79 / 286
79. ヤンヤンと牛神·ゴトウ·パウロ
しおりを挟む「次は僕の番かな?」
アンちゃんはそう言うと石版の上に、ブレスレットをかざした。
受付嬢のヤンヤンは、恐る恐るアンちゃんのブレスレットに浮き出たステータスを確認する。
「ハハハハハ……
アンさんも魔王だ……
本当に笑うしかないです。
パーティーメンバーが全員魔王だなんて……」
「いや違う筈だぞ! 牛田達が『犬の尻尾』に加入する為に来なかったか?」
「牛田さん?
牛魔王の所の?
来てませんけど」
ヤンヤンが首を傾げながら返答する。
バンッ! タッタッタッタッ
冒険者ギルドの扉が勢いよく開くと、むさ苦しい男とその仲間と思われる集団が、俺達のいる受付カウンターに駆け寄って来た。
「ハァハァ……ゴ…ゴトウ様!
ゴキ男爵にゴトウ様達が、冒険者ギルドに向かったと聞いて急いで参上しました!」
声をかけてきたのは、牛田さんだった。
牛田さんは額に汗を流し、息を切らしている。
「おぉー! 来たか牛田さん!
お前はいつも汗をかいているイメージだな。
オッ! 新メンバーも決定したか!」
新メンバーは、牛魔王配下からは、牛田さんと神官風の格好をした牛耳族の男性。
『カワウソの牙』からは団長の狼耳族のヤナトとエロい体つきの魔法使いのクリスティーヌさん、それからイケメン剣士の3人で、計5人のパーティのようだ。
「牛田さん、初めて見る顔がいるんだが、自己紹介してもらえるかな?」
「ハッ! ゴトウ様! こいつは牛神·パウロ。
僧侶でlv.92、牛魔王配下のなかでは回復系のエキスパートです!」
「お初にお目にかかります。
僧侶をやっている牛神·パウロです。ゴトウ様のお役にたてるように、誠心誠意頑張ります」
「おお! そうかそうか!
牛神!頑張れよ!」
「ハッ! 頑張りまする!」
牛神さんは、深々と頭を下げる。
牛神さんのステータスを【鑑定】で見てみるか。
牛神·ゴトウ·パウロ
職業;僧侶lv.92
スキル;咆哮
HP 500
MP 800
まずまずだな、僧侶lv.100になったらどうなるんだ?
{A級の職業に転職できます}
ほー、そいつは面白いな。
それにしても牛魔王の奴、族長スキルを使って部下をパワーアップさせろと言っておいたのに、全くパワーアップさせていないじゃないか……
今度会ったら、姫にお仕置きさせよう。
金玉すり潰しの刑だな。
まあ、アイツは部下にスキルを与える事を良しとしてなかったから、当たり前の事なのか……
俺のように【魅了】スキルを持っていれば、スキルを与えた配下に、絶対に裏切られる事がないので、ホイホイ スキルを与えれるが、牛魔王は【魅了】スキルを持ってないからな……
さて、牛神さんにはどのスキルを与えようか。
誰でも大賢者になってしまう、チートスキルの【入門魔法全書】は駄目だな。
こいつは特別だ。
おいそれとは与えられない。
俺の右腕になれるだけの戦闘センスと、忠誠心がなければ駄目だ。
それに僧侶がlv.100になったらどうなるか、みてみたいしな。
いきなり2段抜かしで大賢者になっても面白くない。
ここは、鉄板の経験値2倍、影渡り、防御力30%upでいいだろう。
『カワウソの牙』のメンツは、既にパワーアップさせているからOKだな。
「牛神さん、経験値2倍、影渡り、防御力30%upのスキルを与えたので頑張るように」
牛神さんの耳元に小声で囁いた。
「あ……有り難き幸せでございます」
牛神さんも小声で返事をした。
牛田さんと違って、できた人物のようだ。
牛田さんだったら、俺が小声で話している意図を汲めず、大声でうやうやしく返事をするだろう。
ウン。牛神さんは見込みがある。
その内、幹部に抜擢してもよいかもな。
「オイ、失禁娘! この人達を『犬の尻尾』に加入させる手続きをしてくれ!」
「失禁娘じゃないです!
