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31. 策士
しおりを挟む「ドリンクとミノ1番サラダ、キモ刺しをお持ちしました!」
「それではチンチンしようか!」
「チンチン!」
「チンチンなのです!」
「チンチンニャ!」
「ウン! 最初の一口目は美味《うま》いな!」
「美味しいのです!
ミックスオレにハズレはありません!」
「美味しいニャ」
「ワン!ワン!ワン!」
キモ刺しを食べてみる。
「美味い!」
レバ刺しは、俺が引きこもる前に1度だけ焼肉屋さんで食べた事がある。
キモ刺しとは、レバ刺しの事か。
前いた世界ではレバ刺しは、食中毒で禁止されたみたいだが、この世界では健在のようだ。
サラダも食べてみる。
「これもあっさりして美味いな!」
キャベツのような葉っぱに、ごま油と塩がかかったシンプルなサラダだ。
「塩タンとカルビになります!」
塩タンは俺のイメージしてた薄切りではなく、仙台名物の牛タンステーキのように、厚切りだった。
店員のお姉さんが、ポケットに入れていたコアを石板にセットする。
「すぐに石板は熱くなりますから、すぐに焼く事ができます。」
トングを持って、塩タンの厚切りステーキを4枚焼く。
「ご主人様! 私が肉を焼くニャ!」
「おお、そしたらお願いするか!」
ブリトニーに、持ってたトングを手渡した。
こちらの焼肉スタイルは、箸は使わずトングで肉を焼いて、食べる時はナイフとフォークで切り分けて食べるスタイルのようだ。
「ご主人様の焼き加減は、確かレアでしたよね!
姫様もレアでよろしいですかニャ?」
「マスターと一緒のレアなのです!」
ブリトニーは表面だけサラッと焼いて、俺と姫の皿によそってくれた。
「ご主人様、このレカンの汁をかけて食べるのですニャ!」
俺は、レカンという見た目レモンにしか見えない食べ物の半切れを、牛タン厚切りステーキに搾って食べてみた。
美味い! 前の世界の塩タンの味と一緒だ!
「美味いな!」
「美味しいのです!」
ブリトニーは自分の皿に、残りの牛タン2枚を乗せ、1つの牛タンを3つに切り分けペロ1、2、3にの皿に乗せた。
ペロは物凄い早さでペロっと食べてしまった。
「美味いか! ペロ!」
「ワン!ワン!ワン!」
美味しかったようだ。
「やはり、ミノ一番の塩タンは美味しいのニャ!」
続けてカルビも焼いて行く、カルビは、前の世界の普通のカルビのように一口サイズの大きさだ。
俺も姫もそれぞれにトングを持ってどんどん焼いて食べる。
これも美味い!漬けだれが美味いのか?
柑橘系の甘辛いタレに、ニンニクが大量に入っているようだ。
ニンニクをたくさんいれれば、なんだって美味くなる。
確か犬はネギやニンニクが駄目だったはずだが、ペロは大丈夫なのか?
「ブリトニー。犬はネギやニンニクを食べる事ができるのか?」
「犬は何でも食べますよ!
ネギやニンニクが食べれないという話は聞いた事がありません!」
犬が大丈夫ならペロも大丈夫か。
「ペロ!今日は、お前達が一番働いてくれたからたくさん食え!」
ペロのお皿に焼いた肉をじゃんじゃん乗せるが、すぐにペロッと食べてしまう。
ペロは結構食べるな……頭が3つあるから食べる量も3倍なのか……
焼肉も終盤に差し掛かったところで、恰幅のいい50代くらいのダークエルフの男が話しかけてきた。
「もしや、今モフウフの町で話題になっている姫様と、そのご主人様であらせられるか?」
「そうだが」
「やはりそうでしたか!
神獣様を連れていらっしゃたので、もしやと思って話しかけたら正解でした!
私はこの店のオーナーのナンコー·サンアリと申す者です!
以後、お見知りおきを!」
「ゴトウ サイトといいます。
この店の焼肉はとても美味しいですね!」
丁寧に挨拶されたら、丁寧に返事をするのが礼儀だ。
「そうですか!
