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115. 署名
しおりを挟む「5番勝負、第4試合、副将戦を始めます!
牛魔王軍 騎士団長、牛田さん、『シルバーウルフ』獣王クマオさん、前に出てきて下さい!」
アンちゃんが、次の試合の選手に、前に出てくるように即すが、牛田さんは、大賢者サナルによって裸の裸婦像のように土魔法の弾丸でくり抜かれ、無残な形になってしまった自分のお家を、呆然とした状態で眺め続けている。
「アノ……牛田さん……
大丈夫ですか?
牛田さんの出番ですよ!」
「……」
牛田さんは、ただただ呆然としている。
「牛田さん!
う………ん……
これは、重症ですね……
仕方がありません!
5番勝負、第4回戦は不戦勝で、『シルバーウルフ』獣王クマオさんの勝ちと致します!」
アンちゃんが、『シルバーウルフ』獣王クマオに勝ち名乗りを上げる。
「やっほーい!
やりましたぜ! ガリクソンさん!
これもサナルが、あの牛田って野郎の家を、蜂の巣にしたお陰ですね!」
クマオが飛び跳ねて喜んでいるが、ガリクソンは浮かない表情をしている。
「ブー! ブー! ブー!」
モフウフの街、全体から『シルバーウルフ』に向けて、激しいブーイングが巻き起こる。
「お前ら、恥ずかしくないのか!」
「牛田さんの家をあんなにして、勝負に勝つなんて!」
「何がギルドランキング第2位のギルドだよ!
こんな、しょぼくて、セコい勝ち方見た事ないぜ!」
「『シルバーウルフ』は、今日の闘いには勝つ事ができるかもしれないが、その代わり、南の大陸中で、セコい戦い方ばかりする恥ずかしいギルドだって有名になったんじゃねえのか!」
「うぇーん……牛田さんが、可愛そう!
あんなに新しい家を建てて、家具をどうしようとか真剣に悩んでたのに!
建てて3日で、住めなくなってしまうなんて!」
モフウフの冒険者ギルドの受付嬢、自称『犬の尻尾』付きのヤンヤンが、冒険者ギルドの屋上からビール片手に、うぇんうぇん泣きながら語りだす。
どうやらヤンヤンは、酔っ払うと泣き上戸になるようだ。
「そ……そうだったのか……
牛田さん……
新築を3日であんな状態にされたら、だれだって、牛田さんのようになるよな……」
モフウフ冒険者ギルドの屋上は、ヤンヤンの言動で沈痛な空気に、覆われた。
「よし! 牛田さんの為に、モフウフの冒険者ギルドとして、『シルバーウルフ』の鬼畜な行いに対する署名を集めて、『シルバーウルフ』を処分してくれるよう申請をだそうぜ!」
「賛成! 冒険者ギルドに所属している冒険者の署名を1000人分集めれば、冒険者ギルドの会議の議題に上げる事ができる筈だから、モフウフに所属している冒険者、約1200人が協力してくれたら、署名は、すぐにでも集まる筈!」
「俺達『虎虎虎』総勢8名は、すぐに署名するぜ!」
「私達『マーメイド·ビーナス』12名も勿論、署名する!」
「俺も、署名するぜ!」
「私も!」
「俺も!」
「おいどんも!」
「あちきも!」
「僕もアンたんの為に、署名するです!」
今日の闘いを観ようと、モフウフに所属しているほとんどの冒険者が、モフウフの町で1番背が高い建物、モフウフ冒険者ギルド会館に集まっていた為、1000人の署名は一瞬にして集まり、1時間後には冒険者ギルドに提出されたのであった。
ーーー
「それでは、5番勝負、大将戦を始めます!
モフウフの街の魔王、牛魔王さん!
『シルバーウルフ』副団長、剣帝、黒騎士ガリクソンさん!
前に出てきて下さい!」
アンちゃんが、選手の呼び出しをする。
「グゴォォォ……グゴォォォ……zz……」
「牛魔王の旦那!
起きてくだせぇ! 試合ですぜ!」
ヤナトが牛魔王の巨体を揺らす。
牛魔王は、自分の戦い以外 興味がないのか、試合が始まってから今まで ずーっと、昼寝をしていたのだ。
「ん!! 何だ?
ヤナトか……
オッ! やっと俺様の出番か?
試合はどうなってるんだ?」
牛魔王は、一応試合の結果は気になるのか、ヤナトに質問する。
「2勝2敗ですね!
牛魔王の旦那が、向こうの大将を倒せば、勝ちが決まりやす!」
ヤナトは、ゴマを擦りながら、今の状況を説明する。
「ワッハッハッハッハ!
俺様が勝てばいいのだな!
美味しい部分は、やはり、主役が決めると決まっているようだ!
軽く捻って、俺様の凄さを皆に知らしめてやるとするか!
ワッハッハッハッハッ!」
牛魔王は、御機嫌になった。
腕をグルグル回し、ヤル気マンマンだ。
一方、黒騎士ガリクソンはというと、悲愴な顔をしている。
団長不在中に、『シルバーウルフ』の評判を著しく落としてしまったのだ。
「オイ! どうしたよ!
シケたツラしやがって、お前『シルバーウルフ』の副団長なんだろ!
もっと、覇気を出したらどうなんだ!」
今まで寝ていた為、事情を知らない牛魔王が、ガリクソンをけしかける。
「……」
ガリクソンは、牛魔王のけしかけにも応じない。
空のただ1点を、ジッと見ている。
「何だ? 俺様が寝ている間に何かあったのか?
まあ所詮『シルバーウルフ』は、人数が多いだけの雑魚ギルドだったて事だな!
副団長が、これじゃあ、団長の不死の魔女ブリジアってのも、たかが知れてるな!」
ブチッ!!
「ブリジア様が、たかが知れてるだと?ブリジア様を愚弄する者は、誰であろうが許さん!」
ガリクソンは、不死の魔女ブリジアの名前が出た途端、目付きが変わった。
「オッ! やっとヤル気になってきたようだな!
そうでなくちゃ、倒しがいがないからな!
折角、剣帝様を倒しても、後から本気じゃなかったと言われても困るからな!
ワッハッハッハッハッ!」
「俺が本気になって困るのは、お前の方なのではないのか?
折角、この俺を倒せるチャンスがあったものを、みすみすお前はフイにしたのだ!」
ガリクソンは、牛魔王を睨みつける。
「ワッハッハッハッハッ!
悪いが、お前には負ける気がしない!
ガブリエル様や、猫耳娘と比べても、お前には全く凄味が感じられないぞ!
お前、本当に剣帝なのか?
剣王の猫耳娘よりも、かなり実力が下だと思うぞ!
まあ、アイツの場合は、まだまだ本気を出していないからな……」
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