128 / 286
128. 『犬の尻尾』専属広報ヤンヤン
しおりを挟む「ゴトウ様! こちらの部屋に、モフウフの町長と、モフウフの冒険者ギルド長がお見えです!」
『犬の尻尾』付き受付嬢ヤンヤンに連れられて、モフウフ冒険者ギルド会館3階にある、ギルド長室に案内された。
トントン!
「『犬の尻尾』のゴトウ·サイトです!」
ギルド長室の扉を叩き、名前を名乗る。
「ゴトウ殿!」
中から聞き慣れた声が聞こえ、扉が開かれた。
「お待ちしておりました!
ゴトウ殿!」
そこには、サンアリが立っていた。
「なんで、サンアリがここにいるんだ?」
不思議に思い、質問する。
「じ……実は『ミノ1番』の他に、モフウフの町長をやっております。
町長と言っても、実質は牛魔王殿がモフウフを治めておりますので、形だけなのですがね」
サンアリは、黙っていた事に少しだけ後ろめたさがあるのか、遠慮気味に打ち明けた。
「おお! そうだったのか!
で、そちらの女性がモフウフの冒険者ギルド長なのかな?」
サンアリの隣にいる見た目20歳位の、クールビューティーなダークエルフの冒険者が目に付いたので、サンアリに質問する。
「ハッ! ゴトウ殿! 彼女がモフウフの冒険者ギルド長で、私の妹のマンコー·サンアリで御座います!」
マンコー·サンアリは片膝をつき、頭を下げ、
「マンコー·サンアリと申します!
ゴトウ殿と姫様に永遠の忠誠を誓います!」と、宣言した。
「エッ?! 何でギルド長が頭を下げるの?」
一緒について来ていた、自称『犬の尻尾』付き受付嬢のヤンヤンが、ビックリして固まってしまっている。
いきなり、モフウフの冒険者を束ねるギルド長が、一介の冒険者に永遠の忠誠を誓うと言っているのだ。
理由を知らなければ、誰だって固まってしまうだろう。
前に聞いた話だと、サンアリの一族は、元々、漆黒の森王家のダークエルフに任命され、モフウフ城塞都市を治める城主の家系であったらしい。
漆黒の森王家は、代を追う事に力を弱めていき、漆黒の森領地内の城塞都市を次々と魔王に奪われていった。
そのうちの一つがモフウフの城塞都市である。
サンアリの一族は、モフウフの城塞都市を魔王に奪われた後も、モフウフの名家として代々町長として街の運営に関わってきたのだ。
因みに、サンアリ家は、漆黒の森王家と古い姻戚関係にあり、漆黒の森の王家に絶対の忠誠を誓っている。
「モフウフの城主、町長、ギルド長を配下にしたという事は、俺は完全にモフウフの街を手中に治めたという事になるのか……」
「そうでございますな!」
サンアリが、満足気に答える。
普通は、冒険者ギルドは中立でなければならないのだが、たまたまモフウフの冒険者ギルド長が、サンアリの妹なのだ。
大体、引退した有力冒険者が、出身の街のギルド長に任命される事が多いらしいので、マンコーと言うヤラシイ名前のサンアリの妹が、モフウフの街の冒険者ギルド長に任命されていたとしても、おかしくない話なのだが、それにしてもマンコーは、引退した冒険者の筈なのに若く見える。
サンアリは50代位に見えるが、マンコーは、まだ20代位にしか見えない。
「マ……マンコーよ……
冒険者ギルド長をやるのには、若く見えるんだが、一体お前は何歳なんだ?」
マンコーという名前を呼ぶのに、恥ずかしくて抵抗があったのだが、気になっていた事を聞いて見た。
「ハッ! 私は120歳になります!」
「120歳!!」
「ハイ、エルフ族は長寿ですので、120歳でもひよっこなのです!」
「ハハハハハ……そうか……
120歳ならモフウフの冒険者ギルド長をやっていてもおかしくないな!
で、サンアリよ!
俺をここに呼んだ理由は何だ?」
「ハッ! ゴトウ殿!
まずは妹の紹介と、これからのモフウフの街についての相談であります!」
「おお! そうか!
俺も丁度、サンアリに相談したい事があったのだ!」
そして、先程モフウフの街に歩いてくる途中に考えた妄想を、サンアリに全て話してみた。
「フムフム、成程、それは良い考えですな!
是非、やってみましょう!
ゴトウ殿の考えが上手く行けば、モフウフを漆黒の森の王都にする計画も成功するでしょう!」
「エッ?! 王都?」
「そうです! ゴトウ殿!
モフウフの街を、漆黒の森の王都にするのです!
漆黒の森の正統継承者の姫様がおいでになる所が、漆黒の森の中心なのです!
ゴトウ殿の計画を実行すれば、モフウフの人口も増えますし、街も大きくなります!
ウム。そうですな。モフウフの街とアジトのダンジョンを繋げるだけではなく、『犬の尻尾』のアジトを中心にして一回り大きな城塞都市にしてはどうですかな!
『シルバーウルフ』の人員も取り込んでおりますので、工事の人手も足りております。
早速、ドン様に『新 漆黒の森王都』の都市設計図面を描いてもらいましょう!」
サンアリはそう言うと、すぐさま、ドン爺さんに会いに出かけて行ってしまった。
「ゴトウ様! これは一体全体どうなっているのですか?!
話が壮大過ぎて、ついていけないんですけど!」
自称『犬の尻尾』付き受付嬢のヤンヤンが、キャンキャン騒いでいる。
「シッ!! なのです!
貴方は『犬の尻尾』専属広報ではないのですか?
この程度で驚いているようでは、専属広報とは呼べませんね!」
姫が、キャンキャンうるさいヤンヤンに問いかける。
「専属広報?」
「そうなのです!『犬の尻尾』専属広報なのです!
仕事としては、『犬の尻尾』とマスターの偉大さを世に広める事が、1番大事なお仕事なのです!
『犬の尻尾』専属広報になると、特典もたくさんあります!
『犬の尻尾』のアジトに自由に出入りする事もできるし、お給金もたくさん貰えるのです!
それから、私がたまに頭をモフモフ撫でてあげるのです!
ヤンヤンは『犬の尻尾』の専属広報ではないのですか?」
「やります! やります! 是非やらせて下さい!
私は『犬の尻尾』専属広報ヤンヤンです!」
「そうですか! そしたら最初の仕事は静かにする事ですね!」
24
あなたにおすすめの小説
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話
桜井正宗
青春
――結婚しています!
それは二人だけの秘密。
高校二年の遙と遥は結婚した。
近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。
キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。
ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。
*結婚要素あり
*ヤンデレ要素あり
旧校舎の地下室
守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる