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81. 墨
しおりを挟むいつものようにダンジョンの階段を駆け下りる。
何層まで攻略されているか解らないが、時間を無駄にはできない。
姫がいつものように闘気という名前の殺気を発しているので、魔物は殆ど現れない。
運悪く逃げ遅れた魔物も、ペロのファイアーブレスで消し炭になっていく。
200階層まで下りると、姫の闘気に耐えられる魔物が現れるようになるが、構わず駆け下りる。
S級クラスの魔物など、ペロとブリトニーにかかれば瞬殺だ。そのまま208階層まで下ると、階段フロアーの扉に注意書きの紙が貼ってあった。
『警告!! この先、未攻略フロアーです!
突然SS下級~SS上級の魔物が出てくる場合があります!
腕に自信の無い者は侵入禁止!!』
ここらで休憩するか。
さすがに、ノンストップでダンジョンを下ってきたので疲れた。
俺以外のメンバーは、息も切らしてないが……
「未攻略ゾーンに突入する前に、昼飯にするか!」
「ハイなのです!」
「ワンワンワン!」
ご飯と聞いて、姫とペロが元気に返事をする。
「ご主人様! 何を食べますかニャ?」
「そうだな、パンと干し肉とチーズ、それとイチゴオレをくれ!」
「ハイニャ! 姫様は勿論、ご主人様と同じ物ですよね!」
「ハイなのです! 私はいつもマスターと同じ物がいいのです!」
「ペロは干し肉でいいかニャ?」
「ワンワンワン!」
「ドラクエルは何にするニャ?」
「僕もパンと干し肉とチーズでいいです。 飲み物はハーブティーをお願いします」
「了解ニャ! 私もハーブティーにするのニャ!」
ブリトニーが手際よく食事の準備を始める。
冒険者バックから椅子と机を出し、皿を並べ、パンと干し肉とチーズを均等にスライスしていき、皿に盛っていく。
そして、『妖精のあくび亭』で仕入れたイチゴオレをコップに注ぐ。
ハーブティーは、ティーポットにハーブと魔法で作ったお湯を入れて作る。
「昼食の準備ができたニャ!」
「ブリトニーありがとな!
それじゃあ、頂きますするぞ!」
「頂きますです!」
「頂きますニャ!」
「頂きます」
「ワンワンワン!」
「やはり、ダンジョンの中で食べる飯は、いかにも冒険している感じがしていいな!」
「ハイなのです!」
姫がすかさず、同調する。
「血肉が沸き上がるニャ!
これから魔物を殺戮しまくれると思うと、上の口からも下の口からもヨダレがたれるニャ!」
「………」
「僕はずっとソロでダンジョンを攻略してたから、食事を摂る時は階段フロアー以外の場所で、魔物を警戒しながら1人で食べていたので、味もよく味わえなかったけど、みんなと食べる食事は美味しく感じるね!」
「何で魔物が現れない、安全な階段フロアーでご飯を食べないんだ?」
「ソロの場合、階段フロアーは安全な場所じゃないんだよ。
特に、女の子のソロは危険なんだ。
襲って来るのは魔物だけとは限らないしね。
人の方が、魔物よりよっぽど危険な存在だと感じるよ」
そんな事もあるのか……
確かに階段フロアーは密室空間で逃げ場がない。
魔物から逃げて、やっとの思いで階段フロアーに逃げ込んだとしても、そこでも性獣が待ち構えているかもしれないのか……
なんとか、階段にある移転装置まで逃げ込めればいいが、大人数で襲われたら逃げる隙などある筈もない。
捕まったが最後、犯されまくってしまうという事か。
「ドラクエル、今は皆と一緒だから大丈夫ニャ! 私のドラクエルを嫌らしい目で犯してくる相手は、このブリトニー様がチンコスライスの刑にするのニャ!
勿論、ご主人様以外だから安心していいのニャ!」
「お……おお、そ……そうか……
それより、チンコスライスって何だ?」
「勃起させたチンコを先端から薄くスライスしていくのニャ!」
「そ……そんな事が可能なのか?」
「今の私なら可能なのニャ!