私の名前はヤンヤンです!
いい加減、覚えて下さい!
それはそうとゴトウさん。
牛魔王配下の方達と『カワウソの牙』のメンバーが、何で『犬の尻尾』に加入するんですか?」
ヤンヤンは少し頬を膨らませ怒りながらも、俺から情報を聞き出そうとする。
「それはだな、牛魔王にギルドランキング10位入りを目指す為に、強い助っ人が欲しと相談したら、《俺の配下と『カワウソの牙』の強い奴を連れてっていいぞ! 》
と、言ってくれたので、有難く助っ人をお借りしたのだ。
フフフフフ、牛魔王はロリコンで、姫にメロメロだからな。
姫が頼めば、なんだって言う事を聞いてくれるのだ!」
「や……やはり、牛魔王はロリコン決定のようですね。納得しました。
しかし牛魔王の奴め、私の姫様を嫌らしい目で犯すなんて許せない……」
ヤンヤンは苦虫を噛んだような顔をしながら、ブツブツ言っている。
「アッ……失礼しました。
業務中でした!
それでは牛田さん達の『犬の尻尾』加入手続きをしますね」
ーーー
『犬の尻尾Bチーム』の手続きを終えて、冒険者ギルドの外に出た。
「牛田、これからどうするのだ?」
「ハッ! ゴトウ様、これから『犬の尻尾Bチーム』結成を兼ねて、サンアリの『ミノ1番』で決起集会を開く予定です!
皆様方も御一緒にどうですか?」
「う~ん……
そうだな……俺達が行くと、お前達、緊張して飯も喉に通らないのではないのか?
俺達は遠慮しとくよ。
お前達、思う存分楽しんでこいよ!」
フフフフフ、俺は出来る上司だ。
なんでも解っている。
飲み会に上司は必要ない。
俺がいない方が、気を使わなくて楽しめる筈だ。
「グランドマスター、是非決起集会に来て下さい! 私はグランドマスターと飲みたいのです! というか、グランドマスターと2人きりで飲みたいです!」
クリスティーヌがサッと俺の脇に擦り寄り、俺の腕に豊満な胸を擦り付けながら懇願してくる。
忘れていた。
『カワウソの牙』のメンバーには【魅了】をかけていたのだ……
なので、クリスティーヌが姫達に遠慮なく、俺に近づける飲み会のチャンスを逃す筈がない。
姫の方を見ると、体から闘気が溢れ出している気がするが、きっと気のせいだ……
「グランドマスター!
俺達もグランドマスターと一緒に飲みたいです!」
狼耳族のヤナトとイケメン剣士も、クリスティーヌが独占していない反対の腕に、無い胸を擦り付けてくる。
そ……そうだった……
『カワウソの牙』のメンバーは全員、ゴキ男爵にバイセクシャルに調教されていたのだった……
こいつらは、俺の事が好きで好きでしょうがないのだ。
俺のももに、ヤナトとイケメン剣士の盛り上がった股間が当たる。
ウッ! 股間の先っちょが少し濡れている。
こいつら我慢汁が出ているのか……
ブルルルルッと、悪寒が走る。
牛田さんと牛神さんが、ヤナトとイケメン剣士を白い目で見ている。
俺は、俺の持っている全能力を駆使して、クリスティーヌとヤナトとイケメン剣士を振りほどいた。
「牛田! 悪いな!
用事を思い出した! また今度誘ってくれな! 姫、ブリトニー、アンちゃん、ペロ行くぞ!」
「ハイなのです!」
姫が嬉しそうに、元気に返事をした。
クリスティーヌ達は恨めしそうに、俺達を見送りながら、悔し涙を流している。
それ程までに、俺の事が大好きなのか……
全く【魅了】の効果は凄まじい。
牛田と牛神はヤレヤレだぜ。
と、肩を竦めて、俺達を見送ったのだった。
28
あなたにおすすめの小説
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話
桜井正宗
青春
――結婚しています!
それは二人だけの秘密。
高校二年の遙と遥は結婚した。
近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。
キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。
ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。
*結婚要素あり
*ヤンデレ要素あり
旧校舎の地下室
守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる