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80. エリス
しおりを挟む漆黒の森は、名前通り木々に覆われた、薄暗い森だ。
俺達はその漆黒の森をひたすら歩いている。
次に攻略する予定のダンジョン、SS級第123ダンジョンに向う為だ。
魔物は全く現れない。
姫が闘気をダダ漏れにしているので、普通の魔物は近づく事もできないのだ。
姫は日々の成長により、魔素の生産量が、自分の体の中にストックできる以上の魔素を生み出すようになっている。
なので、意識しないと魔素がダダ漏れ、闘気の撒き散らし状態になってしまう。
元々、魔素総量が多かったのだが、魔法が使えるようになった反動か、体の中の魔素を生産する機能が活発化したみたいなのだ。
ペロは姫の使い魔なので、姫の魔素を使う。
普通、ペロ程の使い魔を使役するには、それ相応の魔素が必要になるのだが、現在の姫にとっては造作もない事だ。
俺はこの世界で、ペロを使役できる程の魔術師は、姫以外に存在しないのではと思っていたのだが、アンちゃんによると、西の大陸にいる静寂の森のエルフの女王アリシア·ホワイトと、その娘のエリスなら可能かもしれないという事だ。
因みに、エリスはアンちゃんのお父さんと同じ、勇者パーティーの一員らしい。
姫だけがチートと思っていたのだが、実際にはそうではなかったようだ。
それにエリスは、神獣の龍も召喚した事があるようだ。
但し、召喚ができただけで、契約までには至らなかったらしいのだが、ちゃっかりお友達契約はしたらしい。それでも相当凄い事みたいだ。
成人している龍を召喚したのだ。
それだけでも相当な魔素が必要なのだ。
多分、姫がペロを召喚した時の魔素量の20倍は必要だろうという事だ。
それから更に凄い事に、エリスの魔素は美味しいらしいのだ。
精霊や、神獣はエリスの魔素が飲みたいが為に、こぞってエリスと使い魔の契約を結びたがるのだという。
それだけではない。エリスの魔素は人にも有効なのだ。
エリスが作ったポーションは、味で例えると『妖精のあくび亭』のフルーツオレの5倍の美味しさらしい。
尚且つ、効き目は普通のポーションの3倍の効き目。
死人も5分以内にエリスのポーションを呑めば生き返ってしまうという、まさに秘薬中の秘薬なのだ。
「へえー! そんなに凄い魔法使いが勇者パーティーにはいるんだ」
「サイト君、エリスさんは、魔法を全く使えないんだよ!」
どういう事だ? 精霊呼び出せたり、ポーション作れるのに、魔法使いじゃない?
それじゃあ、始めて会った頃の姫と、全く同じ状態だったって事だろ?
姫も興味を持ったのか、アンちゃんの話に聞き耳をたてている。
「アンちゃん、魔法を使えないのに、どうやって精霊を呼んだり、ポーションを作ったりできるんだ?」
「簡単だよ! 答えはサイト君に似てるかな。
エリスさんの魔素には、サイト君の【魅了】スキルと同じような効果があるんじゃないのかな。
召喚の魔法陣はスクロールを使ってるし、精霊は勝手に寄ってくるから簡単に使い魔にできる。
ポーションは、エリスさんの使い魔のシャンテーさんという光の妖精が、エリスさんの魔素を使って勝手に作って売ってるだけだよ!」
そうか、エリスさんと姫の違いは【魅了】を持ってるか、持ってなかったかの違いだけか。
姫もエリスさんと同じように、とてつもない魔素総量を誇っていたが、同時に精霊や魔物に心底嫌われて、誰も使い魔になってくれなかったと言っていた。
その点エリスさんの魅惑の魔素は、蜜蜂が花に吸いよせられるように、精霊が魔素の匂いに釣られて勝手に寄ってくる。
確かに、姫に【魔テイマー】のスキルを与えなかったらペロとは契約できなかっただろう。
「姫とは同じようで、全く同じではなかったという事か……」
少し難しい顔をして考えていると、姫が何かを感じとったのか、俺に話しかけてきた。
「マスター! 今は私の方が、エリスさんより上です!
マスターのお陰で、ペロという使い魔を得る事ができましたし、何より私は、エリスさんが使えないという魔法が使えるようになりました!
全て、マスターのお陰なのです!
マスター! 大好きです!」
姫は話をしているうちに感極まったのか、突然、足にしがみついてきた。
やはり姫は可愛いなぁー。
取り敢えずいつものように、頭をモフモフ撫でておく。
「ウ-ン……
姫ちゃんには悪いけど、総合力ではエリスさんのほうが一枚上手だよ。
エリスさんには、100を超える神獣や聖級の精霊達が脇を固めてるし、いざとなったら、お友達の赤龍アリエッタが助けにくる。
アリエッタはペロちゃんと同じ神獣だけど、龍とケルベロスでは元々の格が違いすぎる。
龍はこの世界では、間違いなく最強種。
龍を倒すには、龍を当てるしかないと言われているぐらいだからね!
実際に、西の大陸と東の大陸の戦争の時も、最初は人同士の戦いだったけど、東の大陸のドラキア王国が黒龍の召喚に失敗し、逆に制御しきれずに国を滅ぼされた所までは良かったのだけど、暴れたりなかった黒龍が西の大陸にまで上陸し、圧倒的な力で西の大陸全土を火の海に変えてしまった時も、最終的に黒龍を止めたのは勇者パーティーではなく、たまたまエリスさんに付いてきていた赤龍アリエッタだったて、お父さん言ってたよ」
「そう言われると、姫よりエリスさんって人の方が凄そうだな。1対1で戦えば、勿論、姫のほうが圧倒的に強いと思うけど」
「間違いなく姫ちゃんの方が強いと思うよ。
ただ、エリスさんの周りには、常に凄い人達が集まってくるのは確かだね!」
「私はエリスさんに負けないのです!
ペロも赤龍に負けないくらい、強くなるよう鍛えるし、凄い家族もたくさん増やすのです!」
何やら姫は、エリスさんに対抗心を燃やしているようだ……
「ワンワン!」
ペロが到着の合図をしている。
どうやらエリスさんの話をしている内に、目的地のSS級第123ダンジョンに到着したみたいだ。
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