体に風魔法の闘気を纏い、極限のスピードで血が吹き出すより早くチンコをスライスしていくのニャ!
これを思い付いた時、興奮して眠れなかったのニャ!」
俺もそんな恐ろしい所業を思い付くブリトニーさんの隣では、おちおちとチンコを立てて眠れない……
「め…飯も食い終わったし、そろそろ出発するか」
「ご主人様、ここからはご主人様とドラクエルが前衛で戦ってみたらどうですかニャ?
ご主人様はもう少し、強くなった方が良いと思うのニャ!
実践が1番成長するのニャ!」
「そうだな。じゃあそうするか!」
俺も昨日みたいに、いきなりSSクラスのラスボスと戦うなんてゴメンだ。
「私もマスターが危なくなったら、すぐホローするのです」
「ああ、頼むぞ!
姫だけが頼りだ!」
「ハイなのです!」
姫は拳を固く握り、ボクシングのガードのような体制をとりながら、体から赤黒い闘気をユラユラと発している。
前の世界で、闘志を燃やして体からメラメラ炎が出てくる表現のマンガがよくあったが、姫の場合は現実だ。
姫のリアルメラメラを見ながら、階段フロアーの扉を開けた。
索敵の為、いつものようにペロが先頭に立ち、その次にアンちゃん、その後ろに俺、姫の順に並び、ブリトニーが殿を務める。
「ワンワン!」
「マスター、次のT字路を右に曲がってすぐの所に魔物が3匹います!
ペロに2匹片付けさせるので、1匹はマスターが相手して下さい!」
おおー! これだよ、これ。
流石は姫! 俺のレベルに合わせて、しっかりと魔物を間引いてくれる。
ブリトニーとはエラい違いだ。
「ご主人様! 解っているとは思いますが剣に闘気を纏わせて戦うのニャ!
ご主人様は魔素総量が少ないので、普通の魔法を使って攻撃するとすぐに魔素が、スッカラカンになってしまうのニャ!」
「そんな事、解っているさ!
行くぞ! 姫!」
「ハイです!」
俺と姫とペロは、勢いよくT字路を右に曲がり、魔物の前に躍り出た。
「サイト君! 陣形を崩さないで!」
アンちゃんの叫び声が、背後から断末魔のように聞こえてくる。
魔物は、鎧兜を装備した人間程の大きさのタコだった。
吸盤の付いた手足が8本あり、それぞれの個体が2本づつ刀を持っている。
さしずめ、二刀流のタコ侍といったところか。
出会いざま、ペロ1、ペロ3が火炎魔法で両サイドのタコ侍を消し炭にする。
「マスター! 真中は任せました!」
「了解だ!」
タコ侍は、左側の手に持った刀で、自分の体を防御しつつ、右側の手に持った刀で、上段から俺を目がけて斬りかかってきた。
「遅い! 俺は伊達にブリトニーの戦闘を無駄に見てきた訳ではないぞ!
そんなハエが止まるような斬撃など恐るるに足らん!!」
俺は口上をたれつつ、タコ侍の懐に潜り込む。
貰った! と、思った瞬間!
タコ侍が口から墨を吐いた。
「エッ!!」
目の前が真っ暗になった。
これは死ぬパターンだ……
「カキーン!!」
ダンジョンに乾いた金属音が響き渡る。
アンちゃんが、俺とタコ侍の間に大盾を無理矢理ねじ込んで助けてくれたようだ。
「サイト君! 陣形を維持しながら戦うのが、パーティープレイの基本だよ!
サイト君は防御力がないんだから、僕の盾に隠れながら、ヒットアンドアウェイを愚直に繰り返す事が、サイト君が唯一できる基本戦術なんだからね!」
アンちゃんが、強めに俺に説教してくる。
何故だかアンちゃんに説教されると、興奮して股間が膨らむ。
「サ……サイト君! サイト君の大きくなったオチンチンが背中に当たってるんだけど、なんでかな?」
アンちゃんの怒気を含んだ低い声が、サイトの股間を、更に大きくするのであった。
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