨み合いになった事さえあった。
しかし、そんな苦労も今日で終わる。
異界の悪魔アスタロトを倒してしまえば、済む話なのだ。
メリルはアスタロトを探し出し、倒す事だけを、この50年間の目標にしてきた。
アスタロトを倒せる自信もある。
それだけの努力もしてきた。
元々メリルは、Gデーモン族の中でも特別だった。
大魔王ゴトウ·サイトの為だけに作られた。Gデーモンの最高傑作である。
『漆黒の森』の女王、ガブリエル·ゴトウ·ツェペシュに最も近い容姿を持ち、力も与えられた。
ほぼ、ガブリエルのクローンに近い。
そして、ゴトウ·サイトとガブリエルの眷族であるGデーモンでありながら、ガブリエルの命令を無視できる、唯一の個体でもある。
そう、メリルに命令できるのは、大魔王ゴトウ·サイトだけなのである。
現在メリルは、ガブリエルの命令で動いている訳ではない。
メリルは、自分の意思で400年間、『漆黒の森』を離れて、たった一人、大魔王ゴトウ·サイトの敵を討つ為だけに活動しているのだ。
「今日で終わらす」
メリルは強い意志を秘めて、世界樹のダンジョンの攻略を始めた。
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