それはありがとうございます!
褒めてもらえたお礼に、今日のお代はサービスしますよ!」
「トンデモございません!
美味しい食事を食べさせて貰って、お代までサービスしてくれるとは!
ちゃんと支払いしますから!」
「いえいえ、ここは私の顔を立てると思って、奢らせて下さい。」
「そこまで言うならご馳走になりす!」
「ところでここだけの話、いつ姫様はお立ちになるのですか?
既に、風の噂で魔王の資格を得たのとか」
「私は漆黒の森の王位には関心がありません!
私の望みはマスターの性奴隷になる事です!」
姫は当たり前のように、いつものように答える。
「……そうでしたか。
それはすみませんでした。
ですが、お考えがお変わりになり王位を狙うのであれば、私にお声をおかけ下さいませ!
姫様が王位を復権するのが、我らダークエルフ族、全ての者の総意。
必ずやお役に立ちましょう!」
「考えが変わる事はないと思いますが、あなたの気持ちは嬉しく思います!」
「ハハー! ありがたいお言葉ありがとうございます!」
「ところでナンコー殿、ミノタウロスの肉は牛魔王から仕入れているのかニャ?」
話がひと息ついた所で、ブリトニーがナンコー·サンアリに話しかけた。
「そうですが。それが何か?」
「これから牛魔王からではなく、私達『犬の尻尾』から仕入れる事はできますかニャ?」
「姫様の頼みであるのなら、私には断る理由はありません!
しかし、ミノタウロスの肉を仕入れる事ができるのですか?
ミノタウロスの肉は全て、牛魔王が牛耳っているはずですが?」
「その辺は大丈夫なのニャ!
ミノタウロスの肉を手に入れても、卸し先が心配だったのニャ。
『ミノ一番』さん程の、ミノタウロスの肉を消費しているお店が買い取ってくれるなら心強いのニャ!」
「そうでしたか。
それなら心配ありません。
姫様が魔王に御成《おなり》になったのなら、既に牛魔王と同格です。
牛魔王の利権を奪うと言う事は、牛魔王と一戦交えると言う事ですよね!
我らダークエルフの望みは、漆黒の森全土の奪還!
今は殆どの都市が魔王や大魔王に奪われていますが、元々は我らダークエルフの支配地だったのです!
牛魔王を倒して、モフウフの街を手に入れると言う事は姫様の覇業の始まりです。
ゴトウ様の奴隷だとて構いません。
ゴトウ様は噂によると始まりの魔女のお弟子様なのですよね?
元々 漆黒の森は、初代ダークエルフの王が盟約により始まりの魔女から支配を任された地、始まりの魔女は我らダークエルフにとって神のような存在。
そのお弟子様のゴトウ様の導きにより、姫様がお立ちになるのであれば、ダークエルフにとっては、まさに理想的な展開です!
姫様は、始まりの魔女の弟子に認められ、初めて神獣を使い魔にした、王族!
ダークエルフなら期待せずにはいられません!
その最初の覇業に少しでも手が貸せるのであれば、最高に誇り高い事です!」
ナンコーさんが熱く語っている……
なんでこんな事になってるんだ?
夕飯を食べに来ただけじゃなかったのか……
やはり、ブリトニーだ。
ブリトニーはこの店のオーナーがダークエルフだと知ってて、仕入れたミノタウロスの肉の買取を頼む為に、夕食の場所をここに選んだのだ。
ダークエルフのオーナーなら姫の頼みは断らないはずと睨んで……
ん…まさか! 漆黒の森奪還の布石を打つためにナンコー·サンアリに、俺と姫を引き合わせたのか?
ブリトニー……やはり策士だ。
ミノタウロスを狩ると決めてからここまでの流れ、たまたまと言うにはやはり無理がある……
ナンコー·サンアリとの交渉が上手くいって、ご機嫌に焼肉を頬張っているブリトニーの方を見てみると、
「ミノタウロスのお肉の買取先が見つかって良かったのニャ!
これでお金がいっぱい手に入って、ご主人様に贅沢させてもらえるのニャ!」
「………」
ブリトニーは、やはりブリトニーだった……
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