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41. ボロい商売
しおりを挟む92階層でミノタウロス狩りをさせていた『カワウソの牙』から、ミノタウロスの肉を回収して、ダンジョンの外に出る為に91階層に上がった。
「オイ! 誰か出てきたぞ!」
91階層の階段フロアーが、騒がしい事になっている。
92階層を、ゴトウ族以外侵入できないように聖級結界で封鎖した為、一般冒険者が下の階層に行けないと騒いでいるみたいだ。
92階層より下の階層の移転魔道具も、全て【一撃】で破壊したので、92階層だけではなく下の階層にもワープできなくなっている。
「オイ! お前達、下の階層はどうなってるんだ!」
どう説明するか……
このダンジョンは、これから俺達『犬の尻尾』の物だ!
と、言うのは簡単だが、あまり目立ちたくはない。
今までも牛魔王が92階層を封鎖してたのなら、今回の92階層から最下層までの封鎖も、牛魔王がやったと言えばみんな信じるだろう。
どうせ、これから敵対するのだから、牛魔王のせいにしても問題ないよね。
「92階層にいた『カワウソの牙』のメンバーが、これからは92階層より下の階層も牛魔王様が支配するので、お前達出ていけ! と言われました」
「やはり牛魔王か……」
「冒険者ギルドに討伐してもらえばいいんじゃないのか?」
「冒険者ギルドは、城塞都市やダンジョンの支配を2ヶ所までは認めている。
牛魔王はモフウフと第83ダンジョンだけだから、冒険者ギルドは動かないと思うぞ」
「クソッ! 牛魔王め! 94階層のカニキラーの肉は高く売れたのに!」
しめしめ、みんな牛魔王のせいだと思ってるな。
ーーー
ダンジョンを出た後、冒険者ギルドでモンスターから回収したコアを換金し、その足で『ミノ一番』に向かった。
『ミノ一番』の入口で、店の女の子にオーナーのナンコー·サンアリを呼んでくれと頼むと、すぐにサンアリが走ってやってきた。
「ゴトウ様、姫様お待たせしました!
どうぞ! 中にお入り下さいませ!」
サンアリは深々とお辞儀をした後、店の奥のオーナー室に案内してくれた。
オーナー室は、15畳位の部屋になっており、品の良い調度品が揃えられている。
「約束通りミノタウロスの肉を持ってきたぞ!」
「左様ですか! それならば買取らせて頂きます! 幾らで買取らせて貰えばいいでしょうか?」
「牛魔王からは、幾らで買い取っていたんだ?」
「1体30万マーブルです」
「それなら俺達も30万マーブルで良いか?」
「勿論でございます!
何体売ってもらえるんですか?」
「20体だ!」
「20体ですか……私の店では、1日3体程のミノタウロスを使うのですが……
ウーン…だ…大丈夫です!
姫様の為なら、全て買取らせて頂きます!」
今のサンアリの受け答えを見ると、チョット厳しそうだな……
明らかに無理をしている……
サンアリに無理をさせない為に何か良いアイデアはないか……
それに、今後ミノタウロスの供給はドンドン多くなる予定だ。
俺達だけで販路を拡大するには無理がある。
俺達の取り分を減らして、サンアリにも一枚噛んでもらうか。
「サンアリ。先程30万マーブルで売ると言っていたが、20万マーブルでいいぞ!
その代わり、これからミノタウロスの肉を全てサンアリに卸すので、どこかに売り捌いて貰えないか?」
「それは私にミノタウロスの卸問屋をやれと言う事ですね!」
「そうだ! 今は1日20体だけだが、しばらくすれば1日100体ミノタウロスの肉を確保できるようになる筈だ!
しかも、第83ダンジョンを既に手中に収めている。
漆黒の森でミノタウロス肉は、もう俺達しか確保できない!」
「分かりました! お任せ下さいませ!
1体につき10万マーブルの利益になります。
それを1日100体という事は、1日に1000万マーブルの利益を見込めるという事です。
こんな美味しい商売は、他にございません。
幸い、牛魔王がミノタウロスを卸している飲食店や業者は皆知っております!
販路はなんとかなるでしょう!」
「おお! それは良かった!
自分達で販路を探さなくて済むのは助かるぞ!」
サンアリの話を聞いて気付いたが、1日100体20万で売ると、1日2000万の利益になるのか。
尚且つ漆黒の森でミノタウロスは、俺達『犬の尻尾』しか入手できないから絶対に売れる。
ボロい商売だ!
「ゴトウ様! これで姫様が漆黒の森を支配する為の軍資金の確保は万全ですな!」
「あ…ああ……」
サンアリは、ミノタウロスで稼いだ金を漆黒の森奪還の為に使う軍資金だと、完全に勘違いしているようだ……
そもそも、どうやって漆黒の森を支配するんだ?
2つ以上の街やダンジョンを支配すると、冒険者ギルドに潰されるんだろ……
まぁその話は置いといて、まずは牛魔王をどうするかがこの先一番の問題だ。
『カワウソの牙』から今後一切、牛魔王にミノタウロスの肉は届かない。
調べれば、すぐに『ミノ一番』に行き着くだろう。
「すまないがしばらくは、他の店にミノタウロスの肉を卸さないでくれるか!
ここの店だけミノタウロスの肉が無くならずに商売が続けれれば、牛魔王もすぐに気付くはずだ!
牛魔王が乗り込んできたら俺達は『妖精のあくび亭』のスゥイートルームにいると言ってくれ!
さすがに牛魔王も、『カワウソの牙』が停泊してた場所に俺達が泊まっていれば、何が起こったか察する筈だ!」
「牛魔王が私の所に来た後、ゴトウ様に連絡しなくても宜しいのですか?」
サンアリが俺に質問してきた。
「そうだな……
サンアリは、姫の為なら何でも出来るんだよな!」
「ハイ! 再びダークエルフの姫様が漆黒の森の支配者になれるのでしたら、悪魔にも魂を売る覚悟ができております」
サンアリはそこまでの覚悟ができているのか。
それなら俺にも考えがある。
「そうか! それなら俺に魂を売れ!
悪いようにはしない!」
「ハッ! 姫様の為なら喜んで!」
{ナンコー·サンアリがゴトウ族に加わりました}
天の声が聞こえた。
よし! 上手くいった!
サンアリが心の底から俺に忠誠を誓ったみたいだ。
これでサンアリに俺のスキルを分け与える事ができる。
「サンアリ! お前は今、俺に魂を売った事によってゴトウ族になった!
ゴトウ族になると、俺の持ってるスキルを分け与える事ができる!
取り敢えず【影渡り】のスキルを与えるので、牛魔王がお前の所に現れたら、すぐに俺に連絡しろ!」
「【影渡り】? それは何ですか?」
「姫! サンアリの影に移動してみろ!」
「ハイなのです!」
姫が自分の影の中に消えると同時にサンアリの影の中から出てきた。
「おおおお! 姫様! なんとお美しい! ゴトウ様! このスキルが私にも使えるという事ですか?」
「そうだ! ゴトウ族の一員の者であれば、誰の影にでも渡れるぞ!」
「な……なんと素晴らしいスキルなのです!
これならいつでも姫様のそばへ、参上する事ができます!」
「サンアリ…… 一応言っておくが、仕事の時以外使うなよ。
みんなプライバシーがあるんだ。
タイミング悪い時に出てきたら姫に嫌われるぞ」
「わ…分かっております!
私も姫様に嫌われたくは有りませんからね」